変形労働時間制でのシフト変更は違法? 作成時のポイントと注意点を解説

変形労働時間制でのシフト変更は違法? 作成時のポイントと注意点を解説

変形労働時間制を採用している職場で、急なシフト変更が必要になったとき、「違法になるのでは?」と悩んだことはありませんか。

変形労働時間制は、基本的に一度決めたシフトは変更できないとされていますが、現場の実情では急に変更が必要になることもありますよね。

本記事では、変形労働時間制でのシフト変更が違法になるのか、シフト変更は可能なのかについて法的観点から解説します。最初にシフトを作成するときのポイントや実務での注意点も紹介します。急なシフト変更が必要になったときの対応が理解できるでしょう。

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    変形労働時間制でのシフト変更は違法なのかを解説

    変形労働時間制でのシフト変更が違法になるのかどうかは、状況に応じて異なります。以下では、原則的な考え方と、例外的にシフト変更が認められるケースについて順を追って解説します。

    変形労働時間制におけるシフトの定義

    変形労働時間制は、従業員の働く時間を特定の期間内(1週間・1か月・1年)で調整する仕組みです。固定された勤務時間ではなく、業務量に応じて繁忙期には労働時間を長くし、閑散期には短くするなど、柔軟に対応します。

    変形労働時間制における「シフト」とは、特定の期間内における労働日の始業時間や終業時間、およびその労働時間の配分のことです。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    原則として変形労働時間制のシフト変更は認められない

    変形労働時間制におけるシフト変更は、原則として認められません。

    改正労働基準法の変形労働時間制の項目で、「業務の都合で使用者が労働時間を変更すること」が認められていないためです。急なシフト変更は違法性を問われる可能性があります。

    変形労働時間制を採用する条件は、対象期間における労働日や労働日ごとの労働時間をあらかじめ特定しておくことです。、あとから会社の都合で変更できないとされています。

    ただし、変形労働時間制であっても特例としてシフト変更が認められるケースも存在します。

    参照:『改正労働基準法の施行について』厚生労働省

    正当な理由があれば変形労働時間制でもシフト変更が可能

    原則としてシフト変更は認められない変形労働時間制ですが、特定の状況では例外的に変更が許される場合があります。以下は、過去の判例から正当な理由として考えられる主な5つの例です。

    具体例
    天変地異地震や台風などの天変地異が発生した
    設備トラブル業務に使う機械が故障した
    人的トラブル従業員の事故・ケガが発生した
    業務内容の大幅な変更業務内容に大幅な変更が生じた
    組織改編会社や部署などが統合された

    ただし「正当な理由」は法的に明確に定義されているわけではありません。企業の一方的な判断で変更すると、違法と見なされるリスクがあります。

    よほど大きな理由がない限り、シフト変更は避けるのが無難といえるかもしれません。

    企業の担当者は、変形労働時間制のシフト変更が「本当に必要か」を慎重に検討し、管轄の労働基準監督署に相談することをおすすめします。

    労働者の不利益にならない変更は違法性がない

    変形労働時間制におけるシフト変更は、やむを得ない理由の有無にかかわらず、労働者にとって不利益にならない場合は違法性が問われません。

    「労働者の不利益にならない変更」とは具体的にどのような状況を指すのでしょうか。主な例は以下の3つです。

    具体例
    労働時間の変更がない始業時間と終業時間を1時間ずつ遅くする
    給与が減らない労働時間を短くするが賃金は削減しない
    変更の具体的な事由が事前に決まっているシフト変更が必要な場面や条件を就業規則などに明確に記載し、労働者が納得したうえで運用

    労働者の「不利益となる」代表的な例が、賃金や割増賃金の削減です。従業員の労働時間が削られ、報酬が減る事態が生じないように注意してルールを決めましょう。

    変形労働時間制でのシフト変更をする際の注意点

    何かしらの理由で変形労働時間制のシフトを変更しなければならない場合の注意点を、詳しく解説します。

    変形労働時間制でシフト変更を行う際は、法的ルールに基づく原則と例外を理解したうえでの運用が必要です。不適切なシフト変更は、トラブルを招くだけでなく、最悪の場合、変形労働時間制そのものが適用できなくなるリスクがあります。

    • 規定から外れると変形労働時間制が不適用となるケースがある
    • シフト変更の履歴をチェックできるようにする
    • 時間外労働に対して割増賃金が発生する
    • 労使間で協議したうえで周知徹底する

    4つの注意点を理解して実践することで、シフト変更を円滑に進め、トラブルを未然に防げるため、一つずつ確認していきましょう。

    規定から外れると変形労働時間制が不適用となるケースがある

    変形労働時間制におけるシフト変更は、やむを得ない正当な理由があるときに認められ、それ以外の変更は違法となるリスクがあります。

    認められない例
    ・客数が少ないためシフトを削る
    ・業務を終わらせるために休日振替を検討する

    使用者側の都合による変更は、労働者に不利益とみなされるだけでなく、変形労働時間制の要件である「労働日や労働時間の特定」を満たさなくなる可能性があります。

    最悪の場合、変形労働時間制の適用が無効となり、所定労働時間を超過した分について割増賃金の支払いが必要です。シフト変更の際は、必ず理由が正当であるか慎重に検討しましょう。

    シフト変更の履歴をチェックできるようにする

    変形労働時間制でのシフト変更の履歴を管理し、トラブル防止に備えましょう。

    履歴が残っていれば、従業員からの訴訟や、労働基準監督署の調査があった場合も正当性を証明する証拠となります。やむを得ない理由でのシフト変更を説明する際に履歴の提出は有用です。

    シフト変更履歴を確認できる体制を整えておくことが、円滑な運用には欠かせません。

    時間外労働に対して割増賃金が発生する

    変形労働時間制でも、シフト変更で時間外労働が発生すれば割増賃金の支払いが必要です。

    変形労働時間制の所定労働時間を1日9時間と定めた場合
    割増賃金の支払不要必要
    実労働時間9時間11時間
    補足(法定労働時間8時間超えでも)割増賃金が不要2時間分の時間外労働に割増賃金が必要

    変形労働時間制で時間外労働手当が発生する基準は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える場合ではなく、あらかじめ設定された所定労働時間を超える場合です。

    同様に深夜労働や休日労働も割増賃金の対象です。正確に計算し、適切に支払うことで、従業員とのトラブルを未然に防げるでしょう。

    変形労働時間制における詳しい残業代の適用方法は以下の記事をご確認ください。

    労使間で協議したうえで周知徹底する

    従業員への負担を最小限にするためには、シフト変更の理由を明確にし、事前に協議を行うことが重要です。


    急な変更は従業員にストレスや過労をもたらす可能性があるため、変更の背景や理由を説明し、納得を得る努力をしましょう。また、早めに周知して移行期間を設けることで、変更による混乱を防げます。

    従業員に配慮することで、労使間の信頼関係を維持しつつ、スムーズにシフト変更を進められるでしょう。

    変形労働時間制のシフトを作成するポイント

    変形労働時間制では、シフトの変更が原則として認められておらず、正当な理由がない限り調整することが難しい制度です。そこで最初のシフト作成が勤怠管理において重要な作業となります。

    作成の段階での見通しが甘いと、業務の停滞や従業員とのトラブルにつながる可能性も否定できません。

    変形労働時間制のシフトを作成する際におさえておきたい5つのポイントを解説します。

    1. 業務量に合わせたシフト作成の重要性
    2. 自社に適した変形労働時間制の選択
    3. 事前の計画と従業員への周知の徹底
    4. 複数のシフトパターンの準備
    5. 勤怠管理システム導入による効率化

    ポイントを理解すれば、業務効率を向上させつつ、従業員の負担を軽減できるシフトを計画できるでしょう。

    期間内の業務量に合わせたシフトを作成する

    変形労働時間制では、シフトを変更しないことが大前提です。シフト作成後に人手不足や過剰が発生しても、基本的に変更は認められません。

    初めから業務内容や必要な人員を正確に見積もり、適用期間内の業務量に応じたシフトを作成する必要があります。

    変形労働時間制を導入する前に、業務量や繁閑と作業工数などを洗い出し、どの程度の人員が必要かを把握しましょう。

    見通しが甘いと、業務の停滞や従業員への負担増加を招くおそれがあります。業務効率を最大限に引き出す計画が必要です。

    自社に適した変形労働時間制を取り入れる

    企業の業務特性に合ったタイプの変形労働時間制を選ぶことで、運用のスムーズさが向上します。

    変形労働時間制には以下の4つのタイプがあり、それぞれ異なるニーズに応じています。

    種類業種・職種向いている職場
    1週間単位の非定型的変形労働時間制旅館業や小売業など需要によって週単位で業務量が大きく変動する
    1か月単位の変形労働時間制製造業やサービス業月単位で業務内容が変動しやすい
    1年単位の変形労働時間制製造業や研究開発機関、建設業などの業種期的な業務計画に基づいて柔軟な働き方ができる
    フレックスタイム制専門職やクリエイティブな業界など時間や場所の制約を受けにくい

    自社の業務特性や従業員の働き方に合った制度を選ぶことで、効率的な運用が可能です。

    1か月単位の変形労働時間制の特徴などは、以下の記事で詳しくご確認いただけます。

    事前にシフト表を作成しておく

    変形労働時間制では、事前にシフト表を作成しておき、従業員へ早いタイミングで周知することが大切です。

    変形労働時間制では、運用開始前に「労働日」と「労働日ごとの労働時間」を決めておくことが法的に決められています。適切な周知期間を設けることで、従業員の混乱を防げるでしょう。

    ×1か月単位の変形労働時間制を導入している企業で、2週間おきにシフトを作成する
    1か月単位のシフトを1週間以上の周知期間を設けて作成・配布する

    適切な周知期間を設けることは、従業員の予定管理を助けるため、現場の信頼を高めるポイントです。

    複数のパターンのシフトを検証する

    複数の変形労働時間制のシフトパターンを用意し、比較・検証することで、業務効率を高める最適なシフトが見つかりやすくなります。

    どのパターンを選択すると、より効率的な勤務体制になるかを検証するのがおすすめです。。

    最適なシフトパターンがわかっていれば、急なシフト変更が必要になった際も柔軟な対応が可能です。

    シフト作成者の負担が軽減するとともに、従業員が予定を立てやすくなるというメリットが期待できます。

    効率的なパターンを事前に決定しておけば、運用トラブルの回避につながるでしょう。

    勤怠管理システムの導入や連携を検討する

    勤怠管理システムの活用で、変形労働時間制のシフト作成と運用が効率化します。


    変形労働時間制では、所定労働時間や法定労働時間を考慮したシフト作成が煩雑であり、手動管理ではミスが発生しやすくなります。勤怠管理システム導入により、作業の正確性と効率が向上するでしょう。

    勤怠管理システムのメリット
    ・労働時間の把握・管理がしやすくなる
    ・給与計算ソフトと連携できれば、集計や計算がラクになる
    ・労働基準法や労働契約に基づいて管理を徹底できる

    勤怠管理システムにはシフト作成や管理機能を搭載しているものも多く、従業員の希望や過去のシフトデータを考慮して最適なシフトを提案してくれるツールもあり便利です。

    勤怠管理システムを使ってシフト管理を行えば、ミスの防止と業務効率の向上が期待できます。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    勤怠管理システムのタイプやできることを確認したい場合は以下の記事をご確認ください。

    勤怠管理システムOne人事[勤怠]

    煩雑な労働時間の管理をシンプルに|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、変形労働時間制のような煩雑になりがちな労働時間の管理もシンプルに実施できる勤怠管理システムです。

    複数のシフトパターンを柔軟に設定できるとともに、実勤務との差異を可視化することで、意図しない長時間労働の防止にもお役立ていただけます。

    One人事[勤怠]の初期費用や操作性については、当サイトより、お気軽にご相談ください。専門のスタッフが貴社の課題をていねいにヒアリングしたうえでご案内いたします。

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    変形労働時間制のシフト管理を効率化するには(まとめ)

    変形労働時間制は、業務量や閑散期・繁忙期に応じて、従業員の労働時間を柔軟に調整できる制度です。一度決めたシフトは原則として変更が認められないため、シフト作成の段階で慎重に計画する必要があります。

    また、変形労働時間制のシフト管理は、固定労働時間制に比べて複雑です。時間と手間がかかるうえ、担当者には法的ルールの理解と実行が求められます。

    効率的にシフトを管理し、担当者の負担を軽減するには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。最新のシステムには、従業員の希望や過去のデータを活用して最適なシフトを提案する機能や、法定労働時間・所定労働時間の範囲内での運用を助ける機能が搭載されているツールもあります。

    変形労働時間制を採用する際は、計画段階での準備と、必要に応じたツールの活用を組み合わせることで、従業員にとって働きやすい環境と効率的な企業運営の両立を目指しましょう。