フレックスタイム制と裁量労働制の違いとは? 併用できる? どちらを導入すべきかメリット・デメリットを解説

フレックスタイム制と裁量労働制の違いとは? 併用できる? どちらを導入すべきかメリット・デメリットを解説

働き方改革が推進されるなか「フレックスタイム制」や「裁量労働制」の導入を検討する企業も少なくありません。どちらも従業員が自分のペースで働けるようにする制度ですが、条件や導入方法に違いがあります。

本記事では、フレックスタイム制と裁量労働制の違いと、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。また両制度の併用可能性についても解説し、自社にとって最適な制度を見つけるヒントにしてください。

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    フレックスタイム制と裁量労働制とは

    まずは、フレックスタイム制と裁量労働制について、それぞれの特徴や制度の概要を詳しく解説していきましょう。

    両制度には違いがあり、働き方に合わせた柔軟な時間管理ができる反面、適用には注意点もあります。

    フレックスタイム制がどのような業務に適しているのか、裁量労働制の対象業務や労働時間の考え方についても触れながら、基礎を紹介します。

    フレックスタイム制とは

    フレックスタイム制とは、従業員みずから始業・終業時間を決められる働き方です。

    労働時間を清算期間という単位で管理し、従業員は指定された総労働時間の範囲で自由に働けます。

    1か月で160時間働くと定められている場合、ある日は5時間、別の日は10時間働くなど、日々の勤務時間を業務量や個人の都合に合わせて調整できるのが特徴です。

    フレックスタイム制では、全員が必ず働かなければならない「コアタイム」と、従業員が自由に出退勤を調整できる「フレキシブルタイム」を設けるのが一般的です。

    フレックスタイム制は、効率的かつ柔軟に働ける環境づくりに役立つ制度といえます。

    裁量労働制とは

    裁量労働制とは、実労働時間に関係なく、あらかじめ労使協定や労使委員会の決議で定めた時間分だけ、労働したとみなす制度です。

    1日あたりの「みなし労働時間」が8時間の場合、実際に7時間しか働いていなくても、また10時間働いていても、労働時間は一律8時間とみなされます。

    ただし、深夜や休日に働いた場合や、1日のみなし労働時間が法定8時間を超える場合は、時間外手当の支払い義務が発生します。

    また裁量労働制では、使用者の指示ではなく従業員の裁量で、実労働時間を自由に調整できるのも特徴です。

    フレックスタイム制と裁量労働制の違い

    フレックスタイム制と裁量労働制の概要がわかったところで、あらためて両制度の違いを整理します。本記事では次の4つの観点からフレックスタイム制と裁量労働制の違いを解説します。

    • 労働条件
    • 導入手続き
    • 対象従業員の職種
    • 報酬制度

    労働条件の違い

    フレックスタイム制では「コアタイム」と呼ばれる必ず出社が必要な時間帯を設定することが可能です。しかし、裁量労働制にはコアタイムの概念がなく、従業員に出社時間や勤務時間の長さを指定することができません。

    また裁量労働制では、あらかじめ決められた「みなし労働時間」を基準に労働時間を数えるため、所定労働日における正確な労働時間のカウントは不要といえます。

    ただし、フレックスタイム制と裁量労働制のどちらも、従業員の健康管理のために、適切に労働時間を把握する必要があるでしょう。

    導入手続きの違い

    フレックスタイム制の導入では、従業員に説明したうえで、始業・終業時刻を本人にゆだねることを就業規則に記載し、労使協定を締結します。さらに清算期間1か月を超える場合は、労使協定を労働基準監督署長に届け出る必要もあります。

    一方で裁量労働制の導入には、労使協定の締結や労使委員会での決議が必要です。さらに内容を労働基準監督署長へ届け出なけれならず、フレックスタイム制よりも手続きが複雑です。

    対象従業員の職種の違い

    フレックスタイム制は職種や業態が限定されておらず、すべての従業員に適用できる一方で、裁量労働制では対象業務が定められています。

    裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があり、それぞれで対象となる職種は異なります。

    専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制
    ・新商品の研究開発または人文・自然科学の研究
    ・情報処理システムの分析・設計
    ・記事の取材・編集
    ・デザイン考案
    ・プロデューサー
    ・ディレクター
    ・コピーライター
    ・システムコンサルタント
    ・インテリアコーディネーター
    ・ゲームクリエイター
    ・証券アナリスト
    ・金融商品の開発
    ・大学の教授研究
    ・M&Aアドバイザー
    ・公認会計士
    ・弁護士
    ・建築士
    ・不動産鑑定士
    ・弁理士
    ・税理士
    ・中小企業診断士
    ・人事、労務
    ・財務、経理
    ・広報
    ・生産
    ・営業領域の調査・企画・計画・分析業務

    参照:『専門業務型裁量労働制の解説』厚生労働省

    参照:『企画業務型裁量労働制の解説』厚生労働省

    報酬制度の違い

    フレックスタイム制では、実労働時間をもとに賃金が算出されます。清算期間内に上限を超えた場合は、労働基準法で定められた割増賃金を支払う必要があります。

    一方で裁量労働制では、事前に設定された「みなし労働時間」によって賃金が算出されます。原則として「みなし労働時間」を超える残業代は発生しません。

    ただし、法定休日に勤務した場合や深夜労働を行った場合は割増賃金を適用します。

    フレックスタイム制と裁量労働制は併用できる?

    フレックスタイム制と裁量労働制は性質が異なるため、一人の従業員に対して併用はできません。

    フレックスタイム制は、従業員自身で始業・終業時間を自由に設定できる制度です。また、清算期間内に所定労働時間を満たす必要があり、法定労働時間を超過した場合は割増賃金が発生します。

    一方で、裁量労働制は労働時間についての裁量を従業員に一任する制度であり、導入できる職種は限られます。

    両者は形態が異なる制度であるため、併用はできないと理解しましょう。

    フレックスタイム制を採用するメリット・デメリット

    フレックスタイム制を導入することで、企業にどのようなメリット・デメリットがあるのか、詳しく解説します。

    メリットデメリット
    ・優秀な人材を確保しやすく、定着率向上が期待できる
    ・従業員にとって仕事とプライベートの両立がしやすい
    ・長時間労働を是正できる
    ・社内のコミュニケーション不足が懸念される
    ・社外とのやり取りに問題が生じる
    ・勤怠管理が複雑になる

    フレックスタイム制を採用するメリット

    フレックスタイム制を採用するメリットは、次の通りです。

    • 優秀な人材を確保しやすく、定着率向上が期待できる
    • 従業員にとって仕事とプライベートの両立がしやすい
    • 長時間労働を是正できる

    フレックスタイム制では、従業員が始業・終業時間を自由に設定できるため、介護や育児などを理由に退職せざるを得ない状況を回避しやすいのが特徴です。

    フレックスタイム制を導入していることがアピールポイントとなり、働きやすさを重視する求職者から注目を集めるでしょう。結果として、優秀な人材を確保しやすくなります。

    フレックスタイム制は日によって労働時間を調整できるため、仕事とプライベートを両立しやすくなるだけでなく、慢性的な長時間労働の是正にもつながります。

    フレックスタイム制を採用するデメリット

    一方でフレックスタイム制を採用するデメリットは、次の通りです。

    • 社内のコミュニケーション不足が懸念される
    • 社外とのやり取りに問題が生じる
    • 勤怠管理が複雑になる

    フレックスタイム制では従業員によって出退勤の時間が異なるため、従業員同士のコミュニケーションを取りにくくなるおそれがあります。

    社外の取引先やクライアントから連絡があった際やイレギュラーな事態が発生したときも、迅速な対応ができず、必要事項を適切に伝えられないといったリスクも高まります。

    フレックスタイム制において、一人ひとりの出勤時間や退勤時間に差が生じると、勤怠管理は複雑になります。勤怠管理システムなどのツールを活用して、効率的に従業員の労働時間を管理する仕組みを構築する必要があります。

    裁量労働制を採用するメリット・デメリット

    裁量労働制を導入することによって得られるメリット・デメリットについて詳しく解説します。フレックスタイム制のメリット・デメリットと同様に、従業員の柔軟な働き方を実現する一方、長時間労働に歯止めが効かなくなるなど管理上の労務リスクがあります。

    メリットデメリット
    ・従業員のペースで働ける
    ・従業員の裁量や独自のやり方で仕事を進められる
    ・やればやるだけ評価につながる
    ・業務内容と報酬の設定が難しい
    ・社内や社外とのやり取りがしにくい
    ・長時間労働につながりやすい

    裁量労働制を採用するメリット

    裁量労働制を採用するメリットは、次の通りです。

    • 従業員のペースで働ける
    • 従業員の裁量や独自のやり方で仕事を進められる
    • やればやるだけ評価につながる

    裁量労働制では時間的な拘束がなく、従業員のペースで働けます。仕事が早く終わればみなし労働時間よりも早いタイミングで退勤できるため、企業全体の生産性向上につながります。

    裁量労働制は、業務の遂行方法や時間配分を各従業員にゆだねられるので、従業員にとってストレスの少ない環境にできるのもメリットです。

    さらに裁量労働の制度下では、労働時間ではなく業務成果で評価される傾向にあります。年齢や社歴に関係なく、優秀な人材であれば早くキャリアアップできる可能性が高まります。

    裁量労働制を採用するデメリット

    一方で裁量労働制を採用するデメリットは、次の通りです。

    • 業務内容と報酬の設定が難しい
    • 社内や社外とのやり取りがしにくい
    • 長時間労働につながりやすい

    裁量労働制では、あらかじめ定めたみなし労働時間で報酬を支払うため、みなし労働時間が法定労働時間内であれば残業代は発生しません。

    みなし労働時間と報酬を適切に設定しいていなければ、業務内容の負担と報酬が見合わず、従業員の不満につながります。

    またフレックスタイム制と同様に、社内だけでなく社外の取引先やクライアントとのコミュニケーションが取りにくくなるのがデメリットです。

    自己管理が上手にできないと、長時間労働を助長する働き方だという指摘もあります。

    フレックスタイム制と裁量労働制を導入する手順

    フレックスタイム制と裁量労働制、それぞれを導入する手順と流れを解説します。裁量労働制は種類によって手続きが異なるため、注意しましょう。

    フレックスタイム制を採用する手順

    フレックスタイム制を導入する手順は、次の通りです。

    1. 労使協定を締結する
    2. 就業規則を変更し、社内に通知する
    3. 労働基準監督署長に届け出る

    労使間で制度について話し合い、内容が決定したら就業規則を変更して社内に通知しましょう。その後、労働基準監督署長に届出をすれば手続きは終了です。

    コアタイムやフレキシブルタイムの設定は任意なので、定める場合は労使協定に盛り込みます。

    専門業務型裁量労働制を採用する手順

    専門業務型裁量労働制を採用する手順は、次の通りです。

    1. 労使協定を締結し、協定届を作成する
    2. 就業規則を変更し、社内に周知する
    3. 労働基準監督署長に届け出る
    4. 雇用契約書の内容を更新する

    企業と従業員の代表が、制度を導入する目的や実際の運用方法について話し合います。協定が締結できたら、就業規則を変更して社内に通知しましょう。

    その後『専門業務型裁量労働制に関する協定届』を労働基準監督署長に提出し、対象となる従業員の雇用契約書の内容を更新すれば、手続きは終了です。

    企画業務型裁量労働制を採用する手順

    企画業務型裁量労働制を採用する手順は、次の通りです。

    1. 労使委員会を設置し、決議する
    2. 就業規則を変更し、社内に周知する
    3. 労働基準監督署長に届け出る
    4. 対象者の同意を得る

    企業と従業員の代表による「労使委員会」を設置し、労働条件を調査したうえで決議します。その後、就業規則の変更と、労働基準監督署長へ決議の届出をしましょう。

    最後に、対象者へ制度についてていねいに説明し、一人ひとりから同意を得なければなりません。

    フレックスタイム制と裁量労働制の違いを区別

    自由な働き方を実現する制度として注目されているフレックスタイム制と裁量労働制ですが、導入方法や導入するための条件には違いがあります。

    企業の実態や業務内容によって、どちらの制度を導入すべきかは異なります。両者の概要やメリット・デメリットを理解したうえで、最適な方法を選択しましょう。

    フレックスタイム制・裁量労働制の管理にも|One人事[勤怠]

    フレックスタイム制や裁量労働制では、個々がある程度自由に勤務時間を選べるため、知らぬ間の労務リスクにつながらないよう適切な勤怠管理が必要です。

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