シフト制とは? メリットやデメリットもわかりやすく解説
シフト制とは、労働日や労働時間が固定されておらず、労働者がさまざまな時間帯に勤務する働き方です。制度を導入すると、柔軟な働き方が実現し、従業員が自分のライフスタイルに合わせてスケジュールを組むことができます。
本記事では、シフト制の特徴や種類、導入によるメリット・デメリットなどを詳しく解説します。導入における注意点も解説しますので、適切な運用にお役立てください。
シフト制とは?
シフト制とは、勤務パターンや従業員の希望を考慮して調整したうえで、労働日や時間帯が決まる働き方を指します。雇用契約や労働契約締結の時点では、明確に労働日や労働時間が固定されていません。
シフト制は、サービス業や飲食業など営業時間が長い業種や、24時間稼働している工場を抱える製造業において広く採用されています
また、アルバイトやパートを採用する企業も、シフト制を取り入れていることが多くあるでしょう。
参照:『「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項』厚生労働省
シフト制と固定制の違い
シフト制では、企業が従業員の希望を考慮し、職場の状況に応じて、労働日や労働時間を決めます。一方、企業が決めた時間や曜日に、従業員が合わせる働き方を固定制といいます。
シフト制を採用する代表的な職場に、営業時間の長いコンビニやレストランがあり、固定制の代表例として事務作業や受付業務などのオフィスワークが挙げられるでしょう。
シフト制と固定制の具体的な違いを紹介します。
- 働く日時が違う
- 休日が違う
働く日時が違う
シフト制と固定制の違いは、働く日時の決め方です。
シフト制では、従業員と企業の間で事前に働く日時を調整して決めます。一般的にシフトは1か月単位で調整され、従業員が提出した希望スケジュールをもとに出勤日が決定されます。
固定制では、企業があらかじめ定めた就業時間にしたがって、出勤する曜日や時間帯が固定されます。シフト制とは異なり、働く曜日や時間帯が常に同じである点が特徴です。
休日が違う
シフト制と固定制では、休日の取り方も異なります。
シフト制では、出勤日と同様に、休日も希望を出すことができます。ただし、企業の状況や人員の配置によっては、必ずしも従業員の希望通りに休日を取得できるとは限りません。
固定制では、勤務日が固定されているため、休日も固定されています。固定制の休日は、就業規則で具体的に定められています。
シフト制と変形労働時間制の違い
シフト制と混同しやすい言葉に「変形労働時間制」があります。変形労働時間制とは、1か月や1年単位など、一定期間内で労働時間をフレキシブルに調整できる制度です。
労働基準法では法定労働時間を「1日8時間/週40時間」と定めており、これを超えて働いた時間は時間外労働として扱います。時間外労働をした従業員に対して、企業は割増賃金を支払わなければなりません。
変形労働時間制では一定期間内における平均の労働時間が、法定労働時間内に収まれば、時間外労働には数えません。一定期間内の総労働時間は変わらず、業務量や繁閑に応じて労働時間を調整できる働き方といえます。
労働時間の違い
シフト制では、労働時間をあらかじめ決めて働きます。従業員は希望するスケジュールを提出できますが、シフトパターンや状況によっては、希望が通らないこともあります。
変形労働時間制は、労働時間を月や年単位で調整できる制度です。特定の日や週に法定労働時間を超えて働く場合や、超えない場合であっても、最終的に全体の労働時間を調整できるメリットがあります。特に、繁忙期と閑散期の差が激しい業種に適した働き方といえるでしょう。
就労手続きの違い
シフト制と変形労働時間制は、導入に際しての手続きも異なります。
シフト制を新たに採用する場合、特別な協定を締結したり届け出を行ったりする必要はありません。
一方、変形労働時間制を新たに導入する場合は、労使協定の締結と届け出が必要です。また、就業規則の見直しも行わなければなりません。
シフト制の種類
シフト制には、一般的に以下の3種類があります。
- 完全シフト制
- 固定シフト制
- 自由シフト制
それぞれの種類の違いを整理するために、特徴をご紹介します。
完全シフト制とは
完全シフト制は、あらかじめ用意された複数の勤務パターンから決まったスケジュールで働く制度です。たとえば、早番・遅番・夜勤の3交替制の場合、月曜日は夜勤で火曜日は遅番という勤務日になります。
完全シフト制は、曜日などにより労働者の勤務パターンが異なり、一定期間ごとに変更があるのが一般的です。
固定シフト制とは
固定シフト制とは、従業員と企業が相談して、あらかじめ曜日や時間帯を決めて働く方法です。たとえば、「毎週月曜日と水曜日は10時から、木曜日は13時から」と話し合いで決め、勤務時間が固定されています。固定シフト制のメリットは、従業員がプライベートの予定を立てやすいことです。
自由シフト制とは
自由シフト制とは、働く曜日や時間帯が固定されておらず、従業員の希望に沿って勤務する働き方です。
事前に従業員が希望スケジュールを提出し、企業が調整したうえで勤務日を決定します。個人が希望を申告し、ある程度考慮してもらえると、従業員にとって柔軟な働き方が可能です。
ただし、必ずしも希望通りに働けるわけではなく、職場の状況によっては希望が通らないこともあります。
シフト制のメリット
シフト制の具体的なメリットをご紹介します。
- 業務時間の拡大
- 人材不足の解消
- モチベーションの向上
業務時間の拡大
シフト制では、従業員の勤務時間を分散することで営業時間を拡大できます。これにより、競合店舗との差別化がはかれ、売り上げや利益の増加が期待できます。特に、長時間の営業や稼働が必要なサービス業や製造業などの業種には、シフト制が適しているといえるでしょう。
人材不足の解消
シフト制を活用すると、隙間時間や特定の時間帯に働きたい労働者を集められるため、人材不足の解消につながります。多様なニーズを持つ人材を積極的に活用し、適切に業務を配分できると、組織全体の効率を上げられるでしょう。
シフト制を設けて、アルバイトやパートなどの非正規雇用従業員を、積極的に採用することで、人材不足を補える可能性があります。
モチベーションの向上
シフト制は、従業員の柔軟な働き方や、ワークライフバランスの実現を促進します。柔軟な働き方ができると、従業員のモチベーションが向上し、仕事への取り組み方によい変化が生まれるでしょう。
シフト制のデメリット
シフト制の具体的なデメリットをご紹介します。
- 担当者の負担が増える
- 人員不足に対応しなければならない
担当者の負担が増える
シフト制を運用する企業では、勤務スケジュールを組む際に、バランスや人数などを考慮する必要があるため、シフト作成者の負担が増えます。
特に人数が多ければ多いほど、スケジュールを組むまでに時間と労力がかかるでしょう。シフトの作成に時間がかかってしまうと、コア業務に取り組む時間が不足し、残業の原因にもなります。
人員不足に対応しなければならない
急な人員不足に対応しなければならない点も、シフト制のデメリットの一つです。
勤務スケジュールを組むとき、企業はしばしば最低限に必要な人数でスケジュールを組むことがあります。その場合、急な欠勤が発生すると、その時間帯の人員を補充しなければなりません。
また、企業が必要な人員を確保しなければ、営業ができない業種もあるため、人員確保の難しさもシフト制における運用の難しさといえます。
シフト制における有給や時間外労働
シフト制で働く従業員に適用する、有給休暇や時間外労働のルールは、固定勤務などと同じです。シフト制における有給休暇や時間外労働、休日労働の扱いについて解説します。
有給休暇
シフト制で働く従業員にも、有給休暇は付与されます。
固定制と同様に、企業は雇い入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、有給休暇を付与しなければなりません。
時間外労働
残業についても、シフト制と固定制に違いはありません。
企業は、労働基準法で定める「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えて働かせた場合、超過した分を時間外労働として扱い、割増賃金を支払う必要があります。
休日労働
シフト制の従業員を法定休日に出勤させたときも、企業は割増賃金を支払わなければなりません。
シフト制の職場では、人によって勤務の時間帯や曜日がバラバラであるため、従業員が普段から法定休日を把握していない場合もあります。法定休日や休日出勤に関するルールは、就業規則に明記しておきましょう。
シフト制を導入する際の注意点
シフト制を導入する際に、企業があらかじめ注意しておきたい点をご紹介します。
- 法令順守を徹底する
- シフト制が最適なのか見極める
- 休憩時間を正しく管理する
- 労働条件を明確に提示する
- シフト変更は従業員に相談する
法令順守を徹底する
企業は、原則として従業員に「1日8時間/週40時間」の法定労働時間を超えて労働させてはいけません。シフト制も同様で、法定労働時間を超える労働をさせる場合は、労使協定である36協定の締結と届け出が必要です。企業は法定労働時間や36協定を正しく理解し、法令遵守を徹底しましょう。
シフト制が最適なのか見極める
シフト制が最適な勤務形態であるか否かを検討する必要があります。なかには、週に複数回、法定労働時間を超えた長時間労働が必要な職種・業種もあります。そのような企業では、必ずしもシフト制にこだわる必要はないでしょう。変形労働時間制など、より最適な制度を導入して、残業代を削減する勤務形態も選択肢に入れることをおすすめします。
休憩時間を正しく管理する
企業側は、従業員に対し、労働時間の長さに比例して休憩時間を与えなくてはなりません。従業員の1日における労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間が必要です。
休憩時間は必ずしも連続した時間で与える必要はありません。業務の性質や必要性を考慮したうえで、適切に設定しましょう。
参照:『いわゆる「シフト制」により就業する労働者の 適切な雇用管理を行うための留意事項』厚生労働省
労働条件を明確に提示する
採用活動では、労働条件を明確に提示します。勤務形態や業務内容、勤務時間や休日など、できるだけ具体的に明確にし、労使間のトラブルを未然に防止しましょう。
シフト変更は従業員に相談する
シフト制では管理上、人手不足やトラブルにより、従業員のシフト変更が必要になる場面もあるでしょう。従業員に相談せずに勝手にシフトを変更するのは、配慮に欠けた行動といえます。やむ得ない事情によりシフト変更が必要なときは、従業員に相談しましょう。
参照:『「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項』厚生労働省
参照:『労働契約法 第8~10条』e-Gov法令検索
シフト制における明示事項
労働基準法では、企業が労働者と労働契約を結ぶとき、労働者に対して労働条件を明示しなければならないことを定めています。
参照:『労働基準法第15条』e-Gov法令検索
参照:『労働基準法施行規則 第5条』e-Gov法令検索
特にシフト制では、「始業と終業時刻」「休日」についての明示がポイントになります。常時10人以上の労働者を使用している企業では、「始業と終業時刻」「休日」などに関する明示事項について、就業規則の作成と届け出が必要です。
必ず明記しなければならない事項
以下の内容は、必ず書面で明記し、交付しなければなりません。
- 契約期間
- 期間の定めがある契約を更新する場合の基準
- 就業場所や従事する業務
- 始業・終業時刻や休憩、休日など
- 賃金の決定方法や支払い時期など
- 退職(解雇の事由を含む)
- 昇給(書面でなくてもよい)
昇給に関する内容は、必ず明記しなければなりませんが、書面ではなくてもよいとされています。
企業に定めがある場合に明示しなければならない事項
以下の内容は、企業側で何かしらの定めを行っている場合に、明示しなければなりません。
- 退職手当
- 賞与など
- 食費や作業用品などの負担
- 安全衛生
- 職業訓練
- 災害補償など
- 表彰や制裁
- 休職
そのほか必要に応じて明示する事項
労使間のトラブルを避けるため、明示事項のほかにも、必要なルールは明示しておくとよいでしょう。具体的には、以下の内容が挙げられます。
- シフトの作成や通知
- シフトの変更
- シフトや労働に関する設定
参照:『「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項』厚生労働省
まとめ
シフト制とは、仕事の勤務において曜日や時間などが固定されていない働き方を指します。特に、長時間営業を行っている業種で導入されています。
シフト制を活用すると、従業員の働きやすさが向上するだけでなく、企業側にも以下のメリットがあります。
- 業務時間の拡大
- 人材不足の解消
- モチベーションの向上
シフト制を導入する場合においても、法定労働時間や休日、残業の扱いは固定制と同じです。労働基準法で定められているルールを正しく理解し、シフト制を適切に運用しましょう。