36協定の本社一括届出とは? 要件や電子申請の方法を解説
36(サブロク)協定とは、従業員に時間外労働や休日出勤をさせるために必要な労使間協定です。
36協定は、原則として事業所単位で締結し、届出をします。複数事業所を展開している企業では本社一括届出が便利です。ただし、本社一括届出を利用するためには、一定の要件を満たさなければなりません。
本記事では、36協定の本社一括届出の詳しい要件や申請方法、注意点などを解説します。
36協定は本社一括届出が可能
36協定は、労働基準法第36条に基づく労使間協定です。労働基準法では労働時間の上限は「1日8時間・週40時間」と定められています。36協定を締結すれば、一定の制限のもとで上限を超える時間外労働や休日出勤が可能です。
36協定は原則として事業所ごとに届け出る必要がありますが、複数の事業所を構える企業では要件を満たせば本社一括届出ができます。
本社一括届出とは?
本社一括届出とは、複数の支店・店舗などを有する企業が、36協定届を本社でまとめて提出できる制度です。
通常、36協定届は事業所単位で提出します。本社一括届出を利用すれば、複数の事業所分をまとめて提出でき、企業の負担を減らせます。
2021年から本社一括届出の要件が緩和
本社一括届出を可能とする要件は、2021年に緩和されています。
2021年より前は、各事業所の労働者代表(過半数代表)が、同じでなければ利用できませんでした。労働者代表とは、全従業員の過半数を代表し、企業側に意見を述べたり、協定を結んだりする役割を担う人です。
しかし、この条件を満たせるのは労働組合を組織している大企業に限定されます。多くの企業は本社一括届出を利用できない状況でした。
2021年からは、事業所ごとの労働者代表が異なっていても、本社一括届出が可能となりました。ただし、電子申請で届出をすることが条件です。
36協定の本社一括届出を利用できる条件
事業所ごとの労働者代表に関する要件は緩和されたものの、本社一括届出をすべてのケースで利用できるとは限りません。36協定届を本社でまとめて提出するためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。
- 協定内容がおおむね同一
- 就業規則が同一
1.協定内容がおおむね同一
36協定の本社一括届出を利用するためには、本社と事業所で、協定の内容がおおむね同一でなければなりません。具体的には、次の6つの事項「以外」の内容が同じであることです。
本社一括に際して、事業所ごとに同一でなくてもよい事項 |
労働保険番号事業の種類事業の名称事業の所在地(電話番号)労働者数(満18歳以上の者)協定成立年月日 |
上記に該当しない項目は、事業所ごとに同一である必要があると考えてよいでしょう。例として次のような項目です。
時間外労働が必要な具体的事由 | 従業員に時間外労働をさせる場合の理由を具体的に記載する(臨時の受注、月次決算など) |
時間外労働の延長時間 | 法定労働時間を超える労働について、1日・1か月・1年でそれぞれ延長できる時間 |
休日労働 | 休日労働を依頼する場合の具体的事由や日数、始業・終業時刻など |
36協定の有効期間 | 期間の定めはないが、1年とする場合が多い |
なお、電子申請以外での届出方法は、2021年以前と同様に、労働者代表も同一とする必要があるります。
各項目の具体的な書き方は、厚生労働省が公表している36協定届の記載例が参考になります。
就業規則が同一
36協定届を単独で提出する場合、一括届出は、本社と事業所で「協定内容がほぼ同一」という条件を満たせば問題ありません。
しかし、36協定届の提出が必要なとき、多くの場合は就業規則の変更も発生します。そこで、36協定の本社一括の条件に、本社と事業所で「就業規則が同一」という制限も加わります。
36協定を届け出る際は就業規則の変更も発生する
36協定はあくまでも、時間外労働や休日出勤を従業員に命じることを、「法的に認める」手続きです。労働基準法違反として、処罰を受けないためにも重要といえます。
ただし、「実際に」時間外労働や休日出勤を従業員に命じるには、就業規則の変更が必要です。時間外労働や休日出勤の規則を、就業規則に明記しなければなりません。
そのため「36協定の締結」と「就業規則の変更」をセットで考える必要があります。
36協定の締結と同時に就業規則の変更を本社で一括申請する場合
本社一括届出は、36協定の締結だけでなく、就業規則の変更でも利用できます。就業規則の変更を一括で申請するには、本社と同じ就業規則を各事業所に適用していることが条件です。また、各事業所分の労働者代表の意見書をあわせて提出します。
本社と各事業所で異なる就業規則を適用している場合、それぞれの事業所ごとに個別で提出しなければなりません。
36協定の本社一括届出を利用するメリット・デメリット
36協定の本社一括届出を利用するメリット・デメリットを解説します。
本社一括届出のメリット
36協定届を事業所ごとに提出する場合、それぞれの提出状況を本社が個別に管理する必要があります。
また、本社で手続きを取りまとめている場合でも、各事業所から必要な書類が到着しているか、内容に問題はないかといった確認が必要です。
36協定は多くの場合、1年ごとに更新するので、事業所や支店を多く構える企業では、確認作業に毎年多くの時間を要するでしょう。
本社一括届出を利用することで、36協定の届出にかかる手間を軽減できます。さらに申請を電子化すれば、紙代や印刷代、郵送代などの削減にもつながるでしょう。
本社一括届出のデメリット
労働組合がない企業が、本社一括届出を利用するには、電子申請を利用することが多いでしょう。
電子申請は便利ですが、初回はアカウント登録やアプリのインストールが必要です。不慣れな人には少し難しく感じるかもしれません。
事業所数が少ない場合は、紙の申請書を使って個別に手続きする方が、かえって簡単かもしれません。
36協定の本社一括届出を電子申請する方法
36協定の本社一括届出の手順は、次の通りです。
- e-Govにログイン
- 手続検索から「時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)」を選択
- 一括届出事業場一覧を作成
- 申請書入力
- 本社管轄の労働基準監督署を選択
1.e-Govにログイン
『e-Gov』とは、さまざまな行政手続きをオンラインで進められる公的サービスです。
36協定の電子申請をするためには、e-Govのアカウントを登録する必要があります。
また、初回はブラウザの設定やアプリケーションのインストールも必要なので、事前に済ませておきましょう。
2.手続検索から「時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)」を選択
e-Govにログインしたら、手続検索に「時間外労働」「本社一括」などのキーワードを入力し、「時間外労働・休日労働に関する協定届(本社一括届)」を選択します。
36協定届には「一般条項のみ」と「特別条項付き」があるので、自社に適したものを選択しましょう。
一般条項のみ | 時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)内での労働を命じる場合 ※3か月を超える対象期間を定めた1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間、年320時間まで |
特別条項付き | 臨時的・特別的な理由によって、上記の上限規制を超えた労働を命じる可能性がある場合 |
3.一括届出事業場一覧を作成
「根拠法令」の項目にある作成ツールを使用し、36協定を届け出る事業所一覧を作成します。申請ファイルに対応するエクセルで、必要な事業所分の情報をまとめて作成しましょう。
4.申請書入力
事業所一覧を作成したら、申請書入力画面へ進みます。必要事項を入力し、先ほど作成した一覧書類を添付しましょう。
5.本社管轄の労働基準監督署を選択
本社を管轄している労働基準監督署を選択し、提出ボタンを押します。手続きが完了しているかどうかは、e-Govの「申請案件一覧」から確認が可能です。
36協定を本社一括で届け出る際の注意点
36協定を本社一括で届け出る際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 協定自体は事業所ごとに締結する
- 協定書と届出書を兼用する場合は事業所ごとに届け出る
協定自体は事業所ごとに締結する
36協定の届出は本社一括でできても、協定の締結自体は事業所ごとに行う必要があります。
事業所ごとに労働者代表を選出し、それぞれ協定を結んでから、本社が一括で手続きをします。
協定書と届出書を兼用する場合は事業所ごとに届け出る
36協定を締結する際に作成する協定書と、労働基準監督署長に提出する届出書はそれぞれ別の書類です。2つの書類は兼用することもでき、手続きを簡略化するため兼用を選ぶ企業は多くあります。
協定書と届出書を兼用する場合、届出書だけを本社から提出することはできません。その場合は、各事業所から届出が必要になるため注意しましょう。
初回は余裕を持って着手する
電子申請は手続きの簡略化につながりますが、紙の申請書や対面での手続き方法に慣れていると、かえって時間がかかる可能性もあります。
特に、初回はアカウント登録やアプリのインストールも必要なので、できるだけ余裕を持って着手するようにしましょう。
電子申請なら労働組合がなくても本社一括届出が可能
2021年に要件が緩和されたことで、電子申請なら事業所ごとの労働者代表が別々でも、36協定の本社一括届出を利用できるようになりました。労働組合を組織していない企業でも、36協定の手続きを簡略化することが可能です。
ただし、本社一括届出を利用する場合でも、36協定は事業所ごとに締結する必要があります。協定書と協定届を兼用する場合は、本社一括届出を利用できないので注意しましょう。
行政手続きの電子化は、担当者の負担軽減やコスト削減にもつながります。必要な手続きや注意点を把握したうえで、電子申請を利用してみてはいかがでしょうか。
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