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出勤簿の書き方や記載項目|出勤簿の作成や保管に関する注意点も解説

出勤簿は、企業が労務管理を適切に行うために必要不可欠な書類です。しかし、出勤簿には決まった様式があるわけではないため、記載項目や書き方に悩んでしまう人もいるでしょう。そこで本記事では、出勤簿の書き方について詳しく解説します。主な記載項目や記入例を交えながら解説するので、ぜひお役立てください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

出勤簿の書き方や記載項目|出勤簿の作成や保管に関する注意点も解説
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    出勤簿は労務管理に欠かせない書類

    出勤簿とは、従業員の出勤日や労働日数、出勤・退勤時刻などを記録した書類です。法定三帳簿に含まれるため、いずれの企業も正しく作成し保存する必要があります。

    出勤簿の主な役割

    出勤簿は、従業員の出退勤時間や出勤日数などを記録する役割があります。たとえば、出退勤時間や休憩時間を正確に記録しておくと、過去にさかのぼって従業員の労働時間を客観的に把握できるでしょう。残業が多い従業員や部署を把握して対策を打つなど、出勤簿は適切な労務管理のために重要です。

    出勤簿とタイムカードの相違点

    出退勤時間や出勤日はタイムカードでも記録できますが、従業員本人が打刻するため、打刻漏れや偽装がないとは言い切れないでしょう。そのためタイムカードを出勤簿の代替書類にすることはできません。

    また労働基準法の改正により、従業員の自己申告に基づいた労働時間をの管理は原則として禁止とされました。労働時間の管理にはタイムカードだけでなく、出勤簿を適切に活用する必要があるでしょう。

    出勤簿の作成が義務づけられる企業

    出勤簿は、法律によって作成が義務づけられた「法定三帳簿」の一つです。すべての企業に義務づけられているものであり、企業規模や事業内容に関係なく作成する必要があります。

    出勤簿に記載する従業員

    出勤簿には、正規雇用やパートなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員の情報を記載します。また、2019年3月までは、「管理監督者」に該当する管理職は記載しなくてもよいとされていました。

    しかし、2019年4月以降は、高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者を除いたすべての労働者の労働時間の把握が義務付けられています。そのため、管理監督者であっても、出勤簿などにより労働時間を把握することが必要です。

    なお、管理監督者とは、労働条件や労務管理について、経営者と一体的な立場にある者です。「部長」や「マネージャー」のような肩書きや職位ではなく、勤務実態で判断されるため注意しましょう。

    出勤簿の記載項目と作成方法

    出勤簿は法律で作成が義務づけられているものの、書き方は特に決まっておらず、企業側でフォーマットを用意する必要があります。ただし、以下の項目については記載するケースが一般的です。

    • 従業員の出勤日と労働日数
    • 出勤、退勤の時刻
    • 日別の労働時間数
    • 時間外労働の日付・時刻・時間数
    • 休日労働の日付・時刻・時間数
    • 深夜労働の日付・時刻・時間数

    1.出勤日と労働日数

    それぞれの従業員の出勤日と労働日数を記載します。なお、オフィスに来ているか否かにかかわらず、労働している場合は出勤日としてカウントするため注意しましょう。たとえば、リモートワークは会社への「出勤」は不要ですが、労働の日であることには変わりないため出勤日としてカウントします。

    2.1日ごとの労働時間数

    始業時刻、終業時刻、休憩時間を記載します。これにより、従業員一人ひとりの1日あたりの労働時間を割り出せます。従業員の自己申告だけではなく「客観的な記録として残すこと」を忘れないようにしましょう。

    3.時間外労働の日付・時刻・時間数

    時間外労働を行った日付・時刻・時間数を記載します。時間外労働とは、1日8時間超、もしくは1週間40時間を超えて働いた際の時間です。たとえば、1日の労働時間が10時間だった場合は、2時間分を時間外労働として数えます。

    4.休日労働の日付・時刻・時間数

    労働基準法では、1週間に1日もしくは、4週を通じて4日の法定休日を設定することを定めています。法定休日に出勤した場合には、「休日労働」として、日付や時刻、時間数を記録しましょう。

    5.深夜労働の日付・時刻・時間数

    深夜労働とは、夜22時~翌朝5時までの時間に働くことです。この時間帯に労働した日があれば、日付と時刻、時間数を記録しておきましょう。

    6.そのほかの記載項目

    上記の項目のほかに、所定労働時間や法定労働時間、法定内労働時間を記載する場合もあります。労務管理や給与計算をスムーズにできるよう、出勤簿にこれらの項目を設定してもよいでしょう。また、備考欄を設けておくと、所定の欄がない内容について記載する際に活用できて便利です。

    出勤簿における休暇・休業の取り扱い

    出勤簿における休暇や休業の取り扱いについて解説します。

    有給休暇の記載方法

    従業員が有給休暇を取得した場合は、備考欄に「有給」と記載するのが一般的です。有給休暇は出勤日として扱われるため、企業によっては備考欄に記載のうえ、始業・就業時刻に定時を記入する場合もあります。

    産休の記載方法

    従業員が産休を取得した場合は、備考欄に「産前産後休業(休暇)」と記載します。従業員が出産手当金を受給する際に必要な情報なので、正確な内容を記載しましょう。

    休業の記載方法

    なんらかの理由から休業する場合は「休業」と記載します。会社そのものが休業し、雇用調整助成金を申請する場合は出勤簿が必要です。

    欠勤の記載方法

    出勤簿に欠勤欄を設けている場合はその欄に、ない場合は備考欄に「欠勤」と記載します。企業によっては、欠勤の合計日数を記載する欄が設けられていることもあります。

    出勤簿の記載例

    次に、出勤簿の具体的な記載例を紹介しましょう。従業員の1日の労働時間を把握する必要があるため、出勤簿は1日ごとに記録するのが基本です。なお、出勤簿のフォーマットは会社ごとに異なるため、記載項目や書き方などは自社のルールに準拠してください。

    曜日始業時間終業時間休憩時間労働時間時間外労働深夜残業時間遅早欠勤備考
    4月19:0018:001時間8時間
    29:0018:001時間8時間
    39:0019:001時間9時間1時間
    49:0018:001時間8時間
    59:0018:001時間8時間
    6
    7
    ●   ●   ●   ●   ●
    28
    299:0018:001時間8時間
    309:0018:301時間8時間30分30分

    出勤簿を作成するうえでの注意点

    出勤簿を作成する際は、以下の3点に注意しましょう。

    • 勤務時間と労働時間の違いに気をつける
    • 日雇労働者の分も作成する
    • 端数の時間は切り捨てない

    それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

    勤務時間と労働時間の違いに気をつける

    勤務時間と労働時間は混同されがちですが、実は明確な違いがあります。勤務時間(拘束時間)とは、始業から終業までの時間です。一方、労働時間とは、勤務時間のうち実際に労働した時間を指します。

    たとえば、就業規則で「9時始業、18時終業(うち休憩時間1時間)」と定められており、所定労働時間通り働いた場合、勤務時間は9時間、労働時間は8時間と計算できます。出勤簿では労働時間を管理するため、勤務時間から休憩時間を差し引いて、実働時間を把握できるようにする必要があります。

    日雇労働者の分も作成する

    出勤簿と同じく法定三帳簿の一つである「労働者名簿」には、日雇い労働者を記載する義務はありません。一方、出勤簿は日雇労働者の分も作成する必要があります。なお、賃金台帳も同様なので、同じ法定三帳簿でもそれぞれの取り扱いの違いには十分注意しましょう。

    端数の時間は切り捨てない

    タイムカードや勤怠管理システムの中には、労働時間を10分、15分単位で管理し、端数を自動で切り捨てるものもあります。しかし、労働時間の端数を切り捨てることは、たとえ1分であっても違法と判断されます。労働基準法第24条の『全額払いの原則』で以下のように定められているためです。

    賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

    引用:『労働基準法』e-Gov法令検索

    たとえば、労働時間を15分単位で管理し「14分以下は切り捨て」といったルールを設けていると、労働時間に対する賃金を全額支払えなくなってしまいます。出勤簿には、端数が生じた場合も切り捨てず、正しい労働時間を記録するようにしましょう。

    出勤簿の正しい保存方法

    出勤簿は、法律によって記録の保存が義務づけられている『賃金その他労働関係に関する重要な書類』に該当します。出勤簿をただ作成するだけでなく、適切な保存方法や保存期間について把握しておくことが大切です。

    参考:『労働基準法』e-Gov法令検索

    出勤簿は紙でもデータでも保存可能

    出勤簿は、紙に印刷して保存しても、データとして保存しても問題ありません。紙に印刷して保存する場合は、キャビネットなどにまとめて保管する方法が一般的です。なお、エクセルや勤怠管理システムなどで電子データとして管理・保存する場合は、情報が外部に漏洩しないようセキュリティ面に十分注意しましょう。

    出勤簿の保存期間は5年

    法改正により、出勤簿の保存期間は3年から5年に延長されました。企業には、従業員が最後に出勤した日、または最後に記録した日より当該記録にかかる賃金の支払日が遅い場合には当該日より起算して5年間、出勤簿を保存する義務があります。

    ただし、法改正後の経過措置として、当面の間は3年保存すればいいとされています。保存を怠ると労働基準法違反が認められ、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    保存期間を過ぎた出勤簿は適切に破棄する

    出勤簿に記載されている内容には、従業員のプライバシーにかかわる情報が数多く含まれています。従業員の個人情報を守るためには、出勤簿を管理・保存するだけでなく、適切な方法で破棄することも重要です。保存期間を過ぎた出勤簿は、社内規定に基づいて適切に破棄しましょう。また「確実に破棄した」という記録も残さなければなりません。

    手書きの出勤簿は違法? 法改正後の正しい対応とは

    働き方改革関連法による労働安全衛生法の改正により、「労働時間の客観的な方法での把握」が企業に対して義務づけられました。手書きの出勤簿の作成は、法的に問題ないのでしょうか。

    手書きは違法ではないが、あまり望ましくない

    結論からいうと、手書きの出勤簿は違法ではありません。しかし、手書きの出勤簿は上記の「客観的な記録」に該当しない可能性が高いでしょう。なぜなら、手書きの出勤簿はあくまで自己申告とみなされるためです。

    また、手書きの出勤簿は情報の改ざんがしやすく、不正のリスクも高まってしまいます。手書きの出勤簿も認められてはいますが、気をつけるべき点は多くあります。ガイドラインを遵守するためにも、デジタル打刻が可能な勤怠管理システムの導入が望ましいでしょう。

    手書きの出勤簿を作成する場合の注意点

    手書きの出勤簿は「客観的な記録」に該当しない可能性が高いというリスクはあるものの、導入コストが少ないというメリットもあります。

    また、古くから続く企業では、これまでのやり方を変えるのが困難な場合も多いでしょう。やむを得ず手書きの出勤簿を作成する際には、次のポイントに注意します。

    • 記入ルールを明確化する
    • 上長がタイムカード・出勤簿のチェックを行う
    • 万が一改ざんが発見された場合の対応を決めておく

    出勤簿の正しく作成し、適切な労務管理へ

    出勤簿は、法律で作成が義務づけられている法定三帳簿の一つです。決められたフォーマットはないものの、出退勤時間や出勤日などの情報は漏れなく記録する必要があります。休暇・休業に対する取り扱いや注意点を把握したうえで、適切な労務管理に役立てましょう。

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