乖離時間とは? 労働時間が乖離する理由・原因や対策を解説

乖離時間とは? 労働時間が乖離する理由・原因や対策を解説

「勤怠データと実際の労働時間が一致しない」という状況に、心あたりのある担当者もいるのではないでしょうか。

乖離時間(かいりじかん)とは、予定された労働時間と実際に働いた時間とのズレです。勤怠管理では、乖離時間を生じさせない工夫が必要です。

本記事では、「乖離時間」とは何かを解説したうえで、乖離時間が生じる主な原因や放置する法的リスク、解決策まで紹介します。乖離時間を防止して、勤怠管理の精度向上にお役立てください。

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目次アイコン目次

    乖離時間とは打刻データと実際の労働時間の差

    乖離時間(かいりじかん)とは、勤怠管理において、打刻データと実際の労働時間時間数の差分のことです。記録上の労働時間と、実際の労働時間が一致していない状態を指します。

    タイムカードでは定時に退勤したことになっているのに、実際は定時後もしばらく社内に残って業務を行っていたという場合に発生します。従業員の申告では7時間労働、実際には10時間働いていたなら、乖離時間は3時間です。

    「従業員が仕事を本当に終えた時間」と「タイムカードを打刻した時間」には、わずかな差が生じる場合があり、数分でも乖離時間として扱われます。数分単位でおおごとになるケースは少ないですが、大きな差が発生しているのであれば、労務トラブルに発展しかねないため注意が必要です。

    ▼労働時間の管理に不安があるなら、以下の資料もぜひご活用ください。

    勤怠記録と実労働時間に乖離が生じる原因

    そもそも乖離時間はなぜ発生するのでしょうか。勤怠管理で乖離が生じる背景には、主に次の3つの要因が挙げられます。

    • 不正な打刻や自己申告
    • サービス残業の常態化
    • 不十分な実態調査

    乖離時間の発生を防ぐために、まずはそれぞれの原因を詳しく見ていきましょう。

    不正な打刻や自己申告

    「遅刻しそうで同僚に打刻を頼んだ」「残業手当を増やすために、少し盛って申告した」という不正で乖離時間は生じます。

    とくに、従業員の自己申告制を採用している場合は、改ざんや記録ミスが起こりやすくなっています。手書きの日報・出勤簿などアナログな勤怠報告は、勤怠管理システムと比べて、管理者側からも見抜きにくいです。

    もちろんすべての乖離時間が故意とは限りません。ミスや対応漏れで、結果的に実態と異なる時間を記録してしまうこともあるでしょう。そのため、日々のチェック体制やフォローが重要になります。

    ▼タイムカードなどの打刻ミスを防ぎたいなら、以下の記事もご確認ください。

    サービス残業の常態化

    サービス残業が常態化している企業では、乖離時間が生じやすいといえます。実際には残業しているにもかかわらず定時にタイムカードを切っていれば、記録と実態は当然ながら乖離します。

    とくに、「残業を申告しにくい」「忙しいのは仕方ない」という文化の会社では、労働時間を正確に記録するという意識が薄れてしまうでしょう。

    なかには、あたかも残業の上限規制を守っているように見せかけるため、うその終業時間を記録する従業員もいるかもしれません。このような「隠れ残業」が発生する背景には、業務量の偏りや過度なプレッシャーといった、組織的な課題が潜んでいることもあります。

    不十分な実態調査

    従業員側が正しく申告していても、企業側が労働実態を把握できていなければ、乖離時間は放置され続けてしまいます。

    厚生労働省は、勤怠管理における実態調査の重要性を繰り返し指摘しています。

    乖離時間が発覚した場合、本来であれば企業は、個別のヒアリングや記録調査を実施し、ズレの原因を特定しなければなりません。そして乖離時間対策を練る必要があります。

    実態調査で確認したいのが、入退室記録やPCのログイン履歴、業務システムの操作ログなど客観的に残るデータです。 「申告を信じる」のではなく、「客観的な記録をもとにすり合わせる」ことが、乖離時間の防止と是正につながります。

    客観的な記録を効率よく収集・管理するには、勤怠管理システムの活用がおすすめです。監査ログやアクセスログ機能が利用できるサービスもあり、管理に課題がある企業は検討してみてはいかがでしょうか。

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    労働時間が乖離していることへのペナルティはある?

    労働時間の乖離自体は違法ではないため、記録と実態に差があるだけでペナルティを科されることはありません。しかし、その乖離時間を放置した結果、次のような問題が発生している場合は法令違反となります。

    • 未払いの残業代がある
    • 労働時間の適正な把握を怠った
    • 従業員の適正な自己申告を阻害している

    該当すると、労働基準法や労働安全衛生法の違反として、企業が罰則を受けるリスクがあります。

    労働基準法のペナルティ

    労働基準法第37条では、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払いが義務づけられています。万が一、残業代の未払いがあると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあります。

    参照:『労働基準法』e-Gov法令検索

    労働安全衛生法のペナルティ

    2019年の労働安全衛生法の改正により、労働時間を「客観的な方法」で把握することが企業に義務づけられました。「客観的な方法」にはタイムカード、PCのログイン履歴、入退室の記録などが該当します。管理を怠ることは法律違反にあたります。

    労働時間の適正管理については、厚生労働省からガイドラインで確認することも可能です。

    参照:『労働安全衛生法』e-Gov法令検索
    参照:『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』厚生労働省

    労働時間を自己申告する場合の注意点

    厚労省のガイドラインでは、タイムカードやICカードなどによる客観的な把握を原則としていますが、やむを得ない場合には自己申告制が認められています。

    自己申告制を採用する場合、企業は従業員の適正な申告を妨げる対応をしてはいけません。次のようなルールを設けてしまうと、表面的に帳尻があっていたとしても、法的には不適切な管理とみなされます。

    • 実際より労働時間を短く申告させるよう指示する
    • 申告可能な労働時間に上限を設ける

    なお、管理に違法性が認められなかったとしても、乖離時間がある以上は、正確な給与計算のために修正が必要です。実態調査を通じて、本来の勤怠情報を取得し、労働時間を適切に補正しましょう。

    ▼日々、正確な労働時間を収集できる体制は整っているでしょうか。労働時間の管理方法を見直す場合は、以下の資料もぜひご活用ください。

    労働時間の乖離を防ぐ方法

    労働時間の乖離はただちに法律違反になるわけではないものの、企業には労働時間の適正な管理が求められています。

    乖離時間が生じている場合は、乖離が起こらないよう再発防止策を検討することが大切です。たとえば、次のような方法が考えられます。

    • 時間外労働や休日出勤などは事前申告制とする
    • 労働時間の定義を従業員と共有する
    • アクティビティログを活用する
    • 勤怠管理システムを導入する

    今現在は乖離時間が生じていなくても、今後のリスクを低減するために必要な策を検討しましょう。

    時間外労働や休日出勤などは事前申告制とする

    時間外労働や休日出勤、深夜労働など、本来の業務時間を超えた労働は、すべて事前申告制にするのがおすすめです。

    たとえば、当日の業務が終わらず残業をしたい場合は、上司に残業申請書を提出してから業務を再開してもらうこととします。上司からの承認を必須とすれば、従業員が隠れて残業や休日出勤をすることがなくなり、労働時間の乖離が生じにくくなるでしょう。

    申請制により、不要な残業や休日労働を抑制できると、長時間労働の是正や人件費の削減にもつながります。申請書の書式を決めたり、申請に対応した勤怠管理システムを導入したりと仕組みづくりの手間やコストはかかりますが、企業にとって大きなメリットがあります。

    労働時間の定義を従業員と共有する

    労働時間を適正に管理するためには、労働時間の定義を明確化することも大切です。労働時間とは「従業員が使用者の指揮命令下にある時間」のことです。勤怠管理業務にかかわらない従業員にとっては、どこからどこまでが労働時間とみなされるのかわからない場合も多いでしょう。

    たとえば、始業前の朝礼や清掃の時間は労働時間とみなされます。また、企業側が参加を義務づけていて業務としての性質が強い勉強会・研修会や、社内行事も労働時間に含まれます。一方で、就業後の着替えの時間については、基本的には労働時間に含まれません。

    労働時間に含まれる範囲を明らかにし、従業員と共有することが、適正な労働時間管理につながります。

    ▼労働時間とプライベート時間の区別が難しいケースを知るには、以下の記事をご確認ください。

    アクティビティログを活用する

    業務でITツールを利用している場合は、アクティビティログ(操作履歴)を確認することで実労働時間を把握しやすくなります。システムのログイン・ログオフの時間を記録でき、隠れ残業の防止にもつながります。リモートワークにおける勤怠管理と相性がよい点もメリットです。

    ただし、実際には業務でパソコンやスマートフォンなどを使用しない場合もあり、デバイスの履歴ですべての労働時間を把握できるとは限りません。システムエンジニアのようにパソコンでの作業が多い職業でも、会議中はパソコンを起動しないケースもあるためです。

    なかには監視されている感覚を持つ従業員もいるため、アクティビティログを活用する場合は一人ひとりの理解を得ることが大切です。

    勤怠管理システムを導入する

    紙のタイムカードや出勤簿などで勤怠情報を管理している場合は、勤怠管理をデジタル化をすることも検討してみてはいかがでしょうか。勤怠管理システムなら、設定によってユーザー認証により誰が・いつ打刻したかという記録を残せます。

    システムによってはGPS機能を利用して位置情報を取得でき、「まだ会社に到着していないのに始業開始を記録する」といった不正を防止することが可能です。

    また、労働時間や残業時間の集計を自動化できるため、担当者の業務負担も軽減できます。給与計算システムと連携できる製品なら、労働時間の集計から給与計算までを一括で管理できるので効率化も期待できます。

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    労働時間の実態調査でチェックするポイント

    労働時間の記録と実態に乖離があると考えられる場合は、実態調査で正しい労働時間を把握する必要があります。乖離が疑われるときだけでなく、定期的に実施することが大切です。

    実態調査では、主に次のポイントを確認するとよいでしょう。

    • 入退室用セキュリティキーの使用履歴
    • 金庫を開け閉めした記録
    • 業務システムの使用履歴
    • パソコンのログイン履歴
    • 業務用スマートフォンやタブレットのアクティビティログ
    • コミュニケーションツール上のやりとり

    従業員や本人の直属の上司、同僚などへの聞き取り調査も有用です。

    まとめ|労働時間の管理を見直し、乖離時間の発生を防止へ

    労働時間の記録と実態には、乖離が生じる場合があります。意図せず生じる乖離時間もあれば、従業員の不正により生じる乖離時間もありますが、いずれにせよ企業は正確な労働時間を把握できるよう対策を実行することが大切です。

    操作ログや勤怠管理システムなどを活用しつつ、客観的な勤怠データを収集できる体制を整えましょう。

    乖離時間の解消もサポート|One人事[勤怠]

    One人事[勤怠]は、個々の従業員の働き方にあわせて柔軟に管理できる勤怠管理システムです。申請時間と実際の打刻時間にズレがあった場合に自動でアラートを出すなど、乖離時間の解消にもお役立ていただけます。

    One人事[給与]との連携により、労働時間データを給与計算に直接反映できるため、割増賃金の計算や時間外労働の管理が自動化され、業務効率の向上が実現します。

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