就業時間とは【勤務時間・労働時間との違い】休憩や残業は含む? 法律の考え方と計算の具体例
「就業時間」「勤務時間」「労働時間」、それぞれの違いを明確に説明できますか。
とくに給与計算や残業代の計算が絡むと「どこまでが労働時間に含まれるのか?」と悩む場面もあるでしょう。また就業時間の中に、休憩時間や残業時間が含まれるのかわからないと、疑問に思う方もいるかもしれません。
本記事では「就業時間」「勤務時間」「労働時間」の用語の違いを、法律の観点からわかりやすく整理し、それぞれの数え方も具体例を挙げて紹介します。違いを正確に区別し、勤怠管理や給与計算に役立つ情報を得られるはずです。日々の業務の効率化にお役立てください。
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就業時間と勤務時間は同じもの
「就業時間」と「勤務時間」は、言葉は異なるものの、基本的に同じ意味を持つものです。
就業時間とは、就業規則や労働契約書で定められた「業務開始から終業までの時間」を指します。
就業時間の例 | 9時始業・17時終業→8時間が就業時間 |
実際に仕事をしている時間だけでなく、休憩時間も含みます。従業員が業務を開始して休憩を挾み、その日の仕事を終えるまでの一連のすべてを含むと考えるとわかりやすいでしょう。
一方で「勤務時間」も、求人票などでよく見かける表現で、同じく「業務の開始から終了までの時間」を指します。就業時間と勤務時間の違いはほぼなく、どちらも同義として使用されるケースが多いです。
また「就労時間」も就業時間や勤務時間と同じ範囲をあらわします。
つまり「就業時間」「勤務時間」「就労時間」は、企業や場面によってどの表現を使うかの違いがあるだけで、実質的に同じ意味です。
就業時間の中に労働時間は含まれる
「就業時間」とは、就業規則で定められた業務の開始から終了までの時間です。一方で「労働時間」とは、使用者の指揮命令のもとに置かれ、労働者が実際に業務に従事している時間を意味します。
就業時間が労働時間と大きく異なるのは、休憩時間が含まれることです。労働時間は就業時間の一部とであり、両者には明確な違いがあります。
就業時間=労働時間+休憩時間 |
就業時間と労働時間の関係の例 | 9時始業・17時終業、休憩1時間の場合 |
---|---|
就業時間 | 8時間 |
労働時間 | 7時間(就業時間から休憩1時間を除いた時間) |
つまり就業時間は、労働時間と休憩時間を含む範囲を指しており、労働時間はその中で実際に業務を行う時間を指します。ただし労働時間は単なる業務時間に限らず、制服に着替えるなど準備時間が含まれる場合があるため、扱いに注意しましょう。
就業時間と労働時間の区別は、労働時間の適正な管理のために重要なポイントです。
労働時間の管理方法について確認したい方は以下の記事をご確認ください。
労働時間の種類
労働時間には「所定労働時間」と「法定労働時間」という2つの種類があります。また就業時間と労働時間を区分するうえで、実労働時間への理解も必要です。給与計算にもかかわる概念であるため、言葉の意味とそれぞれの違いを明確にしておきましょう。
種類 | 詳細 | 関連法律 |
---|---|---|
法定労働時間 | 労働基準法で定められた労働時間の上限。1日8時間、週40時間が基本。法定労働時間を超える労働には36協定の締結と割増賃金の支払いが必要。 | 労働基準法第32条 |
所定労働時間 | 各企業が就業規則などで定めた労働時間。法定労働時間内で自由に設定が可能。 | |
実労働時間 | 実際に労働者が業務を行った時間。所定労働時間外の残業時間や深夜労働時間も含む。実労働時間をもとに賃金が計算される | ー |
たとえば所定労働時間が7時間の場合、1時間の残業をしても、法定労働時間を超えていないため、割増賃金の適用は必須ではありません。また、残業を含めて9時間働いた場合、実労働時間は9時間となります。
労働時間の違いを正しく理解することで、労働時間の管理や給与計算がスムーズに進むだけでなく、法令遵守にも役立ちます。
労働時間の管理に課題がある方は以下の資料をご活用ください。
就業時間と休憩時間の関係
就業時間には、労働時間だけでなく休憩時間も含まれます。休憩時間とは、労働者が業務から完全に解放され、自由に過ごすことができる時間です。休憩時間は労働基準法によって最低限の付与基準が定められており、就業時間を構成する重要な要素の一つです。
休憩時間は「労働時間」に応じて、以下のように付与されることが義務づけられています。
労働時間が6時間以下の場合 | 休憩時間の付与は不要 |
労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合 | 少なくとも45分以上の休憩を付与 |
労働時間が8時間を超える場合 | 少なくとも1時間以上の休憩を付与 |
労働基準法では、休憩時間の「下限」が定められているため、規定を上回る長さの休憩を設けることも可能です。
休憩時間の法的ルールについて詳しく確認したい方は以下の記事をご確認ください。
就業時間を超えると残業(時間外労働)時間になる
企業が定めた就業時間や法定労働時間を超えて労働した時間の総称を「残業時間」といいます。残業には、就業規則による所定労働時間を基準とした「法定内残業」と、労働基準法で定められた法定労働時間を基準とした「法定外残業」の2種類があります。それぞれの法的扱いの違いを確認していきましょう。
種類 | 詳細 | 割増賃金の支払い | 例 |
---|---|---|---|
法定内残業 | 企業が定めた所定労働時間を超えたが、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の範囲には収まる残業。 | なし(通常の賃金を支払う必要あり) | 所定労働時間が6時間で1時間残業した場合 |
法定外残業 | 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働。 | 必要(通常賃金の25%以上) | 所定労働時間が8時間で2時間残業した場合 |
法定外残業が月に60時間を超えた部分については、50%以上の割増賃金の支払いが必要です。
また割増賃金は、残業を意味する時間外労働のほかにも、深夜労働(22時から翌5時)や休日労働に対しても適用されます。
残業時間についてあらためて確認したい方は以下の記事をご確認ください。
時間外労働の割増賃金の計算方法
時間外労働の割増賃金は、法定外残業にのみ適用されます。そのため、割増賃金の計算においては所定労働時間を超えたかどうかではなく、法定労働時間を超えたかどうかが重要です。
以下の場合、割増賃金が適用される残業は2時間だけ | |
---|---|
所定労働時間 | 7時間 |
残業時間 | 3時間(法定内残業1時間、法定外残業は2時間) |
時給換算した賃金を2,000円とすると、残業代は以下のように計算します。
2,000円×1時間+2,000円×1.25×2時間=7,000円 |
就業時間と残業時間を正しく区別することは、労働時間管理や給与計算、労務リスクの回避に重要です。
時間外労働の手当について計算方法を確認したい方は以下の記事をご確認ください。
就業時間と労働時間の数え方・計算の具体例
ここまで、就業時間、労働時間、そして残業時間の定義や種類について解説してきました。
概念を実際の勤務例に当てはめると、どのように適用されるのかを具体的にイメージできるようになります。
そこで具体例を挙げて、就業時間と労働時間、さらに残業時間の関係をわかりやすく解説します。
具体例1.所定労働時間が8時間(9時から18時まで)
所定労働時間が8時間と就業規則で規定される職場で、以下の条件で働いた場合、就業時間と労働時間の扱いを解説します。
業務を始めた時刻 | 9時 |
業務を終えた時刻 | 21時 |
休憩時間 | 1時間 |
残業時間 | 3時間(すべて法定外残業) |
就業時間は、実際の労働時間にかかわらず就業規則に定められた9時から18時までの9時間です。また実労働時間は、9時から21時までの12時間から、休憩時間(1時間)を差し引いた11時間です。
ただし、定時を超えて18時から21時まで働いており、3時間の残業が発生しています。所定の労働時間がすでに法定労働時間の限度である8時間であるため、残業3時間はすべて法定外残業に該当します。
具体例2.所定労働時間が6時間(10時から17時)までの場合
所定労働時間が6時間と就業規則で規定される職場で、以下の条件で働いた場合、就業時間と労働時間、残業時間の考え方を解説します。
業務を始めた時刻 | 10時 |
業務を終えた時刻 | 20時 |
休憩時間 | 1時間 |
残業時間 | 3時間(法定内残業2時間、法定外残業1時間) |
就業時間は10時から17時までの7時間です。また実労働時間は、10時から20時までの10時間から、休憩時間(1時間)を差し引いた9時間となります。
定時の17時から20時まで3時間の残業が発生していますが、8時間を超えていない部分は法定内残業、8時間を超える部分は法定外残業(時間外労働)として扱います。つまり、3時間の残業の中で2時間は法定内残業、1時間は法定外残業です。
より詳しく労働時間の計算方法を知りたい方は、働き方別に解説した以下の記事をご確認ください。
労働時間に含まれるか判断に迷うもの
ここまでは就業時間と労働時間、そして残業時間の定義や具体例について解説しました。
続いて労働時間の範囲に含まれるかどうか判断が迷われやすい5つのケースを確認していきましょう。とくに始業前・終業後の労働や研修期間中の活動、持ち帰り仕事など、実務で発生しがちな場面について解説します。
始業前・終業後の労働
始業前や終業後に行われる業務は、労働時間に含まれます。たとえば、以下のような活動が該当します。
- 始業前の朝礼への出席
- 朝一番の会議の準備
使用者の指揮命令下で行われるため、労働時間に含まれるのです。終業後の労働も、残業として扱われるため、当然ながら適切な給与支払いが必要です。
また、制服がある仕事では始業前と終業後に着替えの時間が発生します。着替えの時間は労働時間に含まれるのか? と疑問に思われた方は以下の記事をご確認ください。
研修期間中
研修期間は本来の業務に従事しているわけではないため、労働時間に含まれるのか迷う人もいるでしょう。
研修期間中の活動は以下の基準で判断されます。
- 会社が指示して参加させた研修:労働時間に含まれる
- 従業員が自主的に参加した研修:労働時間には含まれない
たとえば、企業が新入社員に向けて実施するオリエンテーションや業務に必要なスキル習得のための研修は労働時間としてカウントされます。一方、従業員が個人的に希望して参加した外部セミナーなどは対象外です。
研修管理が煩雑になっているという方は以下の記事をご確認ください。
持ち帰りの仕事
従業員が終わらなかった仕事を「自主的に」自宅に持ち帰った場合、要した時間は基本的に労働時間に含まれないと考えてよいでしょう。
- 従業員が自主的に持ち帰った仕事:労働時間には含まれない
- 会社が持ち帰りを指示した仕事:労働時間に含まれる
たとえば、締切が迫った仕事を自宅で仕上げるように会社から依頼された場合、その時間は労働時間に含める必要があります。
また残業をしないと終わらない状況まで追い込まれていた場合は、企業側の責任が問われるケースもあります。サービス残業の違法性については、以下の記事をご確認ください。
有給休暇
有給休暇は、文字通り給与が支払われる休暇であるため、取得日に対して給与の支払いが必要です。ただし、実際には労働していないため、実労働時間には数えない点に注意しましょう。
有給休暇を取得した場合の実労働時間や残業時間の考え方について詳しく知りたい場合は以下の記事をご確認ください。
仮眠の時間
仮眠時間が労働時間に含まれるかどうかは状況により判断が分かれます。
- 業務上必要とされる仮眠時間:労働時間に含まれる
- 完全に自由な休憩中の仮眠:労働時間に含まれない
仮眠中も労働から解放されず、緊急事態への対応などが義務づけられている間は労働時間に含まれます。休憩中の仮眠はあくまで休憩時間としてみなされるので、労働時間には含まれません。
夜勤における休憩時間の取り方のルールを確認したい方は以下の記事をご確認ください。
就業時間や労働時間を正しく管理する方法
法律を遵守し、従業員の給与を正確に計算するためには、就業時間や労働時間を正しく管理する必要があります。しかし、アナログな管理方法では担当者に負担が大きく、記録の漏れや計算ミスが発生しやすいのが現実です。
そこで役立つのが勤怠管理システムです。勤怠管理システムの活用で、次のようなメリットが得られます。
- 就業時間・労働時間の正確な管理
- 担当者の負担軽減、生産性向上
- 給与計算との連携がスムーズに
勤怠管理システムなら効率的な管理により、面倒な業務をシンプルにできます。給与計算システムと連携できるシステムなら、無理なく手間やミスを減らせるでしょう。
勤怠管理システムにはさまざまな種類があるため、自社の課題に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。機能面や費用面、サポート体制などを総合的に判断し、職場環境や社内ルールに柔軟に対応できるシステムを選定しましょう。
勤怠管理システムのタイプやできることを確認したい場合は以下の記事をご確認ください。
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就業時間と労働時間を明確に区別(まとめ)
就業時間と労働時間の違いを明確に理解することは、労務管理や給与計算を正確に行ううえで欠かせません。就業時間は始業時刻から終業時刻までの全体の時間を指し、休憩時間を含む一方で、労働時間は実際に業務に従事する時間を示し、休憩時間を除外したものです。
正しく区別することで、所定労働時間、法定労働時間、そして残業時間(法定内残業や法定外残業)を適切に管理できます。とくに、残業における割増賃金の有無や計算には、就業時間と労働時間の整理が必要です。
就業時間と労働時間の概念を正確に把握し、勤怠管理システムなどを活用して効率的に管理することで、法令遵守と生産性向上が実現します。勤怠管理の仕組みを整えて、従業員が安心して働ける環境を整えましょう。