テレワーク特有の残業管理とは? 実態と課題、管理のポイント、残業代の扱いを解説

テレワーク特有の残業管理とは? 実態と課題、管理のポイント、残業代の扱いを解説

テレワークの普及にともなって、「従業員がどれくらい残業しているのか把握しきれない」といった新たな勤怠管理の課題が発生しています。

オフィスでは上司が部下の勤務状況を確認できますが、テレワークでは目に届く範囲に限界があるでしょう。

テレワークにおける残業管理は難しく、放置すると、長時間労働や未払い残業といった問題につながりかねません。

本記事では、テレワーク特有の残業管理の課題と、解決するための実践的な方法を解説します。従業員も企業も安心できる働き方を実現するためのヒントにお役立てください。

 

残業管理の基本を確認したい方は以下の記事もご確認ください。
残業管理の方法とは【誰の仕事?】目的・必要性と課題、エクセルを活用した法も簡単に解説

目次アイコン 目次

    テレワークにおける残業の実態|残業は増えやすい?

    テレワークでは従業員の労働時間、とくに残業の把握が重要な課題となっています。

    日本労働組合総連合会が2020年6月に実施した『テレワークに関する調査2020』によると、調査対象者の半数以上(51.5%)が、テレワーク中に通常勤務よりも長時間労働になったと回答しました。

    さらに深刻なのは、テレワークにより隠れ残業が発生しているということです。時間外・休日労働をした日でも、申告しないことがあった人はは65.1%にのぼります。理由は「申告しにくい雰囲気」(26.6%)「時間が管理されていない」(25.8%)が挙げられています。

    また、申告しても会社に承認されなかった事例も半数以上(56.4%)あるようです。

    以上の調査結果から、労働時間の管理が不十分である現状がうかがえます。

    企業はテレワーク環境であっても、残業時間の管理体制を整備し、労働者の権利を守る必要があります。

    参照:『テレワークに関する調査2020』日本労働組合総連合会

    テレワークでは残業が「見えない化」管理の課題とは?

    テレワークでは、上司や同僚と物理的に離れて業務を行うため、開始時間や終了時間が不明確になりやすい状況です。また、勤務時間外でもメール対応や作業が発生しやすく、結果として従業員の実労働時間を正確に把握することが難しくなっています。

    たとえば、オンライン会議が深夜まで続いたり、業務時間外のチャットやメールの返信を業務時間外でも求められたりするのは典型的な例です。通勤時間がなくなった代わりに、仕事に時間を充ててしまい、労働時間が延びることも少なくありません。

    以上のような残業の「見えない化」が進むことで、従業員にかかる負担は大きくなります。疲労が蓄積して健康に悪影響をおよぼし、生産性も落ちるでしょう。長時間労働による健康被害は、企業にとっても見過ごせない問題です。実際にテレワーク中の長時間労働が原因で労災認定されたケースも報告されています。

    テレワーク中の長時間労働で労災認定された事例

    テレワーク環境下で長時間労働を強いられた結果、なかには精神疾患を発症して、労災が認められた事例もあります。精神疾患発症前の2か月間の残業が月100時間超になり、強い心理的負荷が発症につながったと判断されました。

    とくに問題視されたのは、上司から頻繁にメールやチャットで指示が送られ、パソコンの前から離れない状況が続いたことです。 休日も仕事を課される環境が、異例の労災認定につながりました。

    従業員の健康を守るためにも、テレワーク/在宅勤務では、見えにくい勤怠状況を可視化する仕組みを整える必要があるといえるでしょう。

    参照:『テレワーク残業で女性が精神疾患、横浜北労基署が労災認定 異例の判断』産経ニュース

    テレワークの残業管理における重要ポイント

    テレワークでは、従業員の労働時間や残業状況を正確に把握することが、オフィス勤務以上に求められます。物理的に離れた環境では、業務の見えにくさから、残業が「見えない化」しやすいためです。

    テレワークの残業管理では、とくに以下の3つのポイントに注意しましょう。

    1. テレワークでも残業代を支払う義務がある
    2. 管理しにくい状況を踏まえて労働時間を把握する
    3. テレワーク特有の環境を理解して、長時間残業の防止策をとる

    従業員の健康被害を防ぎ、法的リスクを回避するために一つずつ確認していきます。

    残業手当の支払い義務

    テレワークであっても、当然ながら労働基準法の適用対象です。 時間外労働を行った従業員には、法定どおりの残業手当を支払う義務があります。 具体的には、時間外・深夜・休日労働には割増賃金が適用され、支払わないと罰則を受ける可能性があります。

    たとえ企業が、テレワーク中の残業禁止ルールを設定していても、残業せざるを得ない状況であれば、残業代を支払わなければなりません。 とくに深夜や休日のオンライン会議やメール対応がある場合は、時間外労働となり割増賃金の支払い対象です。

    企業はテレワーク中の従業員が時間外に働きすぎない環境を整え、ルールを明確にすることが重要です。

    適切な労働時間記録

    従業員の労働時間を正確に把握することは、企業の基本的な責務です。

    労働安全衛生法では、企業に客観的な方法による労働時間の把握義務が課されていますが、テレワークはオフィス勤務に比べて労働時間の把握が難しくなるため、より一層の工夫が求められます。

    たとえば、パソコンの使用記録やクラウド型勤怠管理システムの導入により、離れた環境でも従業員の労働時間を正確に把握しやすくなるでしょう。

    とくに自社に適した勤怠管理システムの活用は、柔軟な働き方にも対応が可能であり、企業と従業員の双方にとってメリットがあります。

    自社の働き方に最適な管理方法を選択するとともに、従業員が迷わず運用できるよう、サポートすることが必要です。

    長時間残業の防止

    テレワーク環境では、労働時間の管理が曖昧(あいまい)になりやすく、長時間残業の防止が課題です。

    具体的な対策として、残業申請制の導入が挙げられます。従業員が事前に残業の必要性を申請し、上司が承認する仕組みを設けることで、不要な残業を抑制できます。また、夜間業務の禁止ルールを設定し、業務を制限している企業もあります。

    また、企業は法改正があるたびに、労働時間の管理方法を定期的に見直さなければなりません。

    企業が「テレワーク残業禁止ルール」を設定する理由

    通常の残業管理方法では、テレワーク特有の「隠れ残業」を完全に防ぐことは難しく、企業にはさらに踏み込んだ対応が求められます。そのため、残業申請制や夜間業務の禁止ルールに加え、一律の「残業禁止ルール」を採用する企業もあるようです。

    なぜ企業は一律の残業禁止を導入するのでしょうか。また、本当に残業禁止ルールが必要なのでしょうか。

    企業がテレワークでの残業を制限する背景には、以下の2つの理由があります。

    • 理由1:管理の難しさが法令遵守の妨げになるため
    • 理由2:従業員が健康を壊す前に過重労働を抑えるため

    テレワーク特有の課題を踏まえ、企業がどのように残業管理の方法を見直し、適切な対応を取ったらよいか以下で解説します。

    管理の難しさが法令遵守の妨げになるため

    テレワーク環境では労働時間の記録が曖昧(あいまい)になりやすく、労働時間を正確に把握するのが難しい現状があります。しかし、ずさんな勤怠管理を放置すれば、過重労働や未払い残業代など、法令違反や信用低下につながるリスクが高まります。

    そのため、企業は残業自体を制限し、曖昧(あいまい)さを排除することで、法令を遵守し、従業員のワークライフバランスを確保しようとしているのです。

    従業員が健康を壊す前に過重労働を抑えるため

    テレワークでは、仕事とプライベートの境界が設けにくく、従業員が無意識に長時間労働を続けてしまう傾向があります。業務に没頭して疲労やストレスが蓄積すると、次第に健康を害してしまいます。

    とくに健康問題が進行すると、従業員の離職や業務効率の低下といった事態が発生し、組織の安定性を損なう可能性も否定できません。

    テレワークでの残業を一律に禁止にすることで、過重労働を未然に防ぎ、業務時間内に集中して仕事を終える習慣を促すルールを設定しているのでしょう。心身の健康に配慮することで、集中力やモチベーションが高まり、結果的に組織全体の生産性向上につながります。

    テレワークにおける長時間残業を防ぐ方法

    テレワーク環境では、残業を一律に禁止する企業があるほど、労働時間の管理が難しい状況にあります。「気づけば深夜になっていた」「仕事とプライベートの切り替えがうまくできない」といった経験がある人も多いのではないでしょうか。

    最後に、長時間残業を防ぐための具体的な5つの方法を紹介します。

    • 勤務時間外の連絡を制限
    • システムへのアクセスの時間を制限
    • 残業申請
    • 終礼や業務報告
    • 長時間労働者への個別対応

    施策を参考に自社に適したアプローチを検討し、健全なテレワーク環境を構築しましょう。

    勤務時間外の連絡を制限

    テレワークにおける長時間残業を防ぐためには、勤務時間外の連絡を制限することが基本です。業務終了後も連絡が可能な状況では、従業員がプライベート時間を確保できず、無意識のうちに長時間労働につながるリスクがあります。

    たとえば、以下のようなルールを導入するとよいでしょう。

    • 18時以降の業務連絡を禁止
    • 夜間のメールやチャット送信を制限するシステムの導入

    就業ルールの設定でテレワーク中の労働時間が明確になり、従業員のワークライフバランスの確保にもつながります。

    システムへのアクセスの時間を制限

    システムへのアクセス制限は、テレワーク中の長時間残業を防ぐ効果的な方法です。具体的には、業務用システムやツールの利用可能時間を、勤務時間内に設定します。

    たとえば以下のような対応が必要です。

    • 業務用システムを9時から18時のみにアクセス可能に設定
    • PCシャットダウンシステムを導入し、自動的に業務を終了させる仕組みを導入

    「テレワーク中でも勤務時間内にタスクを終える」という意識を高められ、生産性の向上も期待できるでしょう。

    残業申請

    テレワーク環境では、事前に上司の承認を得る「残業申請制度」を導入することで、長時間労働を抑制できます。申請時には残業の理由や予定時間を明確にしましょう。

    残業申請制には以下の2つのメリットがあります。

    • 不要な残業の抑制:タスクを翌日に回せる場合は残業を認めない。
    • 業務分配の調整:特定の従業員に業務が偏っている場合、タスクを再分配

    さらに残業申請フローをシステムで自動化すると、管理が効率化され、記録も確実に残るため、テレワーク中の労務リスクの軽減にもつながります。

    終礼や業務報告

    業務終了時に進捗やタスクを報告する「終礼」や「業務報告」は、テレワークにおける長時間残業を防ぐための有効な手段です。報告の場を設けると、従業員は終業時間を意識しやすくなり、ダラダラと作業を続けることを防げます。

    • オンライン会議での簡易な進捗報告
    • チャットツールでのタスク完了状況の共有

    報告週間の徹底は、労働時間の適正管理だけでなく、テレワーク中のチーム内コミュニケーション活性化にもつながります。

    長時間労働者への個別対応

    さまざまな対策を講じても長時間労働が続く従業員には、個別対応が必要です。定期的に労働時間を確認し、以下の対応を検討しましょう。

    • 業務量が過剰でないか、タスクの優先順位が適切かを確認
    • 必要に応じて業務量を調整し、サポート体制を強化
    • 長時間労働の習慣化や心理的な要因がある場合は、相談窓口の利用を促す

    個別対応を行うことで、従業員が安心して働ける環境を整え、テレワーク全体のパフォーマンス向上にもつながります。

    テレワークにおける残業管理には勤怠管理システム活用も

    テレワークにおける残業管理には、勤怠管理システムの活用も検討してみてはいかがでしょうか。

    とくにテレワークでは、勤務時間とプライベートの境界がなくなりやすく、長時間の残業につながるリスクがあります。勤怠管理システムなら、従業員の勤怠実績をリアルタイムで可視化できるため、過重労働になる前に個別に通知を出すことも可能です。クラウド型であれば、場所を問わず利用可能で、テレワーク環境に適応しやすいメリットもあります。

    勤怠管理システムには、ほかにも以下の機能が備わっており、自社に必要な要件を確認してみましょう。

    残業申請理由を記載しなければ申請ができない設定をすれば、不要な残業を抑制できる
    勤務状況の分析長時間労働が発生している部署や個人を特定し、改善策を立案する
    外部システム連携給与計算との連携により、給与計算と勤怠管理をまとめて効率化できる

    多様な機能を活用することで、テレワーク中の残業管理の効率化を目指しましょう。

    まとめ

    テレワークにおける残業管理は、企業と従業員双方にとって重要な課題です。オフィス勤務と異なり、労働時間の正確な把握や長時間労働の防止、法令遵守が求められます。企業は勤怠管理システムを導入し、システムへのアクセス時間の制限や残業申請の徹底など明確なルールの設定が必要です。従業員とコミュニケーションを強化し、業務状況を把握することで、長時間労働のリスクを軽減します。適切な労務管理は、労働環境の改善と企業の信頼性向上につながり、テレワークの持続可能な運用を支える重要な要素です。

    テレワークにおける残業の削減・管理にも|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、テレワークにおける残業においても、個々の従業員の働き方にあわせて柔軟に管理できる勤怠管理システムです。

    残業が多い従業員へのアラート通知機能や、残業の事前申請機能があらかじめ搭載されています。

    さらにOne人事[給与]と連携すると、労働時間の集計から割増率の適用・計算まで、スムーズに業務を進められるでしょう。

    「労働時間や残業時間を正確に把握できていない」「勤怠と給与の業務が分かれており、作業が煩雑になっている」という企業は、検討してみてはいかがでしょうか。もちろん貴社の課題に応じて、単一サービスだけの部分導入も可能です。

    One人事[勤怠]の初期費用や気になる操作性については、当サイトより、お気軽にご相談ください。当サイトでは、勤怠管理の効率化に役立つ資料を無料でダウンロードしていただけます。勤怠管理をシンプルにしたい企業の担当者は、お気軽にお申し込みください。

    One人事」とは?
    人事労務をワンストップで支えるクラウドサービス。分散する人材情報を集約し、転記ミスや最新データの紛失など労務リスクを軽減することで、経営者や担当者が「本来やりたい業務」に集中できるようにサポートいたします。