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有給休暇の理由を聞くのは違法? パワハラ? 確認してもよいケースも解説

従業員から有給休暇取得の申請を受ける際、企業側から取得理由を聞いても問題ないのか疑問に感じている人もいるでしょう。

本記事では、有給休暇取得の理由を従業員に申告させることが適切であるかを、法律に基づいて詳しく解説します。理由の確認が認められるケースについても紹介するので、人事担当者はぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

有給休暇の理由を聞くのは違法? パワハラ? 確認してもよいケースも解説
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    有給休暇の理由を聞くのは違法? パワハラ?

    企業側が、従業員に有給休暇の取得理由を尋ねる行為が違法であるか、詳しく解説します。

    理由を聞くこと自体は違法ではない

    原則として、企業側が従業員に有給休暇の取得理由を確認する必要はなく、従業員側にも申告する義務はありません。従業員が有給休暇を取得する際に特別な理由も必要なく、私用での取得も可能です。

    厳密にいうと、有給休暇の取得理由を尋ねる行為自体は違法ではありません。しかし、従業員が有給休暇を取得しづらくなるという観点から、有給の取得理由を尋ねる行為はあまり望ましくないでしょう。

    また、次のような対応は違法行為と見なされてしまうため、注意が必要です。

    • 理由を申告しないと取得できない
    • 理由を聞いて拒否する

    それぞれのケースについて詳しく解説します。

    理由を申告しないと取得できないのは違法

    労働基準法において、取得理由の有無は、有給休暇が与えられるための要件ではありません。有給休暇を取得する際に理由は必要ないため「明確な理由を申告しない限り有給休暇を取らせない」といった行為は違法と見なされます。

    また、有給休暇の取得は労働者に与えられた権利なので、原則として企業側は取得を拒否できません。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    理由を聞いて拒否するのも違法

    取得理由によって企業側が有給休暇の取得を拒否することも、違法行為にあたります。従業員が、遊びや旅行などの娯楽のために申請したとしても、企業に却下する権限はありません。

    有給休暇の取得を拒否したり、阻止したりした場合、労働基準法違反により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるため注意が必要です。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    理由を「しつこく聞く」はパワハラの可能性

    有給休暇の取得理由を尋ねる行為自体は違法ではないものの、従業員が理由を伝えたくないにもかかわらず執拗(しつよう)に理由を尋ねることは、パワハラに該当すると考えてよいでしょう。

    パワハラを含むハラスメント行為により、民法上・刑事上の責任を追及されてしまう恐れもあります。ハラスメントの程度や度合いによっては、最悪の場合、損害賠償請求に発展することもあるため注意が必要です。

    有給休暇の理由が嘘でも問題にならない

    本来、従業員が有給休暇を取得する際に理由の申告義務はないので、たとえ虚偽の理由を伝えたとしても問題にはなりません。

    ただ単に「有給休暇を消化したい」「取得理由を伏せたい」という理由も考えられます。そのような状況で「役所での手続きがあるため」「通院のため」など嘘の理由で有給休暇を取得したとしても、従業員の行為は違法ではありません。

    有給休暇は「私用のため」といった理由でも取得が可能です。ただし、就業規則に虚偽申告が規則違反であると明記されている場合は、懲戒処分の対象となるでしょう。

    有給休暇の理由を確認できる場合|時季変更権を解説

    一時的な人手不足や代替人員の確保が難しく、従業員から申請された日程で有給休暇を取得させることが難しい場合は、企業は時季変更権を行使できます。

    時季変更権を行使すべきかの判断が必要な場合に限って、企業側から有給休暇の取得理由を確認することが可能です。

    ここでは、時季変更権の概要や行使できる条件、行使する際の注意点を詳しくご紹介します。

    時季変更権とは

    時季変更権とは、従業員が有給休暇を取得するタイミングを、企業側が別のタイミングに変更できる権利です。

    労働基準法では、時季変更権について以下の通り定められています。

    第三十九条
     使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

    引用:『労働基準法 第39条』e-Gov法令検索

    ​​企業による適法な時季変更権の行使は、その範囲内において従業員の時季指定権を消滅させる強制力を持っています。

    時季変更権を行使できる条件

    時季変更権は、あくまでも「従業員が指定した日程で有給休暇を取得させると、事業の正常な運営が妨げられる場合」にのみ行使できる権利です。

    やむを得ず有休を取得させられないと判断されるケースは、以下のような例が挙げられます。

    • 代替人員を確保できない
    • 同時季に有給休暇取得者が重なっている
    • 研修や教育などがあって代理人を立てられない
    • 長期間の有給休暇取得を申請している

    前日や当日に申請されて代替人員を確保できない場合は、時季変更権の行使が認められる可能性があります。

    そのほか、複数の従業員が同じ日程で有給休暇の取得を希望している場合や、研修が予定されていて申請者本人の出勤が求められる場合、1か月など長期間にわたる有給休暇の取得を申請している場合も該当します。

    時季変更権を行使する際の注意点

    企業が時季変更権を行使する際に注意すべきポイントは、次の通りです。

    • 明確で正当な理由が求められる
    • 繁忙期を理由にすることは原則として認められない
    • 従業員の退職時や産後・育児休業中など行使できないケースがある

    時季変更権を行使する際は、行使する理由を明確に提示しなければなりません。理由は書面で交付するだけでも問題ありませんが、従業員のモチベーション低下を防ぐためにも、なぜ行使する必要があるかを直接伝えるのがおすすめです。

    また、単純に繁忙期であることや、年中忙しく常に人手が足りていないという漠然とした理由は認められません。時季変更権を行使する際には「欠員が出ると業務が回らず、ほかの従業員とのスケジュールを調整したが代替人員を確保できなかった」など、企業が努力した事実が必要です。

    ほかにも、次のようなケースでは時季変更権が行使できないため注意しましょう。

    • 従業員の退職や解雇予定日が決まっているとき
    • 従業員の有給休暇が時効を迎えるとき
    • 会社の倒産によって有給休暇を消化できなくなるとき
    • 産後休業・育児休業の期間に重なっているとき
    • 有給休暇の計画的付与制度を利用しているとき

    有給休暇に関する違法な対応

    有給休暇にまつわる違法な対応について解説します。

    時季変更権を濫用する

    時季変更権を行使できるタイミングは、事業に支障が出る場合に限定されています。とくに支障がないにもかかわらず、時季変更権を濫用して有給休暇を取得させない行為は、パワハラと見なされてしまうでしょう。

    また、正当な理由なく時季変更権を濫用し、従業員の有給休暇の取得を阻止しようとした場合は、労働基準法違反により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

    有給休暇を年5日以上の取得させない

    2019年4月の労働基準法改正により、企業には年に10日以上有給休暇が付与される従業員に年5日の有給休暇を取得させることが義務づけられました。万が一、違反すると、年5日の有給休暇を取得できなかった従業員1人あたり最大30万円の罰金が科されます。

    有給休暇を買い取る

    有給休暇を消化しきれなかった従業員の中には、余った有給休暇を買い取ってほしいと考える人も少なくありません。しかし、原則として有給休暇の買取は禁止されています。

    有給休暇は、労働者の心身を休ませ、仕事に対する英気を養ってもらうために設けられた制度です。企業が有給休暇を買い取ると従業員の休む機会を奪うことになり、本来の目的に反します。

    ただし、次のような場合には、例外として有給休暇の買取が認められています。

    • 退職時に有給休暇が余っている場合
    • 労働基準法で定められた日数より多く有給休暇が付与されている場合
    • 有給休暇の期限が切れてしまう場合

    しかし、上記のケースでも、企業が有給休暇を買い取るよう法的に義務づけられているわけではありません。就業規則をチェックして、自社が有給休暇の買取に対応しているかを確認しましょう。

    余った有給休暇を繰り越さない

    労働基準法第115条では、有給休暇の請求権の時効が2年と定められています。そのため、付与された年度に従業員が消化できず余ってしまった有給休暇は、企業側が翌年度に繰り越さなければなりません。

    繰越の義務を怠ったり、対象となる有給休暇をわざと繰り越さなかったりすると、労働基準法違反と見なされるので注意しましょう。

    参照:『労働基準法 第115条』e-Gov法令検索

    有給休暇の取得を理由に評価を下げる

    労働基準法では、有給休暇の取得を理由に従業員の評価を下げたり、賃金を減額したりする行為を禁止しています。

    成果や勤務態度など、正当な理由で低く評価する場合は問題ありません。しかし「有給休暇を取得するタイミングが悪い」「有給休暇を取得しすぎている」という理由で評価を下げてしまうのは違法行為です。

    従業員の有休管理に勤怠管理システムの導入も

    有給休暇は、すべての従業員に対して平等に与えられます。企業側が有給休暇の取得理由を尋ねる行為は違法ではないものの、原則として認められていません。場合によっては違法と見なされ、罰金や罰則が科されてしまうため注意が必要です。

    有給休暇の取得理由を尋ねても問題ないケースとして、時季変更権の行使があります。ただし、時季変更権を行使できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限定されていいます。権利を行使するタイミングには十分に気をつけてください。

    有給休暇の取得についての正しい知識を身につけて、従業員の有給休暇を正しく管理していきましょう。

    有給休暇の管理に|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、有給管理を自動化する勤怠管理システムです。

    簡単な設定をするだけで、有給休暇の付与日をはじめ、取得日数、残日数などを自動計算してくれます。さらに、有給休暇を取得すべき従業員に対するリマインド機能も搭載しているため、担当者の負担を大幅に軽減できるでしょう。

    有給休暇の管理を怠ってしまうと、罰金や罰則が科されるだけでなく、最終的に企業全体の信用低下につながってしまいます。有給休暇の取得率が低い企業は、ぜひ導入を検討してください。