人事労務の法改正【2025年】重要ポイントを解説

人事労務の法改正【2025年】重要ポイントを解説

2025年は、人事・労務に関連する重要な法改正が施行予定です。目玉は育児・介護休業法の大幅な改正で、仕事と育児・介護の両立支援が強化されることが予想されています。改正に対応するためには、就業規則の改定や労使協定の締結、社内制度の整備、など計画的な準備が必要です。

本記事では、2025年に施行される人事・労務関連の法改正について、改正の概要と実務対応のポイントを担当者向けに解説します。

目次アイコン 目次

    2025年に予定されている人事労務の法改正まとめ・一覧

    人事労務担当者が気になる、実務にかかわる大きな法改正は以下の6つです。

    2025年重要法改正まとめ
    育児中の労働者に対する所定外労働の制限対象の拡大残業免除の対象が3歳未満→小学校入学前まで拡大
    子の看護休暇の見直し看護休暇の対象が小学校就学前→小学校3年生修了まで拡大。取得事由の追加
    テレワーク導入の努力義務化3歳未満の子どもを養育する労働者へのテレワーク導入が努力義務に
    高年齢者雇用継続給付の見直し高年齢雇用継続給付の給付率が最大15%→10%に引き下げ
    障害者雇用の拡大障害者雇用の除外率が一律10ポイント引き下げ
    雇用保険制度の見直し自己都合退職の失業給付制限を2か月→1か月に短縮

    いずれも2025年4月1日、大企業・中小企業問わず、すべての企業が対象です。

    2024年の重要法改正は以下の資料でご確認ください。

    人材活用や労務管理に大きな影響を与える改正が予定されているため、実務対応のポイントとあわせて確認していきましょう。

    2025年人事労務の法改正|1.育児‧介護休業法

    育児‧介護休業法では、以下の変更が予定されています。

    1. 育児中の労働者への「所定外労働の制限」の対象拡大
    2. ⼦の看護休暇の拡充
    3. 育児支援を目的としたテレワーク導入の努力義務化
    4. 介護離職を防ぐため、個別に周知や意向の確認、 雇用環境を整える措置が義務付け
    5. 子どもの年齢に応じた働き方を実現させる措置の義務化

    以下で詳しく解説します。

    1.育児中の労働者への「所定外労働の制限」の対象拡大

    子育て中の従業員の残業免除制度について、これまでは3歳未満の子どもを育てる従業員のみが対象でした。

    2025年4月からは小学校入学前の子どもを育てる従業員まで対象が広がります。

    施行日は2025年4月1日、すべての企業が対象です。

    同制度により、従業員から申し出があった場合、企業は小学校入学前の子どもを持つ従業員に残業を命令できません。

    2.⼦の看護休暇の拡充

    子の看護等休暇は、対象となる子を養育する労働者が年間5日(子どもが複数の場合は10日)を上限として、日単位または時間単位で取得できる休暇制度です。

    施行日は2025年4月1日、すべての企業が対象です。

    2025年4月からの法改正により、大きく3つの変更が行われます。

    • 子どもの対象年齢拡大
    • 取得事由の追加
    • 除外規定の廃止

    対象となる子どもの年齢が「小学校就学前」から「小学校3年生修了まで」に拡大されます。

    取得事由として「感染症による学級閉鎖」「入園・入学式」「卒園式」が新たに追加されます。

    また、取得事由が看護に限定されなくなるため、「子の看護等休暇」と法律上の名称も変更になります。

    入社6か月未満の労働者を労使協定で除外できる規定が廃止され、より多くの労働者が制度を利用できるようになるでしょう。

    改正前と改正後のポイントは以下のとおりです。変更点を太字で示しています。

    改正前(現行)改正後(2025年4月~)
    対象となる子どもの範囲小学校就学前まで
    小学校3年生修了まで
    取得日数年間5日(子どもが2人以上の場合は10日)年間5日(子どもが2人以上の場合は10日)
    取得単位1日単位時間単位
    1日単位時間単位
    取得理由
    子どもの看護のため
    子どもの看護のため感染症による学級閉鎖入園(入学)式への参加卒園式への参加
    労使協定による除外可能な労働者入社6か月未満の労働者週の所定労働日数が2日以下の労働者週の所定労働日数が2日以下の労働者のみ

    参照:『育児‧介護休業法、次世代育成⽀援対策推進法 改正ポイントのご案内』厚⽣労働
    参照:『育児‧介護休業法のあらまし』厚⽣労働省

    企業に求められる実務対応

    企業には、以下の対応が必要となります。

    • 就業規則の変更
    • 従業員への周知
    • 説明資料の作成
    • 説明会の実施
    • 全従業員への周知徹底
    • 労使協定の見直し
    • 現行の労使協定の確認
    • 除外対象を「週の所定労働日数が2日以下の従業員」のみに限定
    • 新基準での労使協定の再締結
    • 就業規則変更の労働基準監督署への届出
    • 新労使協定の締結期限の設定

    就業規則の変更に間する情報は以下よりご確認いただけます。

    3.育児支援を目的としたテレワーク導入の努力義務化

    企業には、小学校就学前の子どもを養育する労働者に対して、すでに複数の支援措置を講じる努力義務が課されています。

    2025年4月より、3歳未満の子どもを養育する労働者への支援措置として、新たに「テレワークの導入」が努力義務の対象として追加されることになります。

    施行日は2025年4月1日、すべての企業が対象です。

    現行制度と改正後の制度比較は以下のとおりです。変更点を太字で示しています。

    現行制度改正後
    企業は小学校入学前の子を持つ労働者に対して、以下の支援措置を講じることが努力義務とされています。3歳未満の子を養育する労働者が対象となり、「テレワークの導入」が新たな努力義務として追加されます。
    始業時刻の変更子の出生時から就学前まで子の出生時から就学前まで
    育児休業制度1歳から就学前まで1歳から就学前まで
    所定外労働の制限3歳から就学前まで
    ※2025年4月より、子の出生時から就学前まで義務化されます。
    時短勤務制度3歳から就学前まで3歳から就学前まで
    テレワークの導入子の出生時から就学前まで

    参照:『育児‧介護休業法、次世代育成⽀援対策推進法 改正ポイントのご案内』厚⽣労働省
    参照:『育児‧介護休業法のあらまし』厚⽣労働省
    参照:『仕事と育児‧介護の両⽴⽀援対策の拡充について(建議)』厚⽣労働省

    例外もあります。時短勤務が困難な労働者への代替措置の改正がなされる予定です。

    時短勤務が困難な業務の従事者の代替措置として、「テレワーク」が追加されます。労使協定の締結により、時短勤務が困難な業務の従事者に対して適用が可能となります。

    テレワークに関連した情報は以下よりご確認いただけます。

    企業に求められる実務対応

    企業には、以下の対応が求められます。

    就業規則の整備・テレワーク規程の新設育児・介護休業規程の改定
    ・その他関連する就業規則の変更従業員への周知
    制度設計時の留意点・従業員の意見や希望を募集企業の実情に合わせた段階的な導入
    業種に応じた柔軟な対応テレワークが難しい業種(サービス業や建設業、製造業など)は、以下の対応が可能

    ・事務部門(人事・総務・経理)でのテレワーク導入
    ・フレックスタイム制の導入
    ・独自の休暇制度の創設(配偶者出産休暇や育児目的休暇など)
    柔軟な制度運用・フレックスタイム制との併用検討
    ・一時的な配置転換の考慮
    ・従業員個々の働き方に応じた制度設計新たな制度の随時追加

    4.介護離職を防ぐため、個別に周知や意向の確認、 雇用環境を整える措置が義務付け

    現在、事業主には妊娠・出産の申し出をした労働者に対して、育児休業制度の説明と取得意向の確認を個別に行う義務があります。介護に関する制度については、個別対応が義務付けられていませんでした。

    この状況を改善するため、2025年4月より、介護離職を防止する目的で、事業主は労働者に対して介護休業制度の個別説明と利用意向の確認を行うことが新たに義務化されます。

    施行日は2025年4月1日、すべての企業が対象です。

    個別周知と意向確認

    事業主は、労働者が家族の介護に直面した際に、介護休業制度や介護両立支援制度について個別に説明を行うことが義務付けられます。

    早期情報提供の実施

    40歳到達時などの効果的な時期に、介護休業や介護両立支援制度に関する情報を提供することが事業主の義務となります。

    雇用環境の整備

    事業主は、以下のような措置を講じる必要があります。

    • 介護休業・介護両立支援制度に関する研修の実施や相談体制の整備
    • 制度利用の事例収集・提供
    • 制度利用促進に関する方針の周知

    テレワーク環境の整備

    要介護状態にある家族を持つ労働者に対し、テレワークが選択できる環境を整備することが事業主の努力義務として新たに追加されます。

    制度利用対象の拡大

    介護休暇について、これまで労使協定により除外できた勤続6か月未満の労働者を除外する仕組みが廃止されます。廃止で、より多くの労働者が介護休暇を取得できるようになります。

    企業に求められる実務対応

    企業には、以下の対応が求められます。

    項目企業に求められる対応
    就業規則の改定労働時間の管理、フレックスタイム制の導入、退職後の支援など
    労使協定の締結協定に基づく柔軟な労働時間、育児・介護に関する支援策の確認
    従業員への周知社内説明会、従業員への個別面談、各種サポートの導入
    労働環境の整備従業員が働きやすい環境の整備、テレワーク、フレックスタイム制度の導入

    参照:『育児‧介護休業法、次世代育成⽀援対策推進法 改正ポイントのご案内』厚⽣労働省
    参照:『育児‧介護休業法のあらまし』厚⽣労働省

    5.子どもの年齢に応じた働き方を実現させる措置の義務化

    2025年10月1日より、すべての企業を対象に、仕事と育児の両立支援に関する新制度が施行されます。

    制度の基本的な枠組み

    同制度は、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者が対象です。事業主は、柔軟な働き方が実現できる措置を導入、実施にあたっては過半数労働組合などから事前に意見を聴取しなければなりません。対象となる従業員に対して、面談または文書による個別周知と意向確認を行うことが求められます。

    具体的な支援措置

    事業主は、以下の制度のなかから、2つ以上の措置を選択して導入する必要があります。

    • 始業・終業時刻の調整
    • 月10日までのテレワーク制度(時間単位での利用可)
    • 事業所内保育施設の設置・運営
    • 年10日までの特別休暇制度(時間単位での取得可)
    • 短時間勤務制度

    従業員の利用について

    従業員は、事業主が導入した複数の措置のなかから、自身のニーズに合わせて1つを選択して利用できます。個々の事情に応じた柔軟な働き方の実現が可能となります。

    企業に求められる実務対応

    企業には、以下に書く対応が求められます。

    対応区分具体的な施策
    制度設計と選択・従業員の意見や希望を広く収集
    ・企業規模に適した実現可能な制度を選択
    ・従業員参加型のワーキンググループの設置を検討
    規程の整備・ 就業規則の改定
    ・育児・介護休業規程の見直し
    ・テレワーク規程や休暇規程の整備
    ・改定内容の従業員への周知(説明会の実施など)

    制度の周知と意向確認・ 全従業員向けの制度説明会の実施
    ・対象者への個別面談の実施
    ・書面による利用意向の確認
    ・一人ひとりへのていねいな説明と対応

    制度選択にあたっては、保育施設の設置など企業規模によって実施が困難な選択肢もあるため、自社の実情に合わせた現実的な制度設計が重要です。

    参照:『育児‧介護休業法、次世代育成⽀援対策推進法 改正ポイントのご案内』厚⽣労働省

    2025年人事労務の法改正|2.育児‧介護休業法、次世代育成⽀援対策推進法

    育児‧介護休業法と次世代育成⽀援対策推進法の主な改正について、紹介します。

    1. 育児休業を取得した状況の公表義務の範囲拡⼤と、次世代育成⽀援対策の推進・強化
    2. 仕事と育児の両立支援が強化―労働者の個別意向確認が事業主の義務に

    1.育児休業を取得した状況の公表義務の範囲拡⼤と、次世代育成⽀援対策の推進・強化

    育児休業の取得状況の公表に関する義務付けが、従業員数1,000人超の企業から300人超の企業にまで拡大されます。

    次世代育成支援対策推進法における「一般事業主行動計画」については、従業員数100人超の企業に策定・届出、公表・周知が義務付けられています。2025年4月からは内容面での要件が強化されます。行動計画に育児休業取得状況や労働時間の現状把握に関する記載を盛り込むことと、これらに関する数値目標の設定が新たな必須項目です。

    企業は現状分析を行い、結果に基づいて行動計画を策定・修正するという継続的な改善の仕組みを構築しなければなりません。

    施行日は、2025年4月1日です。対象事業者は、育児休業取得状況の公表義務については従業員数300⼈超の企業です。育児休業取得などに関する状況把握や数値⽬標設定の義務は従業員数100⼈超の企業です。

    育児休業取得状況の公表義務の拡大

    現行では、従業員1,000人超の企業のみが対象です。改正後は、従業員300人超の企業までに対象が拡大します。

    「一般事業主行動計画」に関する改正

    対象は従業員100人超の企業です。現行の義務は、行動計画の策定・届出、計画の公表・周知です。2025年4月以降の追加義務として、行動計画策定時の必須記載事項が加わります。行動計画策定時の必須記載事項は、育児休業の取得状況、労働時間の状況、数値目標の設定です。

    PDCAサイクルの確立

    PDCAサイクルの確立は、企業における両立支援制度の効果的な運用に不可欠です。現状の課題や問題点を詳細に分析し、改善が必要な事項を明確にします。分析結果をもとに、具体的な目標と達成手段を含む新たな行動計画策定が欠かせません。

    策定された行動計画は、明確なスケジュールと責任者を定めて実施します。実施過程では、進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて軌道修正します。

    計画の実施後は、設定した目標に対する達成度を評価するのが重要です。評価結果を踏まえて新たな課題を特定し、次期の行動計画に反映させることで、継続的な改善サイクルを確立できるでしょう。上記プロセスを繰り返すことで、より効果的な両立支援制度の運用が可能となります。

    企業に求められる実務対応

    ●育児休業取得割合の公表(従業員300人超)

    【公表の流れ】

    • 育児休業取得割合の算出
    • 公表(厚生労働省「両立支援のひろば」または自社のコーポレートサイト)

    【公表内容】直前事業年度における以下のいずれか

    • 育児休業などの取得割合
    • 育児休業などと育児目的休暇の取得割合の合計

    【公表時期】直前事業年度における以下のいずれか

    • 各事業年度終了後に速やかに公表
    • 毎年継続実施

    ●新行動計画の策定・実施(従業員100人超)

    【現状把握と分析】

    • 育児休業の取得状況確認
    • 労働時間の状況確認
    • 改善項目の分析

    【行動計画の必須項目】

    • 両立支援制度の運用方針
    • 業務分担方法
    • 代替要員確保方法
    • 育休復帰関連事項
    • 復帰後のポジション設定
    • 復帰者の納得感向上施策
    • マネジメントと評価
    • 育休取得者への対応
    • 時短勤務利用者への対応
    • 周囲の従業員への配慮
    • 勤務条件への配慮
    • 必要時間帯への対応
    • 勤務地への配慮
    • 代替要員への配慮
    • 心身の健康管理
    • 勤務間インターバルの確保

    参照:『育児‧介護休業法、次世代育成⽀援対策推進法 改正ポイントのご案内』厚⽣労働省
    参照: 『令和6年改正法解説資料』厚⽣労働省
    参照:『育児休業、介護休業等育児⼜は家族介護を⾏う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成⽀援対策推進法の⼀部を改正する法律の概要』厚⽣労働省

    2.仕事と育児の両立支援が強化―労働者の個別意向確認が事業主の義務に

    仕事と育児の両立支援が強化され、労働者の個別意向確認が事業主の義務になります。

    施行日は、2025年10⽉1⽇で、すべての企業が対象です。

    事業主には以下の義務が課されます。

    基本的な義務内容

    事業主は、労働者から妊娠・出産の申し出があった時点か、子どもが3歳になるまでの適切なタイミングにおいて、仕事と育児の両立に関する意向を個別に確認することが義務付けられます。

    事業主は、従業員から確認した意向を踏まえ、適切な配慮を実施する必要があります。配慮の具体的な内容や実施方法については、個々の状況に応じて検討しなければなりません。

    意向確認の具体的な方法は、面談・書面交付・FAXまたは電子メールなどのいずれかです。FAXまたは電子メールなどは従業員が希望した場合に限定されます。

    意向確認の時期は、子の3歳の誕生日の1か月前までの1年間ですが、「育児休業等の復帰時」や「従業員から申出あった際」にも実施するのが望ましいとされています。

    配慮の具体的内容

    事業主は、従業員の仕事と育児の両立を支援するため、さまざまな配慮をする必要があります。

    従業員の状況に応じて、勤務時間帯の変更や勤務地の調整が必要です。通勤時間の短縮や、保育施設の送迎に配慮した勤務時間の設定などが含まれます。業務量については、育児との両立が可能な水準に見直しを行います。

    両立支援制度の利用期間については、従業員の個別の事情を考慮して柔軟に調整しなければなりません。短時間勤務制度や看護休暇の利用期間を延長するなど、従業員のニーズに合わせて対応する必要があるでしょう。

    従業員の育児状況に応じて、必要な労働条件の見直しを行います。これには、勤務形態の変更をはじめ、業務内容の調整、評価基準の見直しなどが含まれます。企業は従業員が安心して仕事と育児を両立できる環境を整備しなければなりません。

    特別な配慮が必要なケース

    特別な配慮が必要なケースもあります。ひとり親家庭の場合は、看護休暇の付与日数増加、子どもに障害がある場合は、短時間勤務制度や看護休暇の利用期間延長が望ましいとされています。

    2025年人事労務の法改正|3.雇用保険法

    雇用保険法の改正について、人事・労務に関連する法改正のポイントを紹介します。

    高年齢雇用継続給付の給付率が引き下げ

    高年齢雇用継続給付は、雇用保険に5年以上加入している60歳から65歳未満の労働者に支給される制度です。支給額については、2025年4月1日より見直しが行われます。現在は60歳以降の賃金が、60歳時点と比べて75%未満に低下した場合に、最大で賃金の15%が給付されています。改正後は最大10%に引き下げられる見込みです。

    高年齢者の雇用を維持するため、高年齢者雇用安定法は企業に対して、以下のいずれかの実施を義務付けています。

    1. 65歳までの定年引き上げ
    2. 定年制の廃止
    3. 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)

    2021年4月からは70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。高齢者の就業機会を拡大する政策が進められていることから、将来的には高年齢雇用継続給付制度自体が段階的に縮小・廃止されることが決まっています。

    施行日は、2025年4月1日、すべての企業が対象です。

    企業に求められる実務対応

    高年齢雇用継続給付の給付率引き下げにより、企業に求められる内容を以下で紹介します。

    【給付金に依存しない雇用環境整備】

    項目詳細
    現状の課題・60歳以降の賃金を給付金前提で低く設定
    ・給付金減額による収入の大幅減少
    ・優秀な人材の流出リスク
    高年齢者の重要性・企業の重要な戦力
    ・給付金に依存しない賃金体系の必要性
    ・不当な賃金格差は法令違反の可能性
    これからの対応・70歳までの雇用確保(現在は努力義務)
    ・人手不足対策としての高齢者採用
    ・職務内容や能力に応じた賃金制度の整備
    ・適切な評価制度の構築

    【職場環境の整備】

    項目詳細
    高齢者の労働安全対策・労働災害の増加傾向への対応
    ・職場環境の整備
    ・照明の改善
    ・作業台の高さ調整
    ・手すりの設置
    ・段差の解消
    制度導入時の必要手続き・ 就業規則の改定
    ・賃金規程の改定

    参照: 職業安定分科会雇⽤保険部会(第188回)『⾼年齢雇⽤継続給付について』厚⽣労働省
    参照:『エイジフレンドリーガイドライン(⾼年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)』厚⽣労働省

    2025年人事労務の法改正|4.雇用保険法など

    雇用保険法などの改正について、人事・労務に関連する法改正のポイントを紹介します。

    1. 自己都合退職の失業給付制限を緩和
    2. 教育訓練休暇給付⾦が創設

    1.自己都合退職の失業給付制限を緩和

    2025年4月1日より、すべての企業を対象に、自己都合退職者に対する失業給付の制限が緩和されることになりました。

    現在の制度においては、自己都合による退職の場合、7日間の待期期間に加えて、原則2か月の給付制限期間が設けられています。

    改正後の制度では、以下のように変わります。

    • 教育訓練を受講された方は、離職期間中または離職前1年以内に受講実績がある場合、給付制限期間が撤廃され、7日間の待期期間のみ
    • 教育訓練を受講されていない方は、給付制限期間が2か月から1か月に短縮されるが、7日間の待期期間は継続

    特例措置として、5年以内に3回以上の自己都合退職がある場合は、頻繁な離職を抑制する目的で、給付制限期間が3か月です。

    企業に求められる実務対応

    企業に法的な義務付けはありません。従業員の円滑な転職支援の観点から、離職票交付時に基本手当の受給要件や申請手続きの方法について説明することが望ましいとされています。必要書類の準備や手続きの期限などの情報提供を行うことで、退職者の失業給付受給をサポートできます。

    参照:『雇⽤保険法等の⼀部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要』厚⽣労働省

    2.教育訓練休暇給付⾦が創設

    2025年10月1日より、すべての企業を対象に、教育訓練休暇給付金が創設されます。

    これまで教育訓練期間中の生活支援制度が存在しなかったことから、労働者のリスキリングを推進し、仕事と学びの両立を支援するため、本制度が創設されることとなりました。

    本制度を利用するためには、雇用保険の被保険者であり、被保険者期間5年以上が条件です。

    教育訓練のための無給休暇を取得しなければなりません。支給額は失業給付(基本手当)と同額となり、給付日数は被保険者期間に応じて90日、120日、150日です。

    企業は、従業員の能力開発を支援するため、長期の無給教育訓練休暇制度の創設検討を求められます。同制度により、従業員は安心して教育訓練に専念できます。

    参照:『雇⽤保険法等の⼀部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要 』厚⽣労働省

    2025年人事労務の法改正|5.⼦ども・⼦育て⽀援法、雇⽤保険法など

    ⼦ども・⼦育て⽀援法、雇⽤保険法などの改正について、人事・労務に関連するポイントを紹介します。

    1. 育児休業給付の給付率引き上げ
    2. 育児時短就業給付の創設

    1.育児休業給付の給付率引き上げ

    2025年4月1日より、すべての企業を対象に育児休業給付の給付率が引き上げられます。

    現行制度では、育児休業給付金は、休業開始から180日までは賃金の67%(手取り約8割相当)支給です。180日を経過すると賃金の50%に減額されて支給されます。

    新制度では、新たに「出生後休業支援給付金」が創設されます。子の出生後一定期間内に被保険者とその配偶者がそれぞれ14日以上の育児休業を取得した場合、上乗せの給付を受けられます。

    出生後休業支援給付金では、最大28日間にわたり休業開始前賃金の13%が育児休業給付金または出生時育児休業給付金に上乗せされます。。既存の育児休業給付金(賃金の67%)と合わせて賃金の80%の給付を受けられ、給付金は非課税のうえ、育児休業中は社会保険料も免除になるため、手取りベースでは従来の賃金と同程度(10割相当)です。

    企業に求められる実務対応

    育児休業給付の給付率引き上げにより、企業に求められる対応を紹介します。

    項目詳細
    企業の基本対応男性の育児休業取得促進・制度のていねいな説明と周知
    従業員への周知ポイント給付金の支給内容・最大28日間、手取り100%相当額の支給
    支給限度額の説明・誤解を避けるための説明・具体的な金額の提示
    意向確認時の対応・ 制度の詳細な説明・メリットの明確な提示・個別相談への対応

    参照:『⼦ども・⼦育て⽀援法等の⼀部を改正する法律(令和6年法律第47号)の概要』⼦ども家庭庁
    参照:『育児休業給付等について』厚⽣労働省

    2.育児時短就業給付の創設

    2025年4月1日より、すべての企業を対象に、育児時短就業給付が創設されます。

    現在、育児時短勤務を利用する労働者は賃金の低下を余儀なくされており、減収を補填する支援制度が存在しません。

    育児時短就業給付は、雇用保険の被保険者を対象とし、2歳未満の子を養育するために時短勤務を行う場合に、時短勤務中の賃金の10%を支給するものです。

    企業は、対象となる従業員に対して個別に制度の説明を行うとともに、社内イントラネットなどを活用して全社員向けに情報を公開し、制度内容の周知徹底を図らなければなりません。

    育児期の労働者が経済的な不安なく時短勤務を選択できるようになり、育児離職の防止と仕事と育児の両立支援促進が期待されます。

    2025年人事労務の法改正|6.障害者雇⽤促進法

    障害者雇⽤促進法の改正について、人事・労務に関連する法改正のポイントを紹介します。

    障害者雇⽤の除外率の引き下げ

    障害者雇用の除外率制度は、特定の業種・職種において、障害者雇用が困難な状況を考慮して雇用義務を軽減する仕組みです。この制度では、障害者の雇用義務人数を計算する際、従業員総数から除外率に応じた人数を差し引けます。

    2025年4月1日からは、すべての企業、すべての業種において除外率が一律10ポイント引き下げられる見込みです。この改正は、障害者雇用の促進を目的としています。

    現在の除外率が10%以下の業種については、同制度の対象から除外されます。

    企業に求められる実務対応

    除外率が引き下げられることで、従業員総数が変わらなくても、法定雇用率に基づく障害者の必要雇用人数は増えます。企業は新しい除外率に基づいて雇用義務人数を再計算し、計画的な採用活動を進めなければなりません。

    具体的な取り組みとしては、以下が挙げられます。

    • バリアフリー化(段差解消、手すり設置)
    • 安全対策(通路へのミラー設置)
    • 作業環境の改善(部品・書類の配置見直し)
    • 安全研修の実施

    参照:『事業主の⽅へ』厚⽣労働省
    参照:『障害者の雇⽤に向けて』東京労働局 ハローワーク飯⽥橋雇⽤指導部⾨

    人事労務の法改正に応じて早期に対応を(まとめ)

    2025年の人事・労務関連の法改正は、仕事と育児・介護の両立支援を強化し、多様な人材の活用を促進する重要な転換点です。主な改正として、子の看護休暇の拡充やテレワークの導入促進、高年齢者雇用継続給付の見直し、教育訓練休暇給付金の創設などが実施されます。

    企業には就業規則の改定や社内制度の整備など、計画的な準備を求められるでしょう。法改正を、働きやすい職場環境の整備と人材活用の機会として積極的に活用することが重要です。