発令とは? 辞令との違いや人事発令の種類を詳しく解説
発令とは、辞令や法令、指示などを出すことです。新しく人事業務に携わる人の中には、発令の意味や目的、辞令や任命などとの違いを理解できていない人もいるでしょう。
本記事では、発令とは何か、そして似たようなニュアンスの言葉との違いを詳しく解説します。記事の後半には人事発令の種類についても紹介しますので、人事労務に携わる担当者は、ぜひ参考にしてください。
発令とは
発令とは、従業員に辞令を出すことをあらわす言葉です。辞令や法令などの公的な指示を公表することを意味します。
発令の具体的な使い方の例は、以下のとおりです。
- 法令を発令する
- 警報を発令する
- 辞令を発令する
人事関連においては、「辞令を発令する」「異動を発令する」といった使い方をするのが特徴です。
発令と似た言葉として「発表」があります。発表とは、何らかの知らせを世の中に向けて広くあらわすことを意味する言葉です。
発令と発表は、次のように使い分けられています。
発令 | 発表 |
---|---|
法令や辞令などの指示を出す | 何らかの知らせを世の中に向けて広く表す・伝える |
発令と辞令の違い
辞令とは、官職・役職などの任免に限らず、広範な人事異動で使用されます。人事事項を書き記し当事者に決定事項として通知する文書です。
発令は一般的に「行為そのもの」を意味するのに対し、辞令は主に「文書」を指します。
具体的には、次のような辞令が存在します。
- 採用辞令
- 退職辞令
- 出向辞令
- 異動辞令
- 昇進・降職辞令
- 任命・解任辞令
発令は、採用や退職に関する辞令を、当事者に告げることを意味すると覚えておきましょう。
発令と任命の違い
任命とは、従業員に対して特定の役職や官職に就くよう命令を出すことです。たとえば、「部長に任命する」「事務次官に任命する」のように使われています。
人事異動や転勤、昇給、昇進などの「任命」する内容を公式に伝えることを「辞令」といい、辞令を出す行為を「発令」といいます。
人事発令とは
人事発令とは、組織の人事異動や退職・解任などの際に、企業側が従業員に向けて公に発表する指示のことです。具体的には組織内のポジションや役職、部署などの変更が対象です。
ただし人事発令と一言でいってもさまざまな種類があります。人事労務の担当者は、それぞれの人事発令についての理解を深めておく必要があるでしょう。
人事発令の目的
役職の変更や人事異動、昇進・降格などの決定事項を、公式に発令する人事発令は、企業にとって経営の重要課題といわれることもあります。
- 人材育成
- 会社の風土形成・活性化
- 企業プロジェクトの実現
人事発令の主な目的について詳しく解説します。
人材育成
人事発令は、人材育成の目的で実施されます。
企業にとって、従業員は大切な資本であり、財産です。それぞれの従業員のスキルや経験、特性などを見極めたうえで適材適所に配置することは、組織全体の業務効率化や経営戦略の実行といった企業活動の向上につながると考えられています。
人事発令によって、従業員は新たな役職や部署で新たなスキルを習得する機会を得ます。幅広い職種や業務を経験することで、責任感や達成感を味わえ、結果としてキャリアアップにもつながっていくでしょう。
会社の風土形成・活性化
人事発令は、企業内の組織風土や文化を形成する重要な手段の一つです。
公平性や透明性を保ちながら適切に人事発令を実施すれば、組織の信頼度を高めるだけでなく、従業員のモチベーションや競争心、向上心を育むことにもつながります。
また、定期的な人事発令は、業務や作業のマンネリ化を解消し、社内の人材配置の適正化にも大きく役立つでしょう。
企業プロジェクトの実現
新規プロジェクトや事業戦略をより効果的に達成・実現する目的で、人事発令が実施されるケースもあります。
従業員のスキルや適性に基づいて人材配置を見直し、新たな人材を確保することで組織自体を再編し、さまざまな環境の変化に対応できる組織をつくり上げていくのです。
人事発令の種類
人事発令の具体的な種類を詳しく紹介します。
- 昇進・昇格
- 降格・降職
- 任命・解任
- 転勤・転任
- 定年退職・退職勧奨
- 配置転換
- 解雇
- 免職
昇進・昇格
昇進とは、従業員の能力や成果が認められて、より高い役職に上がることです。一方、昇格とは、職能資格制度などの社内の等級制度で評価が上がることを意味します。
昇進が社内での立場が上がることを指すのに対し、昇格は社内での評価が上がることとして使い分けられています。
昇進と昇格のどちらも前向きな意味合いで使われる場合が多いため、従業員のモチベーションを向上させ、組織全体のパフォーマンスに大きく貢献する人事発令といえるでしょう。
降格・降職
昇進や昇格と反対の意味合いを持つ言葉が、降格・降職です。
降格とは、企業内での位置づけが下がることを意味します。勤続年数や業績などによって社内での等級を落とされた場合に、降格という人事発令が出されます。
一方で、降職とは、企業内での役職が上位から下位に異動することを指す言葉です。たとえば、課長から係長に役職が下げられた際に使われます。
任命・解任
任命とは、対象の従業員に対して官職や役目などの任務に就くよう命じる行為を指す言葉です。「役職を任命する」のように使われます。
解任とは、現在就いている任務を解いたり、職務を辞めさせたりする際に用いられる言葉です。
人事権を持つ担当者は、スキルや実力のある人材を任命し、成果を挙げられない人材に対して解任を命じなければなりません。
転勤・転任
転勤とは、従業員の勤務場所を継続的に変更することです。一方で、転任は、同一の組織内でほかの職務や勤務地に変更することを意味します。
どちらも勤務地の変更をともなう人事異動であるのが共通点です。従業員の配置人数や年齢、スキルや経験の差による不公平を解消するために、従業員たちに幅広い業務を経験させることを目的としています。
定年退職・退職勧奨
定年退職とは、定年制を設けている企業が、一定の年齢に達した従業員の雇用契約を解除する仕組みです。定年退職における退職日は法律で定められていないため、企業が任意で決定できますが、誕生月の賃金の締め日や誕生月の月末などが採用されるのが一般的です。
退職勧奨とは、企業側から従業員に対して退職するようすすめることを指し、通称「肩たたき」とも呼ばれています。解雇は強い効力を持つ一方で、さまざまな要件を満たす必要があるため、解雇ではなく退職勧奨を選択する企業が多く存在します。
配置転換
配置転換とは、同じ企業内で部署や勤務地、業務内容を変更することです。転勤や転任も、配置転換に含まれます。
配置転換を実施する目的は、主に次の3つです。
- 適材適所の人材配置の実現
- 組織の活性化の実現
- 配置人数や能力の差により生じる不公平の解消
妊娠や出産、介護、療養などで休暇を取得する従業員がいて欠員が生じた際にも、配置転換が実施されます。
解雇
解雇とは、従業員の同意なしに、企業側からの一方的な通知によって雇用契約を終了させることです。
解雇には、次の3つがあります。
解雇の種類 | 内容 |
---|---|
普通解雇 | 従業員の能力不足や就業規則違反などにより、労働契約の継続が困難な場合に行われる解雇 |
整理解雇 | 企業の経営悪化によって、人員整理が必要な際に行われる解雇 |
懲戒解雇 | 従業員による規律違反や非行があった場合に、懲戒処分として行われる解雇 |
免職
免職とは、国家公務員法や地方公務員法により認められている、公務員を強制的に解雇する処罰のことです。
公務員の懲戒処分には次の5つがあり、免職はもっとも重い処分とされています。
- 免職
- 後任
- 停職
- 減給
- 戒告(けん責)
出向
出向とは、自社に在籍したまま、一定期間にわたり他社に在籍することです。自社との雇用関係はそのままで、関連会社や他社の事業所に一時的に勤務する状況を指します。
なお、「移籍出向(転籍)」は、自社を退職したうえで、関連会社や他社で新たに雇用されることを意味する言葉です。
新規採用
新規採用とは、新しい人材を雇用する行為を指し、別名「新規雇用」ともいわれます。新規採用は、学校を卒業してから働く人材を採用する「新卒採用」と、社会人経験のある人材を採用する「中途採用」に分類されます。
人事発令を実施する流れ
人事発令を実施する際の基本的な流れを解説します。
- 人事発令が必要な部署を洗い出す
- 従業員の適性を把握し、候補者を検討する
- 内示を出す
- 従業員の意向を確認する
- 辞令を発令する
- 人事発令を出した従業員に対し適切なフォローをする
人事発令が必要な部署を洗い出す
まずは組織戦略や業務内容に基づいて、人事発令の必要性を検討することから始めます。
人材不足や業績低迷、新規事業の立ち上げなど、課題や業務過多が生じている部署を特定しましょう。部署によって適する人材のタイプや必要な人数は大きく異なるため、対象となる部署を割り出すことが大切です。
従業員の適性を把握し、候補者を検討する
人事発令の必要性を確認して対象となる部署を特定できれば、候補者を選定しましょう。
スキルや経験、人物像はもちろんのこと、本人が希望するキャリアについてもヒアリングしたうえで、人事発令を実施するか否かを総合的に判断する必要があります。
内示を出す
内示とは、正式な辞令を発令する前に、人事発令の対象となっている事実を伝えることです。対象者が決定したら、内示によって人事発令がある旨を通知します。
人事発令は年間を通じて行われており、企業によって時期はさまざまですが、一般的には決算期に実施されます。
従業員の意向を確認する
内示を実施したら、対象となる従業員の意向を確認しましょう。人事発令の対象となった具体的な理由や異動後の業務内容、該当の従業員に期待していることなどを伝えます。
万が一、従業員に納得してもらえない場合は、理由を聞いたうえで、再度人事発令について検討しなければなりません。
辞令を発令する
従業員の合意が確認できたら、正式な辞令を発令します。人事発令に関する情報を社内全体に通知し、適切な手続きを進めましょう。
人事発令を受けた従業員に対して適切なフォローをする
人事発令を実施したあとは、対象となった従業員に対して教育やトレーニングなど適切なフォローが求められます。また、人事発令によって生じた変化や得られた効果などを分析・検証し、今後の人事異動や組織運営に役立てていくことも重要です。
適切な人事発令の実施を(まとめ)
人事発令において重視したいのは、適材適所に人材を配置することです。目的によって人選は大きく変わるため、あらかじめ重視すべきポイントを明確にしたうえで候補者を選定しましょう。
本記事で紹介したポイントを押さえて適切に人事発令を実施することで、従業員のモチベーションの向上や生産性の向上などにつながるでしょう。
適材適所の人材を配置するには?
従業員の得意・不得意を踏まえた適材適所の人材配置には、個人のスキルを可視化し、組織全体のスキルバランスを把握することが大切です。感覚や印象に頼る検討方法では、結果として全体パフォーマンスを高めることは難しいでしょう。
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