12時間労働は違法になる? 休憩は何時間? 企業側のリスクと残業代の扱いを解説

「12時間も働かせて本当に大丈夫だろうか」と頭を悩ませていませんか。人手不足や繁忙期には、どうしても長時間働いてもらわざるを得ない場面もあるでしょう。
12時間労働は、法定労働時間を大きく超え、適切な対応を怠れば違法となるケースもあります。
本記事では、12時間労働の違法性や、必要な休憩時間や残業代の扱いを解説しています。企業側が取り組みたいリスク対策や働き方改善の具体策まで紹介していますので、管理担当者は参考にしてください。
▼労働時間の管理方法に不安があるなら、以下の資料もぜひご活用ください。

目次

1日12時間労働は違法?
12時間労働をさせた事実があるからといって、すぐに違法とみなされるわけではありません。ただし、いくつかの条件を満たさないと、労働基準法に抵触する可能性があります。例として、36(サブロク)協定の締結や、休憩・残業代の適正な管理が違法性を分けるポイントです。
労働基準法における労働時間のルール
労働基準法第32条では、原則として1日8時間、週40時間を超える労働はできないと定められています(=法定労働時間)。法定労働時間は、働きすぎによる従業員の健康被害を防ぐための、「最低限のライン」です。企業が法定労働時間のルールを超える労働をさせる場合は、時間外労働となり、例外規定を適用する必要があります。
12時間労働をさせるには36協定の締結が必須
法定労働時間の例外規定の一つが36協定です。労使間であらかじめ協定を結び、労働基準監督署に届け出ることで、一定の範囲内で時間外労働が可能になります。
一度の12時間労働を理由として違法となる可能性は低く、36協定さえ結んでいれば、実働時間が8時間を超えているぶんについて、時間外労働として扱われるだけです。
たとえば12時間労働のなかで、休憩1時間を除いた実働時間が11時間であれば、そのうち3時間分が時間外労働としてカウントされます。
ただし、36協定を結んでいても上限があります。原則として時間外労働は「月45時間、年360時間」までです。特別条項付き36協定でも「年720時間」「月100時間未満」「複数月平均80時間以内」など厳しい条件が設けられています。
12時間労働における残業代の扱い
12時間労働(拘束)が許容されていたとしても、休憩1時間を除いた3時間分は法定時間外労働です。
12時間労働(9:00〜21:00)の内訳 | ||||
---|---|---|---|---|
法定 | 所定 | 実労働 | 休憩 | 時間外 |
8時間 | 9時間(9:00〜18:00) | 11時間 | 1時間 | 3時間(18:00〜21:00) |
残業代は22時まで基本給の25%以上の割増率を適用します。つまり、12時間労働させた日は、3時間分について、通常の時間給に25%以上を加算した金額を支払わなければなりません。
さらに残業が22時以降の深夜におよんだ場合は、深夜割増(25%以上)も加わり、合計50%以上の割増賃金の支払いが必要です。
▼割増賃金の考え方を詳しく知るには以下の記事をご確認ください。

12時間労働が違法となる場合・ならない場合
12時間労働は、以下の条件に1つでもあてはまると違法です。
- 36協定を締結していない
- 36協定の上限を超過する
- 休憩を与えていない
- 残業時間分の賃金が未払いである
法令遵守だけでなく、従業員の健康管理の観点からも重要なため、確認していきましょう。
違法になる場合1.36協定を締結していない
36協定を締結せずに12時間労働をさせることは、労働基準法違反となります。36協定は労使間で結ぶ書面による協定で、労働基準監督署への届出が必要です。手続きを怠ると、たとえ従業員が同意していても違法となります。
違法になる場合2.36協定の上限を超過する
36協定で定めた時間外労働の上限を超えて労働させることは違法です。時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。特別条項を設けた場合でも、年720時間を超えることはできません。
12時間労働が何日も続くと、当然ながら上限を超えてしまいます。1日限りの12時間労働ではよくても、15日続けば時間外労働は合計で月45時間になります。連日12時間労働をさせていれば、違法になるリスクは高まるため適切な勤怠管理が重要です。
違法になる場合3.休憩を与えていない
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があります。1日の労働時間が12時間となった場合、最低1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えることが必要となります。
▼休憩のルールを詳しく知るには以下の記事もご確認ください。
違法になる場合4.残業時間分の賃金が未払いである
残業代の未払いは、労働基準法違反となります。12時間労働の場合、4時間分の残業代に加えて、深夜労働(22時から翌5時)に該当する場合は、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
▼未払い残業代のリスクを詳しく知るには以下の記事もご確認ください。
違法にならない場合
以下の条件をすべて満たす場合、12時間労働は違法とはなりません。
- 36協定を適切に締結・届出している
- 協定で定めたうえ時間内である
- 法定の休憩時間を確保している
- 適切な割増賃金を支払っている
法律の改正もあるため、抜け漏れがないよう、定期的にチェックしましょう。

12時間労働の休憩時間における休憩時間は何時間?
12時間労働させた日は、最低1時間の休憩時間を労働時間の途中に確保する必要があります。労働基準法第34条に基づく義務となり、休憩を与えないと違法です。労働時間と必要な休憩時間の関係は以下のとおりです。
- 6時間超8時間以下:45分以上
- 8時間超:1時間以上
休憩時間は労働時間の途中で、実質的な休息が取れる時間帯に設定する必要があります。
12時間労働(9:00〜21:00)の場合、12:00〜13:00など適切なタイミングに設定しましょう。
休憩は一括でなく、30分ずつに分けて取得も可能です。分割により、休憩時間の自由利用が事実上制限される可能性もあるため、従業員の意見を確認するとよいでしょう。
あくまでも労働時間が8時間を超える場合に必要な休憩1時間は、法的に求められる最低限の基準です。長時間労働になることが事前にわかっている場合は、こまめに休憩を取得してもらい、従業員の負担を減らすよう配慮しましょう。
参照:『休憩時間を分割する場合どのようなことに注意が必要でしょうか。』厚生労働省
12時間労働を続ける企業側のデメリット・リスク
法的に問題がなくても、12時間労働が常態化すると、企業には見過ごせないリスクが生じます。
- 従業員の健康状態が悪化する
- 会社の評判が落ちる
- 訴訟問題に発展する場合がある
- 人件費が増加する
長時間労働を放置すれば、企業の成長を損ねる要因となりかねないため、一つずつ確認していきましょう。
従業員の健康状態が悪化する
12時間労働が続けば、従業員の心身に大きな負担を与えます。慢性的に疲労が蓄積され、メンタルヘルスも悪化するでしょう。集中力が低下してミスも増え、本人のモチベーションも下がるので、離職や休職につながることが懸念されます。パフォーマンスも落ちるので、チーム全体の生産性が落ちるのは避けられません。
会社の評判が落ちる
12時間労働が常態化している企業は、社会的評価が少なからず低下すると考えられます。現代は、SNSや口コミサイトでの評価などで、いつどこで誰が見ているか予測できません。
企業の評判が落ちると、採用活動にも営業にもダメージがおよびます。信頼が傷ついて、求職者から敬遠されたり、取引先からの信用が失われたりするのは大きなリスクです。
訴訟問題に発展する場合がある
12時間労働が常態化している場合、法令違反や健康被害により、法的問題に発展するリスクが高まります。
未払い残業代の請求や過労死といった深刻な事態に発展することも否定できません。重大な違反が発覚した場合は、労働基準監督暑の立ち入りがあり、処分の対象です。
12時間労働が常態化している場合、勤務実態を細かく管理する必要があります。
人件費が増加する
長時間労働をさせるほど割増賃金がかさみ、かえってコストは増えるかもしれません。健康を害した従業員のフォロー、休職・離職による人材補充・教育コストなども積み重なります。目の前の業務を片づけるための労働が、結果として長期的には大きな人件費の負担となって跳ね返ってくるのです。

12時間労働を見直すための対策
長時間労働を見直すためには、どのような対策があるでしょうか。リスクを抱えたままでは、不安に感じてしまう人もいるでしょう。主な対策は以下の4点です。
- 業務改善
- 従業員の健康管理
- 勤務体系の見直し
- 勤怠管理システムの活用
以上のような対策を進めることで、無理なく労働時間を調整し、従業員の健康と安全な職場を両立できます。
業務改善
「人がいないから12時間働かせるしかない」と考えていませんか。業務プロセス・配置の見直しや自動化ツールの活用により、効率を上げる体制はつくれます。
まずは業務の棚卸しにより、無駄な手順や属人化した作業を洗い出し、優先順位を整理します。業務が集中しがちな時間帯に、必要人数を配置するだけでも、長時間労働の防止につながります。
余裕がなければ、簡易的に導入できるITツールの導入から始めてみてもよいでしょう。
従業員の健康管理
12時間労働が続けば、体調不良やメンタル不調は避けられません。そこで、産業医との連携強化やメンタルケア体制の充実が重要です。健康相談窓口の設置など、声を上げやすい環境を整えることが、早期発見・予防につながります。
勤務体系の見直し
長時間労働が常態化している背景には、「決まった時間・場所で働く」ことを前提にした制度が影響しているかもしれません。柔軟な働き方を実現するため、フレックスタイム制や変形労働時間制、テレワークや時差出勤といった仕組みを検討しましょう。勤務体系の見直しにより、繁忙期・閑散期にあわせて働けて、業務と生活のバランスが取りやすくなるはずです。
勤怠管理システムの活用
「気づいたら残業が多くなっていた」「誰がどれだけ働いているか見えていない」という状態では、長時間労働の常態化にすら気づけません。
クラウド型の勤怠管理システムを導入することで、労働時間の自動集計や残業アラート通知などが活用できます。
労働時間が把握しやすくなるだけで、早期の対応が可能となり、12時間労働の発生を防げます。

まとめ|12時間労働が続く場合は適度な休憩と労働時間の調整を
12時間労働そのものは、必ずしも違法とはなりません。36協定を適切に締結し、実態に即した時間外労働手当を支給し、法定の休憩時間を確保していれば、法的なリスクは回避できます。
しかし、長時間労働が続くことで従業員の健康は確実に損なわれていきます。心身の疲労が蓄積され、生産性の低下を招くだけでなく、重大な健康障害につながるリスクも高まるでしょう。
12時間労働が避けられない職場環境であっても、業務の効率化や働き方の見直しを積極的に進める必要があります。とくに休憩時間の確保と労働時間の適切な管理は重要です。
長時間労働の改善には、勤怠管理システムの導入が有用です。システムを活用することで、労働時間の正確な把握と適切な管理が可能となり、従業員の健康管理と企業のリスク管理を両立できます。
適切な労働時間の管理に|One人事[勤怠]
One人事[勤怠]は、長時間労働の改善に向けた管理体制の見直しも支援するクラウド型勤怠管理システムです。
一定の労働時間を超えた従業員にアラートを出すなど、長時間労働を抑制にもお役立ていただけます。
One人事[勤怠]の費用や操作性については、当サイトより、お気軽にご相談ください。専門スタッフが課題をていねいにお聞きしたうえでご案内いたします。
当サイトでは、勤怠管理の効率化に役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。勤怠管理をラクにしたい企業の担当者は、お気軽にお申し込みください。
「One人事」とは? |
---|
人事労務をワンストップで支えるクラウドサービス。分散する人材情報を集約し、転記ミスや最新データの紛失など労務リスクを軽減することで、経営者や担当者が「本来やりたい業務」に集中できるようにサポートいたします。 |
