退職証明書と離職票とは|違いや発行方法、退職時の対応も徹底解説
退職証明書や離職票は、従業員が退職する際などに希望があれば会社側が用意しなくてはならない書類です。しかし、退職時に必要な手続きや書類が多いため、いまいち違いを理解できていないという場合もあるでしょう。。
本記事は、人事労務担当者に向けて、退職証明書と離職票の違いや書き方についてわかりやすく解説するとともに、活用シーンや退職時における必要な対応を紹介します。
記事後半では、退職に必要な手続きや退職者から回収すべきものも紹介もしています。ぜひ最後までチェックして、退職手続きの内容や各書類への理解を深めるヒントにしてみてください。
退職証明書と離職票を理解して適切な手続きを
退職証明書と離職票は、退職手続きにおいて理解しておかなくてはならない書類です。どちらも必ず発行しなければならない書類ではありませんが、退職者が希望する場合は対応しなければなりません。
しかし、同じような意味合いの言葉が使われているため、まずはそれぞれの内容や違いを正しく理解したうえで適切な対応ができるようにしましょう。
退職証明書とは?
退職証明書とは、従業員が会社を退職したことを証明する書類です。退職の手続きとして必ず発行する必要はないものの、退職証明書の発行を求める従業員に対しては迅速に交付しなければなりません。
退職証明書が必要なとき
退職証明書は、従業員が退職する際、従業員本人が希望する場合に発行するものです。
退職証明書が必要になる主なシーンとしては、国民健康保険や国民年金への加入手続きなどが挙げられるでしょう。
また、従業員の転職先企業が職務経歴を確認するために、従業員に対して退職証明書の提出を求める場合があります。このようなときでも、退職者による申請があった際は発行しましょう。
ただし、退職から2年以上経過した場合は、退職者による申請であっても発行義務はなくなります。
退職証明書の発行義務
退職証明書の発行は必須ではありませんが、労働基準法において従業員本人が希望した場合に発行義務が定められているため、すみやかに対応しましょう。
退職証明書の求めがあった場合、会社側が発行を拒否すると、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科されます。また、正当な理由なく発行が大幅に遅延する場合は交付拒否とみなされる恐れもあるため、注意しましょう。
参照:『労働基準法 第二十二条および百二十条』e-GOV法令検索
退職証明書の様式や記載項目
退職証明書は、特に決まった様式はありません。退職者が希望する場合に、業務の種類、使用期間、その事業における地位、賃金、退職(解雇)理由を記載するよう、労働基準法に定められています。
ただし「退職者が希望しない項目は記載しない」とされているため、留意して作成するようにしましょう。また、企業が交付する書類として、書類名、証明年月日、退職する従業員名、証明内容、事業主名も記すのが一般的です。
参照
『退職自由に係るモデル退職証明書』厚生労働省
『労働基準法 第二十二条』e-Gov法令検索
離職票とは?
離職票とは、会社側が退職する従業員に発行する書類です。具体的な内容について確認してみましょう。
離職票が必要なとき
離職票は、従業員が会社を退職したあと、転職先が決まっていない場合など失業保険を受給する際に必要な書類です。
離職票は、希望がなければ発行しなくてもよいですが、退職する従業員が59歳以上の場合は必ず発行しなくてはなりません。
離職票の発行義務
企業は従業員本人が離職票の発行を希望する場合、すみやかに発行する義務を負っています。
正当な理由なく離職票の交付を行わない場合は法令違反となり、雇用保険法の規定により「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されます。
参照:『雇用保険法第七十六条および第八十三条』e-GOV法令検索
離職票の種類
離職票は、離職票-1(正式名「雇用保険被保険者離職票-1」)と離職票-2(正式名「雇用保険被保険者離職票-2」)の計2枚で構成されています。
離職票-1はハローワークが作成するものです。離職票-2は、複写式の3枚つづりの用紙になっています。
【離職票−2(離職証明書)の内容】 |
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1枚目:離職証明書の事業主控え 2枚目:離職証明書としてハローワーク提出用 3枚目:離職票-2として離職者に交付 |
離職証明書の複写でもある離職票-2(3枚目)と離職票-1をあわせることで離職票が完成し、労働者に交付できます。
離職票と離職証明書の違い
離職票はハローワークが発行する書類で、離職証明書は離職票の発行のために企業がつくる申請書類です。離職票1と2をあわせて発行するには、離職証明書をハローワークに提出する必要があります。
離職証明書は、被保険者資格を喪失した翌日から10日以内にハローワークへ提出しなければなりません。
離職証明書をもとに離職票が完成し、従業員側に交付できるようになります。退職者が離職票の交付を希望する場合は、滞りなく対応できるよう早めに着手しましょう。
離職票発行の流れ
離職票を発行するまでの流れを簡単に確認してみましょう。
- 退職者に離職票の要不要を確認
- 会社側が離職証明書と雇用保険資格喪失届を作成
- 退職者が離職証明書の内容を確認
- 会社側が離職証明書と雇用保険資格喪失届をハローワークへ提出
- ハローワークが提出された離職証明書を審査
- ハローワークが離職票を発行
- 会社側が離職票を退職者に送付
離職票を発行するためには、事前に離職証明書と雇用保険資格喪失届の提出が必要です。スムーズな交付のためにも、事前に退職者に離職票発行の有無を確認し、必要書類の準備を行いましょう。
離職票の書き方
離職票の書き方についてご紹介します。
会社側が意識しなければならないのが、離職票-2であり、複写式になっている3枚つづりの1枚が離職票-2に該当します。
離職証明書(離職票-2)は、左右で記載内容が分かれており、左側に従業員に支払った賃金や勤怠状況を、右側には退職理由を記載しましょう。離職理由によって失業給付金の額にも影響するため、離職が個人都合によるものなのか、会社都合のものなのかわかるように記載します。
離職前には、従業員本人による氏名の記載も必要です。記載内容を確認したうえで忘れずに記載してもらいましょう。
参照:『記入例:雇用保険被保険者離職票−2』ハローワークインターネットサービス
退職時に用意すべきその他の書面
退職以降も自社を守るために退職者に行うべき対応があります。
退職後は、在職中における雇用契約書や就業規則の内容は効力がなくなるため、一定の事項について誓約書を作成し、退職者本人のサインを添えて提出してもらいましょう。ただし、誓約書の提出は任意であるため、提出を強制できないという点を理解しておかなくてはなりません。
万が一強制的に署名させた場合、無効となったり、民法上の違反に該当し、退職者側から取り消すこともできるため注意しましょう。
そこで、誓約書における一般的な内容「秘密保持義務」と「競業避止義務」についてご紹介します。
秘密保持義務
退職者が、退職した企業で業務上知り得た機密情報を第三者に漏えいしたり、不正に利用したりするのを防止する誓約です。
在職中の従業員は、労働契約の付随義務として秘密保持義務を負っています。退職後は労使関係がなくなるため、義務はなくなり、情報を漏らすこと自体は法律違反に必ずしも該当しなくなります。
そこで企業は、企業秘密を漏えいさせないためにも、退職者から誓約書を提出してもらうのがよいでしょう。
競業避止義務
退職後の一定期間、退職した企業で業務上得た経験や知識を活用して、競合他社へ転職することや、同じ事業内容で起業させないための誓約です。
企業としては、自社の顧客やノウハウが他社に流れてしまうことを危惧して誓約書に盛り込むのが一般的です。
ただし、退職者に不利になるような長期間の義務や、競業禁止の業種や地域などがあまりにも広範囲にわたる場合などは、無効になるケースもあるため、注意しましょう。
差し止め請求や損害賠償請求につながる場合もある
退職時に提出された誓約書に違反があった場合、会社側は違反した内容に関して差し止めしたり、損害賠償を請求できるケースもあります。
損害賠償については、違反した事実と損害を立証しなければなりません。
万が一の際に、秘密保持誓約や競業避止義務を誓約書として有効にするためにも、適切な内容で作成するようにしましょう。
退職手続きで注意すべき点
退職に関する手続きについて、会社側が特に注意しなくてはならない点についてご紹介します。注意点を把握したうえで、トラブルを防止しましょう。
離職証明書の記載内容を退職者に確認してもらう
離職証明書を作成する場合は、ハローワークに提出する前に必ず退職者本人に確認してもらう必要があります。特に、退職理由や支払った賃金については、違和感や相違がないかどうかを改めて確認しましょう。
各書類の手続き期限を守る
退職手続きを行う際、さまざまな書類を発行するなど手続きを行いますが、期限が定められているものもあります。公的機関やハローワークに提出する書類など、期限に遅れると、退職者が不利益を被る場合があるため、余裕を持った対応を心掛けましょう。
退職時に会社側が行う手続き
従業員が退職する際には、会社側として退職に伴う手続きがあり、必要書類も複数あります。具体的にどのような手続きで、どのような書類の発行が必要になるのか、確認してみましょう。
従業員の退職時に会社側で行う主な手続き
従業員が退職する際に会社側で対応しなければならない点をご紹介します。
・社会保険の資格喪失届の提出(必須) ・雇用保険の資格喪失届の提出(必須) ・離職票の送付(転職先が決まっていれば不要、59歳以上必須) ・離職証明書の提出(離職票が必要な場合) ・賃金支払い状況と離職理由がわかる書類の提出(離職票が必要な場合) ・退職証明書の発行(本人の要望があれば) ・住民税の変更手続き(必須) ・源泉徴収票の発行(必須) ・退職に伴う必要物の回収 |
退職する場合は、会社経由で加入する社会保険や雇用保険の資格喪失手続き、住民税の変更、源泉徴収票の発行は必須手続きです。
離職票や退職証明書の発行は、本人の希望がある場合に発行する書類であるため、あらかじめ退職者本人に希望を確認しましょう。
退職に伴い、健康保険証や貸与物など、退職者から回収しなければならないものがある場合も忘れずに回収します。
退職時に必要な手続きや提出書類には、期限が定められているものも多いため、期限内に対応できるようにしましょう。
転職先が決まっておらず失業保険を受給するために従業員への離職票の送付が必要な場合は、雇用保険の離職証明書や賃金支払い状況と離職理由がわかる書類をハローワークに提出します。
また、本人の希望がなければ退職証明書の発行は必要ありません。
しかし、いずれの場合も従業員本人の意向に従う義務があるため、離職証明書や退職証明書が必要かどうかということは必ず確認しましょう。
※従業員の年齢が離職日において59歳以上の場合は離職票の交付は必須です。
退職者から回収するもの
退職者には、以下のものを提出してもらいます。できるだけ退職日までに回収できるよう、本人に伝えましょう。
退職届
本人都合による退職時は、トラブルを避けるためにも退職届を提出してもらうのがおすすめです。会社側で様式を定めていない場合には、退職の意思・退職の理由・退職日・氏名などを記載し、押印したものを提出してもらいましょう。
健康保険証
退職する場合、会社を通して加入する健康保険は資格を喪失します。そのため、配布した健康保険証も会社側から日本年金機構に返却しなければなりません。
保険証は退職日まで有効なので、退職日当日に返却できない場合は、郵送で返却してもらうなどの対応が必要です。
会社の備品や貸与品
退職時は、在職中に使用していた会社所有の備品や貸与品もすべて返却してもらいましょう。特に注意したいのが、個人情報である名刺です。退職者本人のものだけでなく、顧客や取引先からいただいた名刺も漏れなく回収しましょう。
退職手続きは電子申請やシステムを活用して効率化
退職証明書や離職票など、退職時にはさまざまな書類を作成したり公的機関への提出を行わなくてはなりません。すべての対応を手動で行うのは、人的ミスが発生したり、労力や時間もかかってしまいます。
そこで退職時に必要な手続きを効率化するためにも、総務省が運営する電子申請(『e-GOV』)や労務管理システムを活用するのがおすすめです。
電子申請は、ネット環境があればいつどこにいても申請ができ、チェック機能を活用すればミスの防止にもつながるでしょう。また、労務管理システムを活用すれば、退職時だけでなく人事労務に関するさまざまな業務の管理・効率化をはかれるでしょう。
まとめ
退職証明書や離職票など、従業員の退職時において会社側として行う手続きは複数あります。手続きの内容によっては期限が決まっているものもあるため、退職手続きに必要な流れや内容を正しく理解したうえで対応しなくてはなりません。
しかし、人事労務担当者は退職手続きだけでなく、ほかにもさまざまな業務を担っています。退職手続きを効率化するだけでなく、担当者の業務負担を軽減するためにも、電子申請やシステムを活用したうえで、退職手続きの効率化をはかってみてはいかがでしょうか。
退職手続きを効率化|One人事[労務]
One人事[労務]は、従業員の退職手続きの効率化を支援する労務管理システムです。離職証明書の電子申請など公的手続きのペーパーレス化を助け、担当者の負担を軽減します。
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