勤怠管理における中抜けの扱い方|ケース別の扱い方や注意したいポイントも解説
勤務時間中の「中抜け」を認めると、従業員にとってさまざまなメリットがあります。しかし「中抜け」を実際に使用する場合、勤怠管理上どのように取り扱えばよいのか疑問に感じる担当者もいるでしょう。
本記事では、勤怠管理上での中抜けの取り扱い方や注意点を解説します。勤怠管理の担当者は参考にしてください。
勤怠管理における「中抜け」とは?
まずは「中抜け」の定義について解説します。
一時的に職場を離れること
中抜けとは、所定労働時間中に一時的に就業場所を離れ、再び就業場所に戻る時間を指します。
就業時間の途中で短時間の外出ができることで、子どもの送迎や授業参観など短時間の私用をこなせるのです。そのため、中抜けを認めることは、従業員のワークライフバランス向上に寄与すると期待されています。
飲食業界や旅館業界、医療業界に多い
中抜けは、忙しくなる時間帯が特定の時間に集中しやすい飲食・旅館・医療業界に多く導入されている制度です。近年ではテレワークの普及により、上記以外の業種でも中抜けを導入する必要性が増しています。
一方で、中抜けの導入により勤怠管理が複雑化するため、中抜けを勤怠管理上どのように取り扱うのかなどのルールを明確化しておく必要があります。
勤怠管理における中抜けには2つの種類がある
「中抜け」と一概にいっても、さまざまな種類があります。中抜けの理由を2つに分けて解説します。
プライベートな理由によるもの
中抜けには、通院や行政機関での手続きなどプライベートな理由によるものがあります。
子どもがいる場合、送迎や学校などのイベントや面談などの際に中抜けを利用したい従業員は多いでしょう。半休や休暇を取得するほどではないものの、1~2時間ほどだけ職場を離れたい場合に利用されます。
ワークスタイルによるもの
1日の中で、忙しくなる時間帯とそうでない時間帯がはっきりしている場合に、その間の時間を中抜けとして取り扱うこともあります。
飲食・旅館・医療業界で多く見られ、組織のワークスタイルとして定着していることが多いです。会社の制度として、前半・後半の労働時間の間に長い休憩時間があると考えるとよいでしょう。
勤怠管理における中抜けの扱い方
中抜けは、勤怠管理上の扱い方によって終業時間や休憩時間に差が生じることがあります。そこで、3つの中抜けの扱い方とそのポイントについて解説します。
- 休憩時間として扱う場合
- 半休や時間単位の有給として扱う場合
- 1日2回出勤したとして扱う場合
休憩時間として扱う場合
1つめは、中抜けを通常の休憩時間として取り扱う方法です。
中抜けをプライベートな理由で利用する場合に適用されることが多く、何時から何時まで中抜けしたかを記録しておき、中抜けした時間を休憩時間として扱います。
中抜けをした場合でも、所定労働時間の長さは変わらないため、中抜けをした日は終業時間を遅くするなどの調整が必要です。
半休や時間単位の有給として扱う場合
2つめは、中抜けを半休や、時間単位での有給休暇として取り扱う方法です。中抜けの時間が休憩時間に影響することがないため、終業時間が遅くならず、勤怠管理が容易になるメリットがあります。
しかし、時間単位での有給休暇取得を可能とするためには、労使協定の締結が必要です。
従業員が半休を取得する場合は、労使協定の締結の必要はありませんが、企業側から強制的に中抜けを半休扱いにすることはできないため、注意しましょう。
参照:『時間単位の年次有給休暇制度とは | 働き方・休み方改善ポータルサイト』厚生労働省
1日2回出勤したとして扱う場合
3つめは、1日に2回出勤したとして扱う方法です。
午前中に出勤して、中抜けをしたあとに夕方から再び出勤するような場合、それぞれを「出勤」として扱います。
ただし、中抜けした従業員に休憩時間を適切に与えるようにしましょう。労働基準法第34条の定めにより、労働時間が6時間を超える場合は、45分以上の休憩を与えなければなりません。
中抜けの時間は休憩時間として扱われないため、前半・後半の合計労働時間が6時間を超える場合、どちらかで45分の休憩が必要です。
また、前半・後半のどちらか片方で6時間を超える場合でも、45分の休憩が必要です。
さまざまな勤怠における中抜けの扱い方
勤務形態によって、中抜けの扱い方は異なります。勤怠別の中抜けの扱い方について、よくある事例をもとに解説します。
- テレワーク中の中抜け
- フレックスタイム制の中抜け
- 残業中の中抜け
テレワーク中の中抜け
テレワーク中に中抜けする場合は、出勤中の中抜けと同じ扱いです。基本的には、中抜けを休憩もしくは半休・有給として扱います。午前中と夕方に分けて労働する場合は、1日に2回出勤した場合の扱いと同様です。
ただし、テレワーク中の従業員の様子は把握することが難しいため「無断の中抜け」を防ぐための仕組みづくりが重要です。たとえば、前日までに中抜けの開始時刻と終了時刻を、必ず管理者に報告することなどが効果的でしょう。
フレックスタイム制の中抜け
フレックスタイム制は、一定期間内にあらかじめ設定された総労働時間の中で、始業・終業時刻や労働時間を従業員が自由に決められる制度であり、導入には就業規則などへの規定と、労使協定の締結が必要です。
フレックスタイム制度のもとで中抜けをした場合は、清算期間内で労働時間を調整すればよいため、比較的自由に中抜けができます。
ただし、コアタイム中の中抜けは事前申請を必須にするなどのルールづくりと周知の徹底が必要です。
残業中の中抜け
残業時間は、臨時的に発生した労働時間であるため、残業時間中の中抜けを時間単位の有給休暇として扱えません。残業中の中抜けは、休憩時間として扱いましょう。
勤怠管理上の中抜けで注意したい3つのポイント
中抜けは、従業員のワークライフバランスを維持するうえで効果的な制度ですが、勤怠管理においては注意が必要です。
中抜けを導入するにあたって、管理者が注意すべきポイントを3つご紹介します。
- 会社都合の移動時間は労働時間として扱う
- 明確なルールを設定する
- 労使協定や就業規則に規定する
会社都合の移動時間は労働時間として扱う
中抜けは、あくまでも従業員が労働から完全に離れている時間を指すため、会社都合の移動時間などは中抜けには該当しません。
営業などで取引先を訪問するための移動時間や、テレワークからの出勤を命じられた場合などは中抜けとして扱わずに、労働時間として扱う必要があります。
明確なルールを設定する
中抜けに関するルールをあらかじめ設定したうえで従業員に十分な周知ができていなければ、さまざまなトラブルを引き起こしかねません。
従業員が中抜けを利用する方法や条件、承認者の対応手順などのルールを明確化しておくことで、トラブルを事前に防げます。
労使協定や就業規則に規定する
中抜けを休憩時間として、始業時間を繰り上げたり終業時間を繰り下げたりすることを認める場合は、就業規則に明記しなければなりません。
中抜けを時間単位の有給休暇とする場合は、労使協定を締結したうえで就業規則に明記しましょう。時間単位での有給休暇を導入する方法は、厚生労働省のリーフレットを参考にしてください。
また、時間単位での有給休暇取得に関する規則を就業規則に記載したあとは、従業員への周知も忘れずに行いましょう。
参照:『時間単位の年次有給休暇制度導入促進リーフレット』厚生労働省
勤怠管理上の中抜けを就業規則に明記する際のポイント
始業・終業時間の変更ができるようにする場合
中抜けを休憩時間とする場合は、始業時間を前倒しにすることや、終業時間をうしろ倒しにすることが必要です。労働基準法第89条では、始業・終業時刻や休憩時間、休暇についての詳細を就業規則へ明記することを求めています。
また、労働基準法第106条により「就業規則は従業員に周知しなければならない」と規定されています。中抜けについては、遅刻や早退、欠勤に関する事項に追記する場合が一般的なので、参考にしてみてください。
時間単位の有給休暇を取得できるようにする場合
時間単位で有給休暇を取得できるようにするためには、労使協定の締結と就業規則への明記が必要です。就業規則に明記する必要のある事項は、以下の4点です。
- 時間単位年休の対象従業員の範囲
- 時間単位年休の日数
- 時間単位年休1日の時間数
- 1時間以外を単位とする場合はその時間数
中抜けの管理には勤怠管理システム
中抜けの導入にはメリットもありますが、管理する側からすると勤怠管理が複雑になりやすいというデメリットもあります。
効率的に勤怠管理を行い、労務コストを削減するためには、専用の勤怠管理システムの導入も検討してみてください。
勤怠管理システムとは、出退勤の記録や残業・休暇申請を自動化し、管理を一元化するツールです。
テレワークの普及により把握しにくくなった従業員の労働状況を正しく記録し、効率化を実現して担当者の負担を軽減します。法改正による運用変更にもスムーズに対応できるサービスも多く、リスクマネジメントやコンプライアンスの観点からも導入のメリットがあります。
まとめ
中抜けの導入により、従業員のワークライフバランスの向上が期待できるため、制度の導入を検討している企業は多いのではないでしょうか。
ただし、従業員の労働時間を適正に管理する必要があるため、中抜けの導入と同時に勤怠管理方法の見直しも行うとよいでしょう。
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