タイムカードと勤怠システムの違いは? どちらが便利? 電子化すべき? メリット・デメリットを比較
タイムカードは、長年多くの企業で使用されてきたシンプルで直感的な勤怠管理ツールです。 一方、最近ではデジタル技術を活用した勤怠システムが普及し、効率性や柔軟性を求める企業も増えています。
本記事では、タイムカードと勤怠システムの基本的な違いを比較し、メリット・デメリットを解説します。また、タイムカードを電子化することで得られる効果や、導入を検討する際のポイントについても紹介します。タイムカードによる勤怠に課題を感じている担当者は、ぜひお役立てください。
タイムカードとは
タイムカードは、従業員の勤務時間を記録するシンプルなツールです。専用の機械にカードを挿入するだけで、出勤時刻や退勤時刻が自動的に印字される仕組みになっています。
タイムカードの使い方は簡単で、出社と退社のタイミングで、タイムレコーダーにカードを通すだけです。記録された時刻から労働時間が集計され、給与計算などの基礎データとして利用します。
タイムカードは、シンプルさと直感的な使いやすさから、多くの企業で長年利用されてきた伝統的な勤怠管理の方法です。
タイムカード機による勤怠管理のメリット
タイムカード機による勤怠管理は、低コストとわかりやすい操作性という2つの大きなメリットがあります。勤怠システムとは違ったメリットを理解して、自社にあった勤怠管理の方法をあらためて考えてみましょう。
低コストでの運用
タイムカード機は、手軽に導入でき、低コストで運用できるのがメリットです。
必要なものは、タイムレコーダーと従業員分のカードだけで、初期費用はそれほど高額ではありません。
また、運用コストもカード代やインク代程度に抑えられます。従業員の勤務時間を正確に記録しながら、経済的に勤怠を管理できます。
わかりやすい操作性
タイムカードの操作は簡単で、出勤と退勤の際に、カードをタイムレコーダーに挿すだけで記録が完了します。誰でもすぐに使えるため、導入後すぐに運用を開始できます。従業員への説明も最小限で済むため、現場の負担を軽減できる点がメリットです。
タイムカード機の種類
単にタイムカード機といっても、細かく分けると4つの種類があります。
- 紙
- ICカード
- 生体認証(指紋・顔)
- USB・SD対応
紙のタイムカード形式
紙のタイムカード形式は、タイムカード機でもっとも一般的なタイプです。厚紙のカードを機械に挿入して時刻を記録する単純な仕組みで、長年多くの企業で利用されてきました。
紙のタイムカードは、操作が簡単で導入コストが低い点から、従業員一人ひとりがパソコンを持たない製造業や医療現場を中心に重宝されています。
一方で、給与計算時には、カードに記録されたデータをシステムや表計算ソフトに、手作業で転記する手間が発生するという課題があります。
ICカード形式
ICカード形式のタイムカード機は、従業員が専用のICカードを機械にかざして出退勤を記録します。
記録されたデータはすぐにシステムやパソコンに送信されるため、管理が容易な点がメリットです。また、個人専用のカードを使うため、他人による不正打刻を防げます。
一方で、カードを紛失したり磁気が弱まったりすると、買い替えが必要になるため、運用時には注意しましょう。
生体認証(指紋・顔)形式
生体認証(指紋・顔)形式のタイムカード機は、従業員の顔や指紋を認識して出退勤を記録します。
ICカードを持ち歩く必要がないため、紛失の心配がありません。
一方で、機械が従業員を正確に認識できない場合、記録に時間がかかったり、記録ができなかったりします。また、性能が求められる分、ほかの形式と比べて導入費用が高くなる点にも注意が必要です。
USB・SD対応タイムカード式
USB・SD対応タイムカード式は、従来のタイムカードの使いやすさを保ちながら、デジタル時代に対応した機能を備えています。
勤怠記録をUSBメモリやSDカードといったデジタル媒体に保存できる点が特徴です。
記録データは、簡単にパソコンへ移せるため、給与計算や勤務時間の集計が短縮され、管理業務が大効率化するメリットがあります。
タイムカード機のデメリット・よくある課題
タイムカード機のデメリットと、よくある課題を4つ取り上げて解説します。
- 管理工数の多さ
- 従業員の打刻もれ・不正
- 労務担当者の集計ミス・データ改ざん
- 法改正への迅速な対応が困難
管理工数の多さ
タイムカード機を使用するした勤怠は、管理業務の工数が増える点が課題です。タイムカードの回収やデータの転記、長期間の保管が必要となり、担当者の負担が大きくなります。
特に大規模な企業では、複数事業所からのタイムカード回収と管理が求められるため、作業量がさらに増えます。
紙のタイムカードは5年間の保管義務があり、大量の書類を保管するスペースの確保が必要です。
タイムカードによる管理工数の多さは、担当者の業務時間を圧迫し、ほかの業務に割ける時間を減らす要因となっている場合があります。
従業員の打刻もれ・不正
打刻もれや不正も、タイムカード機におる勤怠課題の一つです。忙しさから退勤時の打刻を忘れる従業員や、同僚に代理打刻を依頼する従業員もいます。実際に働いている労働時間と記録が一致していない状況は、法的に問題があります。
また、遅刻を隠すための早い時間の打刻や、残業時間を水増しするための遅い時間の打刻など、不正行為が見逃される可能性も否定できません。
労務担当者の集計ミス・データ改ざん
タイムカード機による勤怠管理では、意図せぬ集計ミスが課題となります。手作業での集計はミスを招きやすく、大量のデータを扱うほど正確性が低下するおそれがあります。
また、勤怠データの改ざんもやろうと思えばできてしまいます。労働時間の過少申告や残業時間の削減といった不適切な処理が行われるリスクが否定できません。
不適切な処理は従業員の労働条件を不当に悪化させ、法令違反につながります。
法改正への迅速な対応が困難
タイムカード機による勤怠管理は、労働法制の改正に柔軟に対応するには限界があります。
近年は働き方改革の推進により、近年では残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務化など、制度の見直しが進められてきました。
改正にともない、勤怠管理の担当者には対応が求められましたが、タイムカードシステムでは、労働時間の上限を管理したり、有給休暇の取得を促したりすることは困難です。
法改正への対応には、システムの見直しやアップデートが必要であり、相応の時間やコストが発生します。
タイムカード機と勤怠システムはどちらがいい? 電子化すべき?
勤怠システムは、従業員の労働時間を電子的に記録・管理するシステムです。
タイムカード機のデメリットや課題に対処するには、クラウド型やパッケージ型の勤怠システムへの移行をおすすめします。
勤怠システムの主な機能やメリット・デメリットについて解説します。
勤怠システムの主な機能
勤怠システムの主な機能は、下記の通りです。
機能 | 概要 |
---|---|
労働時間の把握・集計 | ・タイムレコーダーと連携して出退勤を記録 ・データを自動集計し、管理者の作業を軽減 ・正確な労働時間管理が可能 |
休暇管理 | ・年次有給休暇の管理が可能 ・休暇申請と承認のフローをシステム上で完結 ・法定の休暇管理要件に対応 |
有給、残業アラート | ・残業時間が一定ラインを超えた際にアラート表示 ・有給休暇取得状況を確認し、未取得者にアラート ・労務管理の適正化を支援 |
シフト管理 | ・シフト表の作成・管理が可能 ・従業員の希望シフト入力や管理者の調整をシステム上で実施 ・効率的なシフト管理を実現 |
申請・承認 | ・各種申請(休暇、残業など)をシステム上で処理 ・上司による承認フローをデジタル化 ・ペーパーレス化と処理時間の短縮を実現 |
勤怠システムのメリット
勤怠システムは、タイムカード機の課題を解決できるツールです。
- 不正打刻の防止
- 自動集計
- 管理工数の削減
- リアルタイム管理
- 給与システムとの連携
マルチデバイス対応により不正打刻を防ぎ、自動集計により人的ミスを削減します。また、管理工数が大幅に減少し、法改正にも迅速に対応できます。
リアルタイムで労働時間を把握することで、残業管理の徹底や有給休暇取得の促進が可能です。
給与計算システムと連携すると、労働時間の集計が簡略化され、人事・労務部門の業務効率化を実現できるでしょう。
勤怠システムのデメリット
勤怠システムの主なデメリットは、導入・運用コストの高さです。
- 高コスト
- カスタマイズ性の限界
- 導入初期の負担
タイムカード機に比べると、初期投資やランニングコストが増加します。
また、多くのシステムが汎用機能中心のため、自社独自の勤怠ルールや特殊な勤務形態に対応しにくい場合があります。
さらに、新システムへの移行には、従業員の教育や慣れる時間が必要で、導入初期は一時的に業務効率が低下する可能性があります。
タイムカード機と勤怠システムの違いを比較
タイムカード機と勤怠管理システムの違いを5つの比較ポイントから解説します。
項目 | タイムカード機 | 勤怠システム |
---|---|---|
主な機能 | 従業員の出退勤時刻を手動で記録 | 出退勤、休憩時間、残業時間などを自動で記録・集計 |
打刻方法 | 紙のカードを使った打刻 | ICカード、スマートフォンアプリ、パソコンなどでの自動打刻 |
集計方法 | 手動集計。集計に時間がかかる | 自動集計、リアルタイムで集計可能 |
法令対応・セキュリティ | 手動管理のため、法令対応に手間がかかる場合がある。紛失や漏えい、改ざんのおそれがある | 法令対応に関する自動機能がある。セキュリティ対策があり、安全 |
導入コスト | 初期費用・運用コストともに比較的安価 | 初期費用が高い場合があるが、運用コストは低め |
給与との連携 | 通常、手動でデータを入力する必要がある | システム間で自動連携。データの移行がスムーズ |
比較ポイント1.打刻方法
紙のタイムカード機が単純な打刻機能に限定されるのに対し、勤怠システムはマルチデバイスでの打刻や個人認証が可能で、不正打刻の防止につながります。
勤怠システムでは、リアルタイムでの打刻確認や打刻もれのアラート通知、即時の修正機能も備えているため、より正確で効率的な勤怠管理を実現できます。
比較ポイント2.集計方法
タイムカード機で記録した時間は手作業で集計するため、確認作業を含めて多くの時間と労力がかかります。
一方、勤怠システムでは労働時間を自動で集計し、割増賃金の時間帯も区分してリアルタイムで計算できます。
人為的ミスが減少につながり、確認作業も最小限に抑えられるため、管理者の負担が大幅に軽減されます。正確な入力が前提となるものの、効率的で信頼性の高い勤怠管理が可能です。
比較ポイント3.法令対応・セキュリティ
勤怠システムは、タイムカード機と比べて法令遵守やセキュリティ面で優れています。
労働時間が法定基準を超えそうな従業員に、アラートを送信する機能で、法定労働時間の管理をサポートします。また、高度なセキュリティ対策があるシステムもあり、データ漏えいや消失のリスクを軽減できます。
一方、紙のタイムカード機では、手動で対応する必要があります。記録の物理的な保管や紛失のリスクもあるため、データ管理の安全性で大きな差があります。
比較ポイント4.導入コスト
タイムカード機と勤怠システムでは、導入コストに大きな違いがあります。
タイムカード機は初期購入費用が中心で、比較的運用コストは低めです。
一方、勤怠システムは初期費用に加え、月額利用料やオプション費用がかかり、費用体系が複雑です。利用人数や企業規模に応じたプラン選択が必要ですが、トライアル期間があるシステムも多く、実際に使用感を確かめたうえで導入を検討できます。
勤怠システムは、長期的な費用対効果を考慮した選択が可能です。
比較ポイント5.給与との連携
紙のタイムカード機は、給与システムと直接連携できないため、勤怠データをエクセルなどに手動で転記する必要があります。ミスを防ぐための確認作業が欠かせず、手間がかかります。
一方、勤怠システムでは、簡単な操作で締め作業ができ、給与システムと自動連携が可能なサービスもあります。自動連携に対応していない場合でも、CSVファイルを出力して簡単に給与計算と連携できるシステムは多く、効率化がはかれます。
タイムカード機や勤怠管理システムの選び方とは
企業の勤怠管理方法は、業務規模やニーズによって異なります。タイムカード機または勤怠管理システムを選ぶ際の4つのポイントを紹介し、それぞれの特徴や適した企業タイプを紹介します。
比較ポイント |
---|
・利用は何人か ・希望する打刻方法に適用しているか ・独自の勤怠ルールを適用できるか ・給与計算システムと連携はできるか |
利用は何人か
タイムカード機や勤怠管理システムを選ぶ際は、まず利用人数を考慮しましょう。小規模な会社や単純な労働形態では、タイムカード機や基本的な機能を持つシステムで十分対応できます。一方、従業員数が多い場合や複雑な勤務形態の場合は、高度で柔軟な機能を備えたシステムが適しています。
希望する打刻方法に適用しているか
企業の業務形態や働き方に適した打刻方法を選ぶことも重要です。タイムカード機では直接打刻が基本ですが、勤怠システムではスマートフォンやパソコンを使った打刻にも対応が可能です。特にリモートワークや外出が多い場合、モバイル対応のシステムが便利です。
独自の勤怠ルールを適用できるか
企業独自の勤怠ルールや多様な勤務形態に対応できるシステムを選びましょう。勤怠システムが、変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制などに対応できるか確認します。また、残業管理や有給休暇管理、シフト管理について柔軟性の高いシステムが理想的です。予定されている法改正に対応できるかも考慮しましょう。
給与計算システムと連携はできるか
勤怠システムを選ぶ際は、給与計算システムとの連携も重要です。勤怠実績が自動的に給与計算に反映されると、手入力の手間やミスが減り、効率化がはかれます。既存の給与システムとの互換性や、将来のシステム更新を見越して選択しましょう。
【目的・利用状況別】タイムカード・勤怠システムに適した企業
タイムカードや勤怠システムの選択は、企業規模や業務形態に応じて異なります。
小規模企業や単純な勤務形態では、タイムカード機や基本的な勤怠管理システムが適しており、低コストで導入しやすく、操作も簡単です。一方、従業員数が多い企業や複雑な勤務形態を持つ企業には、高度な機能を備えた勤怠システムが必要です。
まずは利用環境や企業規模に適したシステムを選ぶことが重要です。一部のシステムでは利用人数に制限があるため事前に確認し、最適な打刻方法も検討する必要があります。
また、企業が重視する機能を明確にしましょう。企業によって目的はさまざまです。優先順位をつけて選択することで、自社に最適なシステムを見つけられます。
タイムカード機から勤怠管理システムに移行へ(まとめ)
タイムカードは低コストで導入が簡単ですが、管理の手間や不正リスク、法令対応の難しさといった課題があります。
一方、勤怠システムは、自動集計や多様な打刻方法、法令対応機能を備えており、タイムカードが抱える課題を解決できます。業務効率化だけでなく、コンプライアンス強化や働き方改革への対応にもつながります。
タイムカードと勤怠システム、それぞれの特性を踏まえ、自社の規模や業務形態に合った選択をすることが重要です。
正確な勤怠管理を実現し、法令遵守や従業員満足度の向上を目指すためにも、勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
タイムカードの電子化・システム化なら|One人事[勤怠]
One人事[勤怠]は、柔軟でわかりやすい操作性の勤怠システムです。初めての導入でも迷わず、自社の勤怠ルールにあわせて簡単に設定を進められます。
タイムカード機からシステムへの移行を考えている企業は、ご検討ください。
また、One人事[給与]と連携すれば、給与計算に自動で紐づけられるため、より速くより正確に業務を進められます。
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