アニバーサリー休暇とは?メリットや導入事例や特別休暇も解説

「アニバーサリー休暇を、福利厚生の一環でうちも導入すべきか?」と考えていませんか。
アニバーサリー休暇は、記念日に特別休暇を取得できる制度です。従業員満足度やエンゲージメント向上施策として注目され、導入企業も年々増えてきました。ただし「ただなんとなく」導入すると、形式だけで誰も使わない制度になってしまうでしょう。
本記事では、アニバーサリー休暇の基本から、導入メリット・デメリット、制度設計の注意点、就業規則の書き方、他社の成功事例までを解説しています。導入検討の参考に、お役立てください。
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目次

アニバーサリー休暇とは従業員の記念日を祝うための休暇
アニバーサリー休暇とは、従業員が自分や家族にとって大切な記念日に取得できる特別休暇です。誕生日や結婚記念日、子どもの入学式など、対象となる記念日は企業によってさまざま用意されています。
たとえば「〇月〇日は妻の誕生日だから」「結婚10周年だから」など、従業員本人が記念日を申告して休めるのが特徴です。「記念日休暇」と呼ばれることもあります。
アニバーサリー休暇は、年次有給休暇とは別で設けられ、福利厚生や従業員エンゲージメント向上の施策として導入する企業が増えています。
アニバーサリー休暇は有給? 無給?
アニバーサリー休暇は、法律で定められた休暇ではないため、有給にするか無給にするかは、企業が自由に決められます。
アニバーサリー休暇を「無給にした結果、誰も使わなかった」というケースも少なくありません。せっかく制度を設けても、収入が減るリスクがあれば、従業員は気軽に休めないでしょう。
アニバーサリー休暇を有給扱いにする企業があるのは、制度を定着させるためです。とくに「有給休暇の取得率を上げたい」という目的で導入する場合は、有給にしておくことをおすすめします。
▼有給休暇の取得率を上げる取り組みをもっと知るなら、以下の記事をご確認ください。

アニバーサリー休暇が浸透した背景
アニバーサリー休暇が広がった背景には、有給休暇の取得率を高めたいという国の方針があります。
2019年から、企業には「年5日の年次有給休暇を、すべての対象従業員に取得させる義務」が課されました。にもかかわらず、「忙しくて休めない」「気まずくて申請しづらい」といった理由から、有給を十分に取れていない従業員は少なくありません。
実際、厚生労働省によると、2022年の有給取得率は62.1%です。過去最高ではあるものの、政府が掲げる「2025年度までに70%以上」という目標には届いていません。
有給休暇の義務化にともなって注目されたのが、休みやすい理由をつくるアニバーサリー休暇です。「記念日だから」という理由があれば、上司にも言いやすく、取得しやすくなります。結果として、有給休暇の自然な取得促進にもつながるという狙いから、企業が導入を検討し始めています。
参照:『10月は「年次年次有給休暇取得促進期間」です』厚生労働省
アニバーサリー休暇を設けるメリット
アニバーサリー休暇の導入には、従業員と企業の両方にとって多くのメリットがあります。
とくに以下の5点は、制度導入の目的や効果としておさえておきたいポイントです。
- 有給休暇を取りやすい風土が醸成できる
- ワークライフバランスを実現できる
- 採用活動でアピールできる
- 働きやすさを向上できる
- 従業員のモチベーション向上につながる
アニバーサリー休暇のメリットを理解し、制度設計に役立てるために確認していきましょう。
有給休暇を取りやすい風土が醸成できる
アニバーサリー休暇で、記念日という理由があれば、従業員は休暇を取得しやすくなります。理由もなく休みにくいと感じていた人にとって、心理的な抵抗感が和らぐためです。
結果として、有給休暇を取得をしやすくなり、企業としても、年5日の取得義務を果たしやすくなるため、コンプライアンス面でも安心感があるでしょう。
ワークライフバランスを実現できる
記念日を大切にできるアニバーサリー休暇制度は、私生活と仕事のバランスを尊重している企業であることのあらわれです。従業員にとって、家族やプライベートの時間を優先できる機会となり、満足度や生活の質の向上にもつながります。
採用活動でアピールできる
求人票に「アニバーサリー休暇あり」と記載するだけでも、会社の印象は変わります。休暇制度の豊富さに加え、従業員の人生を大切にする企業文化を伝えることができ、イメージアップにつながります。応募者からの共感を得ることで、優秀な人材の志望度を高められる可能性もあるでしょう。
働きやすさを向上できる
アニバーサリー休暇は、働き方改革の一環です。制度を通じて従業員が気兼ねなく休みを取り、周囲が尊重する文化を育てられます。チームの関係性や職場の心理的安全性も高まっていくでしょう。
従業員のモチベーション向上につながる
アニバーサリー休暇は、従業員が自分の人生や家族との時間を大切にするきっかけになります。プライベートの充実は、「自分を尊重してくれる会社」という肯定的な印象につながり、仕事への意欲やエンゲージメント向上にも効果が期待できます。心身のリフレッシュにもつながるため、集中力や生産性の向上にもつながるでしょう。
アニバーサリー休暇のデメリット
アニバーサリー休暇には多くのメリットがありますが、制度を定着させるには、導入前にデメリットやリスクにも目を向けておくことが大切です。以下のような懸念点を想定し、制度設計時に備えておきましょう。
- 特定の日に休暇が集中すると業務に支障が出る
- 取得ルールが明確にしないと不公平感を生む
- 無給での運用は制度が形骸化しやすい
- 周囲の理解・協力が得られないと取りにくい制度になる
特定の日に休暇が集中すると業務に支障が出る
記念日は「誕生日」「結婚記念日」「クリスマス」など、時期が集中しやすい傾向があります。同じ部署で複数人が同日にアニバーサリー休暇を申請すると、一時的に人手不足になったり、業務が停滞したりしてしまいます。クリスマスやゴールデンウィークの前後に休暇が集中することを想定して、あらかじめ対策しておくとよいでしょう。
取得ルールが明確にしないと不公平感を生む
「どこまでを記念日と認めるのか」が不明確だと、申請内容に差が出て、不公平感が生まれることもあります。たとえば以下のようなケースです。
- Aさんは「子どもの誕生日」で申請
- Bさんは「好きなアーティストのデビュー記念日」で申請
幅が広がりすぎると、現場で判断に迷い、混乱する可能性があります。事前に対象となる休暇の範囲や申請フローを明確に定義しておくことが重要です。
無給での運用は制度が形骸化しやすい
制度は企業が自由に設計できますが、アニバーサリー休暇を無給にした場合、ほとんど取得されない可能性があります。
理由は明確で「収入が減るなら休まない」という従業員心理があるためです。結果として「誰も使っていない制度」として、社内で形骸化してしまうリスクがあります。
周囲の理解・協力が得られないと取りにくい制度になる
アニバーサリー休暇制度があっても、現場に「本当に休んでいいのか」という空気があると、結局は使われません。とくにマネージャーやチームリーダーの意識が変わらなければ、従業員は申請しにくさを感じます。
制度そのものだけでなく、休みを取りやすい風土づくりも並行して取り組むことが、ポイントです。
アニバーサリー休暇の導入フロー
アニバーサリー休暇は、自由度の高いため、導入時の設計や社内調整が重要です。導入を成功させるためには、以下のステップを順を追って検討していきましょう。
- 有給と無給どちらにするか検討する
- 要件や内容を定める
- 就業規則へ規定する
- 従業員へ周知する
有給と無給どちらにするか検討する
まずは、アニバーサリー休暇を有給扱いにするか、無給にするかを決めましょう。制度として形骸化しないためには、有給での運用が多いようです。有給休暇を取得しやすい環境を整えるには、有給扱いとすることをおすすめします。
▼無給休暇の運用や注意点については、以下の記事でご確認ください。
要件や内容を定める
次にアニバーサリー休暇制度の内容を具体的にを設計します。以下のような項目をあらかじめ定めておくと、社内運用がスムーズです。
- 対象者の条件(例:入社半年以上の社員)
- 記念日の定義(例:本人または家族の誕生日、結婚記念日など)
- 取得回数(例:年1回まで)
- 申請ルール(例:〇日前までに勤怠管理システムで申請)
制度設計のポイントは、「柔軟性」と「公平性」のバランスです。範囲が広すぎても現場ごとに解釈が分かれてしまうため、あらかじめルールを文書化しておくことをおすすめします。
就業規則へ規定する
アニバーサリー休暇の運用を安定させるためには、決めた要件や内容を就業規則に明記しておく必要があります。以下のような項目を設定し、就業規則にまとめておきましょう。
- 制度の目的
- 取得条件
- 有給か無給か
- 申請手続きの流れ
▼就業規則の変更手続きを知るには、以下の記事もご確認ください。
従業員へ周知する
アニバーサリー休暇の運用を開始したら、変更された就業規則と一緒に、社内イントラや説明会を通じて、組織全体に周知しましょう。制度を導入しただけで、存在を知らせなければ、社内には定着しません。
また、直属の上司やマネージャー層には、「制度の意義」や「取得を妨げない対応」をあらかじめ説明しておきます。制度を浸透させるうえで、現場の理解と協力が重要です。
アニバーサリー休暇の導入事例
実際にアニバーサリー休暇を導入している企業では、制度設計や運用方法に工夫をしています。以下では、有名3社の導入事例を取り上げ、それぞれの制度の特徴を整理して紹介します。
株式会社リクルート
株式会社リクルートでは、特別休暇を導入したうえで「アニバーサリー手当」という休暇を支援する福利厚生制度を取り入れています。
制度 | アニバーサリー手当 |
---|---|
対象者 | 4月1日時点で在籍1年以上の社員 |
条件 | 年次有給休暇を4日以上連続で取得 |
内容 | 年1回、5万円の手当を支給 |
アニバーサリー手当の目的は、有給休暇の連続取得によるリフレッシュの促進です。記念日にあわせて旅行を計画しやすくなるなど、取得促進と働きやすさの両立が目指されています。
株式会社タカラトミー
株式会社タカラトミーは、アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇はもちろん、有給休暇を取りやすい文化を育てようとしている点が特徴です。具体的には、有給休暇の取得促進日を年10日程度設定するほか、取得日数について独自目標を掲げています。
制度 | アニバーサリー休暇、リフレッシュ休暇、年次有給休暇の取得促進日を設定 |
---|---|
目標 | 従業員の半数以上が年10日以上の年休を取得すること |
企業全体で年休取得の環境整備を進めることで、個々の従業員が柔軟に休暇を取りやすい仕組みとなっています。
参照:『従業員のウェルビーイングの向上|多様な人財の活躍|サステナビリティ』株式会社タカラトミー
株式会社エイチ・アイ・エス
株式会社エイチ・アイ・エスには、本人か家族の記念日に、有給休暇を優先的に取得できるアニバーサリー休暇制度があります。
制度名 | アニバーサリー休暇 |
---|---|
条件(対象日) | 本人または家族の記念日 |
内容 | 年2回(理由の申告は不要) |
同社の制度はアニバーサリー休暇という名称ながら、理由が問われないため、柔軟な運用となっています。年2回、従業員が自身のライフスタイルにあわせて自由に選べるため、制度の使いやすさと心理的抵抗感の低さが魅力です。
参照:『2025年度 新卒採用|エイチ・アイ・エス グループ採用情報』株式会社エイチ・アイ・エス
アニバーサリー休暇以外で検討したい特別休暇
アニバーサリー休暇のほかにも、従業員の多様なライフスタイルや価値観に配慮し、独自の特別休暇制度を導入する企業もあります。特別休暇の種類を増やし、取得しやすい環境を整えることで、年次有給休暇の取得率向上が見込めます。
いずれの制度も従業員満足度の向上や定着率の改善にもつながるため、検討してみる価値は十分にあるでしょう。以下では、制度設計の参考となる、代表的な3つの特別休暇を紹介します。
アニバーサリー休暇 | リフレッシュ休暇 | ボランティア休暇 | サバティカル休暇 | |
---|---|---|---|---|
目的 | プライベート重視/記念日支援 | 節目での再充電 | 社会貢献の支援 | 中長期の成長支援 |
日数・頻度 | 年1〜2回が一般的 | 5日〜10日などまとまった日数 | 活動内容に応じて | 数週間〜数か月 |
制度設計の自由度 | 高い | 中〜高 | 中 | 高いが運用は慎重に |
リフレッシュ休暇
リフレッシュ休暇は、従業員の疲労回復や気持ちの切り替えを目的とした特別休暇です。多くの場合、勤続年数の節目に数日〜1週間ほどのまとまった休暇を付与する運用が一般的です。
リフレッシュ休暇は、長期的に働いてくれる従業員への“感謝やねぎらいの意味も込められており、モチベーションの維持や離職防止にも効果が期待されます。企業文化として長く根づいているケースも多くあるでしょう。
リフレッシュ休暇を詳しく知るには、以下の記事をご確認ください。
ボランティア休暇
ボランティア休暇は、従業員が地域活動や災害支援などのボランティア活動に参加するために取得できる特別休暇です。CSR(企業の社会的責任)やサステナビリティの観点から、制度を設ける企業が増えてきました。
従業員が社会とつながり、自発的な貢献ができるように支援することで、組織としての社会的価値も高まります。従業員の自律性にもよい影響をもたらすでしょう。
サバティカル休暇
サバティカル休暇とは、自己研鑽やキャリア形成を目的に取得する長期休暇です。大学教員の制度として知られていますが、近年は企業でも導入例が増えつつあります。
サバティカル休暇では、勤続年数や実績などに応じて数週間〜数か月の休暇が与えられることがあり、研修・研究・資格取得などの目的に活用されます。有給か無給かは企業によって異なり、一部補助をする企業もあります。
人材育成やリスキリングといった中長期的な視点で人を支援したい企業にとっては、有効な手段となるでしょう。
サバティカル休暇を詳しく知るには、以下の記事をご確認ください。

まとめ
アニバーサリー休暇は、従業員が自身や家族の記念日に休暇を取得できる制度です。私生活を大切にしながら働ける環境を整えることで、ワークライフバランス上やモチベーションの向上が期待されます。
制度を有給扱いとすれば、年次有給休暇の取得率向上にもつながります。アニバーサリー休暇をはじめ特別休暇制度の充実は、採用活動での訴求力にもなり、従業員エンゲージメントや職場の心理的安全性の向上といった副次的効果も生まれやすくなります。
運用があいまいなまま導入すると、休暇取得がかたよったり、制度が形骸化したりするリスクもあります。導入時には、ルールの明確化や、上司・現場の理解を得るための周知も欠かせません。
アニバーサリー休暇は、企業の方針を「働き方」に示す一つの方法です。従業員が「使ってよかった」と思える制度となるよう、制度設計と風土づくりの両面から取り組んでいきましょう。
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