月またぎの振替休日の正しい処理方法|代休との違いや取得期限、給与計算例も紹介

振替休日が月をまたいでしまい、処理の手が止まっていませんか。
振替休日が月をまたぐと、処理が少し複雑になります。やり方に不安が残ったままだと、未払い賃金などの問題につながるおそれがあるため、正確な理解が必要です。
本記事では、振替休日の月またぎの処理手順と計算例、代休との扱いの違いも解説します。企業の労務管理や給与計算を担当する方は、参考にしてください。

目次[表示]
振替休日の月またぎとは
振替休日が「月をまたぐ」とは、出勤した月と、振替休日を取った月が別になることです。
たとえば、3月20日に出勤して4月10日に休むケースは、月またぎの振替休日になります。
また、カレンダー上は出勤日と振替日が同じ月でも、勤怠・給与の締め日をまたぐ場合、実務上は月またぎと同じ扱いになり、同様の処理が必要です。
振替休日の月またぎは合法?
月をまたいで振替休日を設定すること自体は可能です。労働基準法でも禁止されておらず、違法とはなりません。
ただし、振替休日が月をまたぐと、未払い賃金や割増賃金のトラブルにつながるため、次のポイントをおさえておきましょう。
- 賃金は「働いた月」に全額支払う
- 時間外労働の基準となる週40時間の集計は、振替出勤日を含めて合算する
- 週40時間を超えたら割増賃金を支払う
- 賃金形態によって対応が変わる場合がある
- 法定休日(1週1日または4週4日)は必ず確保する
- 振替休日は振替出勤する前に指定する
実務では、出勤日と振替休日はできるだけ近い日に設定すると、勤怠・給与処理が混乱しにくくなります。
月またぎの振替休日の取得期限
月またぎの振替休日を「何日以内に取らなければならない」という期限は、法律で一律に決まっていません。
そのため多くの企業では、就業規則などに取得期限を明記し、社内ルールとして管理しています。
ただし、法律で期限が決まっていないからといって、振替休日を取らせないまま放置してよいわけではありません。
振替休日の付与を先送りするほど本人は「休めていない」状態が続き、異動や退職のタイミングで、未消化分の整理がより複雑になります。
忙しい時期ほど、振替休日は後回しにされやすいでしょう。取得期限・申請方法・管理担当などのルールをあらかじめ決めておくと、運用がスムーズです。
振替休日を放置するリスク
振替休日を月をまたぎ、消化しないままにしておくと、該当の勤務日は「振替」ではなく休日労働とみなされる可能性があります。すると、会社には休日労働分の割増賃金を支払う義務が発生します。
割増賃金を含む未払いの賃金は、従業員があとから請求でき、時効(請求期間)は原則5年(当面は3年)です。
さかのぼって請求されるリスクを減らすためにも、振替休日は早めに取れるように計画して、取得を促しましょう。
また、従業員の健康管理や労働時間の適正化をはかるうえでも、振替先の日付は、できるだけ近い日に設定することをおすすめします。

そもそも振替休日とは
振替休日とは、休日に働く代わりに、別の日を休みにするために、休日と労働日を事前に入れ替える制度です。労働基準法で定められた、週1回以上の休日を確保するために設けられています。
たとえば、日曜日に出勤する代わりに、翌週の水曜日を休みにするようなケースです。
代休との違い
振替休日と代休の違いはシンプルで、休みを設定するタイミングです。
- 振替休日:出勤する「前」に休みの日まで決めて、休日と労働日を入れ替える
- 代休:休日に働いた「あと」に、埋め合わせとして別日に休ませる
以上の違いにより、賃金の扱いも変わります。
振替休日は、事前の入れ替えが完了していれば、本来の休日に働いても「通常の勤務日」と扱われるため、割増賃金の支払いは不要です。
一方で代休は、休日労働を行った事実は残るため、休日労働の割増賃金(35%以上)を支払わなければなりません。
振替休日の月またぎがあった場合の給与計算
振替休日が月をまたぐときに迷いやすいのは、「出勤した月」と「休んだ月」で給与をどう調整するかです。給与計算・勤怠管理では、次のような流れで対応する必要があります。
- 出勤した月(当月):休日に働いた分の賃金は、いったん当月の給与として支払う
- 休んだ月(翌月以降):振替休日を取った分は、翌月の給与で調整(控除)する
月またぎの振替休日自体は問題ありませんが、処理を誤ると労働基準法違反につながるおそれがあるため、ルールに沿って慎重に対応しましょう。
以下では、月をまたぐ振替休日の給与計算の進め方を、具体例を交えて解説します。
当月:出勤分の給与を全額支払う
振替休日が月またぎで設定されていても、当月に出勤した日の賃金は、就業規則などで定めた賃金支払日に必ず支払う必要があります。出勤分の賃金を「振替休日を取れるまで保留する」扱いは認められません。
労働基準法第24条(賃金支払いの原則)により、賃金は毎月1回以上、一定期日に、全額支払わなければならないためです。
また、振替出勤日に時間外労働が発生した場合も、当月分として割増賃金を含めて支払う必要があります。翌月に振替休日を取る予定があっても、当月の賃金を減らしたり、未取得の振替休日と相殺したりはできません。
たとえば、次のケースでは割増賃金の対象になります。
- 振替出勤日の労働が1日8時間を超えた
- 振替出勤日に深夜(22時〜5時)に労働した
- 振替出勤の影響で、その週の労働時間が週40時間を超えた(時間外労働)
たとえ月をまたいで振替休日を取る予定でも、賃金計算期間(締め日まで)に発生した労働時間と割増分は、締め日が来た時点で確定させ、決められた支払日に支払う義務があるのです。
翌月:振替休日の取得後に控除する
振替休日が月をまたぐ場合、翌月以降に休んだ日は、給与を次のように調整します。
- 出勤1日の基本給相当額だけを、振替休日が発生した月の給与から差し引く
- 時間外割増賃金や深夜手当などの手当は控除はしない
割増賃金や各種手当は「振替出勤日に実際に働いた」ことに対して支払うものです。振替休日を月またぎで取得しても差し引く対象にならないことに注意が必要です。
給与計算では、基本給と手当を分けて扱い、手当まで誤って控除しないようにしましょう。
たとえば、5月15日に振替休日を取った場合は、5月度の給与から「1日分の基本給額」だけを控除します。
手当まで控除すると、労働基準法違反につながり、企業側に罰則リスクがあります。
振替休日の月またぎにおける注意点
振替休日が月をまたぐと、給与の控除や割増賃金の扱いなど、いつもより確認したい点が増えます。処理を間違えると、従業員の不利益につながったり、あとから説明や修正が必要になったりすることもあり注意が必要です。
そこで法律上のルールを踏まえつつ、迷いやすい4つのポイントを解説します。前段の解説と重なる点がありますが、注意点としてまとめ直しますので、おさらいしたい方はご確認ください。
36協定の締結が必要
振替休日を月またぎで設定すると、労働時間が週40時間(法定労働時間)を超える週が発生する可能性があります。
週40時間を超えて働かせる場合は、労働基準法第36条に基づく36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出なければなりません。
たとえば、法定休日に出勤し、振替休日を翌月に取る運用だと、結果として週40時間を超過しがちです。
36協定が未締結のまま時間外労働が発生すると違法となるため、36協定の協定書と有効期間を確認しておきましょう。
割増賃金が発生する場合もある
振替休日を取る場合、法定休日の割増(休日手当)は基本的に不要のはずですが、時間外手当や深夜手当が不要になるわけではありません。
振替出勤日に1日8時間を超えて働いた場合や、22時〜5時に勤務した場合は、25%以上の割増賃金が必要です。さらに、週の労働時間が週40時間を超えた場合も、時間外労働として割増賃金の対象になります。
勤怠・給与の締め日時点で発生分を正しく計算し、当月分として支払い漏れがないように注意しましょう。
法定休日を下回らないよう注意する
労働基準法では、原則として週1回以上の法定休日を確保する必要があります。
そのため振替休日を翌月にまたぐと、当月のなかで法定休日が確保できず、気づかないうちに違法状態になるケースも考えられます。
たとえば、振替出勤が土曜で、翌週の日曜も出勤になるようなシフト勤務は、週のどこかで別日に法定休日を設けなければなりません。
法定休日は賃金計算だけでなく、従業員の健康管理においても重要なため、シフト作成の段階で必ずチェックしましょう。
割増賃金分は翌月に控除できない
振替休日が月をまたぐ場合でも、出勤によって発生した割増賃金を翌月に控除することはできません。翌月に控除できるのは、あくまで1日分の基本給(基本給相当額)に限られます。
たとえば、4月に振替出勤し、5月に振替休日を取った場合、5月の給与から控除できるのは4月分の基本給相当額のみで、残業手当・深夜手当は支払ったままにする必要があります。
給与計算では基本給と割増賃金を明確に分け、控除対象を取り違えないようにしましょう。勤怠管理システムや給与計算ソフトを使い、計算ミスを防ぐ運用にするのがおすすめです。
振替休日の月またぎにおける給与計算例
振替休日が月をまたぐ場合、給与計算を 「当月に支払う分」と「翌月に控除して調整する分」 に分けて考える必要があり、作業が複雑になりがちです。
さらに、振替出勤によって 週の労働時間が法定の週40時間を超えたかによって、割増賃金の有無や計算の考え方も変わります。
ここでは、混乱しやすいポイントを整理できるように、具体例を使いながら、流れに沿って解説します。
法定労働時間を超えない場合
月をまたぐ振替休日で、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えないときは、給与計算はシンプルです。振替出勤日は、通常の勤務日と同じ扱いで、基本給相当額を計算します。
例)年間休日125日/1日8時間/月給30万円
1.1か月の平均所定労働時間を計算
| (365−125)×8÷12=160時間 |
2.1時間あたりの賃金額を計算
| 300,000÷160=1,875円 |
3.振替出勤日の賃金額(基本給相当額)を計算
| 1,875×8=15,000円 |
当月は15,000円を上乗せして支払い、翌月に振替休日を取得したら、同額(15,000円)を控除して調整します。割増賃金は発生しないため、基本給部分だけで処理できます。
法定労働時間を超える場合
月をまたぐ振替休日でも、振替出勤の結果として週40時間を超えたら時間外労働となり、割増賃金(25%以上)が必要です。
例)週の労働時間が48時間(40時間を8時間超過)/時給換算1,875円
1.時間外の「割増分」を計算(25%部分)
| 1,875×8×0.25=3,750円 |
2.当月の給与に追加する金額
| 基本給相当額:1,875×8=15,000円 割増分:3,750円合計:18,750円 |
翌月に振替休日を取得した場合、控除できるのは基本給相当額(15,000円)だけです。労働基準法24条の「賃金全額払い」などの原則によって、割増分(3,750円)は控除できません。
法定労働時間を超える場合は、月をまたぐ控除と割増賃金を分けて処理する必要があります。勤怠管理システムや給与計算ソフトを使い、勤怠と給与の数値が一致するよう整合性を取りましょう。
月またぎの振替休日を先に取得することは可能?
振替休日を先に取得することも可能です。「先に休んで、後から出勤する」運用でも問題ありません。
たとえば3月20日に振替休日を取得し、4月10日に出勤するケースが該当します。法律上、一律に禁止されているわけではないため、企業側で柔軟に対応できます。
給与計算も、基本的には特別な処理は不要です。先に休んでいるため、3月分の給与は通常どおり出勤日数分を支払い、4月分の給与に4月10日の出勤分の賃金が反映されます。
先に休む運用は、当月支払いと翌月控除の調整が発生しにくい分、計算ミスのリスクを抑えやすい面があります。ただし、取り扱いは就業規則や労使協定、シフト運用のルールで変わります。社内ルールを整備しておきましょう。
代休が月をまたぐ場合の処理方法
代休が月をまたぐ場合も、考え方は振替休日と同じで「休日出勤した月に賃金を全額支払い、代休を取った月の給与から基本給を差し引く」のが基本です。
具体的な処理は次のとおりです。
- 休日出勤した月:休日出勤日の賃金を、休日割増賃金分も含めて給与で支払う
- 代休を取得した月(翌月以降):代休で休んだ1日分について、基本給相当額のみを給与から控除する
翌月以降に調整されるのは基本給のみで、休日割増賃金は支払われたままです。
たとえば9月に休日出勤し、10月に代休を取得するケースでは、9月分の給与に休日出勤の割増賃金(法定休日は35%以上)が上乗せされます。10月は「1日分の基本賃金」を控除して調整します。
代休が月をまたがない場合は、休日出勤と代休取得が同じ給与計算期間に収まるため、精算が月内で完結します。たとえば同じ期間内で「休日出勤(+休日割増)」と「代休取得日(無給扱い)」が両方発生すると、明細上は月内で差し引きが行われ、結果として休日割増賃金分だけが残る見え方になります。
なお、法定休日における休日出勤には「時間外労働」という扱いがないため、休日出勤によって法定労働時間を超えても時間外割増賃金の上乗せは不要です。ただし、深夜労働になった場合は、深夜割増の対象になります。
一方、所定休日(法定外休日)に出勤した場合は、その週の労働時間が週40時間を超えたときのみ、時間外割増の対象になることがあります。
まとめ
振替休日が月をまたぐ場合、当月の出勤分は必ず給与に含めて支払い、翌月の振替休日取得時に基本賃金分を控除する必要があります。
月をまたいでの相殺処理は労働基準法違反となるため、絶対に避けなければなりません。処理方法を誤ると、従業員からの未払い賃金請求や労働基準監督署の指導対象となるリスクがあります。
月またぎの振替休日を運用する際は、36協定の締結や割増賃金の適正計算、法定休日の確保といったポイントにも注意が必要です。
とくに時間外労働が発生した場合、割増分は翌月に控除できないため、当月内で正確に支払わなければなりません。給与計算の複雑さから人為的ミスが起きやすいため、専用ツールの導入も一案です。
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複雑な控除処理も誤りなく行えるため、コンプライアンス遵守と業務負担軽減を両立できます。正確な給与計算は、従業員の信頼確保にもつながるため、適切な管理体制の構築が重要です。

