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割増賃金の計算方法【計算例あり】割増率と端数処理などの注意点も紹介

割増賃金の計算方法【計算例あり】割増率と端数処理などの注意点も紹介

従業員の時間外労働や休日出勤に対しては、割増賃金を支払う必要があります。しかし、割増賃金の基本的な考え方や計算方法が理解しきれず、混乱している担当者もいるかもしれません。

本記事では、時間外労働や休日出勤の割増率、端数処理のやり方など、割増賃金の計算方法について詳しく解説します。

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    労働基準法による割増賃金と割増率

    割増賃金とは、従業員の残業や休日出勤などに対して、通常の給与に加算して支給する賃金のことです。具体的には、以下の3つに対して割増賃金が適用されます。

    • 法定労働時間を超えた労働(時間外手当)
    • 深夜労働(深夜手当)
    • 法定休日の労働(休日手当)

    それぞれの割増率をまとめると、以下の通りです。

    種類条件割増率
    時間外手当1日8時間・週40時間を超える労働25%以上
    月45時間・年360時間を超える時間外労働
    月60時間を超える時間外労働50%以上
    深夜手当22〜翌5時の労働25%以上
    休日手当法定休日の労働35%以上

    参照:『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』東京労働局

    それぞれの手当について、以下で詳しく解説します。

    時間外手当

    時間外手当とは、法定労働時間を超える労働に対して支払われる割増賃金です。

    労働基準法では、労働時間を「1日8時間・週40時間」を上限として定めています。上限を超える労働については25%以上の割増率を適用します。また、月60時間を超える労働については、50%以上の割増率を適用します。

    割増賃金が適用されるのは、あくまでも「1日8時間・週40時間」を超えた分のみです。これを法定外残業といい、法定労働時間内におさまる法定内残業とは区別して考えます。

    例として、所定労働時間が7時間で、1日9時間働いた場合を考えてみましょう。法定労働時間は1日8時間なので、2時間の残業のうち1時間は法定内残業、もう1時間は法定外残業として扱います。

    深夜手当

    深夜手当とは、22時から翌5時までの労働に対して支払われる割増賃金です。深夜労働に対する割増率は、25%以上と定められています。

    時間外手当や休日手当とは異なり、深夜手当は管理監督者にも支払う必要があります。

    管理監督者とは、経営者と一体的な立場にあり、企業の中で相応の地位や権限を与えられている人のことです。主に「部長」や「課長」などの役職者が該当しますが、肩書ではなく実態で判断します。

    参照:『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』東京労働局

    休日手当

    休日手当とは、法定休日の労働に対して支払う割増賃金です。休日出勤に対する割増率は、35%以上と定められています。

    企業は、従業員に「週1日または4週を通じて4日以上」の休日を与えなければなりません。これを法定休日といい、週休2日の企業では2日間のうちどちらか一方が法定休日にあたります。

    休日手当を正確に計算するためには、どの休日を法定休日とするのかあらかじめ定めておくとよいでしょう。法定休日に曜日に関する決まりはなく、企業が自由に決定できます。

    休日出勤の代わりに別の日を休みとする場合は、振替休日と代休の違いを理解しておく必要があります。

    振替休日法定休日と別の勤務日をあらかじめ振り替えておくこと
    代休法定休日の労働後、代わりに別の勤務日を休みとすること

    振替休日は、法定休日を別の日と交換したことになるため、休日手当の支給は不要です。

    一方、代休の場合は、法定休日に労働させたあとに代わりの休日を与えているので、休日手当を支給する必要があります。

    参照:『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』東京労働局

    割増賃金の計算方法【計算例あり】

    割増賃金は、次の2つのステップで計算が可能です。

    1. 1時間あたりの基礎賃金を計算する
    2. 割増賃金を計算する

    それぞれの例を交えて、以下で詳しい計算方法を解説します。

    1.1時間あたりの基礎賃金を計算する

    基礎賃金とは、割増賃金の計算のもととなる1時間あたりの賃金のことです。基礎賃金の計算方法は、給与形態により以下のように異なります。

    基礎賃金の計算方法
    1.時間給時間給の額
    2.日給日給÷所定労働時間
    3.週給週給÷1週間の所定労働時間
    4.月給月給÷1か月の平均所定労働時間
    5.出来高給出来高給÷出来高給の算定期間中の総労働時間数

    たとえば、月給32万円で、1か月の平均所定労働時間が160時間の場合、基礎賃金は「32万円÷160時間=2,000円」です。

    基礎賃金に含まない賃金

    割増賃金の計算に必要な基礎賃金の計算には、各種手当も含まれます。ただし、以下の7つは労働との直接的な関係が薄いとみなされるため、基礎賃金からは除外します。

    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    参照:『割増賃金の基礎となる賃金とは?』厚生労働省

    除外できる賃金は法律で定められているため、ほかの賃金を基礎賃金から除くことはできません。

    また、上記の名称で支給されていても、家族の人数や通勤距離などに関係なく全社員に一律固定で支給されるものは、基礎賃金に含めて計算します。

    2.割増賃金を計算する

    基礎賃金を算出したら、以下の計算式に当てはめて割増賃金を計算します。

    1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間=割増賃金

    例として、以下のケースを考えてみましょう。

    基本給38万円
    役職手当2万円
    通勤手当1万円
    1か月の平均所定労働時間160時間
    時間外労働15時間(そのうち深夜労働3時間)
    休日労働4時間

    通勤手当は除外対象なので、基礎賃金は(38万円+2万円)÷160時間=2,500円となります。それぞれの割増率を法律で定められた下限とすると、割増賃金は以下の通りです。

    時間外労働2,500円×1.25×15時間=46,875円
    深夜労働2,500円×0.25×3時間=1,875円
    休日労働2,500円×1.35×4時間=13,500円

    割増賃金を計算する際の注意点

    割増賃金を計算する際は、次のポイントに注意しましょう。

    • 給与形態によって基礎賃金の計算方法が異なる
    • 端数処理は法律で定められている
    • 割増賃金は重複することがある

    それぞれの注意点について、以下で詳しく解説します。

    給与形態によって基礎賃金の計算方法が異なる

    割増賃金の計算に用いる基礎賃金は、月給制や時給制などの給与形態によって計算方法が異なります。また、みなし残業制や裁量労働制などを採用している場合は、計算方法が変わることもあるため注意が必要です。

    従業員それぞれの働き方と給与形態にあわせて、割増賃金を正しく計算しましょう。

    端数処理は法律で定められている

    割増賃金の計算における端数処理の仕方は、法律で以下のように定められています。

    1か月における時間外労働や休日労働などの労働時間に1時間未満の端数が生じた場合
    →30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げ
    1時間あたりの基礎賃金や割増賃金の計算において1円未満の端数が生じた場合
    →50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ
    1か月における時間外労働や休日労働などの割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合
    →50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ

    たとえば、計算の結果、割増賃金が36,580.5円となった場合は、0.5円を切り上げて36,581円とします。

    割増賃金は重複することがある

    時間外労働に深夜労働が含まれる場合のように、複数の条件がそろうときは、割増率を重複させなければなりません。たとえば、従業員が19時から23時まで残業した場合、22~23時の1時間分については50%以上の割増率を適用します。

    割増賃金の組み合わせごとの割増率は以下の通りです。

    割増率
    時間外労働+深夜労働50%(25%+25%)
    時間外労働(月60時間超)+深夜労働75%(50%+25%)
    休日労働+深夜労働60%(35%+25%)

    時間外労働と休日労働は重複しません。

    時間外労働の考え方【臨時対応】

    続いて、従業員が早出・遅刻をした場合や、有給休暇を取得した場合の時間外労働や割増賃金の考え方について解説します。

    時間外労働は法定労働時間を超える労働を指すため、法定労働時間の基準点を正確に把握することが重要です。

    早出・遅刻をした場合

    早出・遅刻をした場合は、従業員が実際に労働を開始した時刻から数えて、8時間までは法定内労働時間として扱います。

    たとえば、通常は9時始業のところ従業員が早出をして8時から出社した場合、8~17時(うち1時間休憩)は法定内労働時間、17時以降は法定外労働時間です。

    同様に、従業員が遅刻をして10時に出社した場合は、10~19時(うち1時間休憩)は法定内労働時間、19時以降は法定外労働時間として扱います。

    有給休暇を取得した場合

    有給休暇を取得した場合は、その週の実労働時間が、40時間を超えた時点から法定外労働時間として扱います。

    たとえば、月曜日に有給休暇を取得し、火曜日から土曜日まで1日8時間ずつ働いた場合、1週間の労働時間は40時間以内におさまるため、割増賃金を支払う必要はありません。

    半日有給休暇を取得した場合

    半日有給休暇を取得した場合は、1日の実労働時間が8時間を超えた時点から法定外労働時間として扱います。

    たとえば、半日有給休暇を取得して14時から出勤した場合、14~23時(うち1時間休憩)は法定内労働時間、それ以降は法定外労働時間となります。22時以降は深夜労働なので、深夜手当の支給も必要です。

    割増賃金の計算はツール活用でミスなく効率化

    割増賃金を計算・管理する方法としては、エクセルやブラウザツールなどがあります。

    しかし、給与計算を手作業で行う際、特に基本給の計算や残業時間、休日勤務の時間入力において、人為的なミスが発生しやすいという難点があります。

    割増賃金の計算を誤ると、従業員との信頼関係を損ねることにつながり、状況によってトラブルに発展するリスクもあります。

    人的ミスや管理の手間を最小限に抑えたいなら、給与計算システムの活用をおすすめします。ミスが許されない給与計算を自動化することで、正確性を担保できるでしょう。

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    勤怠情報にあわせて、正しい割増率を適用へ

    割増賃金とは、時間外労働や休日出勤などに対して、通常支給する給与とは別に支払う賃金のことです。割増賃金にはいくつかの種類があり、それぞれ割増率が異なります。

    割増賃金を計算するためには、勤怠情報を正確に把握し、正しい割増率を適用しなければなりません。人的ミスを防ぎ、担当者の負担を軽減するためにも、自社の勤務形態に対応した給与計算システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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