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タイムカードの改ざんは違法|未然に防止する対処方法とは

従業員の勤怠管理に使用するタイムカードは、誰でも使いやすいメリットがある反面、かんたんに改ざんできてしまうデメリットがあります。タイムカードの内容を改ざんすることは法律違反になるため、従業員が改ざんをしていた場合は適正に対処しなければなりません。本記事ではタイムカードにおける改ざんについてと、改ざんを未然に防止する対処方法を解説します。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

タイムカードの改ざんは違法|未然に防止する対処方法とは
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    タイムカードの改ざんは法律違反

    タイムカードを改ざんする行為は、行ったのが使用者であっても従業員であっても法律違反です。使用者と従業員が改ざんを行った場合、抵触する可能性のある法律について解説します。

    使用者が抵触する法律

    タイムカードの改ざんでよくみられるケースに、使用者が従業員のタイムカードを改ざんすることがあげられます。改ざんする理由としては、残業代の支払いを逃れるためなどです。使用者がタイムカードの改ざんを行うと以下の法律に抵触する可能性があるため、一刻も早く対処しなければなりません。

    労働基準法

    使用者が従業員のタイムカードの改ざんを行った場合は、労働基準法第37条第1項に違反し「残業代未払い」で処罰の対象です。残業代を支払わなければ、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。また、労働基準法第114条により未払いの残業代は2倍の金額にして支払わなければならない場合もあり、未払い金や付加金には利息が発生します。

    さらに、内容を改ざんしたタイムカードを提出したことが労働基準監督署の監査などで発覚すれば、労働基準法第120条第4項「虚偽の記載をした帳簿書類の提出」の違反で30万円以下の罰金が科されます。

    参考:『労働基準法120条』e-Gov法令検索

    労働契約法

    使用者が従業員のタイムカードを改ざんすることは、労働契約法第5条の安全配慮義務を果たせない可能性があります。安全配慮義務とは、使用者は労働者が安全に働けるよう必要な配慮を課す義務のことです。タイムカードの改ざんは労働時間を正しく管理できていないことになるため、安全配慮義務を怠ったとみなされ損害賠償を請求される可能性があります。

    参考:『労働契約法第5条』e-Gov法令検索

    労働者が抵触する法律

    労働者がタイムカードを改ざんするケースとしては、使用者側のケースとは反対に残業代の水増しが目的であることが考えられます。しかし、残業代を不正に得るためにタイムカードの不正打刻や改ざんをすると、刑法による処罰の対象になる可能性もあるのです。

    刑法

    労働者がタイムカードの改ざんを行った場合は、詐欺や器物損壊、私文書偽造などの条文に該当する可能性があります。タイムカードを改ざんして、してもいない残業代をだまし取る行為は詐欺罪になりかねません。また、タイムカードを改ざんするためにタイムレコーダーを破壊すれば、器物損壊罪に該当する可能性があります。そして、タイムカードを改ざんする行為は書類の偽造にあたり、私文書偽造罪が成立する恐れもあります。いずれの行為も刑法による処罰の対象であることを使用者は知っておきましょう。

    従業員によるタイムカード改ざんの手口とは

    具体的にどのような手口で従業員によるタイムカードの改ざんが行われるのか、よくある事例をあげてご紹介します。

    残業代の水増し

    改ざんの手口でよくみられるのは、残業代を水増しするため就業時刻になっても打刻しないことなどがあげられます。たとえば、終業後に同僚と話していて退勤時間に打刻をしないケースや、打刻をせずに職場を離れ戻ってきてから打刻をするケースなどです。また、手書きのタイムカードを修正したり、タイムレコーダーに細工をして退勤時間を遅らせたりするケースもあります。

    代理打刻

    従業員本人以外がタイムカードを打刻する「代理打刻」も改ざんによくみられる手口です。代理打刻でよくあるケースは、遅刻しそうなときにほかの従業員に出勤の打刻を頼んだり、退勤してから数時間後にほかの従業員が退勤の打刻をしたりするなどです。代理打刻による勤怠の改ざんはいつから行っていたのか判断が難しいため、未然に防止する必要があります。

    従業員がタイムカードを改ざんしていた場合の対処方法

    タイムカードの改ざんが発覚した場合、まずは事実を確認をしてから対処方法を検討しましょう。不当な処分はトラブルに発展することもあるので、慎重な判断が必要です。

    賃金の返還手続きを行う

    従業員がタイムカードの改ざんを行っているようなら、まずは従業員本人に事実を確認します。従業員側から「会社がうそをついている」と主張される可能性もあるため、改ざんを認めさせる証拠を集めておきましょう。改ざんしたことが事実だとわかれば、該当従業員に過剰に支給した分の賃金を返還するよう請求します。

    勤怠管理の重要性を社内で周知する

    タイムカードは誰でもかんたんに打刻できてしまう一方で、かんたんに改ざんできてしまうものです。タイムカードの改ざんが犯罪であると認識していない従業員もいるかもしれないので、勤怠管理の重要性を社内に周知させる必要があります。改ざんを行うとどのような問題に発展するのかを従業員に認識してもらい、再発防止に勤めることが大切です。

    従業員に処分を与える

    タイムカードの改ざんの状況や再三注意しても止めない場合は、降格や減給、懲戒解雇などの処分を検討しましょう。就業規則に処分の内容が定められていれば、それに従って処分をくだします。たとえば不正に受け取った残業代が高額になるケースなどのように、改ざんが悪質なものであればしかるべき処分を検討しなければなりません。ただし、不当な解雇などはトラブルに発展する恐れもあるため、過度な懲罰にならないように慎重に判断を行いましょう。

    従業員のタイムカード改ざんを未然に防止する方法

    タイムカードの改ざんを未然に防ぐには、就業規則やタイムカードの管理方法の見直しが必要です。勤怠システムの導入などを検討すれば、より確実な改ざん防止につながるでしょう。

    就業規則を見直す

    タイムカードで勤怠管理をするのであれば、そのルールを明確に就業規則に記載する必要があります。例として、勤怠の改ざんを禁止する旨や、改ざんした場合の罰則について明記しておくとよいでしょう。なお、就業規則を見直ししたあとは、従業員への周知を忘れずに行ってください。また、罰則に懲戒解雇を定める場合は、弁護士などの専門家と相談してから検討する必要があります。

    タイムカードの管理を見直す

    タイムカードは従業員本人以外の誰でも打刻できてしまうこと、手書きでかんたんに書き換えができてしまうことが弱点です。タイムカードをデスクの上に放置していたりすれば、従業員はタイムカードが大切な書類であると認識できないかもしれません。

    このようにタイムカードの管理方法を怠っているようなら、管理方法を一度見直しする必要があります。たとえば、タイムカードを鍵付きの引き出しや金庫で管理するなど、改ざんできるような状態をつくらないことが大切です。管理方法が厳重になると管理者の負担は増えますが、改ざんされる可能性を減らすことにつながります。

    勤怠管理システムを利用する

    勤怠管理をタイムカードから勤怠管理システムに変更すれば、タイムカードの改ざん防止につながります。システムによっては出退勤の打刻時にパスワード入力や本人認証が必要なものもあり、勤怠の改ざんがしづらい仕組みになっています。また、勤怠管理システムを導入すると出退勤の時間のズレが減り、労働時間を正確に管理しやすくなるので従業員の労働状況の管理にも役立つでしょう。

    昨今では、残業時間や有給の正確な管理が求められるようになり、勤怠システム導入を検討する企業も増えてきています。特にリモートワークなど多様な働き方を導入する企業は場所を問わず打刻させる必要があるため、柔軟な働き方に対応するためにシステムを導入する企業も多いです。

    勤怠システムを導入するメリット・デメリット

    不正な打刻を防ぐのに役立つ勤怠システムですが、自社にあっているものを選ばなければ思うような効果は得られないかもしれません。導入を検討するにあたり、システムのメリットとデメリットを把握しておきましょう。

    メリット

    紙のタイムカードで労働時間を管理している場合、先にも述べたように改ざんや代理打刻されるリスクがあります。その点、勤怠システムはログインする際にパスワードの入力や顔認証、指紋認証などが求められるので、改ざんや不正打刻の防止に効果的です。また、勤怠表への記入ミスや打刻忘れ防止にも役立つでしょう。

    さらに、勤怠システムを導入して不正打刻を防止できれば、残業時間や早退、欠勤などを含めて労働時間を正確に集計できるようになります。手作業で勤怠時間を計算する手間がなくなり、なおかつ計算ミスも防げるのでより正確な給与計算ができます。また、システム上で割増賃金が自動で計算されるので、コンプライアンス遵守にもつながるでしょう。

    デメリット

    勤怠システムを導入するにあたって、導入費用や運用費用がかかるのはデメリットになるかもしれません。システムにもよりますが導入費用に数十万かかることもあるので、費用対効果を検討してから導入に進みましょう。特にイレギュラーな働き方を導入している企業は、システムで対応できるかなど、自社にあったシステムであるか見極める必要があります。

    また、勤怠システムを導入しても運用できなかったり、従業員が使いこなせなかったりすればあまり意味がありません。システム導入後は社内に浸透するまでに時間がかかるため、教育の機会を設けるなどの対応が必要になるかもしれません。

    まとめ

    タイムカードは誰でもかんたんに出退勤の打刻ができる便利な勤怠管理方法ですが、一方で不正打刻や改ざんがかんたんにできてしまうデメリットもあります。タイムカードの改ざんを行うことは使用者であっても従業員であっても、法律に違反する行為です。

    従業員が改ざんを行った場合、状況によっては詐欺罪にあたることもあるため未然に防ぐことが大切です。タイムカードの管理を怠っている企業は管理方法を見直し、改ざん防止に効果的な勤怠システムの導入を検討するのがよいかもしれません。ただし、勤怠システムを導入する際は費用対効果を見極め、自社の勤務体制に合ったシステムを選びましょう。

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