就業管理とは【勤怠管理や労務管理との違い】目的と必要性、範囲、課題、システム化のメリット

新たに就業管理を担当することになり、業務範囲や実務の進め方に不安を感じていませんか。就業管理は労働基準法をはじめとする法令を守り、従業員の健康や働き方を支える役割を担います。
本記事では、就業管理の基礎から実践的なポイント、システム化によるメリットまで、実務担当者の視点で紹介します。これから就業管理を担当される方も、現在担当されている方も、知識の整理と再確認にお役立てください。

目次

就業管理とは? 目的を簡単に解説
就業管理とは、従業員の出退勤や欠勤、休暇の取得状況を把握し、法令や就業規則を守って働けているかを確認する管理業務です。
労働基準法の厳格化や働き方改革の推進により、就業管理の重要性は年々高まっているといえます。企業にとっては、単なる勤怠チェックではなく、組織全体の健全な労働環境を支える仕事です。
就業管理の目的
就業管理の主な目的は、従業員が健康的に、安心して働ける環境を整えることです。たとえば、社内ルールに沿った労働時間や休日・休暇管理の運用が含まれます。
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務化が強化され、より厳しい労働時間管理が求められるようになりました。
適切な就業管理は、労働災害の防止や従業員の健康維持、結果として企業が社会的責任を果たすうえで重要な取り組みです。

就業管理の必要性
なぜ就業管理が必要なのか、もう少し具体的に解説していきます。実務担当者がおさえておきたい4つの視点から確認していきましょう。
- 労働関連法を遵守するため
- 従業員の心と体の健康を守るため
- 就業トラブル・リスクを回避するため
- 企業の社会的な責任を果たすため

労働関連法を遵守するため
働き方改革関連法の施行を受けて、就業管理の重要性は増しています。2019年の法改正により、時間外労働の上限規制や年5日の有給休暇取得義務が、すべての企業に課されました。違反すれば、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい罰則があります。
そのため企業には、労働時間や休暇取得状況を正確に把握・管理できる体制の構築が欠かせません。しかし実際には、フレックスタイム制や変形労働時間制の導入によって管理が複雑化している企業も多く、法令対応に不安を感じている担当者も少なくないでしょう。
だからこそ、労働基準法に照らした就業状況を把握する就業管理が必要なのです。
従業員の心と体の健康を守るため
就業管理は、企業に課せられた安全配慮義務を果たすうえで欠かせない業務です。安全配慮義務とは、従業員の身体や心の安全を確保しなければならない法的責任を指します。たとえば、企業には次のような対応が求められています。
- 労働時間の適切な管理
- 定期健康診断の実施と費用負担
- ストレスチェック制度の導入
- メンタルヘルス対策
- ハラスメント防止体制の整備
就業管理を通じて、過重労働や欠勤の常態化のサインを見逃さず、早期に対応できる仕組みを整えておくことが重要です。
また、定期的な面談や健康診断の実施により、従業員が言い出しにくい不調にも気づける体制が求められています。従業員の健康を守ることは、結果として職場の安定や離職防止にもつながります。
就業トラブル・リスクを回避するため
就業管理が不十分な企業では、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
- 残業代の未払い
- 有給取得率の低さ
- 長時間労働によるうつ病・過労死
- 労働基準監督署からの是正勧告や行政指導
- SNSでの炎上、企業イメージの悪化
とくに残業代の未払いや過重労働による健康障害は、企業に重大な影響を与えるため、適切な就業管理が求められています。
企業の社会的な責任を果たすため
企業の社会的責任(CSR)や健康経営の観点からも、従業員の就業環境は重要な評価指標です。たとえば、以下のような場面では就業管理体制の整備や労働環境の改善状況がチェックされます。
- 働きやすい職場認定(えるぼし、ユースエールなど)
- 健康経営優良法人認定
- ESG投資における人的資本の評価
育児・介護との両立支援やダイバーシティ施策推進も、広い意味での就業管理の一部です。
就業管理を適切に行い、従業員の声に耳を傾ける体制を整えることは、企業の信頼性を高め、採用において人材確保にもつながります。
就業管理の業務範囲
就業管理には、従業員の労働時間や休暇の管理から、職場環境の整備まで幅広い業務が含まれます。主な業務範囲は以下のとおりです。
就業管理の対象 | 管理の例 | 関連法・ポイント |
---|---|---|
労働時間・残業時間・休憩 | 始業・終業の記録、時間外労働の上限管理 | 労働基準法、36協定 |
休日・休暇 | 有給休暇の取得管理、週休の確保 | 年5日の年休取得義務、法定休日 |
労働環境 | 空調・照明の整備、安全配慮、ハラスメント防止 | 労働安全衛生法、安全配慮義務、ハラスメント防止法など |
実務担当者は、以上の分野がすべて就業管理の一部であることを意識し、現場にあわせた体制を整備していく必要があります。
労働時間・残業時間の管理
労働時間の管理は就業管理の基本です。企業には従業員の始業・終業時刻を客観的な方法で把握し、適切に記録する義務があります。
タイムカードやICカード、勤怠管理システムなどを用いて、労働時間を正確に記録し、書類は5年間(当面3年間)保存しなければなりません。
とくに時間外労働については、月45時間、年360時間という上限規制を遵守する点に注意しましょう。
休日・休暇の取得管理
休日・休暇の取得管理も、就業管理において欠かせない領域です。
企業は従業員に対して週1日または4週間を通じて4日以上の法定休日を与え、年次有給休暇の取得を適切に管理する必要があります。
とくに有給休暇は、2019年4月から年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、年5日の確実な取得が義務づけられています。
休暇の取得状況を把握・記録することも就業管理の一環であり、計画的な取得を促すことで、従業員のワークライフバランス支援につながります。
労働環境の整備
就業管理には、労働時間や休暇の管理だけでなく、職場環境の整備も含まれます。快適な職場環境の整備は企業の重要な責務であり、空調管理や照明、作業スペースの確保といった物理的な環境整備も就業管理の一部といえるでしょう。
とくに過重労働の防止、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止など、心身の健康に配慮した施策を講じることが、安心して働ける職場づくりにつながります。体制の整備も、就業管理の重要な役割の1つです。
参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省

就業管理と勤怠管理・労務管理の違いと使い分け
就業管理、勤怠管理、労務管理は、いずれも人材の管理業務ですが、それぞれ目的や扱う範囲が異なります。
たとえば、出勤簿をつけるのは勤怠管理に該当します。そして出勤簿の情報をもとに法令への適合性を判断したり、健康や環境面に目を配ったりするのが就業管理の役割です。
まずは以下の表で、3つの管理業務の違いを比較してみましょう。
労務管理 | 勤怠管理 | 就業管理 | |
---|---|---|---|
管理対象 | 労働に関する制度全般 | 労働時間、始業・終業時刻など | 勤怠情報をもとにした働き方 |
範囲 | 雇用契約、給与、賃金、保険、福利厚生など広範囲 | 出退勤、残業、休憩、休暇、遅刻・欠勤 | 労働時間や休暇の取得状況、職場環境 |
関係性 | 勤怠管理と就業管理を含む | 労務管理の一部、就業管理と同義の場合も | 労務管理の一部、勤怠管理と同義の場合も |
勤怠管理との違い
勤怠管理には、労働時間の情報を正確に記録・管理する業務が含まれます。法定労働時間の遵守や給与計算の根拠として不可欠なものであり、数値情報の把握が中心です。
一方、就業管理は、勤怠情報を踏まえて、従業員の働き方全体を適正に維持するための管理を含みます。
たとえば、単に「所定時間内に働いたか」を見るのが勤怠管理だとすれば、その時間のなかで無理が生じていないか、有休が偏っていないかを判断するのが就業管理といえるでしょう。
ただし、厳密に大きな違いがあるわけではなく、実際には同じような意味で使われる場面も少なくありません。
労務管理との違い
労務管理は、労働にかかわる制度全般を扱い、管理領域はとても広いです。就業規則や雇用契約、賃金・社会保険、福利厚生も含みます。
労務管理のうち、労働時間や休暇取得、職場環境など日々の働き方にかかわる領域を管理するのが就業管理です。就業管理は労務管理に含まれるひとつの領域といえるでしょう。

就業管理の業務や方法に関する疑問
就業管理において、管理監督者の扱いやツールの選択に悩む企業も少なくありません。法律の改正や働き方改革が進むなか、管理方法を見直す会社もあります。
以下では、よくある疑問を取り上げ、就業管理をするうえでのポイントを解説していきます。
管理監督者は就業管理される立場?
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、管理監督者であっても労働時間の把握が義務化されています。
管理監督者は労働基準法の一部規定を適用除外とされていますが、健康維持の観点から、労働時間の記録・管理が必要になりました。
とくに深夜労働や長時間労働による健康リスクへの配慮が求められています。深夜勤務時間の管理や年次有給休暇の取得促進も必須となりました。
就業管理はエクセルでどこまでできる?
エクセルを使えば、労働時間の集計、残業時間の計算、休暇取得状況の管理といった基本的な就業管理はある程度対応が可能です。
関数やマクロを活用することで、自動計算や残日数を管理したり、簡易的なレポートを作成したりできるでしょう。
ただし、エクセルでの就業管理には次のような課題もあります。
- 複数拠点や多数の従業員への対応が難しい
- バージョン管理・データ共有に手間がかかる
- 法改正や複雑な勤務体系への柔軟な対応が困難
そのため、専用の就業管理システムへの移行を検討する企業も増えています。エクセルは初期段階の選択肢として利用する企業も多いですが、成長フェーズに応じてシステム導入するほうが、長期的には管理の正確性・効率性の向上につながります。
テレワークで浮上した就業管理の課題
テレワークの浸透により、従来よりも就業管理が難しくなり、課題を感じる企業が増えたといわれています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、3割以上の企業が労働時間の把握に困難を感じているとの結果が出ています。
とくに問題となっているのは以下の3点です。
- 労働時間の正確な把握が難しい(例:勝手な中抜け・サービス残業の見落とし・乖離時間の発生)
- 長時間労働の規制や健康管理への対応が不十分である
- ワークライフバランスの維持が難しい
課題への対策として、クラウド型の就業管理システムが注目されています。労働時間の自動集計や残業・休暇管理が効率化し、テレワーク環境下でも適切な就業管理が実現できるためです。
適切な就業管理は経営課題の一つと考え、就業管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参照:『令和2年度テレワークの労務管理に関する総合的実態調査研究事業報告書』三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
就業管理システム(アプリ)とは?機能や注意点を解説
就業管理の課題に対応する手段として、就業管理システム(アプリ)が注目されています。
就業管理システムは、出勤と退勤の打刻・労働時間の集計・残業や休暇の管理などを一元化できるツールです。導入のメリットや注意点を以下で確認しておきましょう。
導入のメリット・必要性
就業管理システムの導入は、労働時間の正確な把握と業務の効率化を実現し、管理負荷を軽減します。とくにテレワーク環境では、従業員の就業状況を可視化し、長時間労働やサービス残業の防止にもつながります。透明性の高く正確な管理体制が整い、法令対応にも有用です。
機能
就業管理システムには出退勤管理、労働時間の自動集計、休暇管理、残業時間の上限管理といった機能が搭載されています。勤務実績の可視化やシフト管理、打刻漏れの自動検出など、法令順守と効率化の両立に役立つ機能が中心です。
テレワーク環境で役立つ機能としては、PCログや勤怠記録との連携が挙げられます。就業管理システムを上手に活用できると、長時間労働やサービス残業の抑止にも役立つでしょう。
導入形態
就業管理システムには、クラウド型とオンプレミス型という2つの選択肢があります。クラウド型は場所を問わずアクセス可能で、初期投資を抑えられる利点があります。オンプレミス型は、データセキュリティの観点から選ばれることが多く、カスタマイズ性に優れています。
選定基準
就業管理システムの選定では、以下のポイントをチェックしましょう。
- 企業規模と業務形態への適合性
- ユーザーインターフェースの使いやすさ
- 既存システムとの連携可能性
- セキュリティ機能の充実度
- コストパフォーマンス
自社の課題や運用体制にあった就業管理システムを選ぶことが、導入効果を高めるポイントです。
導入の注意点
就業管理システム導入では、運用ルールの整備と社内浸透が欠かせません。とくにテレワーク環境では、ログ取得や勤務実態の把握に関するルールの明確化が必要です。また、従業員への説明・研修を十分に実施し、段階的に運用を開始することで、定着を促しやすくなります。

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まとめ|就業管理システムの活用で就業環境の改善へ
テレワークや多様な働き方が広がるなか、適切な就業管理は、企業にとって重要な経営課題となっています。
就業管理システムを活用することで、業務の効率化と法令対応を両立させ、働きやすい就業環境の整備が可能です。
組織の実情に合った就業管理システムを選定・運用し、管理体制の透明性を高めることで、従業員の安心感にもつながるでしょう。
