無給休暇とは|給料は減る? 欠勤との違いや問題点を解説

無給休暇とは|給料は減る? 欠勤との違いや問題点を解説

無給休暇とは給料の支払いがない休暇のことです。コロナ禍では人件費の削減を目的に従業員を休業させる企業もありました。しかし、一方的に無給休暇を取得させることは違法行為であるため、企業は慎重に判断しなければなりません。

本記事では、無給休暇の概要を紹介しながら、欠勤や特別休暇、有給休暇との違いについて詳しく解説します。記事の後半では、無給休暇を取得した際の給料の扱い方や問題点も紹介します。人事関連の業務に携わる方はぜひ参考にしてください。

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    労働基準法における休暇とは

    労働基準法における休暇とは、企業が労働者からの申請を受けて、本来働くべき日に労働の義務を免除することです。

    休暇には大きく分けて以下の2種類があります。

    • 法定休暇
    • 特別休暇(法定外休暇)

    それぞれの概要や違いについて解説します。

    法定休暇は法律で定められた休み

    法定休暇とは、労働基準法や育児・介護休業法などの法律で一定の要件を満たす場合に、労働者からの請求があれば付与しなければならない休暇です。過度な連続勤務を防止し、労働者の健康を維持するために設けられています。

    代表的な法定休暇は、以下の通りです。

    • 年次有給休暇
    • 産前産後休業
    • 育児休業
    • 子の看護休暇
    • 生理休暇
    • 介護休業
    • 介護休暇

    年次有給休暇以外の法定休暇は、有給とするか無給とするかを、企業が自由に定められます。

    特別休暇(法定外休暇)は企業が独自で定めた休み

    特別休暇とは企業が独自で定める休暇であり、法定外休暇とも呼ばれます。あくまでも企業が自由に設定できる休暇であるため、法的な保証や拘束力はありません。有給・無給も任意で決められます。

    特別休暇には以下の休暇が該当します。

    • 年末年始休暇
    • 夏季休暇
    • 慶弔休暇
    • リフレッシュ休暇

    企業が就業規則や雇用契約書で、特別休暇を有給と定めている場合に、従業員に対して賃金を支払う義務が発生します。

    無給休暇とは

    無給休暇とは、従業員が給与の支払いを受けずに休暇を取ることです。本人の意志で休む場合と、企業が経済的な理由などにより従業員に無給で休むよう求める場合が考えられます。

    年次有給休暇を除いて、基本的に法定休暇も特別休暇(法定外休暇)も、給与支払いは企業の裁量に委ねられています。

    たとえば、特別休暇の一つである慶弔休暇を有給とする企業は多く見られます。一方で、無給としている企業も存在し、慶弔の内容により有給・無給を区別している企業もあります。

    違法性は?

    企業として、無給休暇という制度を採用すること自体は違法ではありません。慶弔休暇の例のように、実情に応じて給料の有無を柔軟に設定できます。

    労働の提供がない部分について、給与を支払う必要がないことを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。この原則により、企業が独自で設定する休暇においては、給与を支払わなかったとしても違法性は問われません。

    無給休暇と欠勤、特別休暇、有給休暇の違い

    無給休暇とほかの「休み」では、どのような違いがあるのでしょうか。欠勤や特別休暇、有給休暇との違いを解説します。

    無給休暇と欠勤の違い

    欠勤とは、勤務しなければならない日に、休暇制度を利用せずに休むことを意味します。法定休暇や特別休暇に設定されている日以外で休んだ従業員は、欠勤として扱われると考えてよいでしょう。

    無給休暇も欠勤も、労働日に休みを取得して給料が支払われない点は共通しています。しかし、もともと「労働義務があったのか/なかったのか」という点に違いがあります。

    欠勤は、無断での欠勤や欠勤日数の多さを理由に、懲戒処分やマイナス査定の対象となることもあります。一方、無給休暇は正当な権利を行使して取得する休暇であるため、原則として処罰の対象とはならず、査定にも影響しません。

    無給休暇と特別休暇の違い

    特別休暇は企業が独自に設定している休暇です。法的に定めがなく、必ずしも付与しなければならない休暇ではないため、法定休暇と区別されています。特別休暇における制度の内容や取得条件、給料の有無といった運用ルールは、企業の実情に応じて決めても問題ありません。

    特別休暇の中で給与を支給しない休暇は、無給休暇として扱います。

    ただし、特別休暇は福利厚生の一つとして採用している企業がほとんどです。特別休暇を無給休暇ばかりに設定すると、福利厚生が充実していない企業と見なされてしまうでしょう。

    無給休暇と有給休暇の違い

    有給休暇とは、労働基準法によって取得が義務づけられている休暇です。

    労働基準法第39条に定められており、入社から6か月以上勤務し、全労働日の8割以上出社している全従業員が取得できます。有給休暇は従業員が希望する日に与えなければなりません。また、年に10日以上の有給休暇が付与されている従業員には、年5日以上取得させる義務があります。

    有給休暇と無給休暇の違いは、給料支払いの有無です。有給休暇は、通常勤務と同じ金額の給料を取得日に対して支払わなければなりません。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索
    参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省

    無給休暇の取得における給与計算|給料は減る?

    従業員が無給休暇を取得した場合の給与計算について解説します。無給休暇では欠勤控除を適用して、働いていない分の給与を差し引く必要があります。

    欠勤控除の計算方法は以下の通りです。

    無給休暇を取得した月の給料本来の月給-無給休暇の日数分の給料
    無給休暇の日数分の給料月給÷月の所定労働日数×無給休暇の日数

    通常、月給に各種手当が加算されている場合は、手当を欠勤控除の対象とするか、事前に社内で取り決めておきましょう。労働日数に応じて支払われる手当は、欠勤控除を適用することをおすすめします。

    無給休暇の運用に関する注意点

    無給休暇は企業が独自で設定する特別休暇の一種という位置づけであり、制度自体を導入すること自体に問題はありません。しかし、運用方法を誤ってしまうと、違法と見なされるケースもあります。

    無給休暇の運用に関連して注意点を紹介します。

    • 無給休暇であっても従業員の希望で自由に休めない
    • 無給休暇の取得は企業から強制できない
    • 有給休暇を無給休暇に変更するのは違法である

    無給休暇であっても従業員の希望で自由に休めない

    従業員の立場からすると、無給休暇は給与が発生しないため「希望通りに自由に取得できる」と勘違いしてしまうかもしれません。しかし実際には、業務に支障をきたさない範囲で取得するケースがほとんどです。

    雇用契約を結んでいる以上、企業には業務命令を下す権利があり、従業員はその命令にしたがう義務があります。賃金が発生しないからといって、労働の義務はなくなりません。

    無給休暇の申請は、有給休暇と同様に企業からの要請で時季を調整されることもあると理解しておきましょう。従業員は、業務に支障が出ないように配慮しながら申請する必要があります。

    無給休暇の取得は企業から強制できない

    無給休暇の取得は、企業からの調整は許されても「強制」は認められません。

    基本的に休暇は、従業員からの請求に応じて取得させる制度です。年次有給休暇を計画的に付与する場合を除いて、企業から休暇の取得を強制することはできません。万が一、企業が従業員に無給休暇の取得を強制した場合は、労働基準法違反となり、罰則が適用されるため注意が必要です。

    労働基準法第26条では、会社都合によって休暇を取らせるときは、従業員に対して手当を支払わなければならないと定められています。

    たとえば「客足が減ったため休業する」という例では、休業手当を支払うのが原則です。判断に迷ったら労働基準監督署に相談しましょう。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    有給休暇を無給休暇に変更するのは違法である

    従業員から申請された有給休暇を、無給休暇に変更してしまう行為は違法と見なされます。

    有給休暇の取得は、労働者に与えられた権利です。有給休暇を取得した日は、従業員の労働義務が免除されるとともに、休暇分の給与を支払う必要があります。

    企業が適切に有給休暇を与えなかった場合は、労働基準法第119条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    緊急事態宣言などによる休業は無給休暇にできる?

    近年話題となった緊急事態宣言による休業は、無給休暇として扱えたのでしょうか。

    労働基準法第26条によると、労働者が働く用意があるのにもかかわらず、企業の都合で休業とすると、原則として休業手当の支払いが必要です。ただし、社会情勢の変化のような不可抗力による休業であれば、無給休暇にできる場合もあります。

    不可抗力による休業と判断されるためには、以下の条件を満たさなければなりません。

    • 休業の原因が、外部から発生したものである
    • 経営者として休業を回避するための具体的な手段を尽くしている

    単に「仕事が減少した」という理由だけでは、会社都合による休業と考えてよいでしょう。賃金や休業手当の支払いが不要な休業には、災害により事業の継続が難しくなった例などが該当します。なお、新型コロナウイルスの影響による休業は、状況によって判断が大きく分かれています。

    無給休暇の判断に困る場合は、労働基準監督署や弁護士などに相談するとよいでしょう。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    無給休暇を含めた勤怠管理を効率化するには?

    無給休暇とは、通常勤務が予定されている日に、給与の支払いなしで与えられる休暇を指します。

    無給にできる休暇の種類には、年次有給休暇を除く法定休暇や特別休暇があります。それぞれの給与の支払いの有無は、企業が自由に決められます。

    無給休暇を設定する際は、あとのトラブルを回避するため、就業規則や雇用契約書に条件を記載しておくことが重要です。無給休暇は、欠勤や有給休暇とは異なるため、給与計算のルールを明確にし、勤怠管理では誤って記録しないよう注意しなければなりません。

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