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雇用保険料の会社負担はいくら? 負担割合や計算方法と注意点を解説

雇用保険料の会社負担はいくら? 負担割合や計算方法と注意点を解説

従業員に安心して長く働いてもらうためには、雇用保険への加入および保険料の納付が不可欠です。雇用保険料は、会社と従業員がそれぞれ負担して納付します。では、会社側が負担する割合はどの程度になるのでしょうか。

本記事では、雇用保険料の会社負担について、負担割合や計算方法を解説します。注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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    雇用保険料は会社と従業員双方が負担する

    雇用保険とは、労働者の生活と雇用の安定、就労の促進を目的とした公的保障制度です。労働者が失業・休業した場合に備えて、さまざまな給付金が用意されています。従業員が安心して働き続けられるよう、企業は加入条件を満たすすべての人を雇用保険に加入させなければなりません。

    雇用保険料は、会社と従業員がそれぞれ負担し合い、合算した金額を納付します。通常ならばありえませんが、どちらか一方のみが負担するのは法律違反にあたります。

    また、会社と従業員が折半で負担する健康保険や厚生年金保険、介護保険とは異なり、雇用保険は会社側の負担割合が多いのが特徴です。雇用保険の枠組みのうち、事業主側を助成する「雇用保険二事業」の分が反映されているためです。

    雇用保険二事業とは、失業の予防や雇用機会の増大、労働者の能力開発・向上、さらには労働者の福祉の増進をはかるための事業です。雇用安定事業と能力開発事業の2つで構成されています。

    なお、雇用保険料と一緒に納付する労災保険料は、会社側が全額を負担する仕組みです。

    雇用保険料率は、失業保険の受給者数や雇用保険料の積立金残高などに応じて年1回見直されています。前年度とは負担割合が異なる場合もあるため、常に最新の情報を確認することが大切です。

    雇用保険料の計算に含む賃金について

    雇用保険料の金額は、「従業員の賃金×保険料率」の式で計算します。賃金には、毎月の給与のほかに賞与も含まれます。また、社会保険料や税金を差し引く前の賃金額を用いる点にも注意しましょう。

    ただし、なかには、雇用保険料の計算における賃金には含まれないものもあります。たとえば、賃金に含む手当には、以下のようなものが挙げられます。

    • 通勤手当
    • 定期券・回数券(現物支給)
    • 住宅手当
    • 残業手当
    • 深夜手当
    • 宿直・日直手当
    • 役職手当
    • 扶養手当・子供手当・家族手当
    • 技能手当・特殊作業手当・教育手当
    • 在宅勤務手当
    • 休業手当
    • 前払い退職金 など

    一方、賃金に含まない手当には、以下のようなものがあります。

    • 役員報酬
    • 結婚祝金・死亡弔慰金・災害見舞金
    • 年功慰労金・勤続褒賞金・退職金
    • 出張旅費・宿泊費
    • 休業補償費
    • 傷病手当金
    • 解雇予告手当 など

    参照:『雇用保険料の対象となる賃金』厚生労働省

    基本的に、業務に紐づいて継続的に支給される項目は雇用保険料の計算に含まれます。たとえば、通勤手当や住宅手当などは毎月支給される項目なので、雇用保険料の計算の対象です。

    反対に、結婚祝金や休業補償費などは、特別なできごとや事情に対して、一時的に支給されるものなので、雇用保険料における計算には含まれません。

    【2024年最新】雇用保険料の会社負担は0.95%(一般事業)

    雇用保険料率は、企業が属する業種によって異なります。

    2024年度の保険料率は、以下の通りです。

    1
    労働者
    負担
    2 事業主負担1+2
    雇用
    保険料率
    合計失業給付・
    育児休業
    給付の
    保険料率
    雇用保険
    二事業の
    保険料率
    一般の事業6/1,0009.5/1,0006/1,0003.5/1,00015.5/1,000
    農林水産・
    清酒製造の
    事業※
    7/1,00010.5/1,0007/1,0003.5/1,00017.5/1,000
    建設の事業7/1,00011.5/1,0007/1,0004.5/1,00018.5/1,000
    ※園芸サービスや牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖、特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の保険料率が適用される

    出典:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    新型コロナウイルス感染症の影響で失業者が増えたため、雇用保険の財源を確保するために、雇用保険料率が段階的に引き上げられていました。

    特に2022年10月1日の改定では、会社と従業員がそれぞれ負担する保険料率が大きく引き上げられましたが、2024年度は2023年度から据え置きとなりました。

    雇用保険料の会社負担はいくら? 計算例

    雇用保険料は、「賃金額(総支給額)×雇用保険料率」の式で計算します。

    つまり、従業員の賃金額に事業主分の保険料率を乗じれば、会社が負担する雇用保険料を算出できます。

    計算例として、以下のケースを考えてみましょう。

    メーカー勤務 Aさん
    基本給25万円
    残業手当3万円
    通勤手当1万円
    役職手当1万円

    総支給額を算出する

    まずは、Aさんに支給された賃金のうち、雇用保険料の計算に含むもの・含まないものを確認しましょう。上記の例では、基本給や残業手当、通勤手当、役職手当は雇用保険料の計算に含めます。

    つまり、雇用保険の計算におけるAさんの総支給額は「25万円+3万円+1万円+1万円=30万円」です。

    事業ごとの雇用保険料率をかける

    次に、先ほど求めた総支給額に、事業ごとの雇用保険料率をかけ算します。Aさんはメーカー勤務なので、雇用保険の区分上は「一般の事業」に当てはまります。

    2024年における一般の事業の雇用保険料率は、事業主負担が9.5/1,000(0.95%)なので、計算結果は以下の通りです。

    30万円(総支給額)×0.95%(雇用保険料率)=2,850円

    会社はAさんの雇用保険料について、2,850円分を負担することになります。

    ただし、これはあくまで会社負担分の金額であり、実際には従業員負担分の保険料も納付する必要があります。2024年における一般の事業の雇用保険料率は、従業員負担が6/1,000(0.6%)なので、計算結果は以下の通りです。

    30万円(総支給額)×0.6%(雇用保険料率)=1,800円

    パートの雇用保険料の会社負担はいくら?

    雇用保険の加入条件を満たしている従業員は、雇用形態に関係なく加入させる必要があります。そのため、パートやアルバイトの場合も、以下の加入条件を満たせば雇用保険料を徴収・納付します。

    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 31日以上継続して雇用する見込みがある
    • 学生ではない(夜間・通信教育・定時制の学生、休学中の学生、卒業見込み証明書を持ち、卒業後も同じ会社で働く予定の学生は例外)

    雇用保険料の計算においても、雇用形態による差はありません。正社員の場合と同様に、賃金(総支給額)に雇用保険料率をかけて計算します。

    計算例として、以下のケースを考えてみましょう。

    飲食店勤務 パートタイムBさん
    時給と月の労働時間をかけた金額12万円
    通勤手当1万円

    通勤手当は雇用保険料の計算に含まれるため、Bさんの総支給額は「12万円+1万円=13万円」です。Bさんは飲食店勤務なので、雇用保険の区分上は「一般の事業」に当てはまります。

    2024年度における一般の事業の雇用保険料率は、事業主負担が9.5/1,000(0.95%)なので、計算結果は以下の通りです。

    13万円(総支給額)×0.95%(雇用保険料率)=1,235円

    つまり、Bさんの雇用保険料について、会社は1,235円分を負担することになります。

    雇用保険の会社負担に関する注意点

    雇用保険料の会社負担額について考える際は、以下の2つのポイントに注意しましょう。

    • 雇用保険料の会社負担分は年に一度まとめて納付する
    • 給与とは別に賞与にかかる保険料を計算する

    それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

    雇用保険料の会社負担分は年に一度まとめて納付する

    雇用保険料の従業員負担分は毎月給与から天引きするのに対し、会社負担分は年に一度まとめて納付します。正確には、1年間の従業員負担分をまとめて会社負担分と一緒に納付しますが、会社負担分の計算は年1回で問題ありません。

    そのため、実際には雇用保険料の会社負担分を月の総支給額ではなく、年間の総支給額をもとに計算します。

    たとえば、先ほど紹介したAさんの例を考えてみましょう。

    Aさんの月の総支給額は、「25万円(基本給)+3万円(残業手当)+1万円(通勤手当)+1万円(役職手当)=30万円」でした。仮に12か月間同じ金額だったとすると、Aさんの年間の総支給額は「30万円×12か月=360万円」です。

    つまり、Aさんの雇用保険料の会社負担分は、実際には以下のように計算します。

    360万円(総支給額)×0.95%(雇用保険料率)=3万4,200円

    給与とは別に賞与にかかる保険料を計算する

    雇用保険料は、月々の給与だけではなく、賞与に対しても発生します。賞与を支給した月には、給与と賞与それぞれで雇用保険料を計算する必要があります。

    ここで注意したいのが、給与と賞与を合算した金額に雇用保険料率をかけるのではなく、それぞれ別々に計算する点です。つまり、計算式は以下のようになります。

    (給与×雇用保険料率)+(賞与×雇用保険料率)

    雇用保険料の会社負担額【早見表】

    最後に、雇用保険料の会社負担額の早見表を紹介します。

    20万円や30万円など、キリのよい金額における会社負担額をまとめました。雇用保険料の会社負担額を計算する際は、ぜひ活用してください。


    総支給額
    会社負担額
    月間年間
    20万円1,900円2万2,800円
    25万円2,375円2万8,500円
    30万円2,850円3万4,200円
    35万円3,325円3万9,900円
    40万円3,800円4万5,600円

    ※一般の事業の場合(2024年度の保険料率で計算)

    雇用保険料の会社負担割合は、事業種別により異なる

    雇用保険料は、事業主と労働者が互いに負担し合って納付します。それぞれの負担額は「総支給額×雇用保険料率」で計算でき、総支給額には基本給だけでなく通勤手当や残業手当、扶養手当なども含まれます。

    ただし、健康保険料や厚生年金保険料などとは異なり、雇用保険料の負担割合は半々ではありません。雇用保険料は事業主の方が労働者よりも多く支払う仕組みとなっており、保険料率は事業種別により異なります。

    また、雇用保険料率は定期的に見直されているため、前年度とは数値が変わっている可能性もあります。常に最新の情報を確認し、雇用保険料を正しく計算・納付しましょう。

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