人材流出を防ぐには? 原因と対策、リスク、取り組み事例を紹介

人材流出に悩む企業は増えており、放置すれば経営基盤を揺るがす深刻な事態になりかねません。しかし、原因が多岐にわたるため、有効な対策が打てずにいる担当者も多いでしょう。本記事では、人材流出が起きる背景・原因から企業へのリスク、具体的な防止策までを解説します。自社の現状と照らし合わせながら、人材定着のヒントとしてお役立てください。
まず自社の離職率が高いかどうか確認したい方は、【離職率の計算方法】に関する記事を、あわせてご確認ください。
目次
人材流出とは
人材流出とは、自社の従業員が他社に転職してしまうことです。とくにネガティブな理由で退職されたり、短期間での退職が相次いだりした場合などに、人材流出という言葉がよく使われます。
もともと日本は終身雇用の文化が根づいており、雇用した従業員の流出を心配する必要はそれほどありませんでした。しかし、近年ではさまざまな社会環境の変化から人材流出への対策が重要となっています。
人材流出の現状
帝国データバンクの調査によると、正社員の不足を感じている企業の割合は、2012年の25.1%から、2018年は52.5%まで上昇しています。2020年に一度下がっていますが、2022年には再び51.1%という水準に戻っています。非正社員についても同様の推移でした。
また、エン・ジャパンの調査では「人材が不足している部門がある」と回答した企業のうち、60%が「退職による欠員」を理由に挙げています。
以上より、多くの企業が人材流出に悩まされていると考えてよいでしょう。
参照:『人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)』株式会社帝国データバンク
参照:『2022年「企業の人材不足」実態調査』エン・ジャパン株式会社
人材流出による4つのリスク・弊害
人材流出は企業においてさまざまなリスクが生じるといわれています。人材流出が起きると、どのようなリスクがあるのでしょうか。主なものを4つご紹介します。
1.売上・利益の低下
労働集約型の事業の場合、人材流出で人員が減るごとに単純に売上も下がります。退職したのが優秀な人材であるほど、大きな損害を受けるでしょう。
欠員が出た分、業務の負荷が残りの従業員に集中することで生産性が落ち、利益まで下がってしまうこともあります。
2.採用・教育コストの増加
従業員が退職してしまったら、代わりの人材を採用しなければなりません。新しい人を採用したら、またイチから仕事を教える時間も必要になります。
つまり、人材流出で人の入れ替わりが激しくなると、採用や教育にかかるコストがムダに増えてしまうのです。
3.技術・人脈の流出
人材流出によって、退職した従業員が持っていた技術や知識は、引き継ぎがされていない限り会社から失われてしまいます。
営業などの職種では、その従業員がいなくなったことで顧客との関係性が途切れることもあるでしょう。さらに同じ業界で転職した場合には、技術や人脈が失われるだけでなく、他社に流れてしまうことになります。
4.対外的なイメージの悪化
あまりにも人材の流出が相次いでいると、社外からもわかってしまうことがあります。そうすると取引先によっては「経営状態が信用できない」「担当者が変わりそうで不安」という印象を持たれかねません。
採用においても、退職する従業員が多いという印象は求職者にとってネガティブに働いてしまうでしょう。
人材流出の7つの原因
人材流出はさまざまなリスクがあり、できるだけ抑えたいと考える企業は多いはずです。流出を防止するために、人材流出の原因を見ていきましょう。
1. 評価・待遇への不満
自分の働きが正当に評価されていない、努力や成果に見合った待遇が得られないと感じると、人材流出の原因になります。
個人の問題ではなく制度や仕組みに難があることも多いため、評価・待遇が原因で辞める従業員が出始めると、同じ原因での退職が相次ぐ場合があるでしょう。
2.労働環境への不満
いくら給与がよかったとしても、心身ともに健康に働ける環境でなければ、従業員は仕事を続けることができません。
また、退職者が増えると残った従業員にしわ寄せがいって、より労働環境が悪化するという負のループに陥ってしまうこともあるため注意が必要です。
3.人間関係への不満
上司や同僚、部下との関係に対する不満も、従業員が退職する理由として非常に多いです。
人間関係のトラブルが起きると、最悪の場合には関係している全員が一気に辞めてしまうこともあります。そうした不満やトラブルが連鎖して社内の空気が悪くなり、さらに従業員同士の衝突が起きやすくなる場合もあるでしょう。
4.業務内容への不満
「希望している仕事ができない」「仕事にやりがいを感じられない」という理由でも従業員は他社への転職を考えます。もちろん業務内容に対してどう感じるかは会社ではなく従業員の問題である可能性もあります。しかし、本人の意に反した配属や異動が命じられていないかは注意が必要です。
5.社風とのアンマッチ
会社が大切にしている価値観や社内の雰囲気と本人の性格が合わず、居心地の悪さから退職を決めてしまう従業員もいます。こうした社風とのアンマッチは採用時点での認識のズレなどが原因になっている場合が多く、入社後に改善していくのは難しいでしょう。

6.スキル・キャリアに対する不安
向上心の強い従業員の場合は、今の職場で十分なスキルアップやキャリアアップが望めないと感じたときに他社への転職を考えます。もちろん簡単なルーティン作業を好む人もいますが、ほとんど成長につながる挑戦ができない環境では、長く働き続けることに不安を感じてしまう人が多いようです。
7.会社の将来に対する不安
業績悪化が続くなどして会社の経営が傾いているときにも、不安を感じて退職する従業員が増えます。また実際に倒産する可能性は低いとしても、経営状況が十分に理解されていない、経営層の考えが信用されていない、などの理由で従業員が不安を感じてしまっていることもあるでしょう。
人材流出の原因を把握する方法の例
人材流出を防ぐには、退職理由を一人ひとりの事情として片づけず、自社に共通する傾向を把握することが大切です。表向きの退職理由だけを見ていると、根本的な原因を見落としてしまう可能性があります。
まずは、退職者と在職者の両方から情報を集めましょう。退職者の声だけでは、すでに辞める決断をした人の意見に偏る場合があります。在職中の従業員の不満や不安も確認し、人材流出の予兆を把握しやすくなります。
| 確認する情報 | 把握できること |
|---|---|
| 退職面談・退職アンケート | 退職に至った直接的な理由 |
| 部署別・年代別・職種別の離職率 | 退職が集中している層や部門 |
| 残業時間・有給休暇の取得状況 | 業務負荷や働き方への不満 |
| 評価結果・昇給履歴 | 評価や待遇への不満 |
| 異動履歴・配置状況 | 業務内容や人員配置のミスマッチ |
| エンゲージメントサーベイ・1on1 | 在職者が抱える不満や不安 |
集めた情報は、原因ごとに整理して対策を検討します。
| 見えてきた傾向 | 考えられる対策 |
|---|---|
| 評価や待遇への不満が多い | 評価制度や報酬制度を見直す |
| 残業時間が長い部署で退職が多い | 業務量や人員配置を見直す |
| 若手の退職が多い | 育成体制やキャリア支援を強化する |
| 特定の上司のもとで退職が多い | マネジメント研修や1on1を実施する |
| 配属後すぐの退職が多い | 採用時の説明や配属基準を見直す |
人材流出の原因を把握できれば、自社に必要な対策の優先順位も見えやすくなります。
人材流出を防ぐ対策・企業ができること
従業員の不満を放置せず、人材流出を防ぐために、企業はどのような対策をすべきなのでしょうか。7つの対策をご紹介します。
1.評価の仕組みを刷新する
人材流出の原因として、適切な評価がされていないという不満は影響範囲が大きいため、優先的に対応すべきです。
評価の仕組みを刷新するには、大きく2つの方法があります。1つは「評価制度」を変えることです。誰が評価しても偏りがないよう、客観的な評価基準や公正な評価手法を導入することで、従業員の納得度を高められるでしょう。
もう1つの方法は、評価者のスキルアップです。どれだけ仕組みを整えても、評価者の主観による影響からは逃れられません。そのため、評価を担当するマネージャーを適切な人物に変えたり、研修を実施するなどして評価者の意識を変えることも重要です。

2.労働環境を改善する
人材流出を防ぐための手段として、従業員が安心して長く働けるような労働環境をつくることも大切です。給与や勤務時間を変更するのは大変ですが、そのぶん大きな効果が期待できます。そこまでするのが難しかったとしても、業務を効率化して残業時間を減らせるようにしたり、仕事と生活を両立できるよう働き方の自由度を高めるだけでも流出対策になるでしょう。
3. 社内コミュニケーションの機会を増やす
人材流出の原因の一つ社内の人間関係を不満を改善するには、従業員同士のコミュニケーションを増やすことも効果的です。多くの場合、人間関係の不満やトラブルは相互理解の薄さから生まれる傾向にあります。そのため人材流出を防ぎたければ、従業員がお互いについて知る機会をつくることも大切でしょう。
4.人員配置を見直す
従業員が業務内容に不満を感じているとしたら、配属や異動に問題を抱えている可能性が高いです。
業務内容を変更することは難しいかもしれませんが、なるべく個人の希望や適性に合わせた業務を任せることはできるのではないでしょうか。また業務の価値や異動の意図をしっかり従業員に伝えるのも大切です。

5. 採用基準を再検討する
たとえば、社風が合わずに退職している従業員が増えているとして、今さら会社の雰囲気や考え方を大きく変えるのは難しいです。
こうした入社後に改善することが難しい問題は、採用の基準や応募者との認識のズレなどに原因がないか改めて検討してみるとよいでしょう。
6.スキルアップ・キャリアアップを支援する
従業員に「この職場で長く働きたい」と感じてもらうためには、スキルアップやキャリアアップなどの成長を感じられる環境を用意する必要があります。
会社として教育や研修を充実させるのも大事ですが、従業員の自主的な学習や資格取得などをサポートしたり、上司と将来を見据えたコミュニケーションを強化したりすることも重要です。
7.経営に関する情報を社内に共有する
経営に対する不安や不信感が人材流出につながっていると考えられる場合、その原因は従業員への情報共有が十分でないからかもしれません。
一時的に業績が悪化したとしても、現状に関する正確な状況や今後の経営方針を従業員に伝えるようにすることで、不安を和らげることができるでしょう。
人材流出対策の取り組み事例
先に述べた対策を踏まえて、最後に人材流出を防ぐ具体的な取り組み事例をご紹介します。
1.エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、従業員の職場に対する愛着などの調査です。まずは組織の状態を可視化し、自社の人材流出の原因を明らかにすることで適切な対策がとれるようになるでしょう。

2.目標管理(MBO、OKR)
MBOやOKRは、従業員の目標を管理する仕組みです。従業員の能力や状況に合わせた適切な目標を設定し、その達成度を測り、働きぶりを評価します。目標の達成度が評価の一基準となるので、従業員の納得度が高まりやすく、モチベーション向上にもつながるとされています。
3.コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、従業員の行動特性をもとにした評価手法のことです。行動に対する評価基準が明確になるため、従業員が評価を受け入れやすくなるとされています。

4.360度評価
360度評価は、上司だけでなく同僚や部下など多方面から評価する仕組みのことです。客観的な視点が入るので評価の納得度が高まりやすく、上司への不信感が和らぐ可能性もあります。
5.リモートワーク
リモートワークは、オフィスから離れた場所でも働ける仕組みです。働き方の自由度を高めることによって労働環境への不満が緩和される可能性があります。
6.フレックスタイム制
フレックスタイム制は、従業員が自分で働く時間を決められる仕組みです。仕事とプライベートの時間を調整しやすくなることで、従業員の満足度が高まりやすいでしょう。
7.休暇制度・時短勤務
育児や介護のために取得できる休暇や時短勤務の制度も人材流出の対策として有効です。家庭との両立を支えることで、従業員に安心して長く働ける環境だと感じてもらいやすくなります。
8.インセンティブ
インセンティブは、目標達成に対して報酬を与えるなど仕事の動機づけの仕組みです。成果に対するわかりやすい評価を受けられることで、従業員の仕事へのモチベーション向上につながります。
9.社内イベント
社内イベントの実施は、社内の人間関係を改善するのに効果的です。普段の業務では接することがないような同僚とも接することで、従業員同士のつながりを強化できるでしょう。
10.1on1
1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で定期的に対話する仕組みです。上司と部下のコミュニケーションが増えることで、将来のキャリアに関する不安を和らげつつ、信頼関係も築きやすくなります。

11.学習支援・勉強会
従業員のスキルアップを後押しするには、会社として研修を実施するのも一つの手ですが、書籍の購入やセミナーへの参加を補助したり、有志での勉強会の開催をサポートするのが有効です。
12.社内報
社内報を発行すると、従業員の仕事内容や考え方などが、普段の業務で関わることのない同僚や家族にも知ってもらえるようになります。それによって仕事に対するやりがいを感じてもらいやすくなり、社内に一体感が生まれる可能性があります。
13.従業員データの活用・分析
人材流出を防ぐには、退職理由や従業員の不満を個別に把握するだけでなく、従業員データをもとに傾向を分析することも大切です。
たとえば、タレントマネジメントシステムを活用すれば、部署別・年代別・職種別の離職率、評価履歴、異動履歴、残業時間、アンケート結果などを踏まえて、退職が起きやすい部門や従業員が不満を抱えやすい要因を把握しやすくなります。
One人事[タレントマネジメント]は、人材データの一元管理やアンケート機能、ダッシュボード機能などを備えています。従業員の声や組織の傾向を把握し、人材流出対策にもご活用いただけます。
人材流出対策における活用シーンは、関連ページでもご確認が可能です。サービス紹介資料や人事労務に関する資料も無料でダウンロードできますので、あわせてお役立てください。
まとめ
人材流出は、企業活動の多岐にわたって影響を与えるため、退職理由を個人の事情として片づけず、自社に共通する原因を把握することが重要です。
人材流出を防ぐには、評価・待遇、労働環境、人間関係、配置、キャリア支援など、課題に応じた対策を検討する必要があります。社内に散らばる人材情報をもとに傾向を分析すれば、優先して取り組むべき施策も見えやすくなるでしょう。
従業員が安心して働き続けられる職場づくりに向けて、自社の人材流出の原因を整理し、できる対策から見直してみてはいかがでしょうか。


