サバティカル休暇とは【日本企業の事例あり】メリット・デメリットや導入ポイントを解説

サバティカル休暇とは【日本企業の事例あり】メリット・デメリットや導入ポイントを解説

サバティカル休暇とは、スキルアップやリフレッシュのために一定期間、従業員の長期休暇を認める福利厚生です。人生100年時代といわれるなか、長期的なキャリア形成を見越して、日本でも導入を検討する企業もあらわれてきました。

本記事では、サバティカル休暇のメリット・デメリット、レアケースながら日本企業の事例を紹介しています。導入にあたって考慮したい、期間や給与の取り扱いなど制度設計のポイントも解説しますので、経営者や人事労務担当者は参考にしてください。

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    サバティカル休暇とは

    サバティカル休暇とは、一定期間勤務した従業員に対して与えられる長期休職制度です。

    「サバティカル(sabbatical)」とはもともと、大学教員が研究に集中するために取得する休暇制を意味します。

    一般企業においてサバティカル休暇は、従業員の燃え尽き症候群を防ぎ、一度職場から離れることでリフレッシュ効果が期待されています。海外ではすでに一般化しており、人材を定着させるための施策として定着してきました。

    サバティカル休暇は、取得理由に制限がなく、期間が半年から1年、ときに2年以上におよぶこともあるのが特徴です。

    サバティカル休暇が注目されている背景

    サバティカル休暇が注目されている背景には、働き方改革の推進やワークライフバランスへの関心があります。日本企業では、高度経済成長期の反省も踏まえ、従業員の健康に配慮し、働き方の質向上が重要な課題となっています。

    サバティカル休暇の導入により、従業員は一定期間仕事から離れ、趣味やボランティア活動に時間を割くことが可能です。

    また、リカレント教育の重要性が高まっている背景もあり、従業員が職場を離れ、知識やスキルを習得する手段として期待されています。

    2018年3月に経済産業省が、サバティカル休暇の促進を提言したことも、注目を集めている理由といえるでしょう。

    参考:我が国産業における人材力強化に向けた研究会(人材力研究会)報告書案|経済産業省

    サバティカル休暇で給料は発生する?

    サバティカル休暇中に、給与を支払うべきか否かは、企業の制度設計によります。

    日本企業では、まだサバティカル休暇の導入事例は少なく、明確な規定もありません。そのため企業によって、無給の例もあれば、一定額の休暇手当を支給する例もあるようです。

    サバティカル休暇で従業員に給料を支給する場合、休暇の取得目的や勤続年数など、条件を設けることが多いようです。

    サバティカル休暇の導入を検討しているなら、給与や社会保険、休暇期間といったルールを整備する必要があります。

    サバティカル休暇のメリット

    サバティカル休暇のメリットを具体的に5つ取り上げて解説します。

    • 貴重な経験を積んでもらえる
    • 従業員の能力向上をはかれる
    • 従業員がリフレッシュできる
    • 会社の印象がよくなる
    • 離職を防止できる

    貴重な経験を積んでもらえる

    サバティカル休暇のメリットは、従業員が普段の業務では得られない経験を積める点です。

    たとえば、従業員は休職を利用して海外でのボランティア活動に参加したり、新しい技術を学んだりできます。休暇中の経験は個人的な成長やキャリアの発展につながります。

    退職することなく、自己成長につながる貴重な経験を積めるため、会社にとっても利益となるでしょう。

    従業員の能力向上をはかれる

    サバティカル休暇のメリットは、従業員の能力向上をはかれる点です。

    サバティカル休暇は、従業員が新たなスキルを習得し、能力を向上させるためにも有効な時間です。休職期間中には従業員が資格を取得したり、特定分野での専門知識を深めるために学んだりするケースが考えられます。

    今まで実現できなかった取り組みに挑戦できるため、貴重な成長の機会となるでしょう。

    従業員がリフレッシュできる

    サバティカル休暇のメリットは、従業員が肉体的にも精神的にもリフレッシュできる点です。

    長期にわたる仕事のプレッシャーやストレスは、燃え尽き症候群や生産性の低下を引き起こすおそれがあります。しかし、サバティカル休暇を活用すれば、従業員は休職中に日常の業務から解放されて、リフレッシュする機会を得ることができます。

    仕事から完全に離れてリフレッシュしたあとは、高い意欲を持って仕事に復帰することが可能です。結果として、復帰後は企業の生産性も向上するでしょう。

    会社の印象がよくなる

    サバティカル休暇は、企業の社会的イメージを向上させる手段となります。

    現代社会では、従業員のワークライフバランスやキャリア自律支援を重視する企業が高い評価を受ける傾向にあります。柔軟な働き方を認めている企業は、従業員だけではなく求職者や取引先からも好意的に受け取られ、イメージのアップにつながるでしょう。

    従業員に対しては「従業員の幸せを本気で考えている」というメッセージを発信でき、自社に対するエンゲージメントを高める効果も期待できます。

    離職を防止できる

    サバティカル休暇のメリットは、離職の防止につながる点です。

    サバティカル休暇で休暇を取得した従業員は、休暇前までストレスがたまっている状態であったとしても、気持ちを入れ替えて新たな気持ちで仕事に取り組めるようになるでしょう。

    休暇により心身の負担を軽減できれば、従業員の定着率が向上し、採用や新入社員の育成にかかるコストを抑えられます。

    サバティカル休暇のデメリット

    サバティカル休暇はメリットがある一方で、デメリットや課題もあります。サバティカル休暇のデメリットを4つ取り上げて解説します。

    • 復帰後の対応が難しい
    • 従業員の収入が減少する
    • 業務の調整が必要となる
    • 従業員の離職につながる可能性もある

    復帰後の対応が難しい

    サバティカル休暇のデメリットは、復帰後の対応が難しい点です。

    長期間離れているうちに、業務の進め方や組織が変わっている可能性があるためです。復帰後、新しい環境に適応するのに時間がかかってしまう懸念があります。

    サバティカル休暇を取得した従業員の役割を、いない間に同僚が担っていた場合、もとのポジションに戻ることが難しい可能性も考えられるでしょう。戻ってきた従業員が、自分の居場所や役割に不安を感じるかもしれません。

    従業員の収入が減少する

    サバティカル休暇を取得する従業員にとってのデメリットは、収入が減少するリスクがある点です。

    休職中の給与体系は、会社によってルールが異なります。休職中に給与の一部を支払う企業もありますが、通常よりも少なくなるケースが多いでしょう。

    基本給が通常通り支給されても、各種手当が支給されない場合もあります。従業員にとっては経済的な負担が増すおそれがあるため、取得は慎重に判断しなければなりません。

    業務の調整が必要となる

    サバティカル休暇を取る従業員がいたら、担当業務の調整が必要となり、企業にとって課題でありデメリットと感じられる可能性があります。

    一時的にいなくなる場合、業務をほかのメンバーに引き継がなければなりません。同じ部署・職種の周囲にとっては負担に感じる人もいるでしょう。

    重要な役割を担っている従業員が、サバティカル休暇を取る場合は、外部からのサポートも選択肢に入れる必要があります。

    従業員の離職につながる可能性もある

    サバティカル休暇は貴重な機会ですが、休職を経て退職を考える従業員も一定数おり、企業にとってはデメリットです。休暇中に新しい目標を見つけ、職場へ戻る意欲が低下すると、離職の決断につながります。

    また、長期間の休職によって職場との関係が薄れ、復帰後に疎外感を覚えることが、離職の原因となることもあります。

    離職リスクを軽減するためには、サバティカル休暇を計画する段階で、従業員がスムーズに復帰できるよう、サポート体制を整えることが重要です。

    サバティカル休暇を導入する際のポイント

    今後サバティカル休暇の導入を検討する企業に向けて、制度設計のポイントを解説します。

    • 休暇を取得しやすい環境を整える
    • 目的やルールを明確にする
    • 制度の周知をはかる
    • 復帰を受け入れる体制を整える
    • 社会保険料の取り扱いに留意する

    休暇を取得しやすい環境を整える

    サバティカル休暇を導入するには、休暇を取得しやすい環境を整えることがポイントです。会社は、従業員が安心して休職を申請できるような仕組みづくりが求められます。

    また、休職中も業務を円滑に進められる体制の準備が必要です。周囲の理解も得つつ、円滑に業務を引き継げるように、会社として調整役を担い協力しましょう。

    目的やルールを明確にする

    サバティカル休暇を導入する際は、目的やルール、運用方法を明確にすることがポイントです。

    会社として目的を明確にし、対象者が休職を利用する際のルールを具体的に決めます。

    たとえば、申請手続きや休職中の給与の扱い、復帰の条件などを定義します。あらかじめルールが具体的だと、従業員は安心して計画的に休暇を申請できるでしょう。

    制度の周知をはかる

    サバティカル休暇を導入する際には、制度の内容を従業員に広く周知する取り組みが重要です。制度について十分な理解が得られると、従業員は正しく制度を活用できます。理解が浸透しないと、残された人の不公平感が増すため注意が必要です。

    従業員が制度について十分に理解できるように、明確でわかりやすいガイドラインを作成し、社内で共有しましょう。

    具体的には、導入にあたって規定した制度の目的や利用条件、申請手続き、休職中および復帰後の対応などの情報を盛り込みます。

    復帰を受け入れる体制を整える

    サバティカル休暇を導入する前に、復帰をスムーズに受け入れる体制を整える取り組みが欠かせません。休職に入る前に「復帰後は同じ部署に戻る」などの計画を立てます。

    また、休職中に新たに学んだスキルや経験を活かせる場があると、従業員のモチベーションはより一層高まります。サバティカル休暇は、個人の成長だけでなく、会社全体の成長にもつながるという認識が社内に浸透するでしょう。

    社会保険料の取り扱いに留意する

    サバティカル休暇を導入する際には、従業員の社会保険料の取り扱いに注意が必要です。

    休暇中でも企業に在籍して加入条件を満たす限り、社会保険には加入しなければなりません。

    企業は休暇中の従業員から、社会保険料の本人負担分を継続して徴収し、納付する必要があります。

    休暇前に支払い方法を事前に取り決めておくことが重要です。休暇中に従業員が戸惑うことがないよう、社会保険料について十分に説明しましょう。

    サバティカル休暇の日本企業の導入事例

    サバティカル休暇は、海外だけでなく国内においても、先進的な導入企業があらわれています。そこで日本企業における、サバティカル休暇の導入事例を2社紹介します。

    ヤフー株式会社

    ヤフー株式会社では、従業員の長期的なキャリア形成とリフレッシュを目的として、サバティカル休暇を導入しています。

    同社は勤続10年以上の従業員を対象に、最長3か月の休職を取得できる制度を設けています。休暇支援金の名目で準給与1か月分が支給されるため、経済的な心配をある程度減らしつつ休暇を過ごすことが可能です。

    参考:『Yahoo! JAPAN、最⻑3ヶ⽉の⻑期休暇を取得できる「サバティカル制度」の導⼊を開始』ヤフー株式会社|プレスリリース

    ソニーグループ株式会社

    ソニーグループ株式会社は、従業員のキャリア形成を支援するため、サバティカル休暇として「フレキシブルキャリア休職制度」を導入しています。

    制度を活用すれば、配偶者の海外赴任や留学に同行してキャリアアップしたい従業員に対して、最長5年の長期休暇の取得が可能です。

    休職中は無給ですが、社会保険料の本人負担分が会社支払いとなります。また、留学に関する初期費用が最大50万円まで支給されます。

    参考:『多様性を推進する取り組み』ソニーグループ株式会社|採用情報

    従業員のキャリア形成のためにサバティカル休暇の導入を

    サバティカル休暇は、従業員の成長を促しつつリフレッシュをはかれる貴重な手段です。制度を積極的に導入すれば、従業員の長期的なキャリア形成をサポートできます。

    また、休職中に得られた新しい視点や経験は、職場に戻ったあとに周囲によい影響をもたらすでしょう。サバティカル休暇の導入を検討して、従業員が気持ちよく働ける環境を整えてみてはいかがでしょうか。

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