休日出勤時の振替休日とは? 基本情報から代休との違い、ポイントなどを解説
休日出勤時に取得する休日には「振替休日」と「代休」があります。振替休日を取得するためにはさまざまなルールが存在しており、運用方法を正しく理解できていないケースも少なくありません。
本記事では、振替休日の概要をはじめ、代休との違いや振替休日を導入する際の要件について詳しく解説します。
休日出勤時の振替休日とは
休日出勤をする際に付与する振替休日の概要をご紹介します。
振替休日とはどのような制度?
振替休日とは、あらかじめ休日と定めた日に労働してもらう代わりとして、ほかの労働日を休日として入れ替える制度です。たとえば、通常は平日が所定労働日である企業において、日曜日に従業員を出勤させるために金曜日を休日、日曜日を労働日とするケースが該当します。
ただし、振替休日は事前に休日を指定する制度であるため、休日出勤後に代わりの休日を指定した場合は「代休」と見なされ、休日労働分の割増賃金を支払わなければなりません。
振替休日は休日労働手当が不要
振替休日を設けたうえで法定休日に出勤させた際は、原則として休日割増賃金の適用外です。休日割増賃金とは、労働基準法で定められている法定休日の労働に対して支払われる割増賃金です。
振替休日では労働日と休日を入れ替えるだけなので、もともと休日であった日を通常の労働日と同様に扱います。つまり、休日労働手当を支払う必要はありません。
ただし、週をまたいで労働日の振り替えを行う場合は、週の合計労働時間が法定の上限である40時間を超過した分に対して時間外割増賃金が適用されます。
祝日法における振替休日とは異なる
祝日が日曜日と重なった際に、祝日にもっとも近い平日を休日にすることを振替休日といいます。この場合の振替休日は「国民の祝日に関する法律」第3条第2項で規定されている制度であり、労働基準法における振替休日とは異なります。
なお、法律上では土曜日は平日と同等であると判断されるため、土曜日と祝日が重なった際の振替休日は発生しません。
振替休日と代休との違い
振替休日と混同されやすい言葉に「代休」があります。両者の明確な違いについて詳しく解説しましょう。
代休とはどのような制度?
代休とは、事前に振替休日を指定せずに休日出勤をさせたあと、休日出勤の代わりに与える休日です。つまり、代休の場合は振替休日のように休日と労働日を入れ替えたことにはならず「休日労働をした」とみなされます。
代休に関する取り決めは、法律では規定されておらず、主に就業規則で規定されています。
振替休日と代休の違いとして、事前に労働日と休日の入れ替えが成立しているか否かが挙げられます。休日出勤前に休日の付与を決定していたとしても、具体的な日付を指定していなければ振替休日ではなく、代休扱いになると覚えておきましょう。
代休には休日割増賃金が適用される
代休では休日に労働したとみなされ、出勤した日が法定休日であった場合には休日割増賃金が適用されます。労働基準法第37条第1項により、休日割増賃金は通常賃金の35%以上と定められています。
ただし、法定休日の労働には時間外労働が適用されないため、1日8時間以上、週に40時間を超えていたとしても時間外労働手当は発生しないと覚えておきましょう。
参照:『労働基準法』e-Gov法令検索
参照:『しっかりマスター労働基準法 割増賃金編』厚生労働省
休日出勤時の振替休日を導入するための要件
休日出勤時に振替休日を導入するために知っておきたい3つの要件について、詳しく解説します。
- 就業規則などに定めがある
- 労働日と振り替える休日を事前に指定する
- 法定休日を満たしている
就業規則などに定めがある
振替休日は、企業が定める就業規則や労働協約など根拠となるルールに則して実施されなければなりません。そのため、事前に休日をほかの日と入れ替えるケースがある旨について規定しておく必要があります。
規定があれば、従業員には従う義務があり、企業は従業員に対して振替休日の取得を指示できます。ただし規定がない場合でも、事前に該当する従業員の同意を得られた際には振替休日を設定します。
労働日と振り替える休日を事前に指定する
振替休日を適用するには、事前に労働日と振替予定の休日を指定する必要があります。休日労働のあとに代わりの休日を設定したり、該当する従業員に事前に通知したりできていない場合では、振替休日ではなく「代休」として対応しなければなりません。
代休として処理する場合、法定休日に出勤させた分に対しては割増賃金として基礎賃金の35%以上を支払う必要があります。事後に振替休日として処理することはできないため注意しましょう。
法定休日を満たしている
法定休日とは、労働基準法第35条で定められた、労働者に与える義務がある休日のことです。つまり、振替休日を取得するためには法定休日を確保しなければなりません。
(休日)
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
このように、毎週1日以上または4週間に4日以上の休日が確保されていることが要件です。振替休日を取得する際には、休日労働をした週、もしくは同じ月に指定するのが望ましいでしょう。
振替休日でも割増賃金が発生する3つのケース
振替休日の特性上、原則として割増賃金は発生しませんが、なかには割増賃金が発生するケースもあります。どのような場合が該当するのか詳しく確認してみましょう。
- 週の法定労働時間を超過した場合
- 休日出勤が深夜時間に及んだ場合
- 振替休日に出勤した場合
1.週の法定労働時間を超過した場合
週の労働時間を超過した場合は、時間外割増賃金が発生します。休日出勤をすることで週の労働時間が40時間を超えると、超えたぶんは時間外労働とみなされるのです。時間外労働の割増賃金は、基礎賃金の25%以上と定められています。
振り替えた労働日と休日を同じ週に設定するよう意識することで、時間外労働が発生しにくくなるでしょう。振替休日を導入する際には、従業員の勤務日に加えて当該週の勤務時間を把握しておく必要があります。
2.休日出勤が深夜時間に及んだ場合
休日出勤が深夜時間に及んだ場合は、深夜労働の割増賃金が発生します。深夜労働における深夜とは22時から翌朝5時までを指し、基礎賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
なお、振替休日による休日出勤で時間外労働と深夜労働が発生した際は、どちらかではなく時間外・深夜それぞれの労働に対して手当を支給する必要があります。
3.振替休日に出勤した場合
振替休日を取得する日があらかじめ決まっていても、何かしらの理由でその日に出勤せざるを得ないこともあるでしょう。
労働日と法定休日を入れ替えると、その振替休日は法定休日として扱われるため、出勤した際には休日労働として基礎賃金の35%以上の割増賃金が発生します。
労働日と所定休日を入れ替えると、休日労働とはならないため、休日労働の割増賃金は発生しません。
振替休日のポイント
振替休日を導入する際におさえておきたいポイントを2つご紹介します。
法的に振替休日の取得日や期限の決まりはない
振替休日を取得する際、どの労働日を休日とし、いつまでに振替休日を付与するかという法的な縛りはありません。法定休日が確保できている限り、企業の裁量次第であり、日付の指定もできます。
ただし、週をまたぐ振替休日の場合には注意が必要です。週をまたぐことで、週40時間の法定労働時間を超過している恐れがあり、その場合、時間外労働に割増賃金を支払わなければなりません。
法定休日の確保や法定労働時間の順守のためにも、できるだけ同一週に振替休日を設定しましょう。
休日出勤時に振替休日なしは違法の可能性
休日出勤時に振替休日を設けないことが違法かどうかは、法定休日が確保できているか否かによります。また、休日出勤には、36協定の締結および届け出が必要です。
36協定とは、労働基準法第36条で定められた労使協定で、従業員に法定労働時間を超えた労働や休日労働を課す場合に、企業と従業員の間で締結しなければなりません。
36協定を締結していない企業は、従業員に対して1日8時間、週40時間の範囲内で労働させなければならず、休日出勤を命じることもできません。36協定なしに休日出勤をさせると違法とみなされます。
1週1日または4週4日の法定休日が確保できていれば、振替休日の付与は不要です。ただし、所定休日労働であっても、従業員にとっては大きな負担となるため、代休などの代替休暇を付与することが望ましいでしょう。
振替休日と代休の違いを理解して正確な労務管理へ
振替休日は、休日出勤を行った場合の休日取得を保証する制度です。従業員の労働環境を整えるためにも、振替休日の積極的な導入・運用が求められます。
休日出勤に関する仕組みや賃金計算方法は非常に煩雑であるため、運用方法を誤ってしまうと法令違反や従業員とのトラブルを招きかねません。法令に則した勤怠管理を行うためにも、勤怠管理システムの導入も検討しましょう。
まだ紙やエクセルで勤怠管理を行っている企業はもちろん、現在お使いの勤怠管理システムが使いづらい、自社の運用に適していないという企業は、より柔軟性の高いシステムへの入れ替えもご検討ください。
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