勤怠表とは? 作成する目的や作成方法などを解説
勤怠表は、従業員の勤務状況を記録する書類として非常に重要なものです。
本記事では、勤怠表の概要をはじめ作成する目的、さらには管理表の記載項目についてわかりやすく解説します。人事領域にかかわる方や経営者の方はぜひ参考にしてください。
勤怠表とは
勤怠表とは、従業員の出退勤時刻や休日出勤、休暇、欠勤などの従業員の出勤状況を記録する書類です。別名「勤怠管理表」ともいいます。
似たような言葉である「勤務表」は、今後の勤務スケジュールやシフトをまとめたものなので、目的が異なります。勤怠表を適切に運用できていないと、指導や罰則を受ける恐れがあるため注意が必要です。
勤怠表の作成は法律で義務付けられている
従業員の出勤状況を管理するうえで勤怠表はなくてはならない存在ですが、その作成や保管は労働基準法の第108条で義務付けられています。
(賃金台帳)
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
従業員の勤怠情報の管理を怠ると、賃金台帳調整義務に違反とみなされ、30万円以下の罰金が科されます。
さらに、労働基準法の第109条では、勤怠表をはじめとする勤怠に関する重要な書類は5年間保管しなければならないと定められており、違反すると30万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。
勤怠表に記載する項目
勤怠表を作成する際に記載すべき項目について詳しく解説します。
- 出勤・退勤時刻
- 労働時間
- 残業時間
- 休日労働時間
- 早退・遅刻
- 欠勤
- 有給休暇の取得日数
- 出勤状態の区分
出勤・退勤時刻
勤怠表には、従業員の出勤・退勤時刻を記載します。出勤時刻や退勤時刻は、従業員の正確な労働時間を算出するために必要不可欠な情報です。
データを集計する際に誤った情報が使われたり、情報が改ざんされたりすることがないように工夫しなければなりません。特に、出勤してから勤務を始めるまでにタイムラグがある就業場所は注意が必要です。
労働時間
勤怠表には、従業員の労働時間を正確に記載しなければなりません。労働時間とは、出勤時刻と退勤時刻より算出した拘束時間から、休憩時間などを差し引いた時間です。
所定労働時間を超えて勤務すると「残業時間」と見なされ、所定労働時間に満たないと賃金控除の対象に含まれるケースがあります。
残業時間
勤怠表には、従業員の残業時間についても記載が必要です。残業時間とは、所定労働時間を超過して勤務した時間を指します。
法定労働時間である8時間を超えて勤務した場合は、25%の割増賃金を支払わなければなりません。さらに、22時から翌5時までの間に残業した場合は、深夜割増分を含め、50%の割増賃金を支払う必要があります。
休日労働時間
勤怠表には、従業員の休日労働時間も記載します。
法定休日に出勤をした場合、企業は35%の割増賃金を従業員に支払わなければなりません。法定休日とは「週1回、または4週に4回以上の休日」を指します。所定休日に出勤した場合には、割増賃金は発生しません。
早退・遅刻
勤怠表には、従業員の早退・遅刻の状況も記載してください。
企業によっては、労働開始時間を過ぎて出勤した場合や労働時間を満たしていない場合に、早退や遅刻扱いに該当します。労働時間が所定労働時間に満たないと、賃金控除となるケースもあります。
欠勤
勤怠表には、従業員の欠勤状況も記載しましょう。
欠勤とは、労働しなければならない日に出勤をしない状況を指します。欠勤によって所定労働時間に満たない場合には、賃金控除と認められることもあるため注意が必要です。
有給休暇の取得日数
勤怠表には、従業員の有給休暇の取得日数を記載します。2019年4月の労働基準法改正によって、有給休暇の取得が義務化されました。企業は、有給休暇が年に10日以上付与されている従業員に対して、5日の有給休暇を取得させなければならないと定められています。
この有給休暇の取得義務は罰則付きの規定であり、会社が必要な措置を講じなかった場合は、違反者1人につき最大30万円の罰金が発生するため注意が必要です。
出勤状態の区分
勤怠表には、従業員の出勤状態の区分についても記載が必要です。休日出勤や有給休暇、欠勤など出勤状態の区分を作成し、ひと目でわかるようにしておくと、給与計算などの処理を効率的に行えます。
給与計算の単位ごとに、開始日から締め日までの日付と休日を記載してください。出勤状態の区分によって給料の算出方法が異なるため、正確に記載することが重要です。
勤怠表を作成する目的
勤怠表を作成する目的について詳しく解説します。
- 給与計算・残業時間を把握するため
- 給料の未払いを防止するため
給与計算・残業時間を把握するため
勤怠管理者にとって、勤怠表の作成・管理は、労働時間の正確な把握に役立ちます。適切な給与を割り出すためにも、勤怠表の作成は必要不可欠といえるでしょう。
さらに、勤怠表は労働基準監督署のチェック対象書類でもあります。すでに退職した従業員の分も、5年間は保存するように徹底してください。
給料の未払いを防止するため
給料の未払いを防止するためにも、勤怠表は必要といえます。従業員の給料計算をするうえで基本である帳票が勤怠表であり、雇用主が正しく給与を支払ったという証拠になるためです。
このように勤怠表は、法令遵守の観点においても重要な役割を果たすのです。
勤怠表の作成を怠った場合のデメリット
勤怠表の作成を怠った場合、どのようなデメリットがあるかについて解説します。
- 法令違反となる
- 従業員とトラブルになる可能性がある
法令違反となる
勤怠表は、労働基準監督署のチェック対象である重要な書類です。
万が一、雇用主が勤怠表の作成を怠ったり、正しい情報を記載しなかったりした場合は「賃金台帳調整義務違反」と見なされて30万円以下の罰則が科されます。
さらに、勤怠記録を怠って、法律で定められた有給休暇を付与しなかった場合は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意が必要です。
従業員とトラブルになる可能性がある
勤怠表の作成を怠ると、従業員とのトラブルに発展するリスクがあります。たとえば、時間外労働や休日出勤に関する情報を正確に記録できていなければ、支払うべき賃金が未払いとなってしまう恐れもあるでしょう。
万が一、給料の過不足や未払いの問題に適切に対応できなかった場合、訴訟に発展するケースも考えられます。不要なトラブルを避けるためにも、勤怠表は正しく作成・管理しなければなりません。
勤怠表の作成方法
勤怠表を作成するには、主に3つの方法があります。コストや従業員の人数を考慮しながら、適切な方法を選択しましょう。
- エクセルで作成する
- 公開されているテンプレートを使用する
- 勤怠管理システムを使用する
エクセルで作成する
勤怠表はエクセルで簡単に作成できます。事前にテンプレートを作成して計算式を入力しておくと、手作業で管理するよりもミスは少なくなるとともに、何よりコストがかかりません。
ただし、管理する方のスキルによっては、フォーマットの作成や数値の入力に時間がかかる恐れがあります。
公開されているテンプレートを使用する
インターネット上で公開されているテンプレートを勤怠表として活用することも可能です。無料でダウンロードできるものも多いため、コストをかけずに管理できるでしょう。
さまざまなテンプレートが用意されているので、用途に合わせて選べるのもうれしいポイントです。ただし、入力項目や内容が現行の法律やルールに則しているかどうかは、その都度確認する必要があります。
勤怠管理システムを使用する
勤怠管理システムを使用すれば、簡単に勤怠表を作成できます。勤怠管理システムとは、勤怠管理を自動化するためのシステムであり、業務効率化をはかれるのが大きなポイントです。
システムの導入や維持管理に一定のコストがかかることは注意点ですが、近年は低コストで手軽に導入できるクラウド型の勤怠管理システムが人気を集めています。
勤怠管理システムの選び方
勤怠管理システムを選ぶ際にチェックすべきポイントは、次の通りです。
- 自動化したい業務に対応しているか
- ほかのシステムやツールと連動可能か
- 使い勝手
- サポート体制
- コスト
- セキュリティ対策
まずは、自動化したい業務に対応しているかが重要です。ほかのシステム・ツールと連携できるかや、サポート体制の有無、トラブル時の対応についても確認しましょう。
導入時には無料トライアルを有効活用しましょう
勤怠管理システムのなかには、一定期間無料で使えるトライアル期間を設けているものもあります。
無料トライアル期間に実際に運用してみると、自社の規模や実態にシステムが合っているのかをチェックできるはずです。システムの導入を検討する際は、複数社のシステムを比較検討して、自社のニーズにマッチしたものを見つけましょう。
勤怠表の管理自動化に勤怠管理システム
従業員の勤怠を記録・管理する「勤怠表」の概要をはじめ、作成する目的や具体的な作成方法について詳しくご紹介しました。
手書きやエクセルなどで管理すると計算ミスや記入ミスが発生するリスクが高いため、勤怠管理システムの活用も一案です。勤怠表の管理にお悩みの企業や人事労務業全般の効率化を目指している企業は、ぜひ導入を検討してみてください。
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