フレックスタイム制における企業の導入状況や業種の特徴、成功事例を紹介

フレックスタイム制における企業の導入状況や業種の特徴、成功事例を紹介

フレックスタイム制とは、総労働時間の中で労働者自身が自由な働き方ができる制度です。

フレックスタイム制を取り入れる企業が増えるなか、導入を検討する企業もいるのではないでしょうか。なかには「制度が自社にマッチするかわからない」や「正しい運用方法が把握できていない」と懸念する企業もあるでしょう。後悔しない選択をするためには、制度そのものが自社に適しているか、メリット・デメリットについて深く理解することが大切です。

本記事では、フレックスタイム制に関する各企業の導入状況や導入している業種の特徴、成功した企業の事例などを紹介します。

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    フレックスタイム制とは

    フレックスタイム制とは、各従業員の総労働時間内であれば、1日あたりの労働時間や始業・終業時間などを労働者が自由に決められる制度です。

    従業員が、プライベートの予定や健康状態などに合わせて柔軟に働けるため、働き方改革が推進されているなか、導入を始めている企業もあるでしょう。

    フレックスタイム制の仕組み

    フレックスタイム制では、「コアタイム」と「フレキシブルタイム」という2種類の時間帯が基本的に設けられています。

    コアタイム1日あたりの勤務時間内ですべての従業員が職場にいて業務を行うべき時間
    フレキシブルタイム従業員が自由に出退勤を設定できる時間帯

    コアタイムを設けず、いつでも好きな時間に勤務できるスーパーフレックスタイム制を導入している会社もあります。

    フレックスタイム制の企業への導入状況

    自由な働き方を推奨できるフレックスタイム制について、いったいどのくらいの企業が導入しているのでしょうか。厚生労働省が発表している調査によると、導入企業の割合は直近5年間で少しずつ増加しています。

    2019年2020年2021年2022年2023年
    フレックスタイム制を採用している企業5.0%6.1%6.5%8.2%6.8%

    特に2022年はコロナ禍の影響を受けて導入企業の割合が高まりました。。コロナ以前の2019年と比較すると、直近は増加傾向にあることがわかります。

    さらに、企業規模別の割合では、従業員数が多い大規模な企業の方がフレックスタイム制を取り入れている傾向が見て取れます。

    企業規模2019年2020年2021年2022年2023年
    1,000人以上26.6%28.7%28.7%31.2%30.7%
    300~999人12.5%13.8%15.6%17.0%17.2%
    100~299人6.6%9.0%8.7%8.4%9.4%
    30~99人3.1%3.7%4.1%6.6%4.2%

    参照:『就労条件総合調査:結果の概要』厚生労働省

    フレックスタイム制を導入する企業の特徴

    フレックスタイム制が適している企業の特徴を理解するために、制度を採用している企業の中でも特に割合が高い業種を以下に整理しました。(※2020年の結果)

    順位業種割合
    1位情報通信業30.0%
    2位学術研究、専門・技術サービス業18.0%
    3位複合サービス事業16.5%

    参照:『就労条件総合調査』政府統計の総合窓口(e-Stat)(2020年)

    以上のデータを踏まえると、フレックスタイム制が適しているのは、「情報通信業」といえるでしょう。情報通信業のように、インターネットや電話を活用する業種は、場所を問わず業務が進められるという特徴があります。

    2位の「学術研究、専門・技術サービス業」や3位の「複合サービス事業」との共通点は、

    従業員1人の裁量で業務を進められることや、比較的社外とコミュニケーションを取る機会が少ないことが挙げられるでしょう。

    フレックスタイム制の導入が難しい企業の特徴

    フレックスタイム制が適した企業とは反対に、あまり制度に向いていないといえる企業の特徴を分析してみましょう。同調査をもとに、導入企業の割合が少ない業種を以下に整理しました。

    順位業種割合
    1位建設業1.1%
    2位教育、学習支援業1.3%
    3位宿泊業、飲食サービス業2.0%

    参照:『就労条件総合調査 』政府統計の総合窓口(e-Stat)

    チームプレイが求められる建設業や、顧客との対面でのやり取りが頻繁にある業種などはフレックスタイム制の普及が進んでいません。

    「複数人の従業員で協力して業務を進めなければならない」「教育機関での授業や接客業をはじめ対面業務がメインである」といった特徴を持つ企業が、

    フレックスタイム制を導入したい場合は工夫が必要です。

    また、飲食業のようにランチタイムといったピーク時の需要に対応するために、スタッフが同じ時間帯で一緒に働く必要がある業種もフレックスタイム制には向いていないといえるでしょう。

    フレックスタイム制で成果を出した企業事例

    フレックスタイム制に向いていない企業がある一方で、導入により成果を出した企業もあります。代表的な3社の成功事例を紹介します。

    • アサヒビール株式会社
    • 三井物産株式会社
    • ソフトバンク株式会社

    アサヒビール株式会社

    アサヒビール株式会社は、コアタイムを設けない「スーパーフレックスタイム制度」を採用している企業です。

    フレックスタイム制に加えて、テレワーク制度や営業担当者の直行直帰制度も導入しています。制度の導入により、従業員は柔軟性を持って業務に取り組むことができ、労働生産性やワークライフバランスの向上につながっていると考えられます。

    参照:『アサヒビールのサステナビリティ』アサヒビール株式会社

    三井物産株式会社

    大手総合商社である三井物産株式会社は、働き方改革の一環としてフレックスタイム制を全社的に導入した企業です。

    同社では、10〜15時をコアタイムとし、フレキシブルタイムを5〜10時と15〜22時に設定しています。フレキシブルタイムを広く設けることで、従業員のワークライフマネジメントの向上を実現しました。

    また、労働時間を従業員の裁量に委ねることでパフォーマンスの最大化につなげ、従業員エンゲージメントの向上にも貢献したと報告しています。

    このほかに、インターバル時差出勤やリモートワーク制度も段階的に取り入れており、従業員にとって働きやすい環境を整備しています。

    参照:『サステナビリティ』三井物産株式会社

    ソフトバンク株式会社

    ソフトバンク株式会社は、スーパーフレックスタイム制を導入して自由な労働環境を提供している企業です。従業員は労働時間を調整しやすくなったため、スキルアップの時間を確保したり、オフピーク通勤を利用したりすることで、メリハリのある働き方が可能になりました。

    さらに、サテライトオフィスの利用や、月の最終金曜日に15時退社を奨励するプレミアムフライデーなど、従業員のワークライフバランスを維持するための多様な制度も推進しています。

    参照:『スマートワークスタイルの推進』ソフトバンク株式会社
    参照:『SoftBank流 働き方改革』ソフトバンク株式会社

    フレックスタイム制を導入する企業のメリット

    フレックスタイム制は、上手に取り入れると、企業にとっても従業員にとっても好影響を与えます。制度の採用によって得られる4つのメリットを紹介します。

    • ワークライフバランスを向上できる
    • 通勤ラッシュを避けて通勤できる
    • 残業時間や労働力負担をカットできる
    • 定着率を高められる

    ワークライフバランスを向上できる

    フレックスタイム制は、従業員が決められた時間内で自分の好きなタイミングを選んで働けるため、仕事とプライベートを両立しやすくなります。育児や介護を抱えている人、資格取得に励んでいる人、健康状態に不安を抱えている人にとって、柔軟に働けることで企業に対するエンゲージメントが高まるでしょう。

    通勤ラッシュを避けて通勤できる

    公共交通機関が混み合わない時間を狙って出勤できる点も、フレックスタイム制のメリットです。満員電車などで感じる過大なストレスを防止できるため、従業員の精神状態をよい状態のまま保持できるでしょう。

    公共交通機関が混み合わない時間を選んで出勤できる点も、フレックスタイム制の大きな魅力です。満員電車などの通勤ストレスを軽減することで、従業員の精神状態を良好に保てるでしょう。

    残業時間や労働力負担をカットできる

    フレックスタイム制によって時間を効率的に使えるため、企業内で無駄のない働き方が実現します。繁忙期には労働時間を多く設け、比較的余裕のある時期には早めに帰宅するなど、柔軟な対応が可能です。柔軟な働き方で残業時間を減らし、従業員の身体的・精神的な負担を低減することが期待できます。

    定着率を高められる

    自分の生活に合わせた働き方ができると企業への満足度が高まりやすく、早期離職や人材の流出防止につながります。定着率の低さが課題である企業は、フレックスタイム制を導入することで、問題が解決に向かうかもしれません。

    フレックスタイム制を導入する企業のデメリット

    フレックスタイム制には企業にとってメリットがある一方、懸念となるデメリットもあります。どちらも合わせて把握したうえで、適切な制度運用ができるように準備しましょう。

    • コミュニケーションが不足しやすい
    • 外部とのやりとりに支障が生じることがある
    • 自己管理ができない従業員への対応が必要
    • 勤怠管理が複雑で難しい

    コミュニケーションが不足しやすい

    フレックスタイム制では、従業員がバラバラの時間に出勤することになるため、「確認したいことが質問できない」「従業員同士の交友を深めにくい」といった問題が発生する可能性があります。

    チーム内の関係性が変化する恐れもあるため、チャットツールやバーチャルオフィス、サンクスカードなどを用いて、オンラインコミュニケーションを充実させることが重要です。

    外部とのやりとりに支障が生じることがある

    フレックスタイム制において従業員が自分の好きな時間帯に仕事をする場合、社外とのコミュニケーションに行き違いが生じる恐れがあります。取引先や他社が稼働していない時間に出勤していると、業務の進捗に遅れが出る可能性も否定できません。

    対策として、外部との意思疎通に関するマニュアルを作成したり、社内で協力体制を構築したりしておくとよいでしょう

    自己管理ができない従業員への対応が必要

    フレックスタイム制を上手に活用できる従業員とそうでない従業員、が存在することを企業は理解しておかなければなりません。

    フレックスタイム制の導入で、時間の使い方が苦手な従業員は、業務の効率が低下し、モチベーションが落ちてしまうことがあります。生産性を維持するためには、業務内容や進捗状況を可視化できる仕組みをつくり、適切なサポートを提供するとよいでしょう。

    勤怠管理が複雑で難しい

    フレックスタイム制を取り入れると、企業において勤怠管理に手間がかかるというデメリットがあります。一人ひとりの始業時間・終業時間が異なり、労働時間の把握や残業代の計算が複雑になるためです。

    対策として、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを活用したり、社内規定を整備したりするなどの準備が必要です。煩雑な勤怠管理をシンプルに整え、従業員の働きやすさとあわせて確保することが大切です。

    企業におけるフレックスタイム制の導入方法・手順

    フレックスタイム制の導入を検討する企業が気になるのは、具体的な導入プロセスではないでしょうか。そこで、フレックスタイム制を導入するための大まかな流れを5つのステップに沿って解説します。

    • 対象者の範囲を決める
    • 就業規則を作成・変更する
    • 労使協定を取り結ぶ
    • 労働基準監督署に届け出る
    • 社内周知を徹底する

    1.対象者の範囲を決める

    まず、フレックスタイム制を実施する範囲を決めましょう。業務内容によっては、制度への適応が難しい部署やチームがあるかもしれません。

    2.就業規則を作成・変更する

    次に、フレックスタイム制に関する内容を就業規則内に記載しましょう。具体的には、始業時間・終業時間やコアタイム・フレキシブルタイムなどについて明確に記載します。

    3.労使協定を締結する

    続いて、企業側と労働者間で結ばれる労使協定を締結します。労使協定には、以下のような内容を含めましょう。

    • 対象となる労働者の範囲
    • 清算期間と起算日
    • 清算期間内の総労働時間
    • 1日の標準労働時間
    • コアタイム(場合による)
    • フレキシブルタイム(場合による)

    4.労働基準監督署長に届け出る

    就業規則を変更した場合や、フレックスタイム制の精算期間が1か月を上回る労使協定を締結した場合は、労働基準監督署長への届出が必要です。

    ただし、就業規則の作成は、従業員数が常時10人以上の会社において義務づけられています。対応がもれてしまうと、罰則が科される恐れもあるため、忘れずに行いましょう。

    5.社内周知を徹底する

    フレックスタイム制の導入を従業員に周知します。「なぜフレックスタイム制を採用したのか」という理由を明確に伝え、従業員が制度の目的と利点を理解できるようにしましょう。制度を積極的に活用できる環境を企業全体で築くことが重要です。

    また、フレックスタイム制の導入で、企業に影響するリスクやデメリットを最小限に抑えるための対策を講じましょう。たとえば、コアタイムに合わせた会議時間の調整や、取引先への対応を強化するために担当者の増員などです。対策を通じて、フレックスタイム制を円滑に導入し、効果があらわれる運用を実現できます。

    まとめ

    フレックスタイム制が企業に適しているかどうかは、業種や職種によって異なります。向いている企業にとっては業務の効率化がはかれ、従業員がより働きやすくなるでしょう。

    まずは、自社がフレックスタイム制に適しているか検討してみてください。

    フレックスタイム制の導入にはデメリットや注意点もあり、その一つが「勤怠管理の複雑化」です。ただし、フレックスタイム制に対応した勤怠管理システムを導入することで解決が可能です。

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