欠勤の意味とは? 給料計算はどうなる? 控除方法や労務管理上の注意点を解説

欠勤が発生したとき、会社としてどのように対応すればいいのか悩んでいませんか。そもそも「会社を休む」意味の用語はほかにもあるため、欠勤の定義について、はっきりと区別できていない方も多いかもしれません。
本記事では欠勤の意味を有給休暇などとの違いから整理したうえで、「いくら引かれるのか」給与計算の処理方法や就業規則への定め方も解説します。欠勤が続く社員への対応を誤ると、労務トラブルに発展する可能性もあるため慎重に対応しなければなりません。人事労務担当者向けに紹介していきますので参考にしてください。
▼欠勤に際して欠勤届の出し方についてお困りの方は以下の記事をご確認ください。
欠勤届とは何かを徹底解説|理由の書き方や伝え方とは?


欠勤の意味は法律に定義されていない
欠勤とは、本来は労働義務がある日に出勤せず、会社を休むことです。
労働関連法に明確な定義はなく、基本的に従業員の個人的な都合(私用)で、事前の連絡なく休む日を指します。
企業によっては、病気や私用による欠勤と無断欠勤を区別し、就業規則で異なる扱いを定めている場合があります。
また、欠勤日は原則として労働の対価である給与が支払われません。
法律上の定義がないからこそ、欠勤の部分を給与からいくら差し引くべきかなど、企業ごとにルールを明確にしておくことが大切です。

欠勤と有給休暇など意味の違い
欠勤とよく混同されがちな「休業」「休職」「有給休暇」「公休」との違いを整理し、それぞれの意味や会社での取り扱いを見ていきましょう。
休職との違い
欠勤は労働義務のある日に急きょ出勤しないことで、休職は主に本人の都合により長期にわたって会社を休むことです。
休職の理由には育児や介護、体調不良などさまざまなものが挙げられます。欠勤が長引いたあとに休職に移行する事例もあるようです。
突発的な休暇である欠勤に対し、休職は通常、上司や人事部と相談したうえ、一定期間計画的に休みを取得する点に違いがあります。
突発性が特徴なので、上司に前もって理由を説明するような欠勤は多くありません。有給休暇の残りがない場合に欠勤を申請するケースくらいでしょう。
休業との違い
欠勤や休職は従業員の都合による休みであり、休業は会社の都合により起こるケースも含まれます。
企業に事業存続の意思があり、従業員に働く意欲があっても、やむを得ない理由で業務を免除された状態の休暇を「休業」といいます。
会社都合の休業でよくあるのは、業績不振や原材料の入手難、自然災害などです。
ただし「従業員都合を休職」「会社都合を休業」と区別する企業もあるため、それぞれの企業の定義を確認しましょう。
給与の面では、欠勤日は原則として労働の対価が発生しないため、給与の支払い対象外です。一方、個人の病気やケガを理由として休業すると、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付といった社会保険制度が適用される場合があります。
有給休暇との違い
欠勤と有給休暇の違いは、給与支給と事前申請の有無です。
欠勤が事前申請のない無給の休暇を指すのに対し、有給休暇(有休)には事前申請が必要で、賃金の支給対象となります。
有給休暇は労働基準法に定められた労働者の権利であり、企業は従業員に対して有給休暇を適切に付与する必要があります。
また、年10日以上の有給休暇が付与されている従業員に対して、年5日以上を取得させなければなりません。
公休との違い
欠勤は個人の休暇なのに対し、会社が定めた公休では、従業員全員が一斉に休みます。
土日祝日などの所定休日・法定休日のほかに、会社の創立記念日など独自に定められた休日も含まれます。
欠勤とは異なり、公休は会社が「休んでもよい日」と定めているので、労働義務はありません。

従業員の欠勤理由の例
従業員が欠勤を取得する場面としては、次のような理由が考えられるでしょう。
- 体調不良
- ケガや病気
- 家族の看病、病院への付き添い
- 住宅トラブル
- 通勤途中の突発的な事故 など
会社によって、体調不良やケガ・病気による突発的な休みは「病気休暇」「傷病休暇」として、欠勤扱いにはしないルールもあります。
私用で急きょ欠勤しなければならないという場合は以下の記事もぜひ参考にしてください。
なかには無断欠勤という場合もあります。無断欠勤を労務管理上、どのように扱うかは、以下の記事を参考にしてください。
欠勤の規定を就業規則に定める場合
欠勤は法的な定義がないからこそ、取り扱いを就業規則に明記することが大切です。労使間のトラブルを回避するために、次のような内容を記載しておくとよいでしょう。
- 欠勤の届出の方法や内容、期限
- 欠勤届出後の有給休暇や長期休暇への切り替えについて
- 無断欠勤に対する処分
- 正当な理由なく欠勤が続く場合の処分
たとえば、欠勤が一定の回数続くと休職扱いにしたり、無断欠勤を懲戒処分の対象としたりする事例もあります。いずれも会社としてどのようなルールを決めるか検討する必要があるでしょう。
欠勤するとどうなる? 給与への影響を解説
従業員が欠勤した場合、その日の給料はいくら引いたらよいのか、給与計算の取り扱いが気になりますよね。
欠勤時のルールは基本的に企業が独自で決められます。
労働の対価として支払われる給与は、一般的に「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて処理されます。つまり、働いていない日に給料は支払わなくてよいのです。
「ノーワーク・ノーペイ」は給与計算における基本原則であり、欠勤においても適用できます。
遅刻や早退に対しても適用が可能で、たとえば従業員が2時間遅刻したら、2時間相当の給与を差し引いても問題ありません。
欠勤時の給与計算の方法
欠勤時の給与計算の仕方を具体的に解説していきましょう。欠勤日数の給与を差し引くことを欠勤控除といいます。
欠勤控除のやり方や計算方法については法的な決まりがなく、それぞれの就業規則に基づいて処理が可能です。
以下では基本的な考え方を紹介します。
月の固定給を所定労働日数で割り、1日あたりの賃金を算出したうえで欠勤日数を乗じると、控除額を算出できます。
月の固定給÷所定労働日数=1日あたりの賃金 1日あたりの賃金×欠勤日数=欠勤の控除額 |
例として月の固定給が40万円、所定労働日数が20日、欠勤日数2日の場合を計算してみると、給与から差し引く控除額は4万円です。
日あたりの賃金=40万円÷20日=2万円 欠勤の控除額=2万円×2日=4万円 |
欠勤控除については以下の記事でより詳しく解説しています。
遅刻早退時の控除については以下の記事でご確認ください。
就業規則に欠勤時の控除に関する記載がなくても、働かなかった時間を給与から差し引くことは可能です。
しかし労務トラブルを避けるためにも、欠勤時の給与計算ルールは就業規則に記載のうえ、従業員に周知を徹底しましょう。
欠勤控除が違反になることも
欠勤の部分を控除できるのは、従業員が働かなかった日数・時間分の給与のみです。
遅刻のペナルティとして1日分の給与を差し引くなど、欠勤分以上の賃金を控除することは労働基準法違反にあたります。
就業規則に減給の規定がある場合は、法に抵触しない範囲内で給与を差し引くことが可能です。
欠勤扱いになるケース・ならないケース
従業員が欠勤した日を給与から差し引くにあたり、欠勤に該当するか否か、あいまいなケースを確認しておきましょう。誤って法的に問題のある控除にならないよう、判断できるようにすることが大切です。
欠勤扱いになるケース
次のような場合は欠勤扱いとなります。
- 有給申請をせずに休む
- 有給休暇が残っていない状態で休む
- 有給休暇が付与されていない状態で休む
有給休暇は、原則として事前申請が必要です。急な体調不良などで有給申請をせずに休む場合は、欠勤扱いとなります。
従業員が有給休暇を消化しきっている場合も、新たな有給取得はできないため欠勤として処理します。
有給休暇の付与日数・残日数は人によって異なるので、それぞれの取得状況を共有できるような仕組みが必要となるでしょう。
またフルタイムの場合、有給休暇は雇用後6か月が経過し、全労働日の8割以上出勤している従業員に付与されるのが一般的です。まだ有給休暇の付与条件を満たしていない従業員が休む場合は、欠勤扱いとする企業が多くあります。
欠勤扱いにならないケース
一方、次のような場合は欠勤扱いとはなりません。
- 有給休暇を使用して休む
- 会社独自の休暇制度を使用して休む
- 会社都合の休業
事前に有給申請をして休むほか、会社独自の休暇制度を使用して休む場合も、基本的には有給休暇扱いとなります。
病気休暇や教育訓練休暇、アニバーサリー休暇などが該当するでしょう。
独自に定める休暇制度に対して、賃金を支給するかどうかは会社の判断に委ねられています。
また、会社都合の休業も欠勤扱いとはならず、休業手当として1日の平均賃金の60%以上を支給しなければなりません。
休業手当の計算方法は以下の記事でご確認ください。
欠勤における労務管理上のポイント【人事向け】おさえておきたいポイント
最後に欠勤に関して人事労務担当者がおさえておきたいポイントを4つ紹介します。
完全月給制の場合は欠勤控除できない
完全月給制では欠勤に対して控除は原則適用できません。完全月給制とは、毎月固定の給与が支払われる給与形態です。欠勤や遅刻・早退があっても、労働条件に反してしまうため、給与が減額できないからです。
裁量労働制の場合は就業規則に基づいて計算する
裁量労働制を採用している従業員の欠勤も、一般的な勤務形態と同じく、会社の就業規則に基づいて処理することが可能です。
裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働時間とみなす制度です。裁量労働制には、労働基準法に定められた休日や休暇の規定が適用されます。
控除の計算方法が通常より複雑になるため、明確に規定しておくとよいでしょう。
欠勤は解雇理由になるケースがある
欠勤したからといって、すぐさま従業員を解雇できるわけではありません。解雇には、合理的かつ社会通念上相当であると判断される理由が必要だからです。再三指導を受けたにもかかわらず欠勤が続く場合は、解雇理由として認められる可能性があります。
ただし、従業員の解雇は就業規則の規定に基づき実施する必要があるため、就業規則に、欠勤による解雇についてあらかじめ明記しておくことが大切です。
残業(時間外労働)の相殺は難しい
欠勤した相当時間を、1日の残業で少しでも相殺できるのではと考える方もいるかもしれません。
月給制の従業員については、欠勤による控除と時間外労働の割増賃金を相殺することは難しいでしょう。労働基準法が、時間外労働に25%以上の割増賃金の支払いを義務づけているためです。
一方、割増賃金の発生しない法定労働時間の範囲内であれば、欠勤と残業の相殺が可能な場合もあります。いずれにしても就業規則へ規定することが必要です。
欠勤時のルールを明確に(まとめ)
欠勤とは、本来は労働が必要な日に、従業員側の都合で会社を休むことです。ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、従業員が欠勤した分の賃金は、通常支給される給与から控除することが認められています。
欠勤時の給与計算の方法は就業規則に基づき処理する必要があります。従業員とのトラブルを避けるためにも、欠勤の取り扱いルールについて就業規則に明記のうえ、社内周知を徹底しましょう。
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