人事異動に拒否された場合の対応とは? 拒否を防ぐ方法と正当な理由、解雇事例を紹介

人事異動の内示を出したあとに、従業員から拒否の意思を示された経験はありませんか。
- 人事異動を拒否された場合、会社はどう対応すればよいのか
- 人事異動の拒否を認めなければならないケースはあるのか
疑問を抱いたことのある人事担当者もいるでしょう。人事異動を拒否されても、基本的には企業側が応じる義務はありません。しかし、拒否の理由によって慎重に判断し、柔軟な対応が求められる場面もあります。
本記事では、人事異動を拒否されたときの適切な対応方法を中心に、拒否が認められる正当な理由や実際に争われた事例も紹介します。労務トラブルを未然に防ぎ、従業員との信頼を保ちながら円滑に異動を進めるために、お役立てください。
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目次[表示]
なぜ人事異動が必要なのか
企業が人事異動を実施する目的は、大きく3つに分類できます。 「従業員のスキルアップ」「組織の活性化」「事業方針の推進」の3点です。それぞれの目的と背景を、表で整理してみましょう。
| 目的 | 前向きな理由 | 企業の本音 |
|---|---|---|
| 従業員のスキルアップ | 新しい環境での経験を通じた成長機会の提供 | マンネリ化防止、モチベーション維持 |
| 組織の活性化 | 部署間の知識・スキル移転、コミュニケーション活性化 | 不正防止、人間関係の固定化回避 |
| 事業方針の推進 | 適材適所の人材配置による組織力強化 | 業績不振部門の立て直し、余剰人員の再配置 |
人事異動による新しい環境への挑戦は、従業員にとって大きな成長のきっかけになります。
同じ部署に長く在籍していると、仕事がルーティン化し、モチベーションが下がることもありますが、異動によって新しい刺激を受けることで、仕事への意欲が再び高まるケースも少なくありません。
また、人事異動によって部署間で知識やスキルが共有されるようになると、組織全体が柔軟で強いチームへと変化します。人材の入れ替わりは人間関係の固定化を防ぎ、不正防止や風通しの改善にも効果があります。つまり、人事異動は組織に新しい風を吹き込む手段といえるでしょう。
さらに、業績不振の部門に経験豊富な人材を配置したり、余剰人員を成長領域へ再配置したりすることで、経営全体のバランスも整います。適材適所の配置が実現すれば、組織力が強化され、事業成果の向上にもつながります。

正当な理由がなければ人事異動は拒否できない
企業には「人事権」という、従業員の地位や処遇を決定する裁量があります。
人事権は日本の終身雇用制度と深く関連し、企業が雇用を長期的に保障する代わりに、一定の範囲で人事上の裁量が認められています。
人事異動は、人事権を行使する施策です。そのため、企業は従業員の同意がなくても異動を命じることができ、従業員は正当な理由がない限り原則として拒否できません。
配転命令とは
配転命令とは、企業が業務上の必要性に基づいて、従業員の勤務地や職務内容を変更できる権利です。多くの場合、就業規則や雇用契約書、労働協約などで明確に定められています。
ただし、配転命令の権利は無制限に認められているわけではありません。配転命令の行使には、以下のような制限があります。
- 業務上の明確な必要性があること
- 従業員に不当な不利益を与えないこと
- 性別や家庭環境などを理由とした差別を行わないこと
企業が配転命令を実施する際は、異動の目的や選定理由を明確に説明する必要があります。 新しい業務内容や労働条件の変更点をていねいに伝え、転居をともなう場合は生活に配慮し、準備期間も確保しなければなりません。
人事異動を拒否されたらまず理由を確認|正当な拒否理由とは?
人事異動を命じた際、従業員から拒否の意思が示された場合は、まずその理由を確認することが大切です。拒否の背景を正確に把握し、内容によっては異動計画の見直しが必要になることもあります。
では、どのような場合に人事異動の拒否が「正当な理由」とみなされるのでしょうか。主な理由は以下の6つです。
- 法律に違反している
- 入社時の雇用契約と異なる
- 理由もなく賃金が減る
- 従業員の大きな不利益になる
- 病気や介護などやむを得ない事情がある
- 目的や動機、根拠がない
法律に違反している
人事異動が労働基準法などの法律に反している場合、当然ながら異動命令は無効です。万一、法令を遵守しないまま異動を進めると、企業は重大な法的リスクを負います。
たとえば、妊娠・出産・育児休業を理由とした不利益な人事異動や、性別による差別的な配置換えは典型的な違反です。また、労働組合活動を行った従業員に対する報復的な異動、嫌がらせを目的とした異動も同様に違法とされます。
法令に反した人事異動は、従業員の人格権を侵害する行為として、企業の信用を損なうおそれがあります。人事異動を行う際には、法令遵守を前提に、目的や理由を客観的に説明できる状態を整えましょう。
入社時の雇用契約と異なる
採用時に提示された労働条件と異なる異動は、従業員との信頼関係を損ないます。
人事異動が入社時の雇用契約内容と明らかに異なる場合、従業員は拒否できる可能性があります。これは雇用契約の信頼関係を維持するための基本的なルールです。
たとえば、「地域エリア限定社員」として採用された従業員に、突然全国転勤を命じるケースです。また、「職種限定社員」に営業職など異なる職務を一方的に割りあてる場合も、契約内容を逸脱した行為にあたります。
契約条件を無視した人事異動は、民法や労働契約法に基づき無効と判断されるおそれがあります。
企業は、契約社員・限定正社員など契約内容を前提とした配置判断を徹底しなければなりません。変更が必要な場合は、必ず本人の不利益にならないように合意をとりましょう。
理由もなく賃金が減る
人事異動によって賃金や待遇が不当に下がる場合、従業員が拒否するのは正当といえます。
給与の減少は生活に直結する問題であり、企業は慎重に対応しなければなりません。
たとえば、管理職から一般職へ降格し、基本給や役職手当が大幅に減額されるケースです。
ただし、役職定年など、就業規則や賃金規定に基づいて合理的に行われたものであれば、賃金が減っても有効とされる可能性が高いです。
あるいは、営業手当がなくなる部署への異動なども、経済的不利益が大きい例です。
明らかな不利益の異動には、合理的な理由と十分な説明が必要です。説明不足のまま強行すると、生活に影響する不当な人事異動として無効と判断されるリスクがあります。
従業員の大きな不利益になる
人事異動によって、従業員や家族に著しい不利益が生じる場合も、拒否が認められることがあります。異動が単に勤務地の変更にとどまらず、生活全体に影響を及ぼすためです。
たとえば、通勤時間が極端に長くなる場合や、子どもの受験や配偶者の仕事など家庭の事情を無視した転勤命令です。あるいは、住宅ローンの支払いや家族の介護負担が増大する異動などが該当します。
家庭の事情を無視した人事異動は、本人の生活基盤を崩し、職場への信頼を失わせるおそれがあります。企業は、家庭状況や生活環境を十分に考慮し、本人との対話を通じて実現可能な異動計画を立てることが重要です。裁判で無効と判断される事例もあるため注意しましょう。
病気や介護などやむを得ない事情がある
人事異動を拒否できる典型的なケースとして、病気や介護などやむを得ない事情があります。従業員の健康状態や家庭の介護事情を無視した異動命令は、合理性を欠くと判断されやすいでしょう。
たとえば、病院に通う必要がある従業員に長距離通勤をともなう異動を命じる、要介護の親を抱える従業員を転勤させるといったケースです。育児・介護休業法や安全配慮義務の観点からも問題があります。
企業は、本人の健康や家庭の状況を十分に把握し、異動時期の延期や在宅勤務など柔軟な対応策を検討しましょう。 無理な命令は法的トラブルだけでなく、組織への信頼低下にもつながります。
目的や動機、根拠がない
人事異動には、明確な目的と合理的な根拠が不可欠です。万一、異動の意図が説明されず、特定の従業員を排除するために行われたと判断されると、「権利の濫用」とみなされ無効になる可能性があります。
たとえば、成果を上げている社員を上司が気に入らないという理由で別部署に異動させるようなケースです。業務上の必要性ではなく、私的感情による判断とみなされるでしょう。
人事異動には、「なぜその部署に配置するのか」を明確に説明できる根拠が必要です。
企業は、従業員の適性や能力を踏まえたうえで、組織全体のバランスと個人の成長の両立を意識した人事判断を行うことが理想といえます。
【理由別】人事異動の拒否に対する対応
人事異動を拒否する理由は、従業員によってさまざまです。「仕事内容があわない」「家庭の事情で対応できない」「健康上の問題がある」など、背景や事情は一人ひとり異なります。
人事異動を拒否する主な理由ごとに注意したいポイントと、適切な対応策を解説します。
| 注意点 | 考えられる対応策 | |
|---|---|---|
| 異動先への不満 | 異動先の仕事内容やポジションが合わないと感じるケース。キャリア形成を軽視している印象を与えるおそれがある。 | 異動の目的や意図を説明し、将来のキャリアパスを具体的に示す。 |
| 家庭の都合/介護 | 介護や家庭事情による拒否はめずらしくない。健康・家庭への配慮を欠くと安全配慮義務違反のリスク。 | 医師の診断書や事情を確認し、勤務地や勤務形態を柔軟に見直す。 |
| 病気・うつ・健康上の理由 | 無理な異動は症状の悪化や退職につながる可能性。とくにメンタル不調時は慎重な対応が必要。 | 産業医・主治医の意見を踏まえ、負担の少ない業務や時期に調整する。 |
| 配偶者の転勤・育児 | 家庭事情を無視した異動は、不当な扱いとみなされるリスクがある。 | 事情をヒアリングし、在宅勤務や時短勤務などを検討する。 |
人事異動の拒否が起きた場合、人事戦略と事業方針の整合性を見直すきっかけと考えるのも一案です。
異動の判断が上司の主観や慣習に依存していないか、本人のスキル・キャリア志向を反映しているかを再確認しましょう。
また、日頃から従業員一人ひとりのスキルや希望を可視化しておくと、人材データに基づく公正な異動判断がしやすくなります。
適材適所の人材配置は、従業員の成長を促し、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
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うつを理由に異動を拒否されたら?
うつ病など精神的な不調を理由に人事異動を拒否された場合は、とくに慎重な対応が必要です。
企業はまず、産業医や主治医と連携し、本人の健康状態を客観的に把握しましょう。診断書の提出を求め、治療の状況や通院の必要性を確認したうえで判断する必要があります。
症状が安定していない場合には、異動時期を延期したり、負担の少ない部署への配置換えを検討したりなど、柔軟な対応が求められます。
無理に異動を進めると症状が悪化し、休職や退職に至るおそれもあります。企業側には、回復を優先しつつ、組織全体で見た最適な人員配置を検討しなければなりません。
望まない異動を断行するとパワハラになる?
うつ病など健康上の問題を抱える従業員に対し、望まない人事異動を強行すると、パワハラと判断されるリスクがあります。
たとえば、以下のようなケースです。
- 業務上の必要性が説明できない配置転換
- 能力・経験から著しくかけ離れた職務への配置
- 従業員の健康状態を無視した異動
- 嫌がらせ・懲罰を目的とした異動
- 正当な理由のない降格を伴う異動
どんな人事異動も、必要性・合理性・背景を明確にし、従業員が納得できるようていねいに説明することが重要です。また、急な辞令を避け、十分な引継ぎ期間を確保することで、業務への影響も抑えられます。
人事異動の拒否に対する対応の流れ
人事異動の拒否に直面した場合は、感情的に対応せず、段階的に手順を踏んで解決を目指すことが大切です。次のように基本の3ステップで進めると、トラブルを最小限に抑えながら円滑な異動につながるでしょう。
人事異動の根拠を説明する
まずは、人事異動を行う理由を明確に説明します。企業には人事権があり、原則として従業員は異動を拒否できませんが、「なぜその異動が必要なのか」をていねいに伝えることが信頼構築の第一歩です。
説明すべき主なポイントは次のとおりです。
- 異動が必要となった業務上の理由
- 対象者として選定された経緯
- 異動後の具体的な職務内容
- 勤務条件の変更点(勤務地・勤務時間など)
一方的に通達するのではなく、従業員の不安や疑問も聞き取る姿勢が重要です。 「なぜ自分なのか」「異動後にどんなサポートがあるのか」も具体的に伝えます。
また、家族や生活環境への影響にも理解を示すことで、信頼関係を維持したまま対話が進められるでしょう。
待遇や制度を見直す
人事異動の拒否理由に応じて、待遇面での柔軟な対応を検討します。たとえば、以下のような対応が考えられます。
- 給与・手当の見直し
- 単身赴任手当の新設・増額
- 転居費用の補助
- 異動時期の調整
- 段階的な移行期間の設定
待遇にも配慮することで、従業員は「会社が自分の状況を理解してくれている」と感じ、異動への理解と納得が得られやすくなるでしょう。 結果として、信頼関係の強化や従業員エンゲージメント向上にもつながります。人事異動は命令ではなく、サポートの一環であることを伝える姿勢が大切です。
処分も視野に入れる
説明や待遇面での調整を尽くしても、正当な理由なく人事異動を拒否し続ける場合は、懲戒処分を検討せざるを得ないケースもあります。
ただし、処分を検討する際は、必ず次の点を確認しましょう。
- 就業規則に懲戒処分の根拠が明記されているか
- 処分の内容が相当であり、手続きが適正であるか
最終的に退職勧奨や解雇の判断に至る場合でも、十分な説明と話し合いの機会を設けた実績が必要です。 段階的に対応を重ね、従業員との信頼関係を維持しながら、最終的に判断しましょう。
人事異動の拒否を理由に解雇できるのか
人事異動を拒否しただけで、すぐに解雇事由となるわけではありません
従業員側に正当な事情があることもあるため、企業はまず異動の必要性や理由を説明し、納得を得る努力をする必要があります。
家庭の事情や健康状態に問題もなく、待遇面での配慮を行った結果、それでも正当な理由もなく拒否が続く場合は、就業規則に基づいて段階的な対応を進める判断も可能です。
まずは指導・注意を行い、改善が見られない場合は、けん責や減給などの懲戒処分へ移行します。最終的には退職勧奨や解雇の判断に至ることもありますが、懲戒解雇はあくまで最後の手段です。
手続きや判断を誤ると、不当解雇とみなされ労働争議や訴訟に発展するリスクが高まるため、法令遵守と十分な説明責任を果たしましょう。
人事異動の拒否で解雇などが争われた事例
人事異動をめぐるトラブルは、企業の方針だけでなく、従業員の事情や社会的要請にも左右されます。ここでは、人事異動の拒否をきっかけに、裁判で争われた代表的な判例を2つ紹介します。
- 東亜ペイント事件
- フジシール事件
企業がどのような対応をとるべきか、参考にしてみてください。
異動が認められた判例(東亜ペイント事件)
東亜ペイント事件(最高裁・1986年7月14日)は、転勤命令の有効性が争われた代表的な事例です。
営業職の社員が神戸から名古屋への転勤を命じられましたが、家庭の事情を理由に転勤を拒否。会社は懲戒解雇を行い、従業員が解雇無効を主張して訴訟に発展しました。
最高裁は、労働契約締結時に勤務地や職種の限定がなかったことから、企業に一定の配転命令権があると判断します。「権利の濫用にあたらない限り、転勤命令は有効」と結論づけました。
東亜ペイント事件の判例は、企業の人事権を広く認める一方で、不当な動機や目的がないことが前提である点を明確にした重要な判断です。
合理的な理由と説明があれば、従業員の拒否があっても異動を有効とすることができるといえるでしょう。
異動が無効になった判例(フジシール事件)
一方で、フジシール事件は、配転命令が「権利の濫用」にあたるとして無効と判断された判例です。
同事件では、管理職の従業員が退職勧奨を拒否したことをきっかけに、会社が取引先訪問を禁止し、肉体労働への異動命令を出しました。
裁判所は、異動を報復的・懲罰的とみなし、「業務上の必要性が認められない」「労働者に過度な不利益を与える」として無効を判断します。
従業員はもとの部署に復帰する地位を回復し、企業には約250万円の損害賠償が命じられました。
フジシール事件の判例は、異動命令の動機や目的が適正でなければ無効になることを明確に示しています。
業務上の必要性が乏しく、従業員に過度な負担を与える異動は「権利の濫用」に該当する可能性が高いといえるでしょう。
参照:『ハラスメント基本情報【第35回】 ― フジシール(配転・降格)事件』あかるい職場応援団
人事異動の拒否による退職は自己都合になる
人事異動の拒否を理由とした退職は、原則として自己都合退職となります。就業規則や雇用契約で転勤・異動の可能性が定められている場合、従業員には命令にしたがう義務があるためです。
ただし、以下のような背景の結果としての退職なら、会社都合として扱われる可能性があります。
- 業務上の必要性がない不当な異動命令
- 嫌がらせや報復を目的とした配置転換
- 健康状態や家庭事情を無視した転勤命令
- 合理的な配慮を欠いた異動対応
いずれも、会社側の対応が不適切だった場合に該当します。退職の原因が企業側の行為にあると判断されると、自己都合ではなく会社都合退職です。
退職の際は、従業員の申出内容や企業側の対応経緯を明確に整理し、どちらの区分が妥当かを慎重に検討することが大切です。
誤った判断をすると、雇用保険や再就職支援の取り扱いにも影響が出るため、人事部門としても法的リスクを避けるための確認が欠かせません。
人事異動の拒否を防ぐ方法はある?
人事異動の拒否を未然に防ぐには、採用・制度設計・コミュニケーションの段階での対策が重要です。「異動の伝え方」や「事前の期待調整」を工夫することで、一部のトラブルは防げます。以下で具体的に見ていきましょう。
1.採用するときに異動の可能性を伝える
採用面接では、将来的な人事異動の可能性を正直かつ具体的に説明することが不可欠です。
たとえば、「どの地域に転勤の可能性があるか」「どのくらいの頻度で配置転換が行われるか」を明確に伝えましょう。
また、異動にともなう手当・引っ越し費用などのサポート制度もあわせて説明します。入社前に情報を共有しておくことで、「聞いていなかった」といった誤解を避けられます。
候補者のライフプランやキャリア志向を事前に把握しておくと、ミスマッチ防止が可能です。

2.雇用契約書・就業規則の記載内容を見直す
人事異動に関する規定は、雇用契約書や就業規則に具体的に記載しておくことが大切です。
職種・勤務地の範囲、異動の手続きや通知期間、手当や待遇変更のルールなどを明文化しましょう。
あいまいな規定はトラブルのもとになります。ビジネス環境や自社の方針に合わせて定期的に見直しながら更新し、変更時は従業員への説明と一緒に同意を必ずとりましょう。
3.異動の理由やメリットを伝える
人事異動を命じる際は、理由をていねいに説明しましょう。企業の経営戦略や部門間連携の必要性といった組織的な目的に加え、従業員自身にとってのスキルアップや昇進・昇格につながるメリットを伝えることがポイントです。
たとえば「異動先でマネジメント経験を積める」「将来のキャリアパスにつながる」など、
本人が前向きに受け止められるような説明を心がけます。
異動先でのメンター制度や研修の機会を提示すると、社員の不安を減らすことができ、前向きに異動を受け入れやすくなるでしょう。
4.従業員の能力や適性を把握する
人事異動の拒否を減らすためには、従業員のスキル・適性・キャリア志向などの人材データを整備し、意思決定に活用することが重要です。
人事データが整理されていなければ、異動判断が主観的になり、「なぜ自分なのか」という不信感を生みやすくなります。
定期的な面談やスキルマップの更新を通じて、従業員の希望や強みをリアルタイムで把握できるようにしておきましょう。従業員情報を人材データベースで一元管理することで、客観的な配置判断が可能になります。
たとえば、「営業経験を活かして企画職に挑戦したい」「家庭の事情で転勤は難しい」といった情報をあらかじめ把握していれば、本人の希望と事業のニーズを考慮しやすくなります。
データに基づく適材適所が実現できれば、従業員が納得して異動を受け入れる可能性は高まるでしょう。
感覚や慣例に頼った人事異動ではなく、人事データを根拠とした合理的な基準が、人事異動の拒否を防ぐ方法なのです。
まとめ|人事異動を拒否されないように十分な準備を
人事異動の拒否が起きた場合も、まずは理由を正確に把握し、法的な観点と本人の事情の両面に配慮した対処法をとりましょう。
企業の人事権により、人事異動は基本的に拒否できないものの、従業員にとって大きな転機となるため、企業側も採用時から配慮が求められます。
人事異動の拒否を未然に防ぐためには、面接で正直に異動の可能性を明確に伝え、就業規則を整備し、異動の意図やメリットを説明することが欠かせません。
さらに、従業員のスキル・適性・キャリア志向といった人材データを日頃から整備しておけば、合理的な異動判断に役立ちます。
データに基づく適材適所の配置は、従業員の納得感を高め、拒否のリスクを減らすだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
人事異動の決定をサポート|One人事[タレントマネジメント]
適材適所の人事異動は、日頃から従業員のスキルや経験を把握しておかなければ実現できません。
One人事[タレントマネジメント]は、各従業員のスキルや経歴、キャリア志向を一元管理し、戦略的な人材配置を支援するタレントマネジメントシステムです。
集約したデータに基づく異動シミュレーションが可能であり、部門のバランスを見ながら配置の意思決定ができます。個人の適性と組織のニーズのマッチングを最適化して、異動後の早期戦力化を実現していきましょう。
One人事[タレントマネジメント]の機能や活用例を知りたい方は、【こちら】の記事をご確認ください。
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