法定休日の振替とは|いつまで? 振休と代休の違いや割増賃金の有無、週またぎの場合を解説

法定休日の振替とは|いつまで? 振休と代休の違いや割増賃金の有無、週またぎの場合を解説

法定休日の振替の扱いは、労務管理や勤怠管理の一貫として重要な概念です。法定休日の扱いを理解しておかないと、給与支給額に誤りが生じて、トラブルに発展する事態も否定できません。

本記事では、法定休日の振替について、タイミングや手続き、週をまたぐ場合の取り扱いを解説します。また、振休と代休の違い、割増賃金の適用の有無なども具体例を交えながら紹介します。

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    法定休日の出勤には振替休日が適用できる

    法定休日に出勤すると振替休日を適用できます。業務の都合で法定休日に出勤した場合、振替休日をあらかじめ指定しておけば、法定休日でも割増賃金なしで出勤が可能です。

    たとえば、企業の法定休日が木曜日の場合、金曜日を振替休日にして木曜日を出勤に変更できます。

    木曜日(法定休日)金曜日
    出勤振替休日

    振替休日には条件があるため、企業が勝手に法定休日を振り替えることはできません。

    法定休日に対する振替休日の条件

    法定休日に対して、振替休日を適用する条件は次の通りです。

    • 就業規則へ記載
    • 労働者への事前設定・通知
    • 振替休日の日を明確に指定
    • 法定休日数の確保

    就業規則へ明記

    法定休日を別の日に振り替える可能性があることを、就業規則に記載しなければなりません。就業規則のルールとして、法定休日を振り替えるときの手続き方法や告知の仕方などを、あらかじめ明記しておく必要があります。

    労働者への事前設定・通知

    法定休日に対して振替休日を適用するには、あらかじめ労働者に伝えておく必要があります。

    労働基準法には、使用者(事業主)が労働者に対して、法定休日の振替休日を適切に指定し、事前に通知する義務が規定されています。使用者(事業主)は、労働者に法定休日の前日までに、振替休日を伝えておかなければなりません。

    月曜日(法定休日の前日)火曜日(法定休日)水曜日(法定休日の次の日)
    振替休日の日を伝える出勤次の日以降に伝えると代休扱い

    たとえば法定休日が火曜日の企業では、前日の月曜日までに労働者に振替休日の日を伝える必要があります。法定休日を過ぎたあとに伝えると、代休扱いになり割増賃金が発生するため注意しましょう。

    振替休日の日を明確に指定

    使用者(事業者)は、法定休日に対する振替休日の日を労働者へ明確に伝えなければなりません。「別の日にする」というあいまいな伝え方ではなく「金曜日を休みにする」と明確に曜日を伝えましょう。

    法定休日の出勤より前に振替休日を明示しないと、代休として扱われてしまいます。振替休日を適用するには、労働者が事前にいつ休暇を取れるのかを把握できるようにしておく必要があります。

    法定休日数の確保

    法定休日数を確保できていなければ、振替休日は取得できません。

    労働基準法には、毎週1日以上、または4週間に4日以上の休日の取得が定められています。使用者は、法定の休日数を労働者に与える義務があり、労働者は休日を確保する権利があります。

    当月の法定休日数が3日であるのに、振替休日を翌月に指定することは認められません。当月内の法定休日数を満たしたうえで、振り替えることが条件です。

    参考:『法定労働時間と法定休日、時間外労働の基本』大阪労働局

    法定休日に対する振替休日には割増賃金が発生しない

    法定休日に対する振替休日には割増賃金は発生しません。

    振替休日は休みの日に労働をさせたわけではなく、公休日を入れ替えただけであるためです。あくまでも「労働日の労働」として考えられ、法定休日労働に対する割増賃金の対象外です。

    注意点

    なかには「振替休日も代休も、本来の法定休日に代わるものなので、割増賃金が支払われる」と勘違いしてる人もいるかもしれません。

    従業員に誤解があると、使用者に対して割増賃金を請求する可能性もあります。トラブルを防ぐためには、就業規則に振替休日や代休について、正しい取り扱いを明記しましょう。

    また、定期的に従業員、特に管理者に対して周知徹底することが重要です。口頭や文書で繰り返し説明し、誤解を招かないよう注意を促しましょう。

    法定休日の振替はいつまでに取得する?

    法定休日を別の日に振り替える場合、振替期間は最大で2年間と上限が定められています。

    労働基準法第115条の「災害補償その他の請求権の時効」規定により、賃金請求権を除くその他の請求権の時効が2年と定められているためです。年次有給休暇などと同様に、振替休日を取得する権利は2年で時効になると考えられています。

    なお、賃金請求権の時効は以前まで2年間でしたが、2020年4月1日から5年間(経過措置により当面の間3年間)に改正されています。

    参照:『労働者の皆さま 未払賃金が請求できる期間が延長されます』厚生労働省

    法定休日の振替が週や月をまたぐ場合

    法定休日と振替休日を取得するタイミングによっては、週や月をまたぐことがあります。週や月をまたいだ場合の、振替休日取り扱いについて解説します。

    週をまたぐ場合の対応

    法定休日に対する振替休日が週をまたぐ場合は、労働基準法で規定する所定労働時間数を超えてしまうため、割増賃金が発生します。

    労働基準法第37条第1項には、1日8時間もしくは週40時間を超えて労働した場合、25%の割増賃金を支払わなければならないと定められています。

    第1週目月曜火曜水曜木曜金曜土曜
    法定外休日
    日曜
    法定休日
    稼働出勤出勤出勤出勤出勤出勤
    労働時間8時間8時間8時間8時間8時間0時間8時間

    →8時間×6日=48時間(週の所定労働時間40時間を超える)
    =日曜(法定休日)の割増賃金が発生

    第2週目月曜火曜水曜木曜金曜土曜
    法定外休日
    日曜
    法定休日
    稼働振替
    休日
    出勤出勤出勤出勤
    労働時間8時間8時間8時間8時間8時間0時間0時間

    1日の労働時間を8時間とすると、第1週の法定休日で出勤し、第2週に振替休日を取得すると、1週目の労働時間は48時間となり割増賃金の対象です。

    第1週の中で振替休日を設定すれば、時間外労働には含まれないため割増賃金も発生しません。

    月をまたぐ場合の対応

    法定休日に対する振替休日が月をまたぐ場合は「賃金全額支払いの原則」により、一時的に給与を全額労働者に支払う必要があります。

    労働基準法第24条には「賃金全額支払いの原則」が定められています。

    振り替えた労働日のあとに、給与締め日をまたいで振替休日を取得させる場合、当月は給与を全額支給し、翌月分から差額を控除しなければならないため、注意が必要です。

    参考:『労働基準法』e-Gov法令検索

    振替休日と代休の違い

    振替休日と代休は、休日を指定するタイミングと割増賃金の支払いの有無において違いがあります。

    振替休日代休
    休日を指定する
    タイミング
    事前代わりの休日を指定する事後休日労働の代償として
    休日を付与する
    割増賃金の有無割増賃金なし割増賃金あり

    代休は休日労働の代償として事後に休日を指定する制度であるため、割増賃金の対象です。休日出勤をさせたあとに取得する休みは代休となります。実態としてすでに休日労働は行われているため、35%の割増賃金を支払わなければなりません。

    代休には割増賃金が発生する

    代休には35%の割増賃金が発生します。振替休日は法定休日の前に休みが指定されているため、割増賃金は発生しません。

    企業によっては代休が認められていない場合があります。会社ごとの制度が異なるため、自社の方針を確認しておくとよいでしょう。

    法定休日に対して半日・時間単位の振替はできる?

    振替休日は半日や時間単位での取得はできません。一方、代休は就業規則などに定められていれば、半日や時間単位でも取得できます。それぞれの違いについて詳細に解説します。

    振替休日は半日単位で取得できない

    振替休日は、法定休日と勤務日を入れ替える制度であるため、必ず1日(24時間)単位で付与する必要があります。振替休日を半日ずつに分けて取得することはできません。

    また、時間単位で振替休日を付与することも認められていません。半日勤務した場合でも、1日分の法定休日として換算されます。

    振替休日が半日や時間単位で取得できない理由は、労働基準法で「休日」が1日(24時間)単位で定義されているためです。法定休日はあくまでも1日単位で振り替えるように注意しましょう。

    代休は半日で分割して取得できる

    一方、代休は就業規則などに定められていれば、半日や時間ごとに取得できます。代休については労働基準法の規定がないため各企業の判断に委ねられています。

    たとえば、4時間勤務した場合は4時間分の代休の取得が可能です。振替休日とは異なり代休は柔軟に対応ができます。

    法定休日に対する振替休日を運用する3つのポイント

    法定休日に対する振替休日を、使用者(事業主)が運用するためのポイントを紹介します。

    • 可能な限り同一週内に取得させる
    • 頻繁な休日出勤は避ける
    • 運用ルールを明確にする

    可能な限り同一週内に取得させる

    可能な限り、振替休日は法定休日と同じ週で取得させましょう。法定休日と異なる週で振り替えると、時間外労働分の割増賃金を支払わなければなりません。

    翌週に振替休日を取得した場合、割増賃金25%の支払いが必要となることがあります。そのため、同一週内で振替休日する日を決めておいた方がよいでしょう。

    頻繁な休日出勤は避ける

    頻繁な振替休日は避けたほうがよいです。本来は法定休日であったのに、急な出勤となると従業員のモチベーションが低下しやすいでしょう。

    短期間で振替休日を頻繁に設定し続けると、労働者の心身にとって大きなストレスになる可能性があります。多忙を理由に休日出勤を繰り返していると、最悪の場合、離職につながる可能性があるため注意しましょう。

    法定休日に労働が必要な場合は、複数の従業員で順番に振替休日を取得するなど対策を取り、負担を減らしましょう。

    運用ルールを明確にする

    振替休日を導入するにあたり、就業規則で運用ルールを明確にする必要があります。振替休日の運用には、以下の条件を満たしている必要があります。

    • 就業規則で休日を振り替えることがある旨を記載する
    • 法定の週休日や休日をいつの労働日と振り替えるかを指定して通知する
    • 週に1日または4週で4日以上の休日が確保されている
    • 振替休日の日が法定休日と離れ過ぎていない

    すべて就業規則に明記したうえで運用しましょう。

    法定休日に対する振替休日を効率的に管理するには?

    振替休日はできるだけ同一週内で取得する必要があったり、ほかの従業員と休日の調整が必要だったりします。休みを変更するたびに調整しなければならないため非効率です。

    振替休日は、できるだけ同一週内で取得する必要があり、ほかの従業員との休日の調整も必要です。

    振替休日を設定するたびに、業務の進行やシフトに影響を与えないよう、細かな調整が必要となり、管理が煩雑になりやすいといえるでしょう。

    休日の管理を効率化するには、自社に適した勤怠管理システムの活用も一案です。管理を自動化することで、取得状況の確認や調整がスムーズになるでしょう。

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    法定休日に対しては早めの振替を(まとめ)

    法定休日に対して振替休日を導入するときは、早めに従業員へ伝えましょう。法定休日後に振替休日を指定して休むことはできません。その場合、代休として扱われるため割増賃金の対象です。

    過去には振替休日と代休の違いを理解しておらず、正しく賃金が支払われなかったために裁判となった事例もあります。企業は法定休日の扱いを理解して、正しく運用しましょう。

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