退職辞令とは? 書き方や注意点、関連する退職書類も紹介

退職辞令とは? 書き方や注意点、関連する退職書類も紹介

退職辞令は法的に交付義務はない一方で、出しておくことで、トラブル回避につながる文書です。

退職する社員が出たとき、「用意するべきか」「どのような文面にすればよいか」迷ってしまう方もいるでしょう。とくに初めて退職辞令を作成する場面では、形式や書き方、渡すタイミングまでわからないことだらけですよね。

本記事では、退職辞令が必要なケース、書き方と例文、交付方法までを解説しています。

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目次アイコン目次

    退職辞令とは?

    退職辞令とは、従業員が会社を退職するときに交付される文書のことです。

    定年退職や自己都合による退職(依願退職)のタイミングで交付されるケースが多くあります。「あなたの退職が正式に承認されました」という意思表示を、文書として形にするものだと考えるとイメージしやすいでしょう。

    退職辞令の内容としては、ほかの辞令と同じように、企業から従業員本人に交付する形式をとります。

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    辞令の役割をおさらい

    辞令とは、会社が人事に関する決定事項を従業員に通知するための公式な文書です。たとえば以下のような種類があります。

    • 異動辞令:従業員に人事異動を命じる辞令
    • 転勤辞令:従業員に転勤を命じる辞令
    • 採用辞令:採用することが決定した人へ交付する辞令

    本記事のテーマである退職辞令も、人事辞令の一つです。

    辞令そのものは法律で明確に規定された制度ではありません。企業のなかで慣習として根づいてきたもので、絶対的な決まりはないのです。

    しかし、企業は従業員と労働契約を結んだ時点で、人事命令を発する権限を持ちます。

    そのため、辞令という形式で命令や決定を通知すると、一定の法的拘束力を持つと考えられています。従業員は原則として辞令にしたがわなければなりません。

    退職辞令は必要? 交付しないのは違法?

    退職辞令は、必ず交付しなければならないものではありません。異動辞令と同様に、辞令そのものは法律で義務づけられた制度ではないため、退職時に必ず交付する必要はないのです。実際、多くの企業では、退職時に辞令を出さず、離職票や退職証明書の発行のみで退職手続きを済ませています。

    退職辞令を交付するメリット

    法律上義務がないのにもかかわらず、なぜ退職辞令を交付する企業が存在するのでしょうか。

    理由は、辞令として文書化することが、トラブルへの備えや、社内手続きの円滑化につながる実務上のメリットがあるからです。

    トラブル防止

    退職辞令を書面で残しておけば、万が一意見が食い違ったときも、「●月●日で正式に退職が認められた」証拠として機能します。

    書面化により内容がはっきりするため、「言った」「言わない」といった認識の相違が起こりにくくなり、トラブル回避に役立つでしょう。

    社内周知の効率化

    退職辞令を交付することで、「○○さんが正式に退職する」という事実を社内に周知しやすくなる効果もあります。

    規模の大きな企業では、複数人が一斉に定年を迎えるケースもめずらしくありません。一人ひとりに口頭で伝えるよりも、退職辞令で一斉に通知した方が担当部門の手間を減らせます。

    退職辞令の書き方

    退職辞令に決まった様式はないため、基本的には会社のルールや慣例にしたがえば問題ありません。しかし、退職辞令を初めて交付する場合は、フォーマットがないとかえって書き方に困ってしまうでしょう。

    そこで退職辞令に入れておきたい主な項目と書き方について解説します。

    退職辞令の主な記載項目

    退職辞令には、以下の5項目を記載するのが一般的です。

    日付辞令を作成・交付した日
    従業員の氏名
    会社名・代表者氏名代表取締役など
    退職年月日正式な退職日
    退職理由自己都合/会社都合/定年など

    まず、上部には退職辞令を作成または交付する日付を記載します。次に退職する本人の氏名、会社名、そして代表者氏名を記載しましょう。

    本文には、退職年月日と退職理由を簡潔に記載します。社内で共通のテンプレートを用意するなら、退職理由はチェックボックスの選択形式にして、必要に応じて詳細な理由を補足する形式にしても問題ありません。

    退職辞令の例文【理由別】

    退職辞令の具体的な書き方は、理由ごとに文面を用意しておくと便利です。以下に3つの代表的なケースの文例を紹介します。

    自己都合退職の場合
    退職願の提出により、○年○月○日をもって職務を免ずることを通知します。
    会社都合退職の場合
    著しい業績不振により、○年○月○日付で退職を命じます。
    定年退職の場合
    就業規則第○条第○項の定めに基づき、○年○月○日付で定年退職となることを通知します。

    文章は簡潔にまとめるのが基本です。退職する従業員にとっては、会社から受け取る最後の辞令になります。誤字脱字や氏名の間違いがないよう、基本的なことに細心の注意を払いましょう。

    退職辞令の交付方法

    退職辞令の交付方法も、法的な規定はなく、会社が自由に決めることが可能です。一般的には従業員に個別に手渡しするケースが大半ですが、郵送やメールでも問題ありません。

    退職する従業員が病気療養中で出社が困難な場合は、郵送やメールで辞令を交付するとよいでしょう。郵送する場合は、郵送した記録を残せる特定記録郵便を使うと安心です。

    該当者が複数いる場合や、社内にいち早く共通認識を持ってもらいたい場合は、職場に掲示するという方法もあります。

    退職辞令は口頭で伝えるだけでも問題ありません。万が一の行き違いやトラブルに備える意味では、できるだけ書面(もしくはメール)に残すとよいでしょう。

    退職辞令を交付する際の注意点

    退職辞令は、従業員が会社で受け取る最後の辞令です。定年退職などで再就職の予定がない場合、数十年にわたる社会人生活を締めくくる区切りの一通になります。

    正確な内容を確認して記載する

    長きにわたる貢献への感謝を示すためにも、氏名の書き間違いのような初歩的なミスは絶対避けなければなりません。相手に対して失礼にならないよう、大切な節目を、会社としてていねいに見送る姿勢が問われます。

    受け手に配慮した表現にする

    退職辞令には、相手を責めるような内容は書かないことが重要です。仮に従業員の過失による懲戒解雇であったとしても、文面には詳細を書く必要はありません。

    辞令はあくまでも事務的な通知文であり、評価や通達する場ではないためです。簡潔な表現にとどめ、必要があれば、懲戒処分通知書など別の書類で対応しましょう。

    ただし、相手や状況によっては、退職理由や今後の予定を詳細に記載することで、ていねいな印象を与えられます。再雇用制度を利用して再び同じ職場にいるケースでは、その旨を辞令に記載する場合もあります。

    そのほかの退職関連書類

    従業員の退職時には、退職辞令のほかにも、必要に応じて書類を用意する場面があります。

    とくに扱うことの多い以下の2つの書類について解説します。

    離職票

    離職票とは、退職者がハローワークで求職を申し込む場合や、失業給付を申請する場合に必要な書類です。正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といい、退職者全員ではなく希望者のみに交付する任意の書類です。

    すでに転職先が決まっていれば、失業給付の申請は不要なので、発行を依頼されないケースも多くあるでしょう。

    ただし、退職時の年齢が59歳以上の従業員については、本人の希望の有無にかかわらず離職票を発行する必要があります。

    離職票はハローワークから退職者に対して発行されるものですが、発行申請は会社側が実施しなければなりませ5/30ん。従業員から希望があった場合は、できるだけすみやかに申請を進めましょう。

    退職証明書

    退職証明書とは、従業員が退職した事実を証明する書類です。離職票と同じく、本人が希望した場合に限り、すみやかに発行すれば問題ありません。

    退職証明書は、主に退職する従業員の転職先が提出を求めた場合に必要です。

    離職票が手元にない場合に、国民健康保険や国民年金への加入手続きの代替書類として使われることもあります。

    会社都合退職における必要書類

    従業員に重大な過失があった場合を除き、解雇は会社都合退職として扱われます。「会社都合退職」とは、具体的に以下のようなケースにあてはまります。

    • 業績不振による人員整理
    • 事業の縮小・閉鎖
    • 労働契約の打ち切り(※従業員に重大な過失がない場合)

    会社都合退職とは、会社側の都合により一方的に労働契約を解除し、労働者に退職を余儀なくさせることであり、通常の自己都合退職とは異なる書類が必要になることがあります。

    解雇予告通知書

    解雇予告の際に交付するのが、解雇予告通知書です。

    従業員を解雇する場合は、原則として30日以上前に予告する必要があります。労働基準法第20条第1項で定められているためです。

    解雇予告は口頭でも問題ないとされていますが、書面に残すことでトラブルに備えられます。

    解雇理由証明書

    従業員から請求があった場合、企業には解雇理由証明書を発行する義務があります。労働基準法第22条に規定されています。

    解雇理由証明書は、文字どおり「なぜ解雇されたのか」を正式に証明する文書です。

    解雇予告「通知」書には、理由を記載する決まりはなく、あとから本人が理由の開示を請求するケースがあります。企業には開示請求に対応する法的義務があるため、求められたら必ず対応しなければなりません。

    厚生労働省がフォーマットを配布しているため、必要になったら利用してもよいでしょう。

    参照:『解雇理由証明書』厚生労働省

    解雇通知書

    実際の解雇日当日やその直後に、「正式にあなたを解雇します」という事実を、最終的に通告するため、解雇通知書を発行する場合もあります。

    解雇「予告通知」書は解雇の30日以上前に交付するのに対し、解雇「通知」書は解雇の当日以降に交付するのが特徴です。

    解雇通知書にも、法的な発行義務はありません。解雇予告通知書に解雇日を明記しておけば十分な場合も多く、解雇通知書を発行するかどうかは会社の判断にゆだねられます。

    まとめ|退職辞令は従業員が最後に受け取る書類

    退職辞令とは、退職する従業員に対して交付する人事に関する辞令の一つです。法律に基づくものではありませんが、退職後のトラブル回避や社内周知を目的として交付されます。

    退職辞令の書き方についてもとくに決まりはありません。日付や従業員氏名、退職理由など基本的な項目を記載するのが一般的です。

    退職辞令は、従業員が会社で最後に受け取る辞令となることもあります。とくに定年退職の場合は、長年勤め上げた感謝を示すためにも、失礼のない文面を心がけましょう。

    そのほか退職時には離職票や退職証明書など、さまざまな書類が必要になることがあります。多くは希望すれば発行する書類であるものの、申請を受けたあとは、すみやかに対応しましょう。