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社員とは【従業員・職員との違い】パートは含む? 必要な雇用手続きも解説

社員とは【従業員・職員との違い】パートは含む? 必要な雇用手続きも解説

企業や組織において、「社員」「従業員」「職員」の3つの言葉は頻繁に使われますが、定義や範囲には違いがあります。

本記事では、社員と従業員、職員との違いを明確にするとともに、新たに人を雇い入れたときに必要な手続きについても解説します。

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    社員とは

    一般的に社員とは、ある企業や組織に正規に雇用され、その組織の一員として働く人の通称です。いわゆる「正社員」であり、パートタイム労働者やアルバイト、契約社員、派遣社員と区別されています。

    ただし、社員が正規雇用をあらわすことは、法律に定められているのではなく、企業によって定義が異なります。非正規労働者を「非正規の社員」と呼ぶ組織もあるでしょう。

    また、「社員」は文脈によっても使われ方が異なります。

    会社法の社員は「株主」

    会社法における「社員」とは、会社の出資者や所有者である株主です。株主は、会社に対して資本を提供する見返りに、会社の一部の所有権を持ちます。

    参照:『会社法』e-GOV法令検索

    一般社団法人の社員は「構成員」

    一般社団法人における「社員」とは、設立目的や活動に賛同する構成員です。法人の意思決定にかかわり、総会の議決権を持っています。

    合同会社の社員は「出資者」

    合同会社における「社員」は出資者を意味します。合同会社の社員は、株式会社の株主と似ていますが、より直接的に会社の運営にかかわり、個々の意志や合意が運営方針に大きく影響を与えることが特徴です。

    参照:『合同会社の設立第3-1 定款の作成』法務省

    社員と従業員の違い

    企業と無期雇用契約を結んだ正社員を指す「社員」に対して、「従業員」は正社員とは限りません。従業員には、企業と雇用契約を結んだアルバイト・パートタイマーなどの非正規雇用の労働者も含まれます。つまり、従業員の範囲は社員より広いです。

    社員と職員の違い

    ここまで紹介したように社員は、一般的に会社と雇用契約を結んだ正社員をあらわします。

    一方、職員は国や地方公共団体、独立行政法人など、営利を目的としない公的な組織に所属する者です。公務員や教員のほか、学校法人や宗教法人、社会福祉法人などの非営利法人に所属する者も職員と呼ばれます。

    ただし、この使い分けは必ずしも厳密なものではなく、企業によっては社員に職員を含めたり、非営利法人でも社員と呼ぶこともあります。

    社員の範囲にパート・契約社員は含まれる?

    「社員」には「パート・契約社員」を含めない企業が多いようです。ただし、法的に明確な規定がないため、組織で働く人の呼び方は、企業や団体の考え方・風土により異なります。

    ここでは、社員とパート、契約社員の違いを解説します。

    社員とパートの違い

    社員とパートの違いを区別するポイントは「労働時間」「社会保険」「契約期間」の3点です。それぞれについて解説します。

    労働時間

    パートは、社員よりも労働時間を含めた働き方に幅があります。特に正社員は、雇用契約の際にフルタイムでの労働時間が定められています。一方、パートは週の中で数日働く場合や、短い労働時間で働く場合が多く、自分の都合に合わせて働く従業員を指します。

    労働基準法により、使用者は原則として「1日に8時間、1週間に40時間」を超えて労働させてはなりません。これを超える場合、使用者は割増賃金を加算して支払う義務があります。

    また、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。

    さらに、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があります。

    参照:『労働時間・休日に関する主な制度』厚生労働省
    参照:『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』厚生労働省

    社会保険への加入

    労働時間や契約期間の影響で、社員の多くが社会保険(厚生年金保険や健康保険)に加入することになります。一方、パートは加入条件を満たさなければ、加入しない場合もあります。

    社会保険(厚生年金保険や健康保険)の加入条件は以下の通りです。

    • 週所定労働時間が20時間以上
    • 月額賃金8.8万円以上
    • 勤務期間1年以上見込み
    • 学生ではない
    • 従業員数501人以上の企業で働いている

    ただし近年は、加入条件の拡大が進み、パートでも社会保険に加入するケースが多くなっています。

    参照:『社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について』厚生労働省

    契約期間

    正社員は雇用期間に定めがないことを前提としている一方、多くのパートは契約期間が設けられ、更新を続けると無期転換ルールが適用されます。

    労働契約法第18条(2013年4月1日施行)によって、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えると、労働者から申し込みがあった場合に限り、無期雇用契約へ無期雇用に転換できるようになりました。

    参照:『無期転換ルールについて』厚生労働省

    社員と契約社員の違い

    社員と契約社員の違いを区別するポイントも、パートと近しく、労働時間や契約期間がポイントです。

    社員(正社員)契約社員
    雇用契約長期的な雇用契約有期雇用契約
    勤務形態(労働時間)フルタイムフルタイムまたはパートタイム
    給与・福利厚生安定、昇進や昇給の機会が多い限定的であることも
    契約期間長期雇用を保証契約更新を重ねると無期雇用への転換の可能性

    正社員は長期的な雇用契約のもとでフルタイム勤務し、安定した給与や福利厚生を受け、昇進や昇給の機会が多くあります。

    一方、契約社員は有期雇用契約で、フルタイムまたはパートタイム勤務であり、給与や福利厚生は限定的であることも少なくないでしょう。

    ただし、同一労働同一賃金の原則により、正社員と契約社員が同じ業務内容に従事している場合、待遇差をつけることは認められていません。

    また、契約社員においても期間が通算5年を超え、労働者の申し出により、無期雇用に転換することが認められています。

    社員や従業員に当てはまる雇用形態

    続いて、社員や従業員に当てはまる雇用形態について解説します。法律上の明確な定義はありませんが、多くの企業では以下のように分類しています。

    • 正社員
    • 非正規社員:アルバイト・パート
    • 非正規社員:契約社員
    • 非正規社員:嘱託社員

    正社員

    正社員は、企業と無期雇用契約を結んだ労働者です。一般的に、企業の主要な業務を担当し、企業の成長と成功に直接的に貢献します。

    また、正社員には企業の組織文化や価値観を形成し、維持する重要な役割があります。

    非正規社員:アルバイト・パート

    アルバイトやパートタイム労働者は、企業と有期雇用契約を結んだ労働者で従業員に含まれます。

    一般的に、特定の時間帯や短期間だけ働くことが多く、正社員と比べて労働時間が短いことが特徴です。アルバイトやパートタイム労働者は、企業の業務を補完するために活躍し、企業の柔軟な人員配置を可能にします。

    非正規社員:契約社員

    契約社員は、企業と一定期間の雇用契約を結んだ労働者で従業員に含まれます。

    契約社員は、契約期間中は正社員と同等の業務を担当することが多く、契約期間が終了すると契約の更新や解雇が行われます。契約社員は、プロジェクトベースの業務や一時的な人員増強のニーズに対応するために活躍します。

    非正規社員:嘱託社員

    嘱託社員は、企業から特定の業務を委託され、その業務を遂行する形で雇用される労働者であり、従業員に含まれます。

    嘱託社員は、専門的な知識や技術を持つことが求められることが多く、その専門性を活かして企業の業務を支えます。定年後に再雇用する従業員を、嘱託社員という呼称で契約する場合もあります。

    判断が難しい従業員の範囲

    企業で働く人は、基本的に「社員」または「従業員」に分類できますが、よく理解していないと、判断に迷ってしまうかもしれません。そこで以下の雇用形態や立場の人について取り扱いを解説します。

    • 出向中の正規雇用社員
    • 役員
    • 派遣社員
    • 業務委託

    出向中の正規雇用社員

    出向中の社員について、どこの企業の従業員として取り扱うか判断に迷うかもしれません。在籍出向では、出向元の企業と雇用契約を維持しているため、出向元の従業員として扱います。

    一方、転籍出向では出向元との雇用契約を解消し、出向先と新たに雇用契約を結ぶため、出向先の従業員として扱います。

    法的に「社員」と「従業員」の違いに明確な定義はないため、出向前の契約書に明確に記載しておくとよいでしょう。

    役員

    役員と従業員は、法的な立場がまったく異なるものとして区別されています。

    役員は会社の経営方針の決定や業務執行を担う立場にあり、民法上の委任に関する規定が適用されます。株主総会で選任され、報酬等が決められており、原則として、雇用保険や労災保険に加入することはできません。また、役員は株主総会の決議で解任されることがあります。

    一方、従業員には労働基準法などの労働関係法令が適用される点が役員との違いです会社から指示を受け、使用者の指揮命令下で労働に従事し、給与の支払いを受けます。また、雇用保険や労災保険に加入することができ、解雇には一定の制限があります。

    役員は会社を代表して経営する立場にあるのに対し、従業員は雇用される立場です。法的位置づけが大きく異なるため、役員を従業員とみなすことはできません。

    ただし、一部の役員が従業員としての業務も兼務している場合(使用人兼務役員)、従業員に該当する部分については労働関係法令が適用されます。

    派遣社員

    派遣社員は、派遣元の会社に所属している労働者です。就業先の会社の「社員」「従業員」ではありません。ただし、就業先から指示を受けて実務にあたっているという意味で、就業先の「従業員」と呼ぶ場合もあるようです。

    業務委託

    業務委託は従業員・社員の範囲に含まれません。

    業務委託とは、企業が特定の業務を外部の個人や企業に委託し、その業務を遂行させる契約形態を指します。業務委託契約を結んだ者は、企業に従事する労働者ではなく、委託者の指揮命令を受けることはありません。

    社員や従業員の雇用手続き

    社員・従業員を新たに雇用するタイミングでは、以下の手続きが必要です。

    • 社会保険の手続き
    • 所得税の手続き
    • 住民税の手続き
    • 労働条件の通知

    社会保険の手続き

    新入社員に必要な社会保険の手続きは以下の通りです。

    • 社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)

    法人および従業員を常時5人以上雇用している個人事業主(一部例外あり)は、条件を満たす社員の加入手続きが必要です。

    雇用保険・労災保険

    従業員を1人以上雇っている事業所は、条件を満たす社員の加入手続きが必要です。

    雇用保険は雇用した月の翌月10日までに、労災保険は雇用した日から10日以内に所定の届出を提出します。提出先は、雇用保険の資格取得届は所轄のハローワーク、労災保険の各種書類は所轄の労働基準監督署です。

    所得税の手続き

    新たに雇用する社員・従業員の源泉徴収にあたっては、給与所得から何を控除するのかを確認しなければなりません。そのために配布する書類が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。中途採用の場合は、入社後最初の給与の支給を受ける日の前日までに提出します。

    参照:『A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告』

    住民税の手続き

    社員の雇用が開始されると同時に、普通徴収から特別徴収に切り替えるなら、「特別徴収切替届出(依頼)書」を社員が住んでいる市町村に提出します。期限は、徴収開始を希望する月の前月10日までです。

    入社前から引き続き特別徴収をする場合は、「給与支払報告特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を異動(退職、転勤等)があった月の翌月10日までに提出します。

    労働条件の通知

    従業員・社員の雇用においては、労働条件の書面での明示が義務づけられており、労働条件通知書の作成が必要です。雇用契約書を兼ねている労働条件通知書兼雇用契約書の作成も可能です。

    「社員〇〇」という用語

    続いて、社員に関連したビジネス用語を紹介します。

    社員教育

    社員教育は、従業員の能力向上と組織全体の生産性向上を目指す取り組みです。新入社員のオリエンテーションから中堅社員のリーダーシップトレーニングまで多岐にわたります。

    最近は社員のリスキリングが注目されており、内部や外部の専門機関を活用したオンライン教育も増えています。社員教育には研修管理や継続的なフォローアップが大切です。

    社員満足度

    社員満足度は、従業員の職場に対する満足感を測る指標で、低い離職率や高い生産性と関連します。給与だけでなく、職場環境や成長の機会、経営陣との関係にも左右されます。定期的に満足度を測定し、改善策を実行することが重要です。

    社員エンゲージメント

    社員エンゲージメントは、従業員が組織に対して持つ貢献意欲などを指します。高いエンゲージメントは、生産性の向上や離職率の低下につながります。エンゲージメントを高めるには、経営陣とのコミュニケーション促進や個人の成長支援が重要です。

    社員のモチベーションを上げるには?

    最後に、働く社員のモチベーションを向上させるための代表的な方法を紹介します。

    キャリアの成長と発展の機会

    従業員はみずからのキャリアパスや成長の機会を重視します。定期的なキャリアカウンセリングやスキルアップのための研修、外部セミナーへの参加など機会を提供することで、モチベーションを高められます。

    また、新しいプロジェクトや役職への挑戦の機会を提供すると、新たな能力を引き出し、高い成果につながるかもしれません。

    評価とフィードバック

    社員が日々の業務での成果や努力を適切に評価されていると感じることは、モチベーションの維持に重要です。定期的な1on1のミーティングなどを通じて、前向きなフィードバックやアドバイスを提供することで、社員のやる気を引き出すことができます。

    また、部署や組織全体での表彰制度を設けること、他者からの承認を感じられモチベーションアップにつながるでしょう。

    ビジョンの明確化

    社員が組織のビジョンや方向性を理解し、やるべきことが明確になると、モチベーションが高まるでしょう。経営陣が定期的に組織の目標や将来の展望について共有し、社員からの質問や意見を受け入れる場を設けることで、一体感や帰属意識の強化につながります。

    社員管理にタレントマネジメントシステムの導入も

    社員とは、一般的に企業や組織に雇用され、業務を遂行することにより報酬を受け取る人々のことです。文脈によって意味は異なりますが、正社員を指す場合が多く、非正規雇用も含む従業員と区別して使われています。

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