総労働時間の基本的な考え方や計算方法|年間や月間の上限時間について解説

総労働時間とは、ある一定の期間内における労働時間の合計です。総労働時間に含まれる範囲について、集計で迷う場面はありませんか。
総労働時間について尋ねられた場合、明確に答えられる方は意外と少ないかもしれません。総労働時間は、上限規制(36協定)との関係もあり、把握のしかた次第でリスクが変わります。
本記事では、総労働時間の定義や計算方法、概要として年や月の上限までを解説しています。月次集計や社内説明の参考にしてください。
▼労働時間の管理に不安がある方は、以下の資料もご活用ください。

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総労働時間とは?
総労働時間の定義は、1か月や1年など、ある一定期間における労働時間の合計を指します。従業員の働き方を把握し、企業の生産性を向上させるうえで、重要な指標です。総労働時間の基本的な概念と、何が含まれて何が含まれないのかについて解説します。
総労働時間とは、1か月や1年など、ある一定期間における「労働時間」の合計を指します。
ここでの労働時間は、休憩のように労働から解放されている時間を除き、使用者の指揮命令下にある時間を指します。
まずは総労働時間に「何が含まれて、何が含まれないのか」を整理しましょう。

総労働時間に含まれる時間・含まれない時間
総労働時間は、所定労働時間だけでなく、実際に働いた時間を合算します。ポイントは、「働いていたといえるかどうか」です。
総労働時間に該当する例は、以下の各種時間です。
| 所定労働時間 | 雇用契約や就業規則で定められた通常の勤務時間 |
| 時間外労働時間(残業時間) | 所定労働時間を超えて働いた時間 |
| 休日労働時間 | 法定休日や所定休日に労働した時間 |
| 待機時間(手待ち時間) | 指示があればすぐ動ける状態で待っている時間 |
| 移動時間 | 移動手段や経路が実質的に指定された、業務に必要な移動時間の場合のみ |
待機時間のように、使用者の指揮命令下にあるとみなされる場合、総労働時間に含まれます。
一方、総労働時間に含まれない例は、以下の各種時間です。
| 休憩時間 | 労働から解放されている時間 |
| 有給休暇 | 労働者が権利として取得する休暇 |
| 遅刻・早退 | 労働義務を履行していない時間 |
| 私的な外出 | 業務に関係のない私的な外出時間 |
| 研修時間 | 参加が任意である研修や、業務命令に基づかない自己啓発など |
休憩と呼ばれていても、実態として待ち時間である場合もあるため、扱いには注意しましょう。
有給休暇は、そもそも労働義務がないため、総労働時間には含まれません。また研修への参加が業務命令の場合は、総労働時間に含まれます。
総労働時間の計算方法
総労働時間は、就業形態によって集計の方法が異なります。ただし、いずれの形態にも共通する大まかな算定の手順は3ステップに分けられます。
- 日々の労働時間を出す
- 期間(1か月・1年など)で合計する
- 最後に、所定内/所定外/法定外/休日/深夜などに分解して確認する
総労働時間の計算方法を、次の4つの制度ごとに確認していきましょう。
一般的な労働時間制の場合
一般的な労働時間制は、日々の出退勤から、比較的シンプルな方法で計算できます。基本的な計算式は以下のとおりです。
| 終業時刻 – 始業時刻 – 休憩時間=1日の総労働時間 |
基本の計算式にあてはめて、対象期間を足し上げれば、総労働時間が算出可能です。
たとえば、9:00〜18:00(休憩1時間)なら、1日の労働時間は8時間です。20日間働けば、月の総労働時間は160時間になります。
時間外労働や休日労働があれば、その時間も総労働時間に含めます。平日に2時間の残業をした場合、1日の労働時間は10時間です。
また、労働基準法では、1日8時間、1週間40時間を法定労働時間と定めています。法定労働時間を超過した労働については、割増賃金の支払いが必要になるため、管理が重要です。
変形労働時間制の場合
変形労働時間制を採用している場合、総労働時間の計算は少し複雑になります。変形労働時間制は「一定期間を平均して週40時間以内」に収まればよいとされています。
そのため、まず以下の計算方法で、法定労働時間の総枠を確認します。
| 40時間 × 対象期間の暦日数 ÷ 7= 対象期間における法定労働時間の総枠 |
例として、1か月単位の変形労働時間制で、対象期間が28日なら、法定労働時間の総枠は以下のように計算されます。
| 40時間 × 28日 ÷ 7 =160時間 |
この160時間の枠内で、日ごと・週ごとに労働時間を柔軟に割り振ることが可能です。ただし、1日10時間、1週52時間を超えないようにする必要があります。
1年単位の変形労働時間制の場合も、まずは総枠を計算します。1年が365日なら
| 40時間 × 365 ÷ 7 =約2,085.7時間 |
この時間を超えない範囲で、繁忙期と閑散期の総労働時間を調整しましょう。
フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制における総労働時間の計算は、清算期間ごとに判断します。基本的な計算式は変形労働時間制と同様です。
| 40時間 × 清算期間の暦日数 ÷ 7 =清算期間における法定労働時間の総枠 |
清算期間が1か月(31日)の場合、法定労働時間の総枠は以下のように計算されます。
| 40時間 × 31日 ÷ 7 =177.1時間 |
フレックスタイム制では、この総枠の範囲で、従業員が始業・終業時刻を自由に調整できます。もちろん、コアタイムが設定されている場合は、遵守しなければなりません。
清算期間終了時に、労働時間が総枠を超えていた場合は、時間外労働として扱います。総枠に満たない場合は、次の清算期間に繰り越すか、賃金から控除するなどの処理が必要です。
裁量労働制の場合
裁量労働制における総労働時間の計算は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた「みなし時間」で管理します。
たとえば、1日のみなし労働時間を8時間と定めた場合、実労働が7時間でも9時間でも、8時間として扱います。そのため、月の総労働時間は、みなし労働時間に、営業日数を乗じて計算が可能です。
| みなし労働時間 × 営業日数 =月の総労働時間 |
ただし、深夜労働や休日労働が発生した場合は、別途割増賃金を支払わなければなりません。
裁量労働制であっても従業員の健康管理の観点から、実際に働いた労働時間も企業として把握しておく運用が望ましいでしょう。
▼裁量労働制の運用について詳しく知るには以下の記事をご確認ください。導入に必要な労使協定の締結や労使委員会の決議についても解説しています。
実働時間・所定労働時間・法定労働時間との違い
総労働時間に関係する用語はまぎらわしいため、ここで整理しておきましょう。
- 総労働時間:週・月などで見た「実際に働いた時間」の合計(時間外・休日労働も含む)
- 実働時間:1日で実際に働いた時間(拘束時間−休憩)
- 所定労働時間:就業規則・雇用契約に記載された「働くべき時間」
- 法定労働時間:法律で決まる上限(原則1日8h・週40h)
総労働時間と実働時間の違い
総労働時間と実働時間の違いは、算出期間です。
実働時間を使う場合、多くは「1日単位」で実際に働いた時間を指します。1日の拘束時間から休憩を引いた時間と考えるとわかりやすいでしょう。
一方で総労働時間は、実労働時間よりも、まとまった期間における労働時間の合計を指すことが多いです。
つまり、1日の実働時間を合計したものが総労働時間という関係になります。時間外労働や休日労働があれば、合計に含まれます。
総労働時間と所定労働時間の違い
総労働時間と所定労働時間は、実際に働いた時間か、あらかじめ決められたルールか、という点で違いがあります。
所定労働時間は、就業規則や雇用契約で定められた働くべき時間です。
一方で総労働時間は、所定労働時間に加えて、所定外労働や休日労働など実際に働いた時間も含めた合計です。
たとえば、所定が1日7時間45分(週38時間45分)で、月の所定が約165時間とします。残業や休出があれば、総労働時間は所定労働時間を必ず上回ります。たとえば月の残業が20時間あれば、月の総労働時間は約185時間です。
総労働時間と法定労働時間の違い
総労働時間と法定労働時間の違いは、前者が一定期間に実際に働いた時間の合計を指すのに対し、後者は労働基準法で定められた労働時間の上限を指す点です。
法定労働時間は、原則として1日8時間・週40時間です。 労働者の生活と健康を守るためのルールといえます。
一方で総労働時間は、法定を超える時間外(法定外)や休日労働も含まれるため、結果として法定の枠を上回るケースが多いです。
例として、ある週の勤務が以下のとおりだったとすると、週の総労働時間は45時間です。
- 月〜金:9時間(休憩1時間含む)=労働8時間 × 5日
- 土:5時間
このケースでは、総労働時間が法定労働時間(週40時間)を5時間超えています。

年間や月間の総労働時間の上限
労働時間の上限は基本的に、法定労働時間である1日8時間、週40時間です。法定を超えて「時間外労働」や「法定休日の労働」をさせるには、36協定の締結と届出が必要です。
ただし36協定を結んでいても、時間外労働には「月45時間・年360時間(休日労働は含まない)」という上限を守らなければなりません。
そのため、上限規制から逆算した「法定労働時間+時間外労働の上限」が、「総労働時間の上限目安」と考えられます。
本記事では、以上の考えに基づいて、年と月ごとの総労働時間の上限目安を計算していきます。
年間の上限:法定労働時間+360時間
年間の総労働時間の上限は、年間の法定労働時間に、時間外労働の上限360時間を加えたものです。
1年を約52.14週(365÷7)として、毎週40時間働いた場合、法定労働時間は以下のとおりです。
| 40時間 × 52.14週 =約2,085時間 |
ここに、年間上限の360時間を足すと、年間の総労働時間の上限目安は、約2,445時間になります。
| 約2,085時間 + 360時間 = 約2,445時間 |
※実際は所定労働時間の組み方や、休日労働の有無で変わるため、あくまで概算です。
特別条項付き36協定を締結している場合:法定労働時間+720時間
特別条項付き36協定を締結していれば、総労働時間の上限は、さらに引き上がります。時間外労働の上限は年720時間以内です。
| 特別条項付きの36協定 |
|---|
| 1.年間の時間外労働の合計が720時間以内 2.時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満 3.時間外労働と休日労働の合計が、2〜6か月平均で月80時間以内 4.時間外労働が月45時間を超えられるのは年6回まで |
1の条件を踏まえると、年間の総労働時間の上限目安は、「法定労働時間+720時間」です。先ほどの計算例により、年間の法定労働時間は約2,085時間なので、2,805時間が目安になります。
| 年間の法定労働時間(約2,085時間)+ (特別条項付)年間の時間外労働の上限(720時間) = 約2,085時間 + 720時間 = 約2,805時間 |
※実際は2〜4の条件も同時に満たさなければならないため、あくまでも概算です。
月間の総労働時間の上限:法定労働時間+45時間
月間の総労働時間の上限は、月の法定労働時間に、月の時間外労働の上限45時間を加えたものです。
一般的な所定労働日数である22日を例に挙げると、月の法定労働時間は次のとおりです。
| 8時間 × 22日 = 176時間 |
ここに、月上限の45時間を足すと、月間の総労働時間の上限目安は、221時間が目安となります。
| 176時間 + 45時間 =221時間 |
※実際は、所定労働日数によって大きく変わり、上限も変動することに注意が必要です。
特別条項付き36協定を締結している場合:法定労働時間+100時間
特別条項では、時間外労働と休日労働の合計が、単月100時間未満であることが条件です。
条件を踏まえ、「時間外労働+休日労働」の合計が100時間未満であれば、月の上限内といえます。
先ほどの計算例で考えると、月の法定労働時間は176時間なので、月間の総労働時間の上限は、 276時間が目安と計算できます。
| 月間の法定労働時間(176時間) + (特別条項付)月間の時間外労働の上限(100時間未満)176時間 + 100時間 =276時間 |
総労働時間の管理で気をつけたいポイント
総労働時間を管理するうえで、注意したいポイントを3つ紹介します。
- 適切な管理方法を選ぶ
- 労働時間は1分単位での管理が原則
- 従業員の健康管理にも気を配る
正確な労働時間の把握は法令遵守の観点からも重要ですが、従業員の健康と働きやすい環境づくりにもつながります。基本からおさらいしましょう。
適切な管理方法を選ぶ
総労働時間を正確に把握するには、効率的に打刻と集計ができる管理方法を選びましょう。手作業は転記漏れや計算ミスが起きやすく、是正にも時間がかかります。
たとえばクラウド勤怠管理システムなら、外出先でもスマホで打刻でき、管理者は残業や総労働時間をリアルタイムで確認しやすくなります。
総労働時間の上限に近づいたらアラートを出す設定も可能です。自社の規模やテレワーク・シフト・フレックス対応、給与計算との連携などのチェックポイントを確認し、自社で運用しやすい候補を選定しましょう。

労働時間は1分単位での管理が原則
総労働時間の管理は、原則として1分単位で行うのが原則です。労働の対価である賃金は全額支払う必要があるため、実際に働いた時間を正確に計算する必要があります。
たとえば所定8時間の職場で、1日に8時間1分働いたとすると、たとえ1分でも割増賃金が発生します。切り捨てで、労働者の不利になる運用は法律に違反する可能性も否定できません。
また反対に、7時間59分の労働であれば、1分不足した賃金を控除することも可能です。
勤怠管理システムを活用して1分単位での管理を徹底し、給与計算ソフトで従業員の不利にならない端数処理にそろえて運用しましょう。
従業員の健康管理にも気を配る
総労働時間の管理は、従業員の健康管理まで含めて考える必要があります。
労働安全衛生の観点から、長時間労働は心身の不調や休職、労災リスクにつながるためです。
たとえば健康診断やストレスチェックを定期的に行い、時間外労働が月80時間を超える見込みの人には医師の面接指導につなげる必要があります。
あわせて有給休暇が取得しやすい環境づくりも大切です。ワークライフバランスを改善して、過重労働を防ぎ、手遅れにならないように早めに対処しましょう。
まとめ
総労働時間とは、一定期間(週・月など)に実際に働いた時間の合計を指します。
総労働時間を適切に管理することは、従業員の健康を守り、企業の生産性を保つうえで欠かせません。労働基準法で定められた法定労働時間や時間外労働の上限を守ることは、企業に求められるルールであり、働きやすい職場づくりにもつながります。
そのためには、従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握し、継続的に管理する必要があります。
勤怠管理システムを使えば、記録や集計を効率化でき、総労働時間を正確に管理しやすくなります。
総労働時間の管理を徹底することで、法令対応に加え、健康面の負担を減らし安定した事業運営にも役立つでしょう。
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