シフトカットとは? 会社都合による違法性の有無や具体例、労働基準法上の扱いを解説

景気の変動や天候不良などを理由に、突然シフトを削減されるケースがあると、労働者の生活に大きな影響をおよぼします。
本記事ではシフトカットの定義から、会社都合による削減の違法性、具体的な事例までの詳細を解説します。労働者の権利を守り、適切な雇用管理を行うために、企業の人事担当者や労働者の方々は最低限の知識を持つことが重要です。
シフトカットに関する疑問や不安を解消するために、ぜひ最後までお読みください。
そもそそもシフト管理に課題がある方は以下の記事もご確認ください。
→シフト管理の方法と課題|システム化は必要?


シフトカットとは
シフトカットとは、予定されていた勤務シフトが急に削減されることを指します。具体的には、企業側の都合で従業員の勤務時間を短縮したり、シフトそのものを取り消したりすることです。
シフトカットは表面的には従業員のデメリットが大きいように見えますが、実際には企業と従業員の双方にメリットとデメリットがあります。比較することで偏った判断を避け、不要なトラブルを防げる可能性があるためメリット・デメリットを確認してみましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
企業側 | ・コスト削減 ・過剰人員の抑制 ・業務効率の向上 | ・従業員の不満 ・人材不足 ・法的リスクの増加 |
従業員 | ・自由な時間の確保 ・ストレス軽減 ・副業が可能 | ・収入減少 ・キャリアへの不安増加 ・職場とのつながりの低下 |
確かにシフトカットは、収入の減少や生活への影響といった従業員側のデメリットが大きいため、慎重に進める必要があります。ときに会社と従業員の間でトラブルに発展する可能性も否定できません。
必要に応じて代替手段や補償措置を検討することで、双方が納得できる結果につなげる対応が企業には求められるでしょう。また決定した段階で迅速に、そして誠実に従業員に伝えることが重要です。
従業員のデメリットが目立ちやすい措置であるからこそ、シフトカットは慎重な検討と誠実なコミュニケーションを通じて、双方が納得できる形で進めましょう。

会社都合によるシフトカットの具体例
会社の業績不振や売り上げの低迷により、従業員の勤務時間を減らす以外方法はないということは決してめずらしくありません。とくに2019年末から猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で、シフトカットを余儀なくされた事例は多々ありました。
予測のつかない経営状況や外部環境の変化がある場合、企業はやむを得ずシフトカットを選択することがあります。
実際に起こり得るシフトカットの具体例を紹介します。
シフトカットの例 | |
---|---|
売り上げの低迷 | 飲食店や小売店では、客足の減少により売り上げが低下した場合、人件費を抑えるために従業員のシフトを減らす (例:週5日勤務でシフトが組まれていた従業員が、実際には週3日の出勤に変更される) |
業務量の減少 | 機械トラブルや発注ミスによる業務縮小が発生した場合、予定していた作業の減少にともなって、シフトを短縮する |
店舗や事業所の閉鎖 | 経営状況の悪化により、一時的または恒久的に店舗や事業所を閉鎖する場合、その期間に従業員が働く機会を失う |
シフトカットは、企業にとってコスト削減の手段である一方で、従業員にとっては収入に直結する重要な問題です。一方的に行われた場合、従業員への生活への影響は計りきれません。
事前の説明と同意を得ること、可能な限り代替案の提供すること望ましいでしょう。適切な対応により、双方の信頼関係の維持が可能です。

能力不足を理由としたシフトカットできる?
シフトカットの理由として、想定外の売り上げ低下などの経営不信は避けられない事態と感じられるかと思います。
では能力不足を理由として、シフトカットすることは認められるのでしょうか。
能力不足は個別の評価によるものであり、客観的な基準で証明することが困難です。能力不足によるシフトカットは、本人の納得を得られず、将来のトラブルにつながる可能性もあります。
したがって、従業員の能力不足を理由にシフトカットを行うことは、正当な理由とみなされにくいと考えられます。
能力不足による問題が生じた場合は、公平な態度で、まずは改善の機会を提供することが重要です。シフト削減ではなく、教育訓練・研修、OJTなどの対応を検討しましょう。
会社都合のシフトカットは違法? 労働基準法上の扱いと休業手当を解説
シフトカットが違法になるか合法であるかは、具体的な状況や対応の仕方によって判断が分かれます。法的解釈の一例として、以下に違法・合法とされる場合の基準を紹介します。
違法/合法 | 判断基準 |
---|---|
違法 | ・労働契約で取り決めた労働時間や勤務条件が、一方的に不利益に変更 ・従業員の同意が得られていないにもかかわらず、恒常的なシフト削減 ・事実上の解雇やそれに近い状況 |
合法 | ・一時的な経営的な理由や業務縮小に基づく ・事前に十分な説明を行い、従業員の同意を得ている ・不可抗力による業務停止(天災など) |
以上の基準はあくまでも一般的な法的解釈であり、実際のケースでは状況に応じた判断が必要です。
自宅待機の業務命令はできる
一時的な業務縮小や経営的な理由があれば、シフトカットは違法ではなく、従業員に自宅待機を命じることも可能です。企業には労働契約に基づく指揮命令権が認められているためです。
ただし自宅待機の要請は、「会社都合の休業」にあたるため、適法に行うためには、以下の2つのポイントに注意しましょう。
業務命令としての正当性 | ・業務の一環として指示されるものであり、明確な理由が必要 ・従業員の理解と同意を得ることが望ましい |
休業手当の支払い | ・平均賃金の60%以上の手当を支払う(労働基準法第26条) |
従業員にシフトカットを依頼する際は、背景や目的から説明することが重要です。
休業手当の支払い義務が発生することもある
企業が業務縮小や経営的な理由で従業員のシフトを削減した場合、休業手当の支払い義務が発生します。
労働基準法第26条では、使用者都合で従業員を休業させた場合、平均賃金の60%を支払わなければならないと明記されています。従業員が自身の責任でない理由で仕事ができない場合でも、生活の安定を保つために設けられた保障制度です。
ただし天災や不可抗力による業務停止の場合は、企業側の責任が問われず、休業手当の支払い義務は発生しません。休業理由に応じて支払いの有無が変わる点に注意が必要です。
休業手当の支払いをしない場合
休業手当の支払い条件を満たしているにもかかわらず、従業員への支払いがない場合、企業は労働基準法第120条に基づいて30万円以下の罰金を科される可能性があります。そのため休業手当の適用有無を正確に判断し、法令を遵守することが重要です。
休業手当は、従業員の生活を守るだけでなく、企業の法的リスクを回避するための重要な措置といえるでしょう。
休業手当と休業補償の違い
「休業手当」と「休業補償」は似ていますが、適用される状況が異なります。
休業手当 | 会社都合で従業員が仕事を休むことになった場合に支払われる手当 |
休業補償 | 従業員が業務上の災害や病気によって働けなくなった場合に、企業や労災保険から支払われる手当 |
休業手当は、労働基準法第26条に基づく保障制度で企業側の経営上の理由や業務縮小が原因で、従業員が働けない場合に支払われます。
一方で休業補償は、主に労災事故や仕事中のケガが原因で発生し、補償内容は労働基準法76条で詳細に規定されています。
シフトカットによる休業手当の算出方法
シフトカットによる休業手当は、労働基準法第26条に基づいて算出されます。基本となる計算式は以下のとおりです。
休業手当 = 平均賃金 × 60/100 |
式に使われる平均賃金は、直近3か月間の総賃金をその期間の暦日数で割って算出します。総賃金には基本給や手当が含まれますが、ボーナスや臨時の支給は除外されます。
フルタイム労働者の場合と、パート・アルバイトの場合の計算例を確認してみましょう。
【フルタイムの例】
直近3か月の総賃金90万円 暦日数90日 | |
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平均賃金 | 900,000円 ÷ 90日 =10,000円/日 |
休業手当 | 10,000円 × 60/100 = 6,000円/日 |
【パート・アルバイトの例】
時給1,000円で1日5時間労働 直近3か月の暦日数90日 総労働時間が300時間かつ労働日数が60日 | |
---|---|
平均賃金(A) | 1,000円 × 300時間 ÷ 90日 = 3,334円/日 |
平均賃金の最低補償額(B) | 1,000円 × 300時間 ÷ 60日 × 60/100 =3,000円 |
(A)(B)を比較して高い金額を平均賃金として採用し、休業手当を計算 | |
休業手当 | 3,334円 × 60/100 = 2,001円/日 |
時給や日給制は、月給制と計算方法が異なるため注意しましょう。通常の平均賃金は暦日数、最低補償額は労働日数あたりの平均賃金を算出し、それぞれを比較します。
休業手当は、正社員、パート、アルバイトを問わず、すべての従業員に適用されます。雇用形態にかかわらず、同一の計算で適用されることがポイントです。
ただし、時給制や日給制の労働者は、実労働日数を基準とした最低保障額が適用される場合があります。最低保障額を下回らないように注意しましょう。
参照:『労働基準法第26条で定められた休業手当の計算について』厚生労働省
シフトカットによるトラブルを回避するためのポイント
シフトカットによるトラブルを回避するには、以下の3つのポイントをおさえることが重要です。
- 労働条件通知書を明示し、内容を確認してもらう
- 雇用契約書を交わす
- 従業員の希望や要望を把握しておく
従業員との信頼関係を維持するために、一つずつ確認していきましょう。
労働条件通知書を明示し、内容を確認してもらう
とくにシフト制の職場では、シフトの変更や削減が発生する可能性があります。
シフトカットによるトラブルを防ぐには、労働条件通知書を従業員に明示し、内容を十分に理解してもらうことが重要です。
労働条件通知書には労働時間や給与、休暇、シフト変更の対応方法などが記載されており、交付は法的な義務です。
とくにシフト制の職場では、「売り上げ状況によってシフトを調整する場合がある」といった内容を具体的に明記しましょう。事前に条件や対応方法を明示しておくと、のちの「聞いていない」といったトラブルを防げます。
また通知書を渡すだけでなく、内容について口頭で説明し、従業員の理解を深める努力も必要です。「内容に不明点があれば質問してください」といった姿勢を示すことで、信頼関係の構築につながります。
雇用契約書を交わす
シフトカットや勤務条件の変更がトラブルになるのを防ぐため、雇用契約書も欠かせません。雇用契約書は、労働条件通知書とは違い、従業員の同意を証明できる書類です。
雇用契約書を明確にしておけば、万が一トラブルが起きた際も、書面をもとに冷静に対処が可能です。変更があれば更新し、現状に即した内容にすることで、従業員が不安を感じない環境を整えられるでしょう。
従業員の希望や要望を把握しておく
シフトカットを行う際は、従業員の希望や要望を事前に把握しておくことが、トラブル回避のために大切です。
たとえば、「生活費を稼ぐために最低でも週4日は勤務したい」といった従業員の事情を理解していれば、配慮が可能になります。
また、シフトカットの対象者やタイミングを事前に話し合うことで、従業員が納得しやすくなります。「シフトを減らす期間は1か月程度」「事前に1週間以上の通知をする」といった具体的な取り決めを共有すると、信頼関係を損なわずに対応できるでしょう。
定期的なコミュニケーションを通じて、従業員が抱える不満や不安を早期に察知し、必要なサポートを提供することで、本人のモチベーション維持にもつながります。
シフトカットによる退職手続きでの注意点
シフトカットが原因で従業員が退職を希望した場合も、従業員の意向を尊重して、無理な引き留めをしないことが大切です。以下のポイントに注意して進めましょう。
ポイント | |
---|---|
従業員の意向を尊重 | 退職理由を丁寧にヒアリングし、無理な引き留めや一方的な判断を避け、納得のいく形で手続きを進めます。 |
退職理由の適切な分類 | 労働契約で定めた勤務条件を大幅に変更した場合は「特定理由離職者」や「特定受給資格者」に該当する可能性があり、慎重に確認が必要です。 |
労働条件や補償の確認 | 雇用契約書に基づき、退職日や未消化の有給休暇の扱い、必要な補償について整理します。 |
雇用保険や再就職支援の案内 | 雇用保険の申請や再就職支援サービスなど、退職後に必要な情報を従業員に提供します。 |
公平で誠実な対応 | 不適切な対応は法的リスクや企業イメージの低下を招く可能性があるため、公平で丁寧に進めることが重要です。 |
退職手続きを慎重に行うことで、従業員との信頼関係を維持し、企業イメージを守ることができます。
シフトカットの実施では個別の事情に配慮を(まとめ)
シフトカットは、企業の都合で従業員の勤務時間や日数を減らす行為です。
適切に実施しなければ労働基準法違反となる可能性があります。とくに、労働契約や就業規則で定められた勤務日数や時間を一方的に変更し、不利益を与えるようなシフトカットは、法的トラブルの原因になりかねません。
企業側がシフトカットを行う際は、従業員との事前の合意が大切です。突然の変更や直前でのシフト削減は、収入減少や生活への影響が大きく、企業には休業手当の支払い義務が生じることもあります。
従業員の生活に配慮して、必要な場合は、代替の業務や柔軟な働き方を提案することで、労使間の信頼関係を維持できます。法律を遵守しながら、従業員の要望を適切に反映した労働環境を整えることは、重要な経営課題の一つといえるでしょう。
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